今はスコアマッチイベントが開催されていますから、相手三人の中に僕の名前を見かけたっていう人がこの作品の閲覧者の中に―まぁそれはごくわずかな可能性でしょうね笑
今はラブカストーンが189個(無課金)あるので、○○ちゃんと○○ちゃんの新規限定勧誘が来たら一気に回そうと(といってもせいぜい3回)思っている僕です!
――という訳で今回もどうぞ!
いつものお話とは、少しまた違った方向性で書かれていますね。
※美雪の一人語りメインです
思考に頭を支配される事は果たして良い事か。
それだけ物事の善悪判断や対象への配慮を考え続けられる立派なものと思えるのか。
はたまたそれは余裕のない忙しい、いきす過ぎた焦慮に捕らわれた陋習なのか。
……いや、どッちでもいい
ボソリと心で呟く。
言葉遊びをしている場合じゃないんだ。
それほど今は余裕がない。
――最近、よく考える。
μ'sに加入してからというもの、非常に思考を巡らす機会が増えている。
以前からは特に柊蒼太郎とかいう変態野郎に頭を悩まされてはいたのだが、俺という――夜伽ノ美雪という人間は通常、普段から物事を核心的な部分まで追い求めない、好奇心という海の底が浅い人物だったはずだ。
μ'sの一員となってから、それがどうも揺るぎつつある。
自分自身の影。
案外、それは自分では見えないものだ。
日本で活躍する一人の小説家が手がけたとある作品の一部に、こんな文章があった。
『自分自身の影に、無限に愛情を感じる人もあれば、無限の嫌悪を抱く人もある。その中間の人は極めて珍しい』
さて、俺はいったいどれだったのか。
まずそこから考えてすらいなかった。
そもそも自分自身の裏側に隠れ、表という世界に見出されずにいる他人が認識できない影の部分についてなんて、そうそう深く思慮する事なんてないんじゃないか。
……だからやめろ、そんな無駄な思考の巡り遊びは。
つまり最近――μ'sのマネージャを務める事となってから、あらゆる出来事に視線や気持ちが向き、様々な熟考をいたす事が多くなった。
『穂乃果ちゃんと海未ちゃんが優勝を目指すのなら、ことりもそれに従おうかな』
これは解決したはずだ。
南ことりが幼馴染みである二人の少女に引け目を感じた事から始まったあの一件。
結果として俺自身は特に行動せず、一人の傍観者という立場から眺めていただけだった。
それでも。
南ことりが秋葉原の伝説メイド――『ミナリンスキー』として披露したのであろう歌のCDを、店の店員に無理言って自腹で購入したのは俺だ。
寸法を測った後にサイズ別に八人分のメイド衣装を自分の懐を犠牲にしてまで頂いてきたのは俺自身の意志だった。なぜアイドル研究部に降ろされた部費の金額があそこまで低迷していたのかは不明だが。
あの時、そうしようと自分の頭が、身体がそう決断するまでそう時間は必要なかったように思える。
『……素直に、ですか。――――いいでしょう。その勝負、受けて立ちます』
そういえばさらに前の時期、そんな一件もあった。
夜伽ノ美雪という人間に対して強い警戒心を抱いていた頃の、園田海未のあの言葉。
あれは確か俺が誘ったものだ。
たまたま目に付いたトランプカードなんてものを餌にして挑発し、またその勝負において絶対また不自然でない勝利を手にしたいがために手慣れたイカサマまで使った。
そうまでして勝ち、園田海未の本心を聞き出したかった。
最後に園田海未に隠蔽したジョーカーを見せたのは、これからの仲間に対して隠し事は気分の悪いものだと思ったからだ。
あの時は無意識だった。
なんとか手中に収めようと必死だったのかもしれない。少なくとも、ただ単に勝負事において負けたくない、という気持ちだけが俺をそう動かしたのではないのだろう。
解決した。
これらの件は解決したんだ。
だが、俺の配慮と呼ぶべきものなのか疑問だと首を傾げさせる『それ』は、不思議と忘れず頭から離れない悩みの種に視線を向けさせる。
『かよちんがそう言うなら、凛もそれに付いていくにゃ~』
星空凛。
あいつはなぜ明確な自分の意志を示さなかった。
『活発で積極的な凛ちゃんが羨ましいかな』
『可愛くて女の子らしいかよちんに憧れてるよ』
また同じく星空凛。
そして小泉花陽。
