笑顔を咲かせた少女は紛れもなく…   作:西部荒野に彷徨う海賊

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  ちょっと主人公の出番が減っているかもしれません。
 μ'sのみんなが主体となった回になっています。
 まだまだ素人の作品ですがよろしくお願いします!




3話 唐突な勧誘

「ま、マネージャーが……必要なんです……っ」

 

 アイドル研究部の部室。

 一台のノートパソコンを目の前に、威圧に押し潰されてそうな苦悶に満ちた声で小泉花陽はそう言った。

 彼女の後ろからPC画面を覗き込む七人は揃いも揃って「うわぁ……」という表情を浮かべている。

 

 そんな彼女らに、部長席に腰掛ける矢澤にこが鼻を鳴らしながら言う。

 

「まぁ、当然よね。マネージャーは顧問の代わりみたいなもんよ。他のアイドルグループ――もちろんA―RISEにだってマネージャーがいるわ」

 

 彼女の言葉にすぐさま反応したのは、この音ノ木坂のアイドルグループを立ち上げた創設者と言っても過言ではない、μ'sの太陽――高坂穂乃果だ。

 

「うっそ!? そんなの初めて知ったよ! それじゃ誰か、協力してくれる先生を見つけないといけないの!?」

「いや、穂乃果。ステージに上がって踊るスクールアイドル以外のマネージャーっていう肩書きさえあれば、その学校の生徒でも構わないらしいわ」

 

 絢瀬絵里は真面目な顔つきで、小泉花陽の肩から腕を伸ばしてマウスを操作しながらそう言った。

 

「ちゅう事はあと一人、うちらのメンバーに勧誘せなあかんという事やね」

「そういう事だよね……」

 

 東條希が腕を組みながら言うと、いつもにこにこ笑顔の南ことりが珍しい重たい表情で答えた。

 

 それもそうだろう。絢瀬絵里と東條希、この二人の生徒会組がメンバーに加入すると決意するのにそう時間はかからなかったのだが、それ以前に小泉花陽や西木野真姫、矢澤にこを説得するのにある程度の日数がかかっていた。

 

 あと一人――いったい誰を……と、皆が思っていた。

 

「でも、逆に考えればあと一人だよ? 案外すぐに候補者が見つかってくれるかもしれないにゃ」

「だといいんだけどね」

 

 脳天気な星空凛の言葉に、西木野真姫は素っ気なく返事する。

 

 星空凛は親友である小泉花陽が加入するからという理由でμ'sに入ったのだ。

 それから同学年の西木野真姫という友達も見つけられて全てが上々に出来上がってしまっている彼女にとっては、今回の問題もすぐに解決するだろうと思っているのだ。

 

「どなたか、マネージャーを引き受けてくれそうな人に心当たりは……」

 

 青がかったストレートヘアの園田海未が全員の顔を見回しながら尋ねるが。

 

「三年生は受験があるし、あまりみんなに負担をかけたくないのよね」

「一年も期待できないわね。一クラスしかないからよく分かるんだけれど、みんな仕方がなく音ノ木坂に来たっていう人が多くて……そんなに積極的じゃないのよ」

 

 絢瀬絵里と西木野真姫がそう言った。

 

 三年には受験がある。

 これは誰もが分かっている事だ。受験生に「アイドルグループのマネージャーをやってみませんか?」と尋ねた所で返って来る答えは見えている。

 

 絢瀬絵里と東條希はこの学園を閉鎖されたくないが為に、このスクールアイドルの話に乗ったのだ。

 こんな無茶なお願いを引き受けてくれる受験生など、彼女達を最後にもう売り切れ状態なのだ。

 

 一年生だって、言われてみれば確かにそうだろう。

 UTX学院に行きたかったが、偏差値やお金の問題などでそれが叶わず、仕方がなく音ノ木坂に流れてきたというようなものばかりだ。彼女らも心のどこかで、音ノ木坂でのスクールアイドルなんてたかが知れているとでも思っているのだろう。

 

 高坂穂乃果、園田海未、南ことり。

 彼女達三人の、講堂で行われたファーストライブの観客動員数がそれを物語っている。

 

「ならもう、わたし達の学年で探すしかないよね海未ちゃん! ことりちゃん!」

 

 部室に漂うどこか落ち込みムードを振り払うように、高坂穂乃果がそう切り出した。

 彼女の幼馴染みである園田海未、また南ことり。

 まるで高坂穂乃果がそう言い出すのを待っていたかのように、彼女らは即座に首を縦に振る。

 

