笑顔を咲かせた少女は紛れもなく…   作:西部荒野に彷徨う海賊

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 いつの間にかオープンキャンパスは終わっています。

 今回は主人公との二人のキャラの絡みがメインです。

 それでは、どうか――。




30話 オープンキャンパス後……

 

『結果、オープンキャンパスでのライブも大成功。来訪者数も前の路上ライブの好評につき数多という結果って訳か』

「まァ、正直ここまで計画通りッて感じに行くと、どこか気持ち悪ィがなァ」

 

 オープンキャンパス当日の夜。

 俺はリビングのソファに寝転びながら、スマホを片耳に押し当て、通話相手の水浦竜三と話していた。

 

 結果として、今日のオープンキャンパスは、理事長の不安があまりの杞憂だったかのような繁盛ぶりだった。

 

 やはり第一に、スクールアイドルμ'sの誕生が話題を呼んだ。

 現代日本に超絶人気のラブライブ、そのホームページに名前を掲載した辺りから、都内またそこ付近には、音ノ木坂の評判は拡散していた。

 

 また、二つのPV動画の投稿。

 秋葉原での路上ライブ。

 

 これら全て、功を奏した。

 

『けどよ、お前んとこにも思わぬ僥倖があったはずだろ?』

「は? 僥倖?」

 

 何の話だ、と俺が訊くと、竜三は面白そうにクックッと笑う。

 

『美雪、お前の音ノ木坂スクールアイドルの、紹介動画だの事だぜ。ホームページのμ's欄に投稿してたろ。あれ、かなりの人気が爆発したらしいじゃねぇか』

「……あァ」

 

 できれば、その話題は出して欲しくなかった――。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

『あー、ゴホンッ。……音ノ木坂学園、スクールアイドルμ'sのマネージャーを務めている、夜伽ノ美雪だ。

 ……まず、これだけを先に言ッておく。他校じゃこの動画で、顧問やマネージャーが本校のスクールアイドルについてアピールするコメントを言うンだろうが、俺はそれを一切しない。

 なぜなら、この俺が直々に面倒を見ているメンバー達は、言葉なンかじゃ表現できねェ程に魅力的な奴らばッかだからだ。個人紹介で見た通りだが、九人全員が容姿も性格もバラバラ、実に個性的な人間の集まりだ。歌やダンスもまた然り、その独特の個性さをうまく利用し、表現された最高傑作となッている。

 あいつらは……うちの学校のスクールアイドルμ'sは、ハッキリ言ッて素晴らしいの一言に尽きる。

 だからマネージャーの俺からは何も言わねェ。

 だが最後にこれだけは、忠告しておく。

 ……お前ら――――後悔するぜ?

 自分らがせっかく生まれたこの日本に誕生した、奇蹟のアイドルを見逃したらな――』

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

『あれだけ煽っておきゃ、下手な挑発に好奇心が沸いて、ページを閉じて続きの動画を見ない奴はいねぇはずだろ……そう考えたんだろ、美雪?』

「……やれやれ、何でもお見通しか」

『お前の考える事は、遠回りの道が多い分、単純計算ばっかだからな。少し頭を捻らすだけで真理は見えてくんだよ。ま、それが可能なのはあくまで、美雪の親友の俺だけだと思うがな』

 

 まったく、竜三の言う通りだった訳だが。

 

『しかもお前が中心としてアピールしたのはメンバーの個性的感についてだけだ。歌や踊りの面はそれに対して一言で締めた結果、閲覧者も強く反論できなかったしな』

「まァな……」

『しかも、常識上の丁寧な喋り方じゃなく、敢えて強い乱暴口調で話した結果、お前の片髪上げたイケメン顔が実に強調されてたしよ』

「そこは無意識だ」

『けどそのお陰で、グンと女の子ファンが増えた訳だろ? オープンキャンパスでも、中学生の女子が結構いたって話聞いたぜ?』

「確かに女子生徒はかなりの数がいたが、そいつらが入学するかと問われれば話は別だろ」

 

 だが確かに、あの動画のコメント欄はある意味、大荒れしていた。

 

『マジイケメン出てきた!』

『銀髪キレイ! うらやま!』

『かっこよすぎでしょ!!』

『彼女いるのかな~~??』

『かっこつけやがって……けどイケメンなのは事実だから許す』

『男の俺でも惚れるレベル』

『待ってよみんな、テロップにも出てたけど、美雪っていう名前は女の子じゃない? ……けどほんとイケメン!』

『付き合って!』

『結婚して!』

『抱いて!!』

 

 もはや俺――夜伽ノ美雪に対する称賛コメントばかりで、本題のPV動画で登場した九人のメンバーの存在が霞むまであった。

 

