笑顔を咲かせた少女は紛れもなく…   作:西部荒野に彷徨う海賊

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少し長くなっているかもですね

どうか、よろしくお願いします。感想もお待ちしております。




4話 マネージャー

 

 

「今回ばかりは見過ごせませんよ穂乃果」

 

 澄みきった双眸は鋭利な刃物のように尖り、その冷酷な視線を向けられた高坂穂乃果は寒さに耐える子犬のように身体を小刻みに震わせている。

 なおも、園田海未の言葉は続いた。

 

「誰とでも仲良くなろうと努力してしまうあなたの性格は、時に行き過ぎた行為へと導いてしまっています。確かに人と親睦を深めようとする行為に罪はありませんが、見境なくやたら声をかけ、笑顔を振りまく昔からのあなたの素性は見直すべき点があります」

 

 二年生組の結果報告を終えた部室にはまだメンバー全員が残っているが、その大人数にも関わらず室内の空気は穏やかでない方向で静まり返っていた。

 未だ二人が口論している現場は、南ことり以外の人物には見慣れない光景なのだ。

 

 しかし対として、高坂穂乃果は納得いかないといったように抗議の声を上げる。

 

「なんでさ海未ちゃん! 長い銀髪に赤い目をした女の子だよ!? 外見だけでもすごくアイドル向きなのに、あの子を誘わないのはもったいないよ!」

 

 つい数十分前。

 高坂穂乃果は全身ジャージ姿の女子生徒をμ'sのマネージャーとして勧誘した。

 

 煌めく銀髪に、豹のように吊り上がった真っ赤な瞳。

 夜伽ノ美雪、と名乗ってくれていた。

 

 高坂穂乃果は彼女の顔を一目見た時、頭の中でピンと何かが立ち上がった。

 

 ――かっこいい。

 

 そう、思ったのだ。

 

「もはやあれはイケメンの部類に入るよ! 逸材って奴だよ! わたし達μ'sの中に未だ登場してないイケメンキャラだよあの子は! どうして海未ちゃんは反対するのさ!」

「どうしてもこうしてもありません! あなた、彼女に自分が何をされたのか分からないのですか!? 彼女はあなたの手を、乱暴に振りほどいたのですよ!? 怖くはなかったのですか!?」

「怖くなかったよ! それにあれはいきなり手を握り締めちゃった穂乃果が悪いんだもん!」

「穂乃果はあの方の目つきをご覧にならなかったのですか!? どう見ても、まともに取り合ってくれそうな人じゃありませんよ!」

 

 基本的に、園田海未には先程出会った女子生徒、夜伽ノ美雪に対して悪いイメージしか植えつけられていなかった。

 理不尽な怒号で親友の好意を無碍にしてくれた、あの人物に敵対心までも覚えている。

 

「それにあなたは、銀髪とか赤い瞳だとか言っていますが、もともとマネージャーとして勧誘するつもりだったのですから、外見はさほど関係ないじゃありませんか!」

 

 そのせいか、園田海未の言い分も多少、荒くなっている。

 今のセリフでは、自分達と一緒に歌って踊る訳じゃないんだから外見が悪くても別に問題ないだろう、とも受け取れる。

 

 だが彼女を含めその他のメンバーも、自分の容姿にそれなりの自信がなければアイドル活動なんかやっていけないだろう。

 

「ことり! あなたも何か言ってやってください!」

 

 もう一人の頼れる幼馴染みに、園田海未はいつものように振り向いた。

 

「えっと……あはは、どうなんだろ……?」

 

 南ことりも、根本的に敵を作れない性格から、どちらか一方の肩を持つ事はできない。

 返事に詰まっている彼女を見て、園田海未は苛立ったように鋭い視線を高坂穂乃果に向け直す。

 

「ですから――」

「はいはい、そこまでそこまで」

 

 手を叩いて、絢瀬絵里が園田海未の言葉を遮った。

 

「あんまり熱くならないの。たった一人勧誘するのにこれだけの口論が展開するなんて、とてもじゃないけどこの先、やっていけないわよ? いくら先輩禁止にした所で、同学年で上手くできないのは致命的じゃない」

 

 その言葉に、園田海未は居づらそうに視線を下方に向け、席に座った。

 高坂穂乃果はまだ腑に落ちないのか、頬を膨らませながらイスに座ると、隣に腰掛ける星空凛にその頬を人指し指で一突きされた。

 

