そして突然ですが――今日はなんと僕の18歳の生誕の日なのです!パンパカパーン!!
……はい、ただ意味もなくそれを言いたかっただけです笑
それでは今回もよろしくお願いします!
18歳とか来年の選挙権あるやんけ笑
時間にして午後の八時前後。
場所は東京特有の夜景を眩しく彩る煌々としたイルミネーションを一八〇度に首を回して見渡せる、壁の分厚い高級マンション最上階のベランダ。
涼しい風が髪を靡かせた。
普段なら堂々とした家主たる風貌で居座っている姉が、今日は不在。
どこかまた、夜遊びに出掛けているんだろう。
水浦竜三はふと思う。
自分はいったい、何と戦っていたのかと。
彼がその頭に思い浮かべた光景は薄闇の無人地帯。
暗闇を背景に、その衣服を保護色として纏った妙に大人びた女。
彼は依然、梶ヶ谷グループに属しているものだと考えられる一人の敵――來栖麗羅とぶつかった。
結果から言って大敗という形で終わってしまったのだが――水浦竜三の中ではあの勝負に、いささか奇妙な点を覚えていた。
來栖麗羅はなぜ、自分にトドメの一撃となる追い打ちを仕掛けてこなかったのか。
水浦竜三はあの日、確かな重傷を負った。
腹の中の腸や肝臓、胃などの臓器を滅茶苦茶に掻き乱され、顎の骨にも僅かだが損傷を与えてくれた程までに。
だが、言ってしまえばそれだけだ。
梶ヶ谷燐桐が率いるあの隊の面々は、どいつもこいつも性根の腐った、将来に希望の光がなければ天からの慈悲も与えてもらえないような奴らばかりだ。
やる時は徹底的にやる。
潰すと言えば、砕くと言えばその結末を一〇割以上の惨状で仕上げる極悪人の集団。
冷徹で何事にも容赦のない理不尽な鉄槌を身勝手なままに下す時もあれば、因縁を吹っかけてきた相手をどこまでも追い回した挙げ句になぶり殺しにするような奴らばかり。
一部の人間には、悪の組織というジャンルでありがちな世界の裏で暗躍する日本政府組の息がかかっているという噂もある。
そんな極悪非道な集団の一味である者が、あの時ばかりは、水浦竜三に甘かった。
五臓六腑をかき混ぜる。
顎の骨を撫でる。
たったそれだけの行為で済まされた。
たったその程度の軽傷で許された。
その事が水浦竜三に違和感を――『なぜ?』という疑問を抱かせる。
――それがほんの二分前までの話だった。
水浦竜三は今、新たな疑問点に眉を潜め、自分でも出した事のないような素っ頓狂な間抜けた声で繰り返す。
「み、美雪が作詞作曲だぁ?」
彼の部屋の真下に位置する部屋の住人が、同じようにベランダに立って煙草を片手にしていた所、そんな頭上のまた上からの高い声に首を傾げた事に水浦竜三が気づくはずはない。
水浦竜三は煙草ではなく、右手にスマホを持っていた。
耳に当てるそれの奥から聞こえてくる声は、とある少女のものだ。
『えぇ。あたしもいきなり? って疑問に思ったんだけど、それこそ本当に何の前触れもなく急に言い出したのよ。あぁ……でも、作詞作曲のお手伝いの話は前にエリー……前からあったみたいだけどね』
西木野真姫。
いつの日からだったか、水浦竜三と音ノ木坂学院のスクールアイドルに所属している彼女は、連絡を取り合える仲になっていた。
それがお互いの納得できる形で成し得た関係なのかと問われれば頷けないが。
しかし水浦竜三にとってそんな事は知った事じゃない。
(おかしい……いや、異常だ)
光彩のイルミネーションを乱反射させる眼前の景色を見つめながら彼は考える。
(なぜだ……どうして美雪は音ノ木坂のスクールアイドルにそこまでの執着心を見せる? 何でそこまで協力的になれる? それほど俺が今会話をしているこの西木野真姫たちと親密な仲になってんのか?)
