笑顔を咲かせた少女は紛れもなく…   作:西部荒野に彷徨う海賊

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 やっと試験が一段落つき、落ち着けました!
 という訳で、今日から連載再開です!

 みなさん、よろしくお願いします!!






69話 敵の本拠地へ

 

 

 

 混み合う電車の中は一駅間で済み、俺はホームにも大勢の人だかりができている、秋葉原駅に降りた。

 

 服装は黒のパーカーに灰色のジーンズ。

 肩から小さいサイズのエナメルバッグを提げている。

 

 改札を抜けて秋葉原の街に出ると、予想はしていたが、やはり周囲一八〇度から多くの視線を感じた。

 

 それもそうだろう。

 

 長い銀髪に、赤い瞳だ。

 特にこの街に俺のような外見の奴がいれば、随分と気合いの入ったコスプレイヤーか何かだと思われるだろう。

 

「すっげ、何だあの男……」

「誰のコスプレだろ……」

「一方通行じゃねぇの?」

「いや、一方通行はあんなに髪長くないだろう。それに服装からまず違うしな」

「おい、声かけてこいよ」

「コミュ障のワイには辛いもんやで」

 

 そんな会話が自然と耳に滑り込んでくるが、俺は構わず、脇見もしないまま目的地へと歩いていく。

 

 もちろん、俺はただショッピングがしたいだとか、メイドカフェで癒されたいだとかの理由で、秋葉原に訪れた訳ではない。

 

 この街でしか、存在しないものがある。

 

 事前にアポなんざ取ってない。

 自宅謹慎中の俺が、音ノ木の教員に見つかるリスクなんてものも考えていない。

 

 ただ目的は、はっきりとさせたかった。

 以前と同じ失態を犯さないためにも、念には念を、が必要だと思えた。

 

「……ほォ、随分と近いンだな」

 

 聞き覚えのあるメロディが聞こえてくる。

 視線の先にできている人の群れに、俺は目的地への到着を知った。

 

「にこや花陽に言ッたら、さすがにそこまでする必要はねェとか言われそうだが」

 

 独りでに呟く。

 

 だが、もう失敗は許されない。

 だからと、逃げるつもりは毛頭なかった。

 

 俺が一つの目的にここまで真剣になれるのは、やはりスクールアイドルに加入して、俺の中で何かが変化したのか。

 

 まぁ、考えるのは後でも構わない。

 そもそも、そんな余裕はないはずなのだから。

 

「やッぱでけェなァ……UTX学院」

 

 駅から繋がれる巨大な陸橋に立ち、その堂々と構えられた立派なビル校舎を見上げている俺は、何と小さいことか。

 

 幼馴染みと顔見知りを含む三人の女子高生が、スクールアイドルとしての衣装を着て、何かのスピーチをしているのが、ビルの側壁のモニターに映し出されている。

 

 

『ようこそ、UTX学院へ!!』

 

 

 ようこそ、か――。

 

「ならこッちとしても、歓迎されなくッちゃァ困る訳だがなァ」

 

 ゆっくりとした足取りで。

 俺は敵地へと踏み込む。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 あれから三分後だ。

 ものの一八〇秒しか経過していない。

 

 だと言うのに。

 

 俺を取り囲む三人の黒服の男達。

 狭苦しいながらも、セキュリティシステムが充実されている部屋。

 

 今の状況を簡単に言うとしたら――。

 

 

 隔離された。

 

 

「……いや、警備が厳重すぎンだろ」

 

 ただ身分証明書も通行許可証も見せないで入り口から無許可強引に侵入しただけじゃねぇか。

 

「そういえば……」

 

 今まで黙っていた黒服の男――多分、ガードマンとか警備員の類なのだろう――が、椅子に座らされた俺をサングラス越しに見下ろしながら、そう言ってくる。

 

「見たことのある顔だと思えば、音ノ木坂学院のスクールアイドルの、マネージャーではないか?」

「確か、夜伽ノ美雪、だろう。予選での順位も高いグループのことだから、名前や顔はこちらも把握している」

 

 もう一人の男もそう言った。

 

「それで、音ノ木坂のスクールアイドルのマネージャーが、この学院に何の用件だ。堂々と正面入り口から侵入してくる怖いもの知らず世間知らずの強盗などではあるまい。全国のスクールアイドルの頂点が存在するこの学院に、音ノ木坂スクールアイドルのマネージャーが訪れたことは、偶然でもないだろう」

 

 最後の一人の、やや日焼けの目立つ坊主頭の男が鋭く言う。

 

 ……つか、全員がサングラスにシャツの上から長袖スーツの重ね着って、どんだけ体裁を大事にしたいんですかねぇ。

 

 何も取り押さえられて監禁されたからと言い、両手両脚の自由を奪われた訳ではない。

 俺は身振り手振りでも交えながら、なるべく早い段階での解決を済ませようと口を開く。

 

「あァ。――まァ単刀直入に言うと実は、そのスクールアイドルの頂点に君臨しておられる『A-RISE』の三人に用があッてここに来たンだ。夏休みの間でも、この日中の時間じゃあいつらも学校でレッスンしてンだろ? あァそれとも、練習は練習でそういッた場所を占領してる訳か?」