「はい。ここまで来たんです。こうなったら最後までとことん付き合いますよ穂乃果」

「そうだね、頑張ろう穂乃果ちゃん!」

 

 高坂穂乃果には、いつも救われる。

 

 彼女がいればいつでも明るく、どんな状況でも立ち上がれるかもしれない。

 そんな想いを、八人の少女達は意識せずとも心のどこかでそう思っていた。

 まだ出会って日は浅いが、高坂穂乃果という女の子なら何かをやらかしてくれる。

 もちろん、それは良い意味で。

 

 だから、

 

「頼んだわよ、三人とも」

 

 かつて敵対心剥き出しに迫っていた矢澤にこも、笑顔で彼女を送り出せる。

 

 部長の命令を受け、二年生組の三人は思わずビシッと敬礼を示した。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 しかし予想に反して、高坂穂乃果は苦戦する。

 

「ごめ~ん、あたし放課後は習い事で忙しくって」

「あ~、私、そういうのはちょっと苦手かもな~」

「え、嫌だ」

「ごめん穂乃果、うちってそういう責任重そうな仕事はできないんだよね……」

 

 クラス全滅である。

 隣のクラスを園田海未と南ことりが当たっているが、ほぼ半壊状態らしい。

 

「むむむ……」

 

 高坂穂乃果は素直に、やばい、と感じていた。

 

 マネージャーの資格は同じ学校の教員か生徒である事。

 

 クラスは全滅。

 何人か教員にも頼ってみたのだが、廃校寸前で後始末に追われる先生諸君にそんな暇はないのだと突き返される始末だ。

 

「やばいよ~。まさかこんな所で躓くなんて……『ラブライブ』への道のりが長い……」

 

 ラブライブ。

 

 高坂穂乃果らが目標とする、スクールアイドル達の夢の舞台。地域の予選を勝ち抜いた女子高生達が上がれるという幻のステージ。

 

 もしかすれば。

 

 その舞台に自分達が上がる事ができれば、音ノ木坂学園の廃校もなくなるのではないか。入学希望者が増えるのではないかと考えていた高坂穂乃果だが……。

 

 さて、状況が変わった。

 

「うぅ、どうしよ……にこちゃん達もきっとわたし達に期待してるだろうし……」

 

 彼女が似合わないしょんぼりとした表情で廊下をとぼとぼ歩いていると、自分の名前を呼ぶ声が前方から聞こえた。

 

「海未ちゃん、ことりちゃん……」

 

 本当にらしくない、落胆しきった声が高坂穂乃果の口から漏れる。

 

「こっちは駄目だったよ。クラスのみんなには全員断られちゃった」

 

 いつもパワフルでやかましい程に元気なはずの幼馴染みの曇った顔を見て、園田海未も南ことりも申し訳なさそうに言う。

 

「すみません穂乃果……こちらも二クラスほど回ってきたのですが……」

「誰も引き受けてくれなかったよ……」

 

 三人の少女は無人の廊下の真ん中で佇むように黙り込んでしまった。

 

 さて、彼女ら。

 これからどうしたものか。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 ……え。

 何、あの雰囲気。

 

「……喧嘩でもしたンかねェ」

 

 思わず、声に出してしまった。

 仕方がないだろう。放課後、スマホを忘れたのに気づいて教室まで取りに戻ろうとしたら……。

 あいつら、教室の前で何底の知れない程の深淵な雰囲気を醸し出しちゃってくれてんの。超近寄りにくいじゃねぇか。

 

 俺は思わず考え込んだ。

 

 まず、あの三人の女子生徒には近づきたくない。

 てか近づかない。コレは必須条件だ。とするとどうやって教室に入ればいい。

 

 スマホは諦めて引き返すというのも一つの手だが、正直、携帯がないと困る。

『あいつ』と連絡が取れないからだ。

 やはりスマホは必要だ。

 

 だとすると手段はあいつらがあの場から立ち去ってくれるのを待機するしかない。

 だがなるべく家には早く帰りたい。いつまでも学校なんていう監獄に閉じ込められていたら気が滅入っちまいそうだ。

 

 かと言って喧嘩中のお友達同士の間を無言で通り抜けるってのもお互い良くないだろう。

 向こうも俺も気まずい感じになっちまう。

 

 ……ん?

