略して「俺模試!!」
……はい、すみません調子乗ってました。
そして今回も無事に投稿できました!嬉しいです!
もう中間考査や模試の結果なんて彼方の果てまで忘れ去れるほど嬉しく、また達成感があります!
今回もどうかよろしくお願いします!
……ま、後で担任に人生相談を依頼しよっと。
あぁ、依頼と言えば真っ先に思いつくのが奉仕部ですね、俺ガイルの!
奉仕部が実際に存在したら何度いr――(長くなりそうなので割愛)
人間の本質を「遊び」に見出し、有名な著書『ホモ・ルーデンス』を執筆したオランダの歴史学者、ヨハン・ホイジンガは言った。
人間を表わす言葉として『ホモ・サピエンス』、あるいは『ホモ・ファーベル』という言葉が用いられるが、その両方とも、人間の本質を表わす言葉としては不十分である。
そう述べる彼は後に、「遊び」こそが人間の本質をより多く示唆していると、『ホモ・ルーデンス』――「遊ぶ人」という言葉を提唱する。
遊びというものは楽しく面白いもので、人間は子供の頃に誰もがその原初的な経験を持っている。
それはコミュニケーションの道具であれば、言葉を話さなくとも心を通じ合わせる事を可能とする手段でもあるのだ。
無論、ただ一言で遊びと言っても種類というものが存在している。
世の中の万物、種類や分類という名のつかない存在は地球が誕生した後から実現不可能な話であり、今後とも出現よろしくという話は耳にしないだろう。
感覚的な遊び。
模倣的な遊び。
空想、妄想的な遊び。
規則を遵守した上での遊び。
また遊びというものは意味を持つ。
先程と同様、世の万物に意味を持たない、また示さない、表さないものというものも見つける方が一苦労だろう。
何かしらの使用用途や活用表現さえ見出せさえすれば、それは必然的に明確な意味と役割を担う。
それは原始時代から現代までの間で変化する事はなかったはずだ。
また、現代では社会的な意味合いが多種多様に広がっているだろう。
傍観遊び。
平行遊び。
協同遊び。
一人遊び。
連合遊び。
中でも協同遊びというものは社会的に最重要視される種類の一つだ。
社会には一匹狼の一人遊びが通用する理論に限度が存在する。
いかに周囲と連携し、共に共通の目標へと向かって作業を行い、道を走っていけるかという事が、現代社会のご時世に必要不可欠とされる題目だ。
ヨハン・ホイジンガはこう説いた。
「遊び」は人間の本質を表わす重要なファクターである。そして同時に人間――主に子供達にとって発達の原動力となるものである。
また、日本でも有名な心身発育評論家でもある、一人の経済学者はこう言った。
遊びという行動が特に発揮されるのが幼少な子供である。
子供の発育を妨害しようと壁になる者はいないだろう。
故に人は、子供の遊びを邪魔してはいけないのだ。
言語記憶や演算方式はおろか、人の基本である挨拶すらできずにいる癖、外で無邪気にはしゃぎ回り、遊び呆ける子供を叱り付けるという事は論外だろう。
いくら歳も幼く背丈も低い子供であろうと、彼ら彼女らは独自とした存在。
決して気ままに放牧された家畜や雑貨店の商品棚に並ぶ品物などではないのだから。
確かにそうだろう――と。
俺は心の内側で頷いた。
見上げる程の背丈のヤシの木の側面に背中を付け、真夏の直射日光を避けるようにして影の中で一息つく。
「確かに成長の過程だけじゃなく、人間が社会に通用する為に遊びッてのは大事なもンなンだろうよ」
サンダルも履かない素足の両脚は影のお陰で熱を持たない黄土色の柔らかい砂地に埋もれている。
サングラスを額の上まで持ち上げ、膝下までの短パンのポケットに両手を突っ込んだ体勢で俺は眺めた。