 絢瀬絵里は一人立ち上がり、先輩の目をした立場で口を開いた。

 

「つまり、穂乃果がマネージャーとして引き入れたいって思っているのは三年の夜伽ノ美雪、でいいのよね?」

「え、絵里……まだそうと決まった訳では――」

「いいのよ海未。今の所、そうと仮定して話を進めるだけだから」

 

 正直な話。

 マネージャーなど、ラブライブ出場へ向けて行われる地区予選などで、名前だけが必要とされる影なる存在だ。仕事内容だって、各部活の顧問のこなすそれと対して変わりはない。

 

 まだ時間はある。

 

 そう急いでマネージャー探しに没頭する必要もない。

 

 だが、彼女らは完全に人手不足だった。

 他のアイドルグループがどうしているのかは分からないが、作詞作曲、衣装作り、歌の背景音楽の演奏など、それらをこなせる人材がμ'sには足りていないのだ。

 

 園田海未は作詞ができる。だが彼女は家庭での稽古や習い事などでなかなか時間が取れない。

 

 西木野真姫は作曲ができる。だが彼女の将来の事を考えると、家での勉強時間の確保は重要なものとなってくる。

 

 南ことりは衣装作りができる。だが彼女一人では負担がありすぎるし、他のメンバーに指南するといってもそれなりの時間が必要とされる。

 

 絢瀬絵里と星空凛はダンスが得意であり、曲に合わせた振り付けなども考えられる。だがそんな彼女だからこそ他のメンバーに踊りを指導してやらなくてはいけないし、また特に絢瀬絵里は、何より学園の生徒会長としての仕事もある。

 その点では東條希も似たようなものだった。

 

 少なくともあと一人、助太刀となりうる存在が欲しい。

 全員が、どこかでそう思っていた。

 

「いいかしら、聞いてみんな」

 

 現として部長の矢澤にこを差し置き、μ'sのリーダー的立ち位置にいる絢瀬絵里は言う。

 

「推薦やAOで早い段階で大学が決まる人もいる。三年ではそう人に当たってみるわ。いいわね希、にこ」

「了解やで」

「えぇ、分かったわ」

 

「一年生でもなるたけ声をかけてみて。他からどう思われようと、もしかすれば一人くらい話に乗ってくれる人がいるかもしれないから」

「「「はい」」」

 

「穂乃果達二年生も、これからも呼びかけは続けて欲しい。もちろん、お互いが納得いく方法でね」

 

 絢瀬の言葉に、二年生組以外のメンバーは了承の意を示した。

 

 あれから一度も目を合わせようとしない高坂穂乃果と園田海未を、狼狽える様子で機嫌を伺う南ことりの三人を見て、

 今回ばかりは、自分達が意識して勧誘を進めて行かなくてはならないと六人の少女達は覚悟した。

 

  ーーーーーーーーーーー

 

「スクールアイドル……みゅーずッて読むのか、これ?」

 

 自室のベッドに寝転がり、仰向けで天井に掲げた一枚の薄紙を見上げながら、俺は耳元に当てたスマホに向けて言う。

 

 二日連続で学校へ行ってしまった。

 昨日のように他人と話すような出来事はなかったが、不可解な事が一つ起きた。

 

 帰り際に自分の下駄箱の扉を開けると、この紙が一枚、入れられていた。

 他の生徒の下駄箱を覗き込んでみたが、どうやらこの案内用紙が入ってあるのは俺のとこだけのようだった。人の下駄箱を勝手に開けた事については触れないでおこうか。

 

 やがて、スマホの向こうから声が返ってくる。

 

『あぁ……あぁ~はいはい。スクールアイドルね。なんか今、現役女子高生対象に話題沸騰中とかのアレだろ?』

「あ? そうなのか?」

『お前も現役女子高生だろうが』

 

 そう言われても、こちとら自分の事に対してもさほどの興味も持てない人間なんだ。今時の高校生の流行など知った事ではない。

 

 通話の相手――水浦竜三。

 

 中学からの同級生で、俺が唯一連絡を取り合ったり顔を合わせたりするなどの付き合いをしている男子高校生だ。

 身長が高くて女にモテて、なかなかに腕っ節に自信のある奴だ。俺とは男女の仲という訳じゃないが、お互いに『話せる悪友』といった感じで交流を続けている。

 

