さて、お久しぶりです。
久しぶりの投稿のお話は短いです。
僕の余命も短いです。←気力的な意味で。
警視庁本部。
事件捜査課書類室。
○○銀行強盗――店内に捕らわれた被害者の女性からの証言をもとに――発砲事故についての報告書にて。
被害者名……立花雅彦(銀行員、男性)。
夜伽ノ陽登美(主婦、女性)。
容疑者名(共に死亡)……村上尚人。
東耕太朗。
二〇XX年、九月十三日。
現場――○○銀行。
事件発生時刻――午前一一時三〇分前後。
覆面を施し、拳銃などを武装した男二人組が銀行内に突入してきたのが、事の始まりだった。
一発目の発砲は、天井の防犯カメラを撃ち抜いた。
「全員跪いて床に手を付けろ」
「鞄に金を積めろ」
二人が拳銃を振り回し、うちの一人は収納容積の広そうな鞄を店員の女性に押し付けた。
銀行員の女性が酷く怯えた様子で、鞄に札束を詰め込んでく。
一人の赤ん坊が泣き出した。
「うるさいぞ、黙らせろ」
もう片方の男が叫ぶが、それは逆効果となるように母親を怖がらせ、彼女が抱きかかえる赤ん坊はさらに泣き喚く声を大きく響かせる。
悪態を吐きながら、男はその母親と赤ん坊に拳銃の銃口を向けた。
その直後に、一人の女性(この人物を被害者の一人である、夜伽ノ陽登美であると推測)が男の腕にしがみついた。
「やめてください、赤ん坊にそんなもの」
女性はそう叫んだそうだ。
男はすかさず抵抗して腕を解放させると、女性の頬を右手で強く殴った。
その際に、証拠品として回収された拳銃が床に転がる。
男は拳銃を拾い上げるのではなく、倒れた女性の腹に数発、足蹴りを繰り返す。
「おいガキ……何してやがる」
金を鞄に詰め込ませていた男の声に、初めて、店内の全員がそれを目撃したと言う。
一人の少女が、転がった拳銃を拾い上げ、不自然な程までに綺麗な立ち姿で、それを構えたという。
少女が構える銃口は、女性に暴行を加えていた男に向けられていた。
銃砲が轟いた。
少女が発砲した銃弾は男の腹に命中。
すると少女はすかさず、銀行員を脅していたもう一人の男に向けても発砲する。
そちらの男は脳天を銃弾で貫かれ、即死したと言う。
「やめろ、助けてくれ」
床に倒れ込みながら、出口へと這いずり出ようとする男に跨る形で立ち竦んだ少女は、銃口を下にむけ、拳銃の引き金を引き続けたと言う。
それは、男の顔面が全て穴だらけとなり、店内に血の海が広がる程までに徹底していた。
にわかに信じられない話だが、その時の少女の顔は、どこか笑っていたと証言されてある。
少女の名前は、夜伽ノ美雪。
被害者の一人である夜伽ノ陽登美の娘であると判明した。
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警視庁副総監である水戸部春偵〈みとべはるさだ〉は、山ほどの書類が棚に押し詰められた薄暗い部屋で、小さな机に置かれたその書類の文字に目を這わせていた所だった。
彼の背後で扉が開き、自分が面倒を見ている部下である男が部屋に入ってくる。
「あ、水戸部さん。……あぁ、またその事項に目を通しているんですか?」
捜査課の警部、荻原椋穂〈おぎわらりょうすい〉は呆れた苦笑いを浮かべる。
憮然とするでも、釈然としない様子で眉を寄せるでもなく、水戸部副総監は無表情のまま振り向いた。
片手に薄く纏められた簡易書類をヒラヒラとさせているが、まだまだ元気な毛髪と肉付きの良い顔、酒を多く取りすぎる膨らみ出た腹は部下の方へと向いていた。
「面白い事故……いや、事件だよ、これは」
しかしそう言う水戸部副総監の顔は笑っていない。
だが険しい訳でもない。
荻原警部はいつも、自分の上司でありながら酒飲み仲間である彼の考えている事が、時々分からなくなる。
謎を多く秘めた事件が発生し、その件の担当が回ってきた時など、特にだ。
「面白いなんて言ったら、被害者の人達に可愛そうじゃないですか。いくらなんでも、不謹慎ですよ」
「被害者と言っても、死亡したのは犯人の二人の方だ。別に構わないじゃないか」
「そういえば……」
荻原警部は顎に手を当て、目を細くし、書類に記載される一つの名前に注目する。
「被害者の、夜伽ノという女性……数年前に亡くなっていますよね」
「事件とは関連のない場所でな。病気を患っていたと聞いた。まったく、西木野総合病院に世話をしてもらっていたというのに、何と不幸な女性だよ」
「夫はプロ野球選手、それも海外からのお誘いも話に出た程の有名選手……収入に問題はありませんが、残された子供にとっては残酷なものですよね」
彼ら二人は警察だ。
今まで幾度となく、似たような境遇に合ったいる人間を幾人とも見てきた。
だがやはり、辛いものは辛い思いがある。
しかし、水戸部副総監は意気揚々とした声で、ご機嫌の良いような表情で言った。
「いや、彼女はそんな貧弱ではないさ」
「……被害者の娘さん?」
「そうとも、名前を夜伽ノ美雪……私は事件当時、彼女と対面して会話をしたんだ」
副総監は書類を机に置き、長袖シャツを肩まで捲り上げた太い両腕を胸の前で組む。
「その時の彼女、何て言ったと思う」
その質問に、荻原警部は思考を回した。
怖い経験をして泣き喚いた?
自分のしでかした事に恐れ、腰を抜かした?
初めて人の死体を目の当たりにして、ただ茫然自失となった?
水戸部副総監の口から出た言葉は、そのどれにも当てはまらない。
「彼女は、まだあどけなさの残る顔でこう言ったさ……『あいつら二人を殺してやった事に後悔はしていない、ましてや罪悪感などまったく感じていない。むしろ人を殺めたこの感触が心地良い程だ』――とね」
警部は、その夜伽ノ美雪という人物の顔を見た事がない。
しかしその、残虐を極める悪人のセリフは、彼の背筋に冷たいものを流させた。
「『癖になりそうだ』……とも言っていたかなぁ」
クツクツと。
副総監は太い喉で笑いを立てる。
「できる事なら、もう一度逢ってみたいな……彼女があの後、どういう生活を送ってきているのか、是非この目で拝見したい」
水戸部副総監の細い目は、まるでテレビの中で活躍するスーパーヒーローに憧れる子供のような、輝く眼差しをしていた。
そんな彼に、荻原警部は静かに思う。
――もしかすると、その願いはきっと叶うのだろう。
だが、と。
彼は心で呟いた。
――その時はきっと、お互いは真正面から対面できる取調室の椅子に座っているんだ。
その日は近いのか、遠いのか。
あるいは永遠と訪れない場面なのか。
これ以上、面倒事を増やさないでくれ、俺はこの上司にどこまでも付いて行かなきゃならないのだから――。
荻原警部は、切に願う。
じょじょに、じょじょに主人公の過去が明かされていくスタイル、僕は好きです。
そういえば、友人から前にこんな事を言われました。
「就職いい学部を蹴ってくスタイル嫌いじゃないよ」
将来の事と真面目に向き合わなければ。
僕にそう思わせた彼からの一言でしたね。
次回もよろしくお願いします!
「さっさと主人公の話進めてくんね?」という意見があれば感想欄でください!