笑顔を咲かせた少女は紛れもなく…   作:西部荒野に彷徨う海賊

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 そして我は明後日から中間テスト――かーやんなりますね!
 
 しかしそんな事は些細な問題でしょう。
 中間なんて範囲が狭いので平均点は取れるので……はい、どうでもいいですね分かります。

 それでは今回もよろしくお願いします!




43話 別荘での夜-幼馴染みの三人

 昔の日。

 

 木の幹やら住宅街の電柱、電線やらから数羽のカラスが飛び去り、ギャアギャアと五月蠅く鳴きながら、茜色の夕焼け空を背景に羽を舞わせている。

 

 そんな夕陽のオレンジが輝く空の下。

 

 三人の女の子が――小学生くらいだろうか――肩を並ばせながら歩いていた。

 

 しかしどこか、様子がおかしい。

 

「海未ちゃんの分からず屋!」

「分からず屋なのは穂乃果ですぅ!」

「あわわ……や、やめてよ穂乃果ちゃん、海未ちゃん……」

 

 短いオレンジ髪をサイドに纏めた可愛らしい顔立ちの女の子と、濃いめの青髪をストレートに伸ばした幼いながらも少し凛々しく顔立ちの整った女の子が言い争いをしているようだ。

 方やプンプンと頬を膨らませ、方やあどけない顔には似合わない鋭い瞳を若干だが潤ませている。

 

「ことり! あなたはどちらが悪いと思いますか!?」

「絶対に穂乃果は間違ってないよねことりちゃん!」

「ふ、ふえぇ……」

 

 二人の少女、高坂穂乃果と園田海未の両者から迫られ、二人の一歩後を歩いていた南ことりはオロオロとたじろいでいる様子だ。

 

「と、とりあえず喧嘩はやめてよぉ……わたしたち友達なんだからぁ……」

 

 互いを睨み付け合う親友二人の姿に、南ことりは思わず涙ぐむ。

 自分の大切な存在である人達がいがみ合い、心を傷つけ合う姿など、彼女にとっては耐え難い光景だった。

 

「謝ってよ海未ちゃん!」

「穂乃果こそ、謝ってください! まぁ謝られても許しませんけどね!」

 

 そしてこの頃の園田海未は、まだ子供すぎた。

 

 望んでもないつまらない意地を張ってしまう、そんな心情へ引っ張られる磁石が心にあったのだ。

 

 その言葉は、高坂穂乃果の顔をさらに紅くさせる。

 

「~~~っ!! も、もう怒ったんだからあ! 海未ちゃんなんて……海未ちゃんなんて、もう――」

 

 その先の言葉は、言ってはならないと自覚はあった。

 心の内に生まれたそれは、喉の奥に詰まらせているまでが限界だと。

 

 しかし、そんな制止の感情は子供が器用に操れるものではない。

 

「もう、友達じゃ――」

 

 南ことりの顔が、その一瞬で怯えるように青ざめた。

 園田海未の子供ながらに綺麗な双眸が大きく開かれる。

 

 そんな時だった。

 

 

「あなた達、何をしているの?」

 

 

 そんな、あどけない声。

 透明ガラス造りで綺麗に磨かれた水晶玉を連想させるような澄んだ声。

 三人の耳に滑り込み、彼女らは住宅が並ぶその道で首を回す。

 

 目の前には、いつの間にこんな近くまで歩いて来たのだろうかと思える距離に、一つの人影。

 

 両手を後ろに組んで、両脚を控えめに開いて道の中央に立っているその人物。

 

 濡れたように真っ黒な髪は繊細な艶を放ち、長さは腰の辺りまで伸ばされている。

 極度までの眼前に迫ったとしても、小さな染みの一つも見つからないとも思える透き通った白い肌。

 日本人らしい、真っ黒な瞳は直視していれば吸い込まれそうな闇があるかのように思えるが、それでいて色の濃さやみずみずしさは安心感さえ覚える。

 

 可愛らしい、紫色の薔薇柄がいくつも入った裾の長いワンピースを着ているその少女は、彼女らと同学年のように見えた。

 

 だが妙に大人っぽい口調で、その少女は彼女達三人に言う。

 

「何を言い争っているのかしら? まぁ見た所、あなた達三人は仲良しこよしの三人なのでしょ?」

 

 知ったかのように彼女は言う。

 

 まるでアメリカンヒーローのように突然と登場した存在に、真っ先に怪訝を表情に浮かべたのは園田海未だった。

 

「……あなたは?」

 

 少女は、本当に子供なのかと疑いを持たれてもおかしくないような、非常に妖艶な笑みで目を細める。

 

「わたし? 別にわたしの事はどうでもいいじゃない」

 