そう思案する彼の心情は決して嫉妬とかいう類ではない。
単なる疑問。
來栖麗羅の件のそれを遥かに凌駕してしまう程の違和感。
(美雪は普段から面倒臭い事は避ける人間だった。作詞作曲だと? どれだけの時間と体力を浪費すると思っている……あいつがそんな真似をするはずがない)
本当に……電話越しで話す西木野真姫とやらが言っていた『夜伽ノ美雪』という人物は、自分が思い浮かべている『夜伽ノ美雪』と同一人物なのか。
そんな馬鹿げた疑惑さえ浮かんでしまう。
だが西木野真姫から病院でスマホのデータ写真を見せてもらった時に映っていたそれは、紛れもなく『夜伽ノ美雪』本人だった。
『ねぇ、もういいかしら?』
ふと、水浦竜三の思考回路の細い線を断ち切るように声が流れてくる。
『あなたと連絡先を交換した時に提示した条件、しっかり覚えてるの?』
そんな事を言ってくる。
自然と水浦竜三の脳裏には、あの日の病室の光景が浮かび上がった。
「あぁ、覚えている――夜伽ノ美雪の事を詳しく教えてくれ、だったな」
それは西木野真姫が言い出したもの。
唯一の交渉手段でもあった。
『そうよ。なのにあなた、さっきから私に質問ばかりして美雪の事を全く話そうとしないじゃない。これ、もう関係決裂って事でいい訳?』
「そもそも、俺はまだお前が美雪の何を知りたいのかって事を聞いていない」
彼がそう言うと、通話の向こうで西木野真姫が小声で「そういえば……」なんて事を呟いた。
『そうね……例えば――美雪の過去、とか』
その言葉はなぜか艶めいていて。
柔媚な雰囲気を漂わせるような口調だった。
(今は美雪もそうだが……この西木野真姫って女も、何を心に思っているのか全く分かんねぇな……)
人は自分の本懐を真っ向として相手に言おうとしない。
言葉を濁らせて示唆した結果、その答えを見つけてくれる事に期待している。
その能力を水浦竜三は持ち合わせていなかった。
夜伽ノ美雪と違って――。
「かけなおす」
『は? え、ちょっ――』
返事を待たず、水浦竜三は通話を一方的に強制遮断した。
しかし彼はすぐさま通話帳を開き、指でその名前をタップしてからスマホを耳に当てる。
相手は三コールした後に出た。
『よォ、どうした竜三』
直接の接触。
対峙している訳ではないが、それでも相当な覚悟が必要なはずだった。
水浦竜三は夜伽ノ美雪に勝った試しがない。
その事実を理解している上で、彼は唾を飲み、息を吸ってから言葉を吐き出す。
「『あの時』から変だとは思っていた、お前と電話で話したあの時から」
あの時、とは――。
夜伽ノ美雪が水浦竜三に、『改めて自分はμ'sに入った』と報告を電話で受けた日の事だ。
あの日、彼女は言っていた――。
『何の確証もない予想なンだが……俺はあいつらと一緒に進んでいけば、何かが変わるような気がするンだよ』
――違う。
水浦竜三は思う。
あの言葉は嘘だ――。
そう言えるのは水浦竜三が夜伽ノ美雪を知っているから。
あいつがあんなセリフを吐ける訳がない――。
そう決めつけられるのは――なぜか。
「あいつらの何がお前をそこまで献身的にさせる」
別にいい。
「音ノ木坂スクールアイドルの何に惚れてそこまで入れ込めた」
どんな汚い言葉でもいい。
「言っちまえば所詮はプロの真似事集団だ。アイドルって名前を立て看板としてぶら下げて、テメェらの歌やら踊りやらを眼下の奴らに見せつけて歓声と拍手を耳にしながら優越感に浸る。そんなもんだぞ、お前が相手にしているのは」
今は、夜伽ノ美雪の本心を引き出す。
今まで自分はどうして夜伽ノ美雪を守ろうとしてきた。
答えは簡単だ。
もう自分と彼女自身を含めて、『夜伽ノ美雪』という人間性を見たくないがため、だ。
だが、今の水浦竜三には『親友である夜伽ノ美雪』の姿が見えなくなってきている。
スクールアイドルに入って何かを変えるだとか。
いきなり作詞作曲の仕事を始めるとか。
そんなキャラじゃない事を言い出す彼女に、水浦竜三は嫌でも困惑し、またどこかでイラついている。
「話せよ美雪」
先程から通話の奥で、夜伽ノ美雪は一言も喋ろうとしない。
だが刺々しい雰囲気だけは冷ややかに伝わってきた。
だが、水浦竜三は突き進む。
「美雪、お前――何を企んでいるんだ」
それだけじゃない。
「俺に何を隠している」
それはかつての約束でもあった。
『これからはお互い、隠し事や秘密はなしだ。悩みがあるのなら、俺達は真っ先に相手に伝える』
そんな契約をしていた。
それはお互いが了承した。
何かの問題に巻き込まれて、二人で何とかそれを解決して、結局それはお互いが何かを胸に秘めたまま隠し通した事が招いた結果で――。
だからそんな、誓いと呼ぶには大袈裟かもしれないが、言葉に誓った。
水浦竜三はその事を、夜伽ノ美雪が忘れているとは思えない。
また夜伽ノ美雪もそれは忘れてなどいなかった。
故に、か――。
ようやく一声を発したと思わせた夜伽ノ美雪の言葉は、ただ単調で冷淡なものだった。
『お互い様だろ』
ブツッ、と。
通話が強制的に終了させられる。
(お互い様……?)