「人は遊びを邪魔してはいけない……か」
寝不足の瞳は薄開きに覗き、その霞んだ視界には数人の少女らが映った。
無論、全員が見覚えの顔。
他人ではない。
他人ではないからこそ……。
「だからッてよォ……こりゃ……」
頬って置いてもいいのだろうか。
そう疑問を抱いてしまう。
「…………はァ」
ヤシの木から身体を離し、無防備な裸足を日向に灼かれた高熱の砂浜に差し向ける。
同時に脳天から全身にかけ、灼熱の太陽光が猛攻に襲いかかってきた。
家に帰りたい。
そんな事を思わずにいられない心境のまま、俺は小さな波が押し寄せてくる海辺沿いまで歩み寄った。
行き来する波が自分の踝まで浸かる程度の所で立ち止まり、両脚に心地良い潮海の感触を実感させながら、俺は声を上げる。
「おォい、お前ら」
眠気の混じる消えそうな声だった。
それでも直線的位置の向こうからは、元気一〇〇倍ナニパンマンなんですかという程の返事が返ってくる。
「どうしたのぉ~美雪ちゃ~ん!!」
「にゃ~~~!!」
穂乃果と凛だ。
空気で膨らませたイルカの浮き輪の背中に乗り、光の反射で輝き照らされる海に浮いている。
二人は別々の浮き輪に乗っていた。
穂乃果サイドにはことりとにこ、凛サイドには花陽と真姫が乗っかっていた。
三人も乗れたのか、あの浮き輪に。結構きつきつに詰めてんじゃねぇかアレ。
それぞれの三人は全員が水鉄砲を両手に構え、間隔を三メートル空かした具合に互いを睨み合っていた。
「よーっし三人とも! いっけぇぇぇ!!」
「頑張ろうね穂乃果ちゃん!」
「にこのラブニコ・ウォーターアタックの本気を見せてあげるわ!」
「凛達もやるにゃー!」
「ふぇえ……だ、誰か助けてぇぇぇ!!」
「んもう! いきなりこんな……あぁもう! やってやろうじゃない!」
それぞれが同時のタイミングで口々に言いながら、相手の三人組に狙いを定めて水鉄砲から海水を噴出させ始めた。
どうやら二チームに分かれたバトルを行っている様子だった。その光景は二隻の海賊船が砲弾を撃ち合っている場面を連想させる。
……って、そうじゃなかったな。
「おいお前ら、いい加減に練しゅ――」
「うぉおりゃああああああああああああああああああああああああ!!」
「にゃぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!」
……なるほど聞いちゃいねぇ。
ちなみにどういう経過を辿ってこういった場面に至っているかというと――。
それは実に簡単な話だ。
絵里や希、海未の三人が合宿期間の練習メニューの計画について最終的な決定を下ろす議論をしている内に、マネージャーである俺は残りのメンバーをまとめて準備体操終了まで行わせるようにと頼まれた。
ちょいと俺は来るのが遅かった。
リビングでのんびりとコーヒーの苦みを味わっている間に彼女らは砂浜でビーチボールを初め、外に出てきた俺がふと気づいたら奴らは海へと出掛けていた。
「うわっぷぅ!?」
「かよちん!? このっ――かよちんの仇!」
「待ってことりが撃ったはずなのにどうして私に銃口が向けられにこぉ!?」
「に、にこちゃん!」
……さて、どうするか。
このままじゃ時間だけが無駄に浪費されていく。
時間は朝食の後という事でまだ八時ちょい過ぎ。
学校生活で言えば未だ朝のホームルームすら始まっていない時間帯だ。
「ぴぃぃぃぃ!!」
「こ、ことりちゃぁぁぁん!! くっ、真姫ちゃん覚悟!!」
あぁ、ことりが海に落ちた。
……まさか溺れねぇよな? ことりだけに。
あぁ大丈夫だ、どうやら彼女らはまだ海に潜った砂地に足が届く場所にいるらしい。