 今晩はそいつに『スクールアイドル』とやらの事を尋ねてみようと思って電話をかけたのだが。

 

『つっても、俺が現在進行形で付き合ってる女の中に、スクールアイドルやってるってのはいなかったと思うな』

「ンじゃ、お前も詳しくは知らねェのか?」

『そうだな……で、その紙には何て書いてあんのよ?』

 

 訊かれ、俺は用紙の中央にでかでかと書いてある、PCか何かで打ち込んだような文字を声に出して読み上げてみせた。

 

「えーッと……、【私達、音ノ木坂スクールアイドルμ'sのマネージャーになってみませんか? ~一〇人目のメンバーは君だ~】……だとよ」

 

 典型的の欠片も感じられない文章だが、メンバーを一人必要としているという事は分かる。

 きっと昨日の、高坂穂乃果とやらもこのスクールアイドルμ'sの一員なのだろう。それで俺を誘ってきたって訳か。

 

 ……あいつ、俺の顔をしっかり拝んだ上で勧誘してきたとしたら凄ぇよな、ある意味。

 

 そこで、俺は気づく。

 

「いや、待て。裏にも何か書いてある」

『ほう、何て?』

 

 これはどうやら人が手で直接書き込んだようなものだ。小さな文字だが、女の子らしい丸っこい筆記体で書かれていた。

 

「『連絡ください。二年、高坂穂乃果』」

 

 ……って、あいつか。

 

『知り合いか?』

「まさかだろ。俺にお前以外の知り合いがいるとでも思ッてンのか?」

『はっはは、いや光栄だな』

 

 竜三はしばらく陽気な笑い声を上げた後、

 

『っと、悪い美雪。彼女が呼んでるからそろそろ行くわ』

「あァ、分かった」

『おいおい、嫉妬すんなよ?』

「どこをどう取ったらそうなる。死ね」

 

 そう言い捨てて通話を一方的に切る。

 スマホをそのまま枕元に置き、俺は再び手元の用紙に目を移した。

 

 ――連絡ください、ね。

 

 スクールアイドル。

 μ's。

 

 インターネットで検索にかけてみようかと思ったが、どうせ加入する気はないのだからそれも無駄な行為だろうと、俺は用紙をポイと投げ捨てた。薄紙はヒラヒラと空中を漂い、やがて表面を向けて床に落ちる。

 

「……そろそろ寝るか」

 

 時間は夜の一一時。

 まだ起きていられる時間帯だったが、特にやる事もないので俺は身体を毛布に深く潜らせる。

 

 もう忘れよう。

 

 笑顔で俺の手を握ってきた彼女の事も。

 敵対心を込めた視線を向けてきた彼女の事も。

 寝ればすぐに忘れられるかもしれない。

 

 さぁて、明日の学校どうしようか……。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 来てしまった。

 

 金曜日を終えて、明日から二連休だという事を考えれば今日一日くらいは頑張れる。

 

 それでも一、二時間目の授業が終えるとさすがに眠気がピークになってきた。

 俺は窓際の一番後ろの席で、暖かい陽射しがダイレクトに背中に当たり、その心地よさが睡眠へと誘う一番の誘惑だった。

 

 しかし、俺がその誘惑に乗る事を断固として許さないとでも言うように、目の前の席に座る女子生徒は席のイスごと身体をこちらに向けて俺に話しかけてくるのだ。

 

「ねぇ夜伽ノさん。あなた、大学は目指しているんだっけ?」

 

 絢瀬絵里。

 こいつは確か隣のクラスだったはずだ。

 

 本来、俺の前の席に座っている女子は休み時間に入る度に席を立ち、遠くの席の友達グループの輪に入っていく。おかげで休み時間は毎回彼女の席は空く。

 その席に、金髪の髪を後ろで縛った絢瀬絵里が座っているのだ。

 

 何の為に? こっちが訊きたい。

 

 俺は特に何も考えず、彼女の質問に対する答えを短く言う。

 

「さァな。まだ決めてねェ」

 

 頬杖をついて目を瞑った状態のままのせいで絢瀬の表情は見えないが、

 

「ちょ……もう三年の一学期はとっくに始まっているのよ? そろそろ決めておかないといい加減に厳しいわ」

 

 と、他人事の癖に焦ったように声を出す。

 