『ぬわぁんでアンタばっかり注目されてんのよ!』

『うわぁぁん!! 美雪ちゃんに見せ場を横取りされたよぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 あの件で、にこと穂乃果が俺にさんざん文句を垂れてきた事を思い出す。

 

 別に俺だって、人気狙いであの動画を撮った訳じゃねぇよ。

 

『そういや美雪』

「あ?」

『あれから大丈夫なのかよ? あの、柊なんとかのストーカーとはよ』

 

 ……あぁ。

 竜三はどうやら、前に俺が話した柊蒼太郎の事について、まだ気にしていたらしい。

 

「あァ、平気だ。こないだ川に捨ててきたからな」

『ほぉ、よくやった』

「おうよ」

『それはそうと、お前にそのストーカーの事を聞いた日の夜中によ、俺すっげぇ面白いもん見たぜ』

「何を?」

『野良犬に咥えられて道路を引き摺られるスーツ姿のビショ濡れた男』

「あとで写メよろしく」

『任せろ』

 

 そんな会話を弾ませていた時、ふと家のインターホンが鳴り響いた。

 

 壁にかけられた玄関前を映すカメラを覗き込むと、見慣れた紫髪の女が立っている。

 

「悪いな竜三、知り合いが来た。また後でな」

『ん? おう、今度遊ぼうぜ』

「あァ、予定開けとく」

 

 そう言ってスマホの通話を切り、俺は玄関まで歩いた。

 

「この間もらった合い鍵で上がらせてもらったぞ、美雪」

「行動早ェな、英玲奈」

 

 そこにはすでに、幼馴染みの統堂英玲奈が、私服姿で靴を脱ぎかけた状態で玄関の中へと入ってきていた。

 

「上がッてくれ、玄関の鍵は閉めろよ」

「あぁ、分かった」

「今日は晩飯、食ッてくか?」

「そうだな……せっかくだから、頼もうか」

 

 今日も親父は帰ってこない。

 

 さて、料理の支度だ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 夕食では、お互いのスクールアイドル活動についての話題で盛り上がった。

 

 また途中からお互いの学校生活や、最近あった面白い出来事など、ごく平凡な会話に花を咲かせた。

 

「ごちそうさまだ」

「おそまつさン」

 

 俺は一人の時じゃ滅多に料理はしない分、決行の時にはかなりの気合いをいれる方だ。

 今日の夕飯も、ご馳走だと自画自賛できるレベルに仕上がった。

 

 台所で食器洗いをしていると、隣に立つ英玲奈がタオルで食器の水滴を拭き取りながら、囁くように言う。

 

「成長したな、美雪」

「あ? 何の話だ」

 

 お互い目は合わせず、手元を作業で忙しくしながらも、会話は続く。

 

「メンバーとうまくやっていけているようじゃないか。やはりお前は、やればできる人間なんだよ」

「まァ、人間誰でもYDKだッてテレビのCMで言ッてたしな」

「ラブライブ出場の兆しは見えるのか?」

「そこまで畏れ多い道のりはまだ険しいが、けど予選の順位は着々と上昇している。お前が家に来る前にもホームページを覗いてみたが、μ'sは二五位まで上がッてたぜ」

「……それは、かなりすごい事じゃないか? 一ヶ月少しの短期間で、そこまで順位を上げるとは……本戦出場の可能性もあると思うが……」

「本戦出場ッて事ァ、そりゃつまりお前らA―RISEを倒さなきゃいけねェンだろ? 無茶言うなよ……お前ら三人のパフォーマンスを見て、俺でさえ言葉が出なかッた程なのによ」

 

 これは、正直な意見だった。

 

 ネットに上げられたA―RISEの動画には、思わず目を釘付けとされた。

 

 左サイドに立つオレンジ髪の女の可愛らしい笑顔も。

 英玲奈の堂々とした胸を張る踊りにも。

 センターポジションのショートカットの女の、桁外れな絶対的オーラにも。

 

 画面越しに、圧倒された。

 

 少なくとも、今のμ'sじゃ勝てない。

 

「けれど……」

 

 タオルを持つ手を止め、英玲奈は俺の顔を見上げる。

 

「もし、私達が実戦の大舞台で会えるような事があれば、その時は正々堂々とぶつかり合おうではないか」

 

 それは、王者からの挑戦状。

 

 俺が普段とるような示唆はせず、真正面から向き合うその姿勢と言葉。

 

「……まァ、俺は英玲奈みてェにステージに上がれる訳じゃないが……前回に冠を剥奪したお前らに立ち向かえるよう、μ'sを育てていくよ」

 

 俺も、彼女の目を見た。

 

 去年までの俺には考えられないような言葉だろう。

 

 静寂を好んだ。

 平和を求めた。

 楽をして生きていきたかった。

 

 だが、今の俺はどこか――。

 

 

 立ち向かえるよう……育てて……。

 