「ヴェェェェェ!?」
「真姫ちゃ~~~ん!?」
すっげぇ、真姫が超変な声出しながらドボンした。傑作もんだな。
「とうとう……一発打ちだね、凛ちゃん」
「それを言うなら一騎突きだよ、穂乃果ちゃん」
馬鹿丸出しの二人組が戦慄の表情で自身の浮き輪に跨り、対峙している。
正しくは一騎打ちだ、馬鹿。
というかもう、ここは大人しく彼女らの遊び心の興奮した炎が鎮火するのを待つ方が得策かもしれん。
一度お互い海に落ちて頭を冷やさせてから、練習させよう。
……と、考えていたその時だった。
「これはどういう状況なのか説明してくれるかしら、美雪?」
背後から声がした。
それも炎天下の温度すら一瞬忘れ去れる程まで冷ややかに感じられた殺気じみた圧される声。
「……あァ、絵里か」
振り向くと、Rが表裏逆に記された(ラテン文字か何かだろうか?)袖なしのシャツを着ている絵里が立っている。
彼女は続きの言葉もなく静かなまま、俺の隣に並んだ。
……気のせいだろうか。
随分と表情が怖い。
昨夜に暴走した鬼の狂笑――園田海未覚醒バージョンとはまた違った種類の雰囲気を感じた。
「穂乃果! 凛!」
そう叫んだのは隣の絵里ではない。
別荘方面の砂浜から駆けてきた海未(正常バージョン)だった。
「何を遊んでいるのですか!! 準備体操を終えたら走り込みをしていなさいと言ったでしょう!! 真姫に花陽! ことりとにこまで何をしているのですか!」
怒鳴る海未に穂乃果はいつものように、また凛は海未の性格に慣れたのかケロッとして笑った。
「あはは。だって海なんて滅多に来られる所じゃないし、遊びたくて身体がウズウズしちゃうんだよー!」
「凛もこんな広くて綺麗な海を実際に見たのは初めてにゃー!」
「あ、あのお馬鹿コンビときたら……っ!」
握り締める拳を胸の前でプルプルと振るわせる海未。
「美雪。彼女達、準備体操やストレッチは終わらせたのかしら?」
ふと、隣の絵里が顔は向けずとも言葉だけを差し向けてきた。
「いや、まだ何にもやッちゃいねェ」
素直に俺は首を振った。
同時。
絵里は首を回してこちらに視線を向ける。
「何でよ? 準備体操だけはしておいてって言ったでしょう?」
――しょうがないだろ、あいつらがいつまで経っても海から上がらねぇんだから。
そう言い訳をしようとした。
だがその前にイルカの浮き輪を御輿のように肩に担いだ六人の彼女らが、それぞれ口々に言い合いながら浜辺へ上がってくる。
「り~ん~! あんたって奴は……私の顔面狙ったでしょう!!」
「かよちんを奈落の底へ突き落とした罪は重いにゃ」
「穂乃果……恨むわよ」
「勝負事は常に命の駆け引きがあるんだよ真姫ちゃん……っ」
「ぴぃぃぃ、怖かったよぉ……」
「だ、大丈夫ことりちゃん?」
……確かに。
遊びとは無駄なものではない。
逆に人生において必要でなければならないものだ。
彼女らは言い合い、また相手の心配を心掛ける。
水鉄砲合戦という幼稚な遊戯のお陰で、彼女ら六人の親密度はほんの少しでも上昇したに違いない。
マイナス方面へは傾かない。
いつかこの日の事をふとした事で脳裏に蘇らせ、笑いあえる。
数ヶ月後や数年後に、とあるきっかけによって懐かしい思い出に浸れる事ができるのだろう。
また、別問題として。
「あなた達、今まで何をしていたの?」
その輪に加わっていなかった者には、根本となるきっかけにすら出会えないでいる。
「まさかとは思うけれど、今まで何にもせずただふざけ合っていただけ?」
幼少時の反抗期――保護者はそれを『難しい年頃』だと呼ぶ。
それは幼少時代に限った話ではない。
