笑顔を咲かせた少女は紛れもなく…   作:西部荒野に彷徨う海賊

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 勉強とかマジ無理……辛い……

 さて、お久しぶりです。
 久しぶりの投稿のお話は短いです。
 僕の余命も短いです。←気力的な意味で。




35話 過去の事件

 

 警視庁本部。

 事件捜査課書類室。

 

 ○○銀行強盗――店内に捕らわれた被害者の女性からの証言をもとに――発砲事故についての報告書にて。

 

 被害者名……立花雅彦(銀行員、男性)。

     夜伽ノ陽登美(主婦、女性)。

 

 容疑者名(共に死亡)……村上尚人。

         東耕太朗。

 

 二〇XX年、九月十三日。

 

 現場――○○銀行。

 事件発生時刻――午前一一時三〇分前後。

 

 覆面を施し、拳銃などを武装した男二人組が銀行内に突入してきたのが、事の始まりだった。

 

 一発目の発砲は、天井の防犯カメラを撃ち抜いた。

 

「全員跪いて床に手を付けろ」

「鞄に金を積めろ」

 

 二人が拳銃を振り回し、うちの一人は収納容積の広そうな鞄を店員の女性に押し付けた。

 銀行員の女性が酷く怯えた様子で、鞄に札束を詰め込んでく。

 

 一人の赤ん坊が泣き出した。

 

「うるさいぞ、黙らせろ」

 

 もう片方の男が叫ぶが、それは逆効果となるように母親を怖がらせ、彼女が抱きかかえる赤ん坊はさらに泣き喚く声を大きく響かせる。

 

 悪態を吐きながら、男はその母親と赤ん坊に拳銃の銃口を向けた。

 

 その直後に、一人の女性(この人物を被害者の一人である、夜伽ノ陽登美であると推測)が男の腕にしがみついた。

 

「やめてください、赤ん坊にそんなもの」

 

 女性はそう叫んだそうだ。

 男はすかさず抵抗して腕を解放させると、女性の頬を右手で強く殴った。

 

 その際に、証拠品として回収された拳銃が床に転がる。

 

 男は拳銃を拾い上げるのではなく、倒れた女性の腹に数発、足蹴りを繰り返す。

 

「おいガキ……何してやがる」

 

 金を鞄に詰め込ませていた男の声に、初めて、店内の全員がそれを目撃したと言う。

 

 一人の少女が、転がった拳銃を拾い上げ、不自然な程までに綺麗な立ち姿で、それを構えたという。

 

 少女が構える銃口は、女性に暴行を加えていた男に向けられていた。

 

 銃砲が轟いた。

 

 少女が発砲した銃弾は男の腹に命中。

 

 すると少女はすかさず、銀行員を脅していたもう一人の男に向けても発砲する。

 そちらの男は脳天を銃弾で貫かれ、即死したと言う。

 

「やめろ、助けてくれ」

 

 床に倒れ込みながら、出口へと這いずり出ようとする男に跨る形で立ち竦んだ少女は、銃口を下にむけ、拳銃の引き金を引き続けたと言う。

 それは、男の顔面が全て穴だらけとなり、店内に血の海が広がる程までに徹底していた。

 

 にわかに信じられない話だが、その時の少女の顔は、どこか笑っていたと証言されてある。

 

 

 少女の名前は、夜伽ノ美雪。

 

 

 被害者の一人である夜伽ノ陽登美の娘であると判明した。

 

 

  

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 警視庁副総監である水戸部春偵〈みとべはるさだ〉は、山ほどの書類が棚に押し詰められた薄暗い部屋で、小さな机に置かれたその書類の文字に目を這わせていた所だった。

 

 彼の背後で扉が開き、自分が面倒を見ている部下である男が部屋に入ってくる。

 

「あ、水戸部さん。……あぁ、またその事項に目を通しているんですか?」

 

 捜査課の警部、荻原椋穂〈おぎわらりょうすい〉は呆れた苦笑いを浮かべる。

 

 憮然とするでも、釈然としない様子で眉を寄せるでもなく、水戸部副総監は無表情のまま振り向いた。

 片手に薄く纏められた簡易書類をヒラヒラとさせているが、まだまだ元気な毛髪と肉付きの良い顔、酒を多く取りすぎる膨らみ出た腹は部下の方へと向いていた。

 