 

「ッたく、本当に俺かよ、これは」

「ん? 何か言ったか美雪?」

「いや、別に……ただ」

 

 ただ、言える事は……。

 

「今、μ'sのメンバーになッた事によッて、俺は進んでいようが退いていようが、どッちにしろ――歩いているのかもなァ……ッて思ッただけだ」

 

 もし、叶う事なら、

 進んでいれば、いいなと思える――。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 都会は街の電気や光が多く、夜中の空でも星がよく見える、という事はあまりない。

 都会で働くサラリーマンなどは、森林が鬱蒼とした田舎町で見上げられる、煌々とした満天の星空は見た事がないだろう。

 

 しかし、輝く宝石を一面に散りばめられたような星空でなくとも、その一段階レベルを下げた程度の星空を、都会でも見られる場所がある。

 

 幽寂とした空気が流れる、東京の一角。

 

 一つの古ぼけた、正方形に模った廃工場。

 剥がれたボロボロの塗装の上からは彩りみどりの汚いスプレーで落書きが施されている。ドレもコレも汚い、不謹慎で非道徳的な言葉ばかりだが。

 

 その廃工場の中の、薄暗い空間。

 小動物の気配すらない静寂が保たれ、星も月の明かりも届かない場所に、二人の男がいた。

 

「兄貴、こいつじゃないでしょうか。こないだ俺がたまたま秋葉原に遊びに行った時に見つけたんすけど……この銀髪が、水浦の野郎と徒党を組んでるっていう、夜伽ノ美雪じゃないでしょうか」

 

 そう言う一人の男は、現在国立の、そこそこ偏差値の高い大学に通っている学生だ。

 またその男の手には、一枚の写真が持たれていた。

 

 それを、もう一人の――高校生だが兄貴と呼ばれる――金髪をオールバックに決めた男――梶ヶ谷燐桐〈かじがやりんどう〉はひったくった。

 

 彼の目に映る写真の女は、写真越しでも分かる程の煌めく銀髪を尻辺りまで伸ばし、鋭く冷えたナイフのような赤い瞳を伸ばしている。

 

(そういや、夜伽ノって奴は音ノ木坂の生徒だと聞いたな……)

 

梶ヶ谷も、音ノ木坂高校については知っている。

 写真に写るこの女も、音ノ木坂のジャージ姿を着ている。

 

「あぁ、この女だ、間違いねぇ」

「マジッすか!? よっしゃあ!!」

 

 梶ヶ谷が言うと、下っ端の男は嬉しそうに身を躍らせた。

 

 だが――。

 

「けどお前、俺が夜伽ノ美雪の捜索命令を出してる最中に、秋葉原に遊びに出掛けただと……? 捜索の為に仕方がなく訪れたってんならやむを得ねぇがよぉ……」

「うっ……!?」

 

 梶ヶ谷の低い声に、男は息を詰まらす。

 

「その点は、どういう説明がされるんだ……なぁ、おい?」

 

 梶ヶ谷が一歩、写真を下げて男に近づく。

 下っ端の男はそれだけで、脚と声を震わせた。

 

「い、いやその……お、俺の好きなミナリンスキーちゃんの路上ライブが――」

 

 直後。

 

 男の鼻が潰れ、白い歯が数本飛び、薄闇の空中に赤い血が舞った。

 

 理由は単純。

 言い訳を受け付けなかった梶ヶ谷が、数個の指輪が嵌められる拳を、男の顔面に叩き付けたのだ。

 

 凄まじい勢いで地面に身体を打った男に、梶ヶ谷は一瞥もせず、再び写真に目を向ける。

 

「なるほど……確かに、良い顔してんじゃねぇか。女って所がもったいねぇくらいだ」

 

 梶ヶ谷は写真をズボンのポケットにしまい込み、代わりにスマホを取り出し、アドレス帳を操作してから耳に当てた。

 

 数回の呼び出し音の後、相手はすぐに出た。

 

「氷室、俺だ。全員をいつもの廃工場に集めさせろ。……あぁ、そうだ、夜伽ノ美雪の顔が割れた。……あぁ、時間だ? 今すぐに決まってんだろうがボケッ!!」

 

 怒鳴り散らした後、一方的に通話を終了させる。

 

 

「さぁてと……お楽しみはこっからだぜ、水浦竜三――」

 

 

 梶ヶ谷燐桐。

 

 

 金色の文字を彫った白い歯をギラリと見せつけるようにして、長い舌で唇を舐め回しながら彼は嗤う。

 

 煙草を一本、取り出して――。

 

 

 





 今までこの作品を読んでいただき、ありがとうございます!

 これにて、第三章は終了となります。
 皆様、本当にありがとうございました!
 
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 これからも『笑顔を咲かせた少女は紛れもなく…』をよろしくお願いします!

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