高校三年生だってじゅうぶん面倒臭い年頃だ。
六人のメンバーを前に、厳格な表情で感情を抑えながらも僅か漏れるように露わとしている絢瀬絵里が良い例だろう。
生徒会長の圧し殺された鋭い声に、さすがの穂乃果や凛も笑っている場合ではなくなった。
「あ……え、絵里ちゃん?」
「ど、どうしたのかにゃ……?」
引き攣った無理した笑いを浮かべる二人の表情はじょじょに不安を帯びていくようだった。
構わず絵里は続ける。
「美雪だけに話した訳じゃない、しっかりとあなた達にも言っておいたじゃない。私達が合流するまでに身体をほぐしておく事――って」
倫理というカリキュラムが組まれていながら、人間の心理とはなぜこれほど単純なのだろうか。
高坂穂乃果も。
星空凛も。
絢瀬絵里も。
皆が皆、事前に組まれたレール路線を走るかのように言動をする。
何もそれは三人に限った事ではない。
人間誰しもそうなのかもしれない。
「真姫、あなたはもっとしっかりとした人でしょう。なぜ一緒になって遊んでいたのよ」
「あ、あたしは凛と穂乃果に無理矢理――」
「言い訳をしなさいと言ったんじゃないのよ」
「っ……」
俺の考えに否定的な意見を持つ人間はそりゃ多いだろう。
人間という種族は同じであろうと、性格が皆同様のものであれば世界は上手く機能し、戦争のない社会が誕生するだろうか。否か。
種類が違うのなら、思考のベクトルも四方八方だ。
「いい? よく聞きなさい。確かに私達チームの中で互いの距離感をなくす為に先輩禁止をしたけれども――」
……そういや今頃気づいたんだが、一年の真姫とか二年の海未って普通に三年の事は呼び捨てにしてたな。
で、何だその先輩禁止ってのは。俺がμ'sに加入する前にできたものだろうか。
「だからと言って協調性が薄れるというのは非情に良くないわ。なに? 私や希、海未が合宿の為の練習メニューを練っている間にあなた達はお気楽に遊び呆けていた訳? 少しでも早く練習を始めさせようとも、少しでも磨きのかかった出来具合にしようとも心せずにいつまでも呑気にダラダラと?」
……ここで、自分でもようやくと思える頃に。
何か変じゃないかと違和感を覚えた。
「そんな程度の気持ちで本気で学校を救おうと思っているの?」
穂乃果の肩がビクッと震えた。
先程まで彼女に叱咤を吠えていた海未でさえ、見張ったかのように絵里を凝視している。
「確かに路上ライブやオープンキャンパスでの発表は上手くいったわ、えぇ、上手く行きすぎている程にね。だからと言って次も安定のままとは限らないのよ、そこの所は理解できているの? それとも前回までが順調だったから気が抜けているのかしら?」
完全に静まり返っていた。
聞こえるのは絵里の説教と呼べるものだけ。
ついさっきまではしゃいでいた六人は俯くように一言も発しなかった。
「まだ、廃校の取りやめが決定した訳じゃないのよ」
それはとどめの一言か。
腕を組んで仁王立ちする絵里の表情に、俺はどこか懐かしさを感じていた。
何だ、この感覚――?
「エリち」
クイ、と。
いつの間にか合流していた希が絵里のシャツの裾を控えめに引っ張る。
「エリち、少し言い過ぎやで。みんな完全に萎縮してもうてるやん」
その言葉に、絵里はハッとして瞳を開かせた。
彼女が何か言おうと口を再び開きかけた時、一列に並んだ列からにこが飛び出す。
「確かに、悠長に構えすぎていたわ。それは謝る、ごめん」
意外だった。
矢澤にこという人間は、きっとこういう場面じゃ意地を張って謝るなんて事はせず、堂々あるいは憮然とした態度を貫くものだとばかり思っていたが。
