なんだかんだと、日数もそんな空けずに投稿する事ができました。
さぁて、優木あんじゅという人間性がよく分からないまま書いたので、もしかしたらどこか違和感を感じさせてしまう箇所があるかもしれませんが――それはご報告ください笑
お嬢様学校として世間に名を知られているUTX学院。
総勢一五〇名以上もいる芸能学科から選抜された精鋭三人で結成される、A-RISE。
一人は幼馴染みとして俺の頭に記憶されていた、統堂英玲奈だった。
最初こそ驚いたが、PV映像などで拝見したA-RISEメンバーの――統堂英玲奈のパフォーマンスで納得はした。
それに彼女はルックスも、艶めかしい四肢を見ても、アイドルとしては申し分なかった。
さて、そこで二人目の登場。
一部側面を布で仕切られた密室。
目の前には上下の下着だけを装備し、誘惑的な態度で俺の首元に腕を絡めてくる女の存在。
優木あんじゅ。
統堂英玲奈と同じく、A-RISEメンバーの一人。
彼女の事はもちろん、以前から知ってはいた。
A-RISEのPV映像で何度もその踊りと歌唱力を目の当たりにしてきたし、何度か統堂英玲奈からも話を聞いている。
しかし、こうして間近で見てみるとなるほど。
確かに綺麗だ。
画面越しでは伝えられない魅力がある。
スタイルだって英玲奈に劣ってはないだろう。
俺の胸やら内太股に密着する彼女の身体は柔らかく、肌にも手入れが行き届いているのが分かる。
「……でェ?」
しかし、いつまでもこの状態を維持している訳にもいかなかった。
身長差を活用した見下ろす視線で、俺は下着姿の優木あんじゅと顔を合わせる。
およそ、その距離は一〇センチもない。
「天下のA-RISEである優木あんじゅ様ともあろうお方が、俺にいったい何の用ですかァ?」
どうも彼女は、俺が夜伽ノ美雪である、という事を確認した上で、更衣室に連れ込んだ。
また俺の問いに、優木あんじゅは先程から変わらないような、小さな笑みを赤い唇に浮かべる。
「嫌ねぇ。そんな下から出られたら、こっちも困っちゃうわ」
甘美な響きだった。
何気ない言葉の癖に抑揚を効かせ、暖かい吐息と共に吐かれる声が首筋をくすぐる。
「確かに、私達A-RISEは東京都東地区での順位は首位だけど、あなた達だって三位まで登り詰めている。大した差はないじゃない」
しかし近くで見ると……こいつの繊細な茶髪はウェーブが巻いてあるのか、ただの癖毛なのか。
とにかくその毛先が数本、束になって俺の肌に当たるのでくすぐったい。
相手が俺ではなく、ただの男だったら、それだけで悶絶する程の興奮状態に上がっていただろう。
「今、二位に立っているあのグループ……えぇと、何て言ったかしら――?」
「……Sexy・Charmか?」
「あぁ、それよ、えぇ」
「ライバルだろうに。そンくらい覚えておけよ」
そう言うと、今度は優木あんじゅがなぜか、おかしそうに肩を震わして笑い出した。
……今更だが、この部屋の隣の更衣室には誰もいないんだろうな。
「別に、あの程度の子達はライバルなんてもんじゃないわよ。あなた達μ'sならすぐに追い抜けるわ」
他人事……のような態度ではないと感じた。
無責任な言葉とはまた違い、彼女の紫の瞳には、ただ確信めいたものの自信が映っている。
――いや、実際は他人事のように言った発言だったのかもしれない。
だとすると、間近で捉えている彼女の瞳に、そう感じる俺が呑まれているという事になる訳だが。
「はッ……何を根拠にンな事言ッてやがる。あれかァ? トップに君臨する女王様は、見下せる者にはお情けでもくれてやれッてのがUTX学院の教えなンですかァ?」
「ふふっ……あなた、相当捻くれた性格をしているわね」
……違う。
そうじゃない。
普段の俺はこうじゃない。
どんな人物だろうと、初対面の奴に対してこうも口数は多い方じゃない。
「……嫌な奴だな」
その呟きは、至近距離に位置する彼女の耳には当然届いたろうが、特に何も追求しようとはしてこない。
目の前の人間に、どうも本調子が出なくなっている。
「正直な話、私達A-RISEがライバル視……というか警戒視しているのは二位のSexy・Charmなんかじゃなくて、あなた達μ'sの方なのよ?」
A-RISEと言えば、誰もが勝者だと言う。
小泉花陽なら、自分の手の届かない遠くの存在だと言う。
第一回開催の『ラブライブ!』のステージで優勝を果たした王者。
現代の学生なら誰もが耳にしているような超有名人。
その一角から頂けた言葉には、どれだけの価値が詰まっていたか。
王者が自分達を警戒視している。
つまり、自分達を認めている。
「何がだ?」
「え?」
ふと気になり、俺はトップの存在に直接、訊いてみる。
収穫を期待している訳ではない、ただの好奇心に近い心情だった。
「μ'sの何が、そこまでお前らA-RISEの注目を引いたンだ」
