合宿編、結構長くなるかもな~、とここに来て思い始めた作者でした。
本編とは関係のないお話ですけど、『アカメが斬る!』ってアニメが非常にに印象に残っているのを覚えていますね。
お気に入りなのは当然23話のラストパートなんですが、ウルッてきましたね涙腺が。
帝具がもらえるなら僕はラバックが使用していたクローステールが欲しいな。
基本的な使用用途は満載ですし、自慢じゃないですけど僕はけっこう手先器用な方で――あれ、あまり関係ない?
まぁキャラで最も好きなのはアカメとタツミですけどね。
実は水浦竜三の名前ってアカメが斬る!の彼を参k――)割愛
それでは今回もよろしくお願いします!
午前の練習が終わり、一人練習を先に抜けて調理した俺作の昼食を全員で食べ終え、食器を片付けた後に俺達は再びリビングに集まっていた。
「それではァ、これよりμ's内によるユニット分け及びそのメンバーを発表しますゥ」
マネージャーという立場のせいで司会進行的なポジションを任された俺は立ち上がり、各々それぞれの大きなソファに身体を沈めるメンバー達に気の抜けた声で言った。
「何で急にそんな話になったにゃ?」
そんな当然と沸いてくる疑問を口にしたのは凛だった。
今回のユニット構成の件について俺が内容を話したメンバーは、ユニットリーダーである三人。
それと事前にその事について相談に乗ってもらっていた希だけだった。
他のメンバーからしたら何のこっちゃご存知ではないだろう。
「大方、人気急上昇中の『Sexy・Charm』に影響されたんでしょ」
そんな俺の予想を覆すように、今回の議題に至った根本的原因の名前を挙げたのは矢澤にこだった。
「凄ェな――いや、お前ならそのチームくらい知ッていて当然か」
「ま、ライバル達の事を調査して様子を窺いにいくっていうのも立派な戦術だしね」
そういやSexy・Charmについては穂乃果だって知っていた。海未の家で映像を見せた時、真っ先にあのチームに反応できたのは穂乃果だった。
あいつもあいつで何かと、他の高校の様子に注目を置いていたりするのだろうか。
「Sexy・Charmって、あの……もの凄い数のPV動画を短期間でアップさせているっていう突如姿を現した謎のスクールアイドルグループですね!」
興奮するように声を上げる花陽。
何だお前、もしかしてあのグループのファンか。いや、花陽なら全国のスクールアイドルに関する情報を網羅していそうで怖い。
「影響っちゅうか、参考にしようって事やろ?」
希が助け船を出すように言った。
正直、助かった。
表情や態度には出さなかったと思うが、にこの言った『影響』って言葉に実はイラッとしていたのだ。
「そうだ。このSexy・Charmッつゥスクールアイドルグループは総勢一二人のメンバーがいる。PV動画を見たが、俺達と同様で歌詞をリレーしながら踊るスタイルだッた。一人一人の歌唱力は抜群だし、身体のキレや柔軟さも申し分ない」
そう言った所で、どこかメンバー全員の雰囲気が重たくなったような気がした。
少し言葉が重すぎてプレッシャーを与えてしまったかと、俺は小さく咳払いをしてから再び口を開く。
「だがそれはお前らと差はない。お前らだッて高校生にしちゃ――まァ運動神経抜群の凛やダンス経験者の絵里の指南による事もあるが――十分にレベルは高いと言えるだろ」
「! だよねだよね!!」
「調子に乗らないでください穂乃果さン」
それと分かり易い反応をありがとうございます。
怒られたからと言って餌を貰えなかった時に耳をペタンと下げて落ち込むチワワみたいな反応はこちらが困ります。
しかし発言の内容は決して嘘ではない。
μ'sの面々は特に運動に長けている者ばかりではない。
中学の頃や今までの高校生活、運動部に所属していなかった奴だって多いはずなんだ。
それでも、陸上部全国大会出場経験のある凛や、異国の地で本格的バレエを習っていた絵里、日頃から稽古などで鍛錬を積み重ねて精進し続ける海未の考える練習内容や個人レッスンに、全員が時たま弱音を吐きながらもついて行けている。
そこは素直に称賛すべき点だと思えた。
「まァそれでも油断ならない所はあるがなァ」
「うっ……」
「ひっ……」