「面白い事故……いや、事件だよ、これは」

 

 しかしそう言う水戸部副総監の顔は笑っていない。

 だが険しい訳でもない。

 

 荻原警部はいつも、自分の上司でありながら酒飲み仲間である彼の考えている事が、時々分からなくなる。

 謎を多く秘めた事件が発生し、その件の担当が回ってきた時など、特にだ。

 

「面白いなんて言ったら、被害者の人達に可愛そうじゃないですか。いくらなんでも、不謹慎ですよ」

「被害者と言っても、死亡したのは犯人の二人の方だ。別に構わないじゃないか」

「そういえば……」

 

 荻原警部は顎に手を当て、目を細くし、書類に記載される一つの名前に注目する。

 

「被害者の、夜伽ノという女性……数年前に亡くなっていますよね」

「事件とは関連のない場所でな。病気を患っていたと聞いた。まったく、西木野総合病院に世話をしてもらっていたというのに、何と不幸な女性だよ」

「夫はプロ野球選手、それも海外からのお誘いも話に出た程の有名選手……収入に問題はありませんが、残された子供にとっては残酷なものですよね」

 

 彼ら二人は警察だ。

 今まで幾度となく、似たような境遇に合ったいる人間を幾人とも見てきた。

 だがやはり、辛いものは辛い思いがある。

 

 しかし、水戸部副総監は意気揚々とした声で、ご機嫌の良いような表情で言った。

 

「いや、彼女はそんな貧弱ではないさ」

「……被害者の娘さん?」

「そうとも、名前を夜伽ノ美雪……私は事件当時、彼女と対面して会話をしたんだ」

 

 副総監は書類を机に置き、長袖シャツを肩まで捲り上げた太い両腕を胸の前で組む。

 

「その時の彼女、何て言ったと思う」

 

 その質問に、荻原警部は思考を回した。

 

 怖い経験をして泣き喚いた?

 自分のしでかした事に恐れ、腰を抜かした?

 初めて人の死体を目の当たりにして、ただ茫然自失となった?

 

 水戸部副総監の口から出た言葉は、そのどれにも当てはまらない。

 

「彼女は、まだあどけなさの残る顔でこう言ったさ……『あいつら二人を殺してやった事に後悔はしていない、ましてや罪悪感などまったく感じていない。むしろ人を殺めたこの感触が心地良い程だ』――とね」

 

 警部は、その夜伽ノ美雪という人物の顔を見た事がない。

 しかしその、残虐を極める悪人のセリフは、彼の背筋に冷たいものを流させた。

 

「『癖になりそうだ』……とも言っていたかなぁ」

 

 クツクツと。

 副総監は太い喉で笑いを立てる。

 

「できる事なら、もう一度逢ってみたいな……彼女があの後、どういう生活を送ってきているのか、是非この目で拝見したい」

 

 水戸部副総監の細い目は、まるでテレビの中で活躍するスーパーヒーローに憧れる子供のような、輝く眼差しをしていた。

 

 そんな彼に、荻原警部は静かに思う。

 

 ――もしかすると、その願いはきっと叶うのだろう。

 

 だが、と。

 彼は心で呟いた。

 

 ――その時はきっと、お互いは真正面から対面できる取調室の椅子に座っているんだ。 

 

 その日は近いのか、遠いのか。

 あるいは永遠と訪れない場面なのか。

 

 これ以上、面倒事を増やさないでくれ、俺はこの上司にどこまでも付いて行かなきゃならないのだから――。

 

 荻原警部は、切に願う。

 

 

 




 じょじょに、じょじょに主人公の過去が明かされていくスタイル、僕は好きです。

 そういえば、友人から前にこんな事を言われました。

「就職いい学部を蹴ってくスタイル嫌いじゃないよ」

 将来の事と真面目に向き合わなければ。
 僕にそう思わせた彼からの一言でしたね。

 次回もよろしくお願いします!
「さっさと主人公の話進めてくんね?」という意見があれば感想欄でください!
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