 だが俺からすれば余計なお世話だし、何より前置きなしにさっさと本題へ入ってほしかった。わざわざ隣のクラスまで来て、それが大学はどこに行くのかと聞きにきましたというだけではあるまい。

 

「ンで、何か用?」

 

 俺の言葉にその気を察したのか、絢瀬絵里はズイッ、と机越しに上体を俺の方に寄せてきた。

 その顔はかつて見た威厳ある生徒会長の凛とした表情ではなく、どこか甘く微笑んでいるようだ。

 

「あなた、スクールアイド――」

「断る」

「は、早いわね」

 

 やはり予想通り……というか完全に俺の勘だったのだが、この生徒会長もアイドルグループμ'sの一員らしい。

 

「まァどうせこンな事だろうと思ッてはいたがよ……」

「優しくない人ね。断るにしても言い方があるでしょ? けどそれはそうと、何で駄目なのよ」

「一つ、引き受けた所で俺にメリットがない。二つ、面倒臭い。三つ目はない」

「損得勘定で行動する人は将来ろくな大人にならないわよ。何でも面倒臭いで物事に対して関心を持たない人もしかりね」

 

 俺の答えに対して素早く自分の言い分を言えたからか、ふふんとでも言いたげな表情をする目の前の女がうざい。

 

 ……しかし。

 俺はこいつの笑う顔を、最近じゃよく見かけるようになったと思う。 

 

 去年から絢瀬絵里は主に生活指導の方で世話になっているが、彼女が笑顔でいる場面を見た事がないように感じる。廊下ですれ違う時だってそうだ。隣に東條希が歩いていたとしても、彼女はいつも余裕がなさそうに難しい顔を浮かべていた。

 

 その堅苦しい表情が今は引っ込んでいて、

 代わりに笑顔が浮き出ている。

 

「スクールアイドルに入って、何か変わッたンかね……」

 

 ボソリと呟く俺に、絢瀬絵里は怪訝顔で何かと尋ねる。何でもないと答えてから、一つわざとらしい咳払いをした。

 

「話は終わりか? ンじゃ早く自分の教室に戻れ」

「ねぇ、どうしても駄目なの?」

「しつこいですゥ」

「うちの部員の一人がね、あなたをμ'sのイケメンキャラとして立ち上げたいって言うのよ。私もその案、結構良いとその場では思ったんだけどね」

 

 ……イケメンキャラだと?

 俺が?

 どんな奴がそんな事……。

 

「あァ……高坂穂乃果か」

「えぇ。一度、あの子にも誘われたらしいじゃない」

「断ったけどな」

 

 そこで、授業開始のチャイムが鳴った。

 

「やば、先生来ちゃうわ。それじゃ夜伽ノさん、また来るわね」

「……いや、来ンなよ」

 

 俺の言葉は端から受け入れる気はないようで、絢瀬絵里は席を立ち上がるとイスを直し、やや早歩きで教室へと戻っていった。

 

 しかしやはり、生徒会長のあいつまでもがスクールアイドルに、か。

 スクールアイドルは今時の女子高生に人気なのだとか何とか、竜三が言っていた。絢瀬の奴、アイドルとかに興味があるようなキャラには見えなかったんだがな……。

 

 そう思ったが大して気には留めず、俺は前の席に本来の女子生徒が戻って来る前に再び机に突っ伏した。

 

ーーーーーーーーーー

 

「いやいや、それは違うで美雪ちゃん。エリち、今ではすっかりアイドルに対してやる気に満ち溢れとるけどな、別に特別アイドルに思い入れがあった訳やなかったんやで?」

 

 昼休み。

 

 昼飯を終え、渡り廊下へと続く階段に座る俺の隣で、東條希はそう言った。

 二段下には矢澤にこも座っていて、ストローでコーヒー牛乳を啜りながら、

 

「ま、これからにこがアイドルの極意って奴を叩き込んであげるんだけどね!」

 

 と、高らかに宣言している。

 

 ……つか、お前ら何でここにいんの?