眼球だけ動かして名指すように示して言うと、隣り合っていた真姫と花陽が息を詰まらせながら喉の奥で悲鳴を上げた。
どうも踊りの苦手そうなのがこの二人だ。
真姫や花陽も頭脳の造りは良くできているようなのだ。
学年での定期考査などでも決して赤点に近い点数など出さず、報告された前回一学期の期末考査では学年トップクラスに属していた。
だから、振り付けを頭に叩き込むまで時間はかからない。
だが、真姫は身体がどうも硬い。
花陽は機敏性の必要なステップが踏めない。
これは今後の課題点として改善すべき問題だと、こっそり絵里や海未と話していた。
「まァ、今はそれは置いておく」
議題の本題から脱線した。
俺はハンドルを正常路線へと回し戻す。
「さッきにこも花陽も言ッていたSexy・Charm――つい最近になッてその名前を表に出してきたにも関わらず謎の人気急上昇を上げているあいつらの秘訣は、何もただ顔やスタイルが良いとか、歌やダンスのレベルが高いとかそんな問題じゃねェ」
それに、だ。
「しかも向こうが動画の中で着ている衣装に比べりゃ、ことりが丹精込めて作ッてくれる衣装の方が格段にレベルが高い」
「え!? そ、そう……ほんとに?」
思わず言葉にしていた俺にことりが照れるように顔を赤らめ、だが嬉しそうに身体をモジモジとさせていた。
「まァ、アイドル的にはな」
「??」
その言葉はことりに分かるかどうか微妙な線だろう。
そして視界の端で赤面しながら顔を俯かせる海未は明らかに理解している。
Sexy・Charmの衣装は何か……アイドルというイメージではない。
あれじゃ露出狂――いや、オブラートに包んでキャバ嬢とでも表現しておこう。何かオブラートに包んでる感じがないな。
「だがさッき花陽も言ッていたが、そのSexy・Charmッていうスクールアイドルグループは、すでにPV動画数が三〇を上回ッている」
これもまた分かり易い反応があった。
事前に説明をしていた四人のメンバー以外、それとやはり事前に独自で調査していたのであろうにこと花陽以外――まぁつまり凛と真姫とことりが驚愕を表した。
「にゃ、にゃんだってぇ!?」
「あ、ありえるのそんなの!?」
「で、でも……そのスクールアイドルグループってわたし達よりも後になってエントリーに名前を出したんだよねっ?」
そりゃ驚くだろう。
先日の報告時には思っていたより絵里や海未の反応が薄かった事に俺が意外だと感じた程だ。
「合計のPV動画数は現在で三九。俺達の何倍かッていうこの数字に到達するには――さて、凛、何だか分かるか」
「にゃっ!? い、いきなり聞かれても困るにゃ~。でも、う~ん……、それだけ歌と踊りが上手って事じゃ――」
「それはお前達も同じだッてさッき言ッたろ。次、ことり」
「ぴぃっ!? え、えっと……――あ! わたし達みたいに路上ラ――」
「次、真姫」
「酷いよ美雪ちゃん!!」
「不正解なンだよ」
質問を振られた真姫はしばらく考え込むようにして顎に手を当て、どこか一点を見つめたまま視線を静止させて黙り込んだ。
「……作詞作曲者が何人もいるんじゃない?」
ふと、視線を上げて真姫は答える。
「つまり?」
「あたし達μ'sじゃ曲を作成できるのがあたしと海未の二人しかいない。けどその、何? Sexy・Charm? っていうグループには曲の編集ができる人が数人いるみたいな。何せ一二人もいる訳だから、その可能性だってありじゃない?」
さすがだと思った。
前触れなく与えられた突然の事実の中にある小さい情報量――それらを短時間で分析した結果に辿り着いた真姫の答えは大正解だと言える。
「やッぱ思考が速いな」
「と、当然じゃない……このくらい普通よ」
「ま~た真姫ちゃんのツンデレが発動されたにゃ」
「り~ん~っ、何て言ったのかしら~っ!?」
真姫と凛がやんやと騒ぎ出す。
それは放って置いて俺は端的に結論をメンバーに話した。
「にこもユニットの事については、Sexy・Charmも良い線を張ったなっ思ってたのよね」
「私も、話を聞いた時はなるほどと納得できました。少人数に分けられたユニット内で各々のメンバー同士が談論し合い、作詞作曲を行う……つまりそれは一つの曲に確実な個性が宿り、決して他のものと似つかない歌が仕上がります。プロの編曲者でない高校生でも、その人の性格や趣味、好みなどの傾向によって色彩豊かな歌が多様に生まれるという訳です」