あいつら二人はなぜあの時、お互いの目も合わせようとせず、羨望の想いを抱くその癖はなから諦めてしまったかのような表情を見せたのか。
『人間の心理ほど、世の中で不可思議なものなんてないんじゃない?』
絢瀬絵里。
彼女はあの時どんな表情でどんな心情でその言葉を口にし、しかしなぜ分かり易い程までに哀れむような口調で言ったのか。
μ's以外での所でだってそうだ。
『美雪、お前――何を企んでいるんだ』
『俺に何を隠している』
水浦竜三。
奴こそ俺に何を隠しているのか。
またあいつは、俺が音ノ木坂のスクールアイドルのマネージャーを務めているという事に、実際はどんな感想を持っているのか。
『将来の僕のお嫁さんとして面倒事は控えてもらいたいんだよ。後々になって君の争奪戦とかに展開するのは御免だし、何より僕自身の道も危ない』
柊蒼太郎。
あいつはどこまでの情報をどのような経路から繋がり得ているのか。
どうしてあいつはそこまでの執着心を俺に向け、執拗に俺に入り込もうとしているのか。
だが、最も分からない部分は他にある。
自分で言ってしまうのも何だが、俺は人との交際経験は浅いが、人間観察や人の心理を捉えるといった類のものは得意としていると思う。
そんな俺がμ'sに加入したのち、最も謎だと思う人物がいる訳だ。
ステージ上では笑顔を絶やそうとはしない癖に部室だとその腹黒い一面を見せるという、表裏がはっきりとした性格の矢澤にこ、ではない。
タロットやら神のお告げとやらいろいろスピリチュアルな事ばかりを抜かしている、もはやその力は紛う事なき摩訶不思議なものなのかと思ってしまう程の奇抜さを身に備えている東條希、でもない。
『わたし達、μ'sと一緒にラブライブへ出場しませんか!!』
高坂穂乃果。
彼女はなぜ、一度でも強烈な拒絶を態度で示した俺に臆する事なく、なお手を差し伸べてこようとしたのか。
『あたしの事……嫌いにならないで……』
西木野真姫。
彼女の――一年生組の三人と遊びに出掛けた日の帰り道――あの時、なぜあのような表情まで浮かべて俺にそう言ったのか。
――この辺か。
まだ俺はμ'sのメンバーと知り合って日も浅ければ、誰かと最も強い絆で結ばれているんだと自惚れる事もできない立ち位置だろう。
それでも――気持ち悪い。
どれだけの期間になるのかは分からないが、これから深く付き合いを続けていくのだろうとされる相手の事が理解できていない――そいつが何を考え、その時に何を思ってその行動を取ったのかという心理が見えないという事が、本当に気味が悪い。
これは、今まで他人との付き合いを疎かにしてきた俺の勘違いなのか。
分からないままで生きてきた俺がただ身勝手に感じている小さな違和感――しかしそれはやがてすぐに消えてしまうものなのか。
相手の行動パターンや場面による心理を隅から隅まで熟知している。
きっとそんな人間は世の中に存在しないだろうし、そんな度の過ぎた理解力を備えるまでに研究を続けた仮のそいつはきっとストーカーか何かだ。
柊蒼太郎だって、全ての俺を知っている訳じゃないんだろう。
だが、そうじゃない。
μ'sメンバーの彼女達は、その心理とはまた別なのだ。
人間観察が好みで人の心理を捉える事を得意分野と自負してしまっている俺だからこそ分かる、と言ってしまっていいのか。
彼女達は、きっと何かを故意として隠している。
自分自身の影の中に――日の当たらない真っ暗なその内側に隠蔽し、他人の前では絶対に晒してしまうような事が起きないよう常に神経を尖らせて気を配っているのだ。
だが、その事を駄目だと言い立てるつもりはない。
必要以上に探り迫る、相手のプライバシーを尊重しない行動を取ろうという訳ではない。
――分かるから。
俺自身だって、μ'sのあいつらに未だ言い出せない事柄が存在する。
自分の親父はもちろん、統堂英玲奈や水浦竜三には自然として知られてしまった真実を、μ'sの九人には明かすまいと固く決心している。
きっとそれはこれから永遠に隠し続ける。
だから俺には彼女達に執拗と迫る資格はない。
そしてまた――それも違う。
相手に隠し続けてきたが故に、か。
自分が目を逸らし続けてきた故に、なのか。
『わたし達、ずっと一緒だったんだね』
『ほんま、ありがとな』
『私をμ'sに誘ってくれて、ありがとう』
μ'sメンバーの内の数人が語った自分の過去の物語。