 

 訪ねる風に言っても、三人の男達からは返事はもらえなかった。

 何を目論んでいるか分からない輩に、そう簡単に情報を渡す訳にもいかないのだろう。

 

 さすが、UTX学院だ。

 さすがはお嬢様学校だ。

 

 女子中学生から最も多くの人気を集め、スクールアイドルに関わらず、その学院総出の行動範囲の広さに政府からの援助も多く、籍を入れているだけで堂々と胸を張れる学院。

 

 全国のトップクラス。

 

 ただ歴史と伝統が濃いだけの音ノ木坂とは、遥かにレベルが違う。

 こんなこと、絢瀬絵里に言ったら叱られるんだろうが。

 

 しかし、俺としてもこの難関を通過しなくては話が始まらない。

 せっかく、行きたくもなかった西木野総合病院にまで足を運んで、一人の男を締め上げてまで来たというのに。

 

 だが、こっちにも切り札はある。

 社会に出たら名刺交換は後に重要な役割を担ってくれると言うが、やはり本当だった。

 

「俺は統堂英玲奈の幼馴染みだ」

 

 そう言うと、サングラスの上に浮かぶ男達の眉に、反応があった。

 

「昔から仲良くしてもらッている。今でも英玲奈は俺の家に来ては、たまに晩飯を食ッていくぐらいの仲だ」

 

 それに――。

 

「優木あんじゅとも、俺は友達だ。お互い『ラブライブ!』のサイトを通じて顔や名前は知ッていたし、初めて顔を合わせたのはつい最近だが、意気投合して仲良くなれた」

 

 実際、あの糞野郎とは友達でも何でもない。

 何着と同じものを持っていようが、俺のお気に入りの服に傷をつけてくれた忌まわしき女だ。

 

 だが、友達と言った所で、きっと彼女はそれを否定しない。

 面白がり、またなぜ俺がそんなことを言ったのかと興味を示してくるに違いないと確信していた。

 どう見ても、そんな性格だろう、あいつは。

 

「二人がこの学院にいるのなら、確認を取ッてもらッても構わない。『夜伽ノ美雪』ッつゥ名前を出すだけで、あいつらは分かッてくれるはずだ」

 

 しかし俺がここまで言っても、男達は互いの顔を確認し合うだけで、動こうとはしない。

 

 そうだろう。

 

 他の学校でも、いきなり他校の人間が訪問してきては、「ここに通っている友達に会いにきました~」などと言う輩を簡単に通す訳がない。

 

「俺は別に、『友人』としてあいつらに会いに来た訳じゃない。『音ノ木坂学院スクールアイドルのマネージャー』として話があッて、ここに来たンだ。あンたらは他の警備員とは違うタイプだし、A-RISE専用のボディーガードか何かなンだろ? なら、俺の言いたいことも分かるはずだ」

 

 実際の事実なんてどうでもいい。

 使える情報は使い、とにかく統堂英玲奈と優木あんじゅに会わなければならない。

 

「『ラブライブ!』の今大会について、重要な話をしにきたンだ。断ッておくが、八百長とかの相談を持ちかけに来た訳じゃねェからな。もッと、大事な話があいつらにあるンだ」

 

 その俺の言葉で。

 ようやく一人の――日焼けた坊主頭の男が動いてくれた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 随分と派手な部屋に通されたもんだ。

 

 長方形の型に白黒の模様を走らせたテーブルに、背もたれと肘掛けが同じ高さの不思議な赤色のソファ。

 

 床は大理石か何かで造られているようで、足音が高く鳴り、ほんの少し鏡の役割も果たしている。

 

 ピンク色の光彩を張る窓ガラスからは、秋葉原の街が一望できた。

 下を歩く人々が米粒に見えてくる。

 

 その部屋には、何やら高価そうな壺や、色とりどりに彩られる大量の花束。

 また、外国の美術館にでも飾られていそうな西洋風の絵画が、壁に掛けられている。

 

「どう考えても、高校の内装とは思えねェよなァ」

 

 一般人が簡単に入れるような場所ではないだろう。

 この部屋はどうやら、学生達が利用する食堂と隣接しているらしい。

 

「今日は無人でも、食堂も随分と広かッたが、……お嬢様学校の食堂じゃ、どういッたメニューがでてくるンですかねェ」

 

 俺も勉強さえできれば、UTX学院には入学できるだろう。

 学費については親父の給料などもあり、問題にはならないはずだ。

 

「まァ、どう見ても俺はお嬢様ッ感じじゃねェか」

 

 しかし、この部屋に通されてから一〇分以上は経過している。

 いつまで待たせるつもりなのだろうか、淑女の嗜みってやつがなってねぇぜ。

 

 部屋に通されてから出されたコーヒーもすでに飲み干してしまった。

 さすが、お嬢様学校なだけあって、コーヒーの豆もいいものを使っている。

 

 俺はソファに深く身を沈めた。

 もういっそこのまま両脚を机の上