俺が『ユニット』について話した所、にこと海未が首を縦に頷かせながら言う。
「しかも三人という少人数なら派手な動きや立ち回りの振り付けは必要とされないでしょう? だから投稿されたPV動画みたいに、歌う事をメインとした消極的な踊り――つまり軽い手振り身振りだけの動きさえそれぞれが覚えれば後は問題ないのよ」
「それに、さっき見た映像で分かったやろうけど、ユニットで披露している時を一二人全員で披露している時の衣装を比べれば、明らかに手作りなものやない。多分、専門店とかネット注文で購入したものやろうな」
絵里と希の言う通りだった。
「だろうなァ。時間を消費するより金で解決しちまッた方が手ッ取り早いし単純だ」
つまり、それは簡素化。
総勢の中からユニットに分けるという行為は、一つの製品を製造するのに別々の工場で部品を造るというチームワークではない。
完全なる別離。
一つの商品を造る過程ではなく、それぞれ全く方向性の違ったものを編み出すという個別作業。
そもそも工場の種類が違うのだ。
「そこでね、わたし達もユニットを作ろうって話になったんだよ!」
穂乃果が胸を張って言う。
「もちろん九人で歌い続ける事を中止にしたりはしないよ? ただ、少しやり方を変えて今まで以上にファンのみんなにわたし達を見てもらおうって事!」
さて、話は纏まった。
結局は他グループの真似事。
やり方の横取り。
そう思われても仕方がないかもしれない。
だが結局、世の中はそうつくられている。
スポーツ選手は相手の良いプレーを見て勉強する。
受験生は学歴の良い人間の勉強方法を参考にする。
全ては同じだ。
強引だとケチを付けられようと、世界は他者の真似事で成立している。
常日頃から何もかも新しい何かで世界が構築されていけば、二二世紀頃の世界の科学はきっと地球を破壊させている。
人間は最新鋭の技術をその手に持てば悪用する。
だがそれを悪だと気づかないまま使用し続けるものだからさらに怖い。
故に誰も気づかない。
故に、気づく行為は指摘を受ける。
テストでカンニングをすれば怒られる。
スポーツでルール違反を犯せばペナルティが与えられる。
それらには全て規則やルールが存在した。
だが新規につくられた万物に、一体どんなルールが存在すると言うのか。
答えはきっと見つからないだろう。
存在しても、気づかない。
真似事を――知識の横取りをしていると言っても、その行為が悪なのだと認識されなければ誰からも責められないし、誰も責めようとしない。
結果が良ければ尚良しの社会なのだ。
「だからユニットに分ける場合、他のグループの仕様を真似ている以上、それなりの結果を出さなきゃならない。アイドルに対するファンなンてもンはそこら辺をすげェ重視するし、アンチが見れば徹底的に叩きにくる、だろ?」
言葉と同時に視線で問うと、にこと花陽が深く頷いた。
「――さて」
ようやく、時が回ってきた。
大袈裟な表現かもしれないが、この発表には反感を買う者だっているかもしれない。
そう思うと、息を深く吸って吐く事を余儀なくされる。
「ユニットメンバーの発表だ。これはマネージャーである俺が責任を持ッて決めた事で、決して適当に配分した訳じゃない」
俺の発言に穂乃果と海未、絵里が怪訝顔で首を傾げた。
そりゃそうだ。
あいつらの前じゃくじ引きアイテムなんてものを使っちまったんだからな。
だがその後にも試行錯誤を重ねた、俺なりに。
まだこいつら九人と知り合って日が最も浅いのはこの俺自身だが、それでもメンバー内の親密度関係はもちろん、各々の性格や好みの傾向、ネットの感想欄から寄せられる彼女らの雰囲気についてのコメントを見ながら分配表を組み立てた結果がこうなったという事だ。
事実はそれだけ。
故に、それなりの自信があった。
「ユニット1――穂乃果、ことり、花陽」
「ユニット2――海未、希、凛」
「ユニット3――絵里、にこ、真姫」
結果から言って、反対する者はいなかった。
それぞれが発表された選抜メンバーについて、あれやこれやと早速話し始める。