「けど絵里、説教された側から生意気と思うかもしれないけれど、少し言い過ぎよ。アイドルに必要なのは笑顔であって、落ち込む表情や怒りの感情じゃない」
立場が回転するようだった。
俺はただ沈黙を守って突っ立っていただけだが、にこの言葉から感じられる雰囲気は明らかに説教側だというのを理解できた。
「え……えぇ、そうね。少し言い過ぎたわ」
先程とは打って変わった。
オロオロと視線を右往左往させながら両手を行き場なくウロウロさせる絵里は戸惑う様子で言葉を選ぶ。
「ただ、その……私は真面目に練習に打ち込みたかっただけと言うか……いえ、それでもあれは言い過ぎよね……ごめんなさい」
消え入りそうな声。
合宿二日目、正確に言えば練習開始の初日。
雲行きが早速不安になってきたかもしれない。
「ううん! 私達の方こそごめんなさい絵里ちゃん!」
突如、穂乃果が頭を下げる。
その態度には絵里はもちろん、周囲さえの注目を集めた。
「限られてる合宿期間はいつも以上に真剣に練習しようって事だったのに、穂乃果また、その場の雰囲気とか初めて見る光景に心が躍っちゃって……リーダーなのに、情けないよね」
「り、凛こそごめんさない!」
続くように凛も頭を下げる。
「凛が最初に遊ぼうって言い始めたから、みんなを巻き込んで、絵里ちゃんを怒らせちゃって……その、本当にごめんなさい!」
その真摯な態度――この場面での切り替えの早さはどうかと思うが――それには絵里も追い打ちはできない。
「ちょっ、頭を上げてよ二人とも!」
二人に直立させ、絵里は逆に申し訳なさそうに視線をずらした。
「私が言いたいのはつまり、やる時はやって遊ぶ時は遊ぶっていう、その……メリハリを付けてほしいってだけで……そんな事だけで、カッとなって言い過ぎたわ。私の方こそ、ごめんなさい」
「まぁ、あたし達も乗っかった訳だし、こっちこそ悪かったわ」
「は、花陽も……ごめんなさい!」
「ご、ごめんね絵里ちゃん……次からはもっとケジメを付けるから」
真姫、花陽、ことりも謝罪を済ます。
絵里もそれに答えた。
その光景に海未はどこか安堵の表情を浮かべて大きな息を吐き、希は後ろに手を組みながらわずかな笑みを見せていた。
パチンッ! と。
穂乃果が両手で自らの頬を挟むように叩く。
「それじゃ気を取り直して――みんなで練習始めよう!」
「……まずは準備体操からね」
苦笑を交えて絵里も頷いた。
……しかし。
俺も久々にハラハラしたかもしれない。
そう思った。
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「――よし、終わッた」
そう言って俺は薄型のノートパソコンを閉じ、ビーチチェアに寝そべった。
寝そべったと言ってもビーチチェアだから上半身がやや起き上がっている。缶のコーヒーを飲むのに何も支障はない。
「……美味い」
一仕事終えた後の達成感に浸りながら飲むブラックコーヒー――何と至福な一時だろうか。
『夏色えがおで1,2,Jump!!』
穂乃果が取り付けた題名のこの曲のPVを、俺はたった今、ネットに投稿した所だった。
歌は事前に録ってあった。
映像には希が撮影したメンバー全員が海で遊ぶシーンや砂浜を駆けるシーン、ビーチチェアとトロピカルジュースが四肢や雰囲気に調和しているシーンなどを使用した。
「さて、どれだけの閲覧者が来るか……」
しかしやってみれば意外と、PV動画の制作なんてものは簡単作業だ。
PC一つあれば何でも作れてしまう。便利な時代に生まれたものだ。
「投稿作業は終わったかしら?」
パラソルの影に人影が入る。
「あァ、絵里か。ちょうど終えた所だ」
「そう、良かったわ」
……あの、絵里さん?