 

 そういえば……ちょっと待てよ。

 一人は背中を向いているから分からねぇが、あの髪の長い二人の女子生徒……どっかで見かけたような……校舎内じゃないどこかで……。

 

 そんな時。

 

 沈思黙考を貫いていた俺は、自分の肩から学生鞄が滑り落ちていくのに反応できなかった。

 

 ――ボスッ。

 

 その音に、三人の女子生徒達が視線を俺の方に向ける。

 

 ……やらかした。

 

「あれ? あなた……」

 

 ふと。

 振り向いたオレンジ髪をサイドに縛る女子生徒が、距離は遠いながらも俺の顔をまじまじと見つめる。

 

「あれ? いやでも……んん~?」

 

 今度は食い入るように見つめてきた。

 するとなぜかジリジリと間を詰めるように歩み寄ってくる。

 

「――っ! ほ、穂乃果! いけません!」

「穂乃果ちゃん!」

 

 奥に立っていた二人が制止の声をかける。

 だが構わずそれを無視してサイドテールの女子生徒は俺に接近し、一秒ともしない間に顔を俺の鼻先までに近寄らせてきた。

 

「うおっ、なン――」

「うわぁっ、やっぱりだよ!」

 

 先程の雰囲気とは打って変わって、彼女は満面の笑みでそう叫んだ。

 

「覚えてる!? ほら、昨日わたしが余所見しててぶつかっちゃって!」

 

 いきなり何を言い出すかと思えば――。

 と、そこで俺は思い出した。

 

『いや~ほんとごめんなさい。わたし、結構鈍臭くて、よく言われるんですよ~』

 

 そうだ、こいつ。

 あの時の。

 

「あ、あァ……そういや同じ学校だッたンだよな……」

「いやあびっくりですよ! まさか同じ学校だったなんて! いやいやこんな偶然ってあるんですね~!」

 

 そう言って彼女は。

 俺の手を……握ってきた。

 

 

「――――ッッッ!?」

 

 

 瞬間、俺の頭は真っ白になり、

 

 

 

 

「やめろ――ッッッ!!」

 

 

 

 

 一瞬後には、俺は叱咤と共に彼女の手を振り払っていた。

 

「穂乃果!」

 

 まず駆け寄ってきたのが青がかった長い髪の女子生徒だった。

 彼女は友人を庇うように前に出て、警戒の目つきで俺を睨んでいる。

 

 ……何だよ、さっきまで喧嘩していたと思ってたのは俺の気のせいか。

 もう一人、薄い茶髪の女子生徒は『穂乃果』と呼ばれた少女の肩に手を置き、

 

「ほ、穂乃果ちゃん……、平気?」

 

 と心配そうな眼差しをしている。

 

 数秒、呆気に取られたように口を開けて固まっていた『穂乃果』という少女は、すぐさま頭を掻きながらてへへと笑った。

 

「いや~ゴメンなさい。いきなり触られるのはちょっと嫌でしたよね」

 

 いや……、違う。

 お前が謝る事じゃない。

 

 そうは思ったが、口に出たのは自分でも憎たらしいと思える舌打ち一つ。

 青色の髪の女子生徒の目の色が変わったのがよく分かった。

 

「……友達思いな事で」

 

 聞こえたか聞こえなかったか。

 どっちでもいいが、とにかくそう言ってやりたかった。

 

 呟いた後、俺は歩いて教室に入り、机上に起きっぱなしにしていたスマホをポケットにしまい、また教室を出る。

 

 ……これなら、あのまま黙って引き返した方が遥かに良かったな。

 

 冷たく尖った視線に追われながら、俺は再び彼女達を追い抜き、廊下を歩いていった。

 

「あのっ!」

 

 声に、また俺は立ち止まる。

 

「お名前、教えてくれませんか!? わたし、高坂穂乃果っていうんです!」

 

 振り返ると、先程俺に乱暴な仕打ちを受けたばかりの女子生徒がそう叫んでいた。

 

 隣を囲む二人は驚いて言葉も出ないといった様子だった。

 

 名前を教える程、お互い話した仲ではない。

 だが相手から名乗られては、仲だの義理だの言っている場合ではないだろう。

 

「夜伽ノ……美雪」

 

 本当は、自分では口にしたくない名前。

 

「美雪さん!」

 

 容赦なく、高坂穂乃果はそう呼んだ。

 

「わたし達、μ'sと一緒にラブライブへ出場しませんか!!」

 

 ……ほらな、俺の思った通りじゃねぇか。

 誰とでも友達になろうとする……苦手なタイプだ。

 

 






書きながらストーリーの構成を考える。
これってやっぱり頭の良い人にしかできないと思うんですよ。
 小説って、ほんと難しいです。

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