 

「ほ~う? ならにこっちはエリちにダンスの極意を厳しく叩き込んでもらわんとなぁ」

「うぐっ――!?」

 

 二人はまるでこの現場に違和感がないといった雰囲気で会話を続けた。決してアウェイ感がある訳ではないが、どこか釈然としないこの違和感は何だろうか。

 

 まぁ、詰まる所、

 

「ンで、何か用かよ……」

 

 こう言っておけば自然と答えは返ってくる。

 

「ん~? うちらはただたまたまこの場所に座り込んだだけやで? エリちのアイドルに対する思い入れとかを訊いてきたんは美雪ちゃんやろ?」

「……」

 

 東條のセリフには毎度イラッとくる。すぐに相手をからかって答えをはぐらかすからだ。

 

「その絵里から聞いてなかったの? また来るって言ってたと思うんだけど」

 

 不意に矢澤がそう言った。階段の段差一つ分を占拠するように身体を伸ばす彼女は、下からこちらを見上げている癖にどこか偉そうな態度だ。

 

「普通、この場合は絢瀬本人が来るもンじゃねェのかよ」

「アレ? 美雪ちゃんったらエリちが良かったん? もしかしてお好みのタイプとか?」

 

 クスクスといたずらに笑う東條にまたもやイラッと来るが、俺が何かを言う前に矢澤の方が先にストローから離した口を開いた。

 

「まぁ結局、私達μ'sのマネージャー勧誘ってとこよ」

「それは絢瀬の方にも断ッておいたはずだ」

「まだうちらには何とも言ってへんよな?」

「……同じ事だろうが」

 

 これではっきりした。

 矢澤にこの方は何となく察していたが、生徒会長に続いて副会長までもが、この音ノ木坂のスクールアイドルってやつに参加しているらしい。

 

 だが、一つ分からない。

 

「お前ら、どうしてそう俺にこだわる訳?」

「別に、ターゲットをあんただけに絞っている訳じゃないわよ。他にも二度三度、同じ勧誘に当たっている子もいるし」

「それでもだ。なぜ俺を誘ッてくる。自分でも言えるが、俺は明らかにアイドル向きッて顔でも性格でもねェだろうが」

「あ、そこは別に心配いらへんよ? マネージャーだし」

 

 あァ、なるほど納得。

 

「それもそうだけど、希。穂乃果が言ってたでしょ。もし美雪が入るような事があったら、こいつはμ'sのイケメンキャラなのよ?」

「あぁ、そうやったなぁ。穂乃果ちゃんが言うんやから、きっとそうなれるで」

 

 それは絢瀬も似たような事を言っていた。

 

 そういえば。

 絢瀬からもこいつらからも『穂乃果』って名前をよく聞く。

 多分、高坂穂乃果の事なんだろうが……もしかするとあいつ、音ノ木坂のμ'sとやらの原動力となる存在なのかもしれない。

 

 まぁ、あれだけ威勢良く俺を勧誘しようとしたんだ。行動力だけはある奴なんだろうな、高坂穂乃果。まぁそれだけでどうこうできるって訳でもないと思うんだが。

 

 ……そろそろ昼休みも終わるな。

 

「あれ、美雪ちゃんどこ行くん?」

 

 立ち上がり、階段を登ろうとした所で東條に呼び止められる。

 

「もう授業始まンぞ。お前らもさっさと戻れ」

「あ、確かにそうやね。それじゃどうせ隣のクラスやし、一緒に行こー!」

「あ、ちょっ、あんたら待ちなさいよ! このにこにーを置いていくつもり!?」

「……なァ、そのにこにーッて何だよ」

「え~? 確か修学旅行でも教えたはずよね? まぁいいわ、もう一度見せてあげる。……すーっ――――にっこにっこに――」

「もういいわァ」

「ちょっ、あんたそれはあんまりじゃない!?」

 

 俺達は並んで教室へと続く廊下を歩いた。

 ふと、隣で東條が思い出したかのように俺を見る。

 

「あぁそや、美雪ちゃん」

「あ?」

「放課後、音楽室まで来てくれへん?」

「は? 嫌に決まッてンだろ」

「な? ほんま頼むわ」

 

 パン、と。

 東條は笑った表情の前で両手を合わせた。

 

「ほんと、これで最後にするから――――」

 

 





あ~、次はどういう展開にしようかな~。
と、一文字一文字書きながら毎度そう思っています。つまり迷走一歩手前。

読んでくれてありがとうございます!
感想お待ちしてます!

この説明がねぇじゃねぇか(#゚Д゚) ゴルァ!!……などといったご指摘も大歓迎です。
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