自然な受け答えと共に自然な動作で俺の缶コーヒーを勝手に飲むのはやめていただけませんかね。
「……苦いチカ」
「こンのポンコツが」
向こうの砂浜ではメンバーがそれぞれの体勢で休息を取っていた。
砂浜に寝そべる穂乃果やスポーツドリンクを喉に流す真姫。暑さにやられたメンバーはいないかという目配りでキョロキョロ見回す希など。
ふと、俺は尋ねた。
「絵里」
「ん?」
「さッきは何であんなイライラしてたンだよ」
俺の質問に、絵里は特に目立った反応を示さなかった。
だが、あの時の彼女は確かにそういった様子だった。
何かに苛ついている。
感じ取った俺は結局の所、その起因の種を見極める事はできずにいた。
ただ単に練習そっちのけで遊び続けていたメンバーに怒ったのか。
何か別の原因があってそのストレスが八つ当たりという形で現れたのか。
人間の心理なんて簡単だと思っていたが……まだ難しいかもしれない。
または俺が今まで人と接触してこなかったツケが回って来たのか。
絵里はたっぷりと間を開けてからようやく答えた。
「別にイライラしていた訳じゃないわ。ちょっと、焦りを感じていただけよ」
何に対する――。
廃校問題。
協調性。
チームワーク。
個人的な将来。
数え出せば幅は広まる一方だろう。
答えを聞き出そうとする前に、絵里は言葉を続けた。
「けれど正直な話、彼女達はまだ危機感が足りてないのかもしれない」
しかし結果オーライ。
解答は求めずとも返ってきていた。
「廃校というものが廃止された訳じゃない。ただ様子見――いえ、正確には決定がほんの少し先延ばしにされたってだけで、どのみち今のままじゃ音ノ木坂学院はなくなるわ」
「まァそうだろうなァ。路上ライブからのオープンキャンパスで発表したライブがなけりゃ、廃校決定はとッくに決定案とされていたはずだァ」
同じ事をことりの母親――音ノ木坂の理事長が言っていた。
「遠慮もなく言うが、今の音ノ木坂の命運はお前らμ'sにかかッていると言ッても過言じゃねェだろうしよ」
「過言じゃないわ、本当にその通り」
少し間を開け、絵里は俯いて言う。
「生徒会じゃ、何にもできなかった訳なのだから……」
……分かり易い解答をどうも、と。
反射的な礼の言葉が喉奥まで出かかっていた。
確実ではない。
だが、今。
心が分かった。
絢瀬絵里は屈辱を感じているのかもしれない。
生徒会長という立場でありながら、廃校問題という壁に対して何の解決もできなかった事実に。
目の前の彼女はきっと考えている。
μ'sで、今度こそは――と。
一人では為し得なかった事を、みんなでやっていこう。
今度こそ、立ちはばかる問題を解決しよう。
彼女はきっとそう意気込んでいる。
故に、先程の態度だ。
そう考えれば実に簡単じゃないか。
「誰だ、最初に『難しい年頃』だなンて言い出した奴は」
ボソリと呟いた。
もちろん、絵里の耳には届かないように。
「……?」
ふと、視線を感じた。
他でもない、それは絵里からのものだった。
ビーチチェアの傍らに立つ彼女は視線を下ろして俺をジッと見つめている。
「……どうした」
動かない彼女を怪訝に思い、俺は声をかける。
特に何でもない反応だった。
わざとらしい瞳を不意に見上げ、離れた視線の先で休息を取りながら談論を広げているメンバー達の表情を見つめ始めた。
「……絵里?」
「――――」
彼女は一歩踏み出し、パラソルの影から日向に出る。
向こうに行くのかと思いきや、彼女はふと振り向いた。
「ねぇ、美雪」
絵里は言う。
その表情は笑っているのか、それとも無表情のままなのか。
それは逆光でよく認識できなかった。
しかし次の言葉こそ。
最も理解できない――その意味すら見出せず、言葉の生んだ万物に疑問を抱かせる一言だった。
「人間の心理ほど、世の中で不可思議なものなんてないんじゃない?」
フッ、と視界が暗くなる。
『過去の危険は人間が奴隷になる事だった。未来の危険は人間がロボットになるかもしれない事だ』
ドイツの社会心理学研究者であったエーリッヒ・フロムの言葉が、一瞬だけなぜか脳裏をよぎった。
今回も読んでくれてありがとうございます!
そして今日さっそく、僕は劇場版ラブライブ!を見に行きました!
とても面白かったです!
そこで一つ思った事があるのですが――。
僕(あれ……。こんな可愛い少女達が夢に向かって頑張っている良い物語なのに、何で自分は小説の中で血生臭い話を混ぜ込んでしまったのだろうか……? しかも後の展開次第じゃラブライブ!のメンバー達もその血生臭いお話に絡んでくるのよ? あれ? いいの? 僕はそれでいいの? ――あ、映画終わった)
――と、まぁいろいろ思いまして。
それでもやはり僕は鬱展開や残酷描写が好きという傾向がある(美少女キャラが関わっていれば尚更)という訳で……。
はい、関係の無い事喋りました!
けど劇場版を見たので今の僕はテンション上がっちゃってます(^^)
それでは次話もよろしくお願いします!