 無茶苦茶な返答だろうと思う。

 

 だが子供からの視点からすれば、初対面の妙に大人びた人が相手なら、その程度の言葉で言いくるめられるものだ。

 

「それで、どんな意見の互い違いでそんな醜い争いに発展しちゃったのかしら?」

 

 他人グループへの土足での介入。

 これほど愚かで礼儀のなってない行為ほどあるだろうか。

 

 しかしそんな事は些細なものだ。

 喧嘩である事の発端と同じものなのだ。

 

 故に、意識しようがしまいが高坂穂乃果は口にする。

 

「聞いてよ! 海未ちゃんが――」

 

 しかし、それを最後まで言わせる事は賢明ではない。

 

 少女は賢かった。

 聡明でこの世を生き残れる訳でもないが、しかし少女は生まれてからの正義でもあった。

 

 世界で困り果てている人、苦痛に苦しむ人、飢餓に倒れる人などを全て助け出したいと心から思える程のスーパーヒーローではない。

 それを実現できる叡知のモノを頭脳に携えている訳でもない。

 

 だが、彼女は正義でありたいと思っていた。

 

 棒付きの丸い飴を二つ取り出し、その一つを口を開けた高坂穂乃果の舌にねじ込む。

 

「んむぅ!?」

 

 高坂穂乃果はギョッと目を剥き、それでも棒付き飴を口に咥える。

 

「ほ、穂乃果!?」

 

 何事かと、海未も驚いた様子で声を出す。

 

 少女は、その隙を見逃さなかった。

 

 残る一つの飴を彼女の口に入れ込んだ。

 

「むっ!?」

 

 

「……んまい」

「……おいしいです」

 

 

 所詮、子供だ。

 小学校低学年だ。

 

 見透かした笑みを浮かべる少女は、次に彼女らの傍らで涙ぐむ南ことりに近寄る。

 

「偉いわね」

「……え?」

 

 例えるなら、天使の微笑み。

 どんなクソ汚い所業を犯した悪漢相手でも、心からの慈悲でもって全ての悪事を許すかのような、そんな深さと暖かさがあった。

 

 無論、少女にそんな意識はない。

 

 全くの真逆の意味で、、少女はどこからか取り出した棒アイスの袋を開け、南ことりに手渡す。

 

「よく、泣かなかったわ」

 

 涙を流さなかったという意味だろう。

 すでに南ことりの両目には、表面張力のように涙が溜まっている。

 

「……ね、ねぇ海未ちゃん」

「あの、穂乃果……」

 

 声が、重なる。

 

 お互いに顔を見合わせ、もう一人をも加えた幼馴染みは笑い合った。

 

 安堵の声で。

 緩む頬を撫であって。

 

 ふと、彼女らは振り向く。

 

 すでに、黒髪の少女の姿はなかった――。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 合宿の夜。

 

 高坂穂乃果が言い出しっぺという事で、自分の昔の思い出話は彼女からという事になった。

 

 と言っても、彼女の幼馴染みである南ことりと園田海未が同時参加という流れになったが。

 

「幼稚園の頃だよね~。わたしとことりちゃんが公園で遊んでるとね、木の陰に隠れてずっとこっちを見てる女の子がいるんだよね~」

「それが、海未ちゃんだったんだよ」

「あの時から海未ちゃん、人見知りで恥ずかしがり屋だったもんね~」

「や、やめてください……その話は……っ」

 

 しかし聞いてみれば、さっきから園田海未の羞恥溢れる赤面話ばかりだ。

 

「そんな事を言ったら、穂乃果だって小学六年生までお漏らししてたじゃないですか!」

「う、海未ちゃん! それはNGだよ!?」

 

 聞けば高坂穂乃果にもそういった恥辱なものである過去の産物があるようだ。

 その辺り、南ことりにはそういった類の話題は見当たらない。

 

 布団に横になりながら夜伽ノ美雪も、文句を言っていた絢瀬絵里や西木野真姫も何だかんだ三人の話に耳を向けていた。

 

「そういえば海未ちゃんと会ってからだよね。わたしも初めて穂乃果ちゃん家のお饅頭を食べたの」

「確かにそうですね……三人で、穂乃果の部屋のテーブルを囲んで食べた和菓子はとても美味しかったです」

「海未ちゃん、わたしのお父さんに深いお辞儀してお礼してたもんね。『あれほどまでの美味しいものをありがとうございます』とか何とか言って」

「穂乃果ちゃんのお父さん、無表情だったけどすごく嬉しそうだったよね」

 

 三人にとって高坂家の和菓子――その代表作でもある『ほむまん』は深く馴染みのある一品だ。

 