その問いに、彼女はぼうっと俺を見つめた。
だが何も考えなしに、やはり他人事の口から出任せを吐いた訳じゃあるまい。
統堂英玲奈をよく観察していれば分かる。
目の前の存在を捉えていれば、よく分かる。
「……ふふ、うふふふっ。あ、あなたって、本当に面白い人ね。想像通りって言えば、ふふっ、まぁ、そうだし? それ以上って思えばそうかもしれないわぁ。とにかく、まぁ……ふふっ、期待を裏切らない方向に走ってくれたのは、本当に嬉しいわね」
しかし彼女が口にしたのは、どうも笑い声を上げるのをこらえるように腹に力を入れた、途切れ途切れのもの。
その顔も少し俯く形になっている。
その内容も、まったく質問と一致しない。
「……何の話だ」
「ふふっ、……いやね、私って結構、人間を贔屓しちゃうような性格をしてるみたいで――。私、μ'sの中で、ステージに立つ九人の女の子達よりも、夜伽ノ美雪ちゃん――あなたに一番興味があるのよ」
右腕を引っ込めたかと思ったら、やはり身体は離さず、人指し指を立てて俺の首筋になぜるように突き立てる。
目線を合わせたまま、マニキュアとピースが施される伸びた爪が、どこかの血管にやや食い込んだ。
依然として、優木あんじゅは妖艶な微笑みを浮かべたまま、艶やかな上下の唇の弾力を効かせながら喋り続ける。
「その男の人みたいなきつい口調とか、片髪を上げてよく見える、冷たく尖った真っ赤な目とか……。スクールアイドルに関わる女の子にしてはあなた、かなり特異なタイプなのよねぇ」
「……それがどうした」
「あぁそういえば、質問だったわね」
途端、切り替えるように彼女は言った。
「まぁ、これはツバサの受け売り評価なんだけどね――」
「ツバサ?」
そう疑問に言ってから、俺はハッとして思い出す。
「……あなたって、私の事を思い出した時もそうだったけど。何かをふいに思い出した際に、左の眉がわずかに動くの、癖なのね。ふふ、何か可愛いわ」
「どうでもいいだろうが。でェ? お前らのセンター様はあいつらの事を何だッて?」
一呼吸を入れて、優木あんじゅは口を開く。
「――本物を感じる」
……。
…………。
………………?
「……はァ?」
短い意見だった。
耳を疑うような言葉だった。
大きな事柄を小さく絞り込み、凝縮させた一言に纏めたにしても、と考えざるをえないものだった。
「あ? なに。 ……それだけ?」
「えぇ。ツバサが言うにはね」
俺から出たのは、深い溜息。
ただそれだけしかなかった。
「……あのなァ」
俺は優木あんじゅの前頭部を、茶髪を巻き込みながら鷲掴みにする。
きゃっ、なんて可愛らしい声の後に、俺は強引に彼女の身体を引き剥がすように押し退けた。
目の前に、下着のみでいる、あられもない姿のトップアイドルが映る。
もしここで誰かが更衣室のカーテンを開ければ、厄介な誤解を大声で叫ばれるかもしれない状況。
それすら危惧しない様子が俺にあった。
頭を抱えるように、銀髪をヘアピンで上げた方の側頭部を手で覆う。
「その、テメェらのセンター様のツバサに言ッておけ。女王様気分に浸るのは構わねェが、高校生のガキ如きが偉そうに評論家気取ッてンじゃねェッ、てな。カッコつけたセリフを吐きたくなる気持ちは理解してやらなくもないが、適当に選んだそれッぽい言葉で相手に点数を付けた所で、それはただの侮辱行為にしかならねェッて事もなァ」
そこまで言うと、俺のズボンのポケットで震動が起きた。
マナーモードに設定してあるスマホに、メールでも届いたのだろう。
取り出し、画面を起動してからメールボックスを開く。
新着件数は一件。
差出人は、星空凛と表示されている。
『用事ができたので帰ります』
メールやトーク画面では語尾を特徴付けない、彼女からの文章。
それを見た俺はすぐに部屋を出て、スペースを取った二つの更衣室の左側のカーテンを、容赦なく開けた。
「凛――」
「いやぁぁぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!?!?」
……その後、俺は女子更衣室を堂々と覗いた変態男という烙印を押されそうになるも、なんとか俺も女であると証明し、カーテンを何らかの間違いで開けてしまったという事で、警備員を納得させた。
「おい花陽、凛が急に帰ッちまッたンだが――」
『凛ちゃん、家に帰っちゃったのおっ!?』
「うおッ、耳痛ェ……」
今回は久しぶりに短く終わってしまいました。
次回更新は、少なくとも9月の13日以降になると思われます。
なぜ具体的な日付を言っているのかは――まぁ、予想できますかね(泣)
さーて、明日が夏休み最後だワッショイ!!
遊ぼうか勉強しようか迷うぞぉぉぉ!!
と、いう訳でみなさん、、二週間後にお会いしましょう!
次話もよろしくお願いします!