合宿初日の夜に高坂穂乃果の提案で、自分達の昔話を話そうというテーマに開かれたあの会。
あの時、俺は本当に――怖かった。
ただただ、怖かった。
自分がその過去について語る順番が振られなくて、本当に良かったと深い安堵感が身を支配するあの感覚は今でも忘れていない。
自分が犯してしまった過去を思い出す事に怯えていたのではない。
今まで他人に隠し続けてきたあの出来事を表沙汰にされる事を恐れていたのでもない。
過去が――――ない。
なぜか、思い出せなかった。
自分にあった昔の光景が全く頭に蘇ってこなかった。
思い出の上に真っ白の絵の具で上書きされたという感覚とはまた違う。
自分は幼少時代や小、中学時代を一気に飛び越えて、初っ端から高校生の姿でこの世に誕生してしまった感じの不思議なもの。
『私は覚えているぞ、あの小学五年の夏休みの事を。宿題として出された自由研究を、お前はやはり面倒臭いの一言でまったく手を付けまいとしていた。そこで親父さんが、自由研究をしっかり終わらす事ができたら、プロ野球の観戦に連れて行ってやるとお前に言った。当時、美雪は親父さんと似て野球が大好きだったからな』
英玲奈が言っていたあの言葉。
その当時の事はかろうじて記憶に残っている。
いや、厳密に言えば英玲奈から言われたあの時に思い出したのかもしれない。
『これからはお互い、隠し事や秘密はなしだ。悩みがあるのなら、俺達は真っ先に相手に伝える』
中学の頃に交わしたあの約束も、竜三と初めて喋った時の事も覚えている。
……そこだけ、だ――。
まるで覚えていない。
昔の自分はどんな性格だったか。
昔の俺は何て名前の小学校に通っていたんだ。
昔の俺は本当に野球が好きだったのか。
昔の俺は何が好きだったんだ。
思い出が――――
俺の、母さんは――。
人殺しの母親となってしまったあの哀れな女性は――?
あぁ、死んだ……。
今まで、自分の過去を振り返ろうとは意図としてしなかった。
だから、あの夜にメンバーが語った昔の話を聞いてしまったが故に無意識として潜りにいってしまった自分の過去に初めて気づいた。
記憶がまるで存在していない――!!
夜伽ノ美雪として生きてきた足跡が残されていない――!!
眼前の光景が騒々しい。
鬱陶しくてたまらない。
「こ、ここまで完璧に仕上げてしまうとは……候補は数え切れないほど挙げていてなおそれを添削――こ、これを本当に一夜で、美雪たった一人でやり遂げたのですか……?」
「ピアノの楽譜を描けるだなんて、聞いてなかったわよ……昨日あたしが誘ったのが馬鹿みたいじゃない。……いえ、でも――信じられないわ」
喋っているのは海未と真姫なのか。
頭痛が酷い。
すぐに治まるような気はするのだが、混乱しきってしまった頭を整理するのには膨大な時間がかかりそうだ。
それこそ、一夜では片付けられない程に。
「ね、ねぇ美雪、あなた――」
鮮やかな金髪が揺れているのが見えた。
今、俺と向き合っているのは絵里なのか。
「もう一度聞くんだけれど……本当にこの……作詞作曲は一夜にしてあなた一人だけで仕上げたものなの? 今さっきこの譜面通りに真姫に弾いてもらった伴奏からすると、かなりハイレベルな出来になっている気がするんだけど――あなた、こういう仕事でも経験してたの?」
――あぁ、
またここに、悩みの種が一粒まかれた。
ふとした拍子に、誰かが手に持っていた、複雑な横線の様々な位置に音符やら何やらが描かれた薄紙が視線の隅に映る。
あまり好ましいとは言えない体調――顰められた顔に細められたようにぼやける視界に、とある名前を見つける。
『Mermaid festa』
昨夜の俺は、作詞作曲なんかしていないはずなんだ……――。
今回も僕の作品を読んでくださりありがとうございます!
――さて、いかがでしたでしょうか。
今回は会話文がほぼない上に、美雪の独創的な一人世界の語り描写となってしっています。
僕自身としては失敗した感じはないのですが、読者様たちにはどう評価されるのか不安だという面もあります……が、勇気を出して投稿してみました。
また、今まで美雪の元に降り積もった問題を総上げし、一つ一つを思い出してもらおうという事もありました。
それではまた、次回もよろしくお願いします!