水浦竜三はその言葉の意味が分からずにいた。
だが一瞬後。
彼はその意図をようやく知る。
「くそっ……まぁ、当然と言えば当然なのか」
本当に面倒臭いのはこれからだ。
一際周囲の街並みからその存在感を逸脱させる程の、イルミネーションを蜷局撒きに飾った東京を象徴するツリーに向けて、水浦竜三は小さく舌打ちを漏らす。
ーーーーーーーーーーーー
「お互い様だろ」
そう言い捨てて通話を切る。
夕飯を食ってこれから風呂だという時間帯にかかってきた竜三からの通話は、以前ならある意味じゃ待ち遠しいものだったが、その内容が内容だっただけにそんな想いは霧散した。
「さて……」
スマホを一人用部屋のベッドに置き、手ぶらのまま部屋の扉を開けて廊下に出る。
「あら、美雪」
丁度いいタイミングでばったりと出会したのは、赤髪がくすぐる肩や首にタオルを巻いた真姫だった。
「どうしたのよ、今からお風呂でしょ? 着替えは用意したの?」
不思議そうに首を傾げてそう尋ねてきた。
だが今の俺の仕事は風呂でなければ真姫の質問に答える事でもない。
活かされる身長差から見下ろして、俺からも尋ねた。
「水浦竜三と知り合ッたのはいつだ」
その唐突的な質問に。
真姫の瞳が信じられないようにギョッと剥かれた。
その反応だけで解答用紙は見えていた。
「え……あ、そ――」
「いや、もういい。全員に同じ質問をするつもりだッたが、親切なくらい手間が省けた」
つまり犯人はこいつだ。
竜三が電話越しにどこか葛藤している様子が感じられた。
その焦りなどの感情のお陰で、今に置かれたあいつの現状、立ち位置が玲瓏の奥に見えるかのように分かった。
竜三は知っていた。
俺が作詞作曲に取り組むんだという話を。
ならその情報を与えた奴は誰か。
μ'sの誰かに決まっている。
犯人捜しでもするかと思った矢先、そいつは自ら俺の元へと自首してくれた。
今の俺はそんなに恐懼される程の表情を浮かべてこいつを見下ろしているのか。
真姫は顔面を蒼白にさせてわずかに上下の唇を震わせると、ぽつりと話し出す。
「っ……つい……、最近よ……」
「……そうか」
西木野真姫が竜三と恋仲であるなんて可能性は考えられない。
真姫みたいな性格の奴が水浦竜三のような男に自分から迫って連絡先を交換するなんて事はありえない。
なら主犯は水浦竜三だ。
あいつが強制的に真姫の連絡先を聞いたのか、あるいは――。
ならなぜそうする必要があったのか――。
「スマホ、出せ」
「あ……、うん」
真姫は下に穿いたショートパンツのポケットからスマホを取り出し、俺に手渡した。
幸い俺のと同じ機種らしい。
操作方法が分かっているのだから、俺は自分の指で勝手にそれを操作し、まずはと言ってアドレス帳を開いた。
水浦竜三。
着信拒否――非表示設定。
「ほれ」
一通りの操作を終えてから、真姫にスマホを返す。
「美雪、怒ってる……?」
「別にそうじゃねェンだが……ただ、警告だ」
冷ややかに、と自分でも意識してしまう。
警鐘が鳴る。
「もう奴とは関わるなよ」
これも安全確保の為だ。
真姫の為にも、俺の為にも――。
僕「皆さ~ん! 今日は僕の誕生b――」
??「くどいわァ! いィ加減にしろゴラァ!!」パンチ!!
僕「ヘヴン!?」
――イテテ……あ、失礼しました。
でも何か18歳っていろいろ制限が解かれるのでさらに大人になったって感じがしますね。
さて、何やら今回は夜伽ノ美雪と水浦竜三の間に亀裂なようなものが走ってしまいましたが――はてなどうなる事でしょうか。
それでは次回もよろしくお願いします!
そういえば今日は僕の18歳のたn――(ry