 ほっぺが落ちそうなほど美味しいと海未が言えば、海未ちゃんのお顔が崩れて死んじゃう~とことりが喚いていたという話も聞いた。

 

「ことりは昔から可愛い衣装を集めたりするのが好きでしたよね」

「あ~、確かに」

「え? そうかな?」

 

 南ことりは、昔から綺麗なドレスのような、派手な装飾が施された衣装をコレクトするのが趣味だったらしい。

 

 当然、その趣味は集めるだけのコレクターではない。

 服というものは着るものだ。収集しただけタンスに仕舞い込んだままにしていれば、きっといつか衣服が泣く。

 

 南ことりの趣味は、少し違ったものらしい。

 

「昔から、私達を着せ替え人形にして遊んでましたね」

「あぁ、うん……本当にあの当時は大変だったよね」

 

 どうやら園田海未と高坂穂乃果にとって、それはあまり良い思い出ではないようだ。

 

 当の南ことりと言えば……。

 

「えへへ~、あの時は本当に楽しかったな~。穂乃果ちゃんも海未ちゃんもとっても可愛かったし……」

 

 そのうっとりとした彼女のとろける表情に、メンバー全員が若干引く。

 

「ことりちゃん……昔からそうだったんだにゃ」

「何か、薄々私達の着る衣装とかで楽しんでいる感じはあったけど」

 

 星空凛と矢澤にこが引き攣った頬をピクピクとさせ、しかし笑えない様子で言った。

 

「そういえば、前に三人で海未ちゃん家に泊まった日の朝……あの時は酷かったよね」

「確か……小学四年生の時だっけ?」

 

「……何かありましたっけ?」

「……」

「……」

 

 園田海未の家。

 

 それは皆が知っているように、昔から代々続く武門の家。

 

 園田海未は武門の娘。

 昔、園田とかいう性を持った侍が天下無双を極めたとかいう話を聞いた事を、夜伽ノ美雪は頭に思い出していた。

 

 聞けば、高坂穂乃果と南ことりが園田家に宿泊した際、翌日の早朝から園田海未の母親から叩き起こされ、家の玄関から広い道場までの雑巾がけ――さらには園田海未に巻き込まれるように、園田家現当主から直々の剣道稽古を指南されたという事だ。

 これがまた、きつかったのだと。

 

「……スピリチュアルやね」

「私なら絶対に堪えられません……っ」

 

 東條希と小泉花陽が戦慄の表情を浮かべる。

 他の者も全員、「絶対に海未の家には泊まらない」と物語る顔色をしていた。

 

「あとはまぁ……穂乃果が夏休みの課題を終わらせてくれなかったり……」

「遊園地とか水族館には何度も遊びに行ったよね」

 

 次々と。

 園田海未や南ことりの口からは、終わりの見えない思い出話が飛び出してくる。

 

 本当に仲が良い。

 

 メンバー全員がそう思った。

 同じ幼馴染みという関係でもある星空凛と小泉花陽でさえ、その勢いには遅れを感じさせるものがある。

 

「でもねぇ……」

 

 そんな感じに、人指し指を口元に当てて高坂穂乃果は言う。

 

「でもやっぱり、一番の思い出は……木の上に登って降りられなくなったあの日かなぁ」

 

 彼女の言葉に、南ことりと園田海未は思わず、といった風にクスリと笑った。

 

「木に登って降りられなくなった? ……何で、そんな事が一番の思いでなのよ?」

「そんなに怖かったの?」

 

 西木野真姫と星空凛が不思議そうに顔を向ける。

 

「怖かったよ……怖かったけどね、その時――とっても綺麗な夕焼けの景色が見えたんだよ」

「高い木の上からだったから、夕陽が大きく見えたんだよねぇ」

「あの時は本当に死を覚悟しましたが、それが思わず頭から離れてしまうほどの絶景でしたね」

 

 都会によくある高層ビルから一望できるイルミネーションの夜景とはまた違う、価値のあるものだったと。

 そう三人は話している。

 

 思いに耽るように、高坂穂乃果は言ったのだ。

 

「わたし達、ずっと一緒だったんだね」

 

 当たり前だと。

 当たり前すぎて忘れていたと。

 これからもきっとそうなのだと。

 

 三人の少女は、幼かったあの頃と全く変わらない笑顔で頷きあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 して、夜伽ノ美雪は思う。

 

 

 この気持ちは何だ、と。

 

 

 

 

 




 悶絶するような尿意に堪えながら「これだけは打ち込んで終わらせる」という気迫で書いているなう笑

 さて、次回は希ちゃんメインとなります。

 タグにも『オリジナル設定』と付けてありますが、アニメで放送された各キャラクターの過去編物語とは異なった場合があるのでご了承ください。

 それでは次回もよろしくお願いします!
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