「後でユニットの名前決めようよ! わたし達三人に合った名前をさ!」
「わぁ! 何か素敵だね!」
「良いと思います!」
「では、私達も何かユニット名を考えなくてはですね」
「やっぱりここはスピリチュアルやろ?」
「い~や絶対にラーメンにゃ!」
「では合わせてスピリチュアルラーメン――って、絶対に駄目でしょう!」
「よろしくね真姫、それとにこ」
「ま、あたしと絵里がクール系担当でにこちゃんがブリッ子系担当って事ね」
「ちょっとブリッ子って何よ!! それに真姫ちゃんだってクールキャラが務まるかどうか分かんないじゃない? いつも予想外の展開には慌てふためいてるしぃ?」
「なっ、この真姫ちゃんにそんな事あるわけないじゃない!!」
「そういう所よ、真姫」
騒々しくなり出した空間を、俺は両手を叩いて静かにさせる。
「海未と真姫がいるユニットはまァ平気かと思うが、穂乃果達のグループは少し苦労するかもな」
俺の言葉に何かを察したか、穂乃果が目を見開かせて食いかかるように迫ってきた。
「え!? まさか編曲無経験者のわたし達が曲を作るの!?」
「そうだ、つッてもそンな重く考えなくていい」
俺は安心させるように言葉の選択に務めた。
「ユニットで挙げるPV動画は一つしか撮らない」
「ふぇ? そうなの?」
「あァ。あンまり何曲も挙げてるとそれこそパクリだ何だと叩かれるしな。人間ッてのは常に新しい発見に興味を示しているが、それも度を過ぎたアピールには辟易とするもンだ。なら一曲だけ特別的にユニットによる披露を見せて、新鮮感が長持ちできるようにした方が良い」
「ちょっと待ってください」
突然。
海未が手を挙げた。
「……何だ急に」
その突発的な行動に俺もやや反応が遅れた。
だが彼女はあくまで静かに冷静に、ソファから立ち上がって俺と向き合った。
「ユニット編成という方法を思いつき、様々な方向から迫る問題点を全て考慮してくれた上でメンバー構築などの決定に手を振り下ろしてくれた美雪にはとても感謝しています。が――」
言葉の最後のアクセントが妙に強調された。
数秒の間が空いた。
すぐに、海未は続ける。
「その後、美雪は何をするのですか?」
恐らくその質問には全員が一瞬の疑問を感じただろう。
だがその一瞬は俺に必要ではなかった。
さすが海未だ。
鋭い観点に気づく。
つまり彼女はこう言いたい。
俺の発案で成されたユニット編成の件については感謝している。
だがその後にお前は何をしている?
考えてたらすぐに分かる。
俺のアフターケアとすら呼べる仕事なんて何もない。
ユニットはつまり分離だ。
同じ空間で皆が練習する事がなければ、同じ空間で作詞作曲を編集する事もない。
一つのグループは一つの空間で活動する。
それがユニットといものだ。
その空間に常に俺がいる訳じゃない。
時たま様子を見に来る事があるかもしれないが、それだけだ。
空いた時間は何をしている?
彼女らの曲が完成し、PV動画を俺に届けてくるまでの時間で何をする?
退屈そうに一人でコーヒーを飲むだけ。
海未はそう考えたのか。
彼女の性格からして、慣れない環境でメンバーが四苦八苦している中で、俺一人だけが暇を持て余すような行為を見逃す訳にはいかなかったのかもしれない。
だが。
俺は俺の仕事があった。
それはずっと前に絵里から依頼されていたものでもあった。
受け入れると先日に言っておきながら、今の今まで放置していた仕事。
そんなものが俺の目の前に落ちていた。
「決まッてンだろ――新しい曲作りだ、お前ら九人が次に歌うやつのなァ」
ようやく、この時。
俺はこの言葉を口にしてやっと。
自分はμ'sのマネージャーなのだという事実の重みを身体に感じた。
読んでくださりありがとうございます!
なお、作中に登場する『Sexy・Charm』ですが、彼女らもオリジナルキャラとして個人の名前を紹介し、μ'sのメンバーや主人公の美雪にも絡んできますのでそちらにもどうかご期待ください!
あと最近お休みしてた水浦竜三や柊蒼太郎にも出番が来そうです。
そちらもよろしくお願いします。
今回のお話は『美雪ちゃん……意外とけっこうやる気はあるんだな』という回でした。そんな感じを受け取ってもらえたら幸いです。
それでは次話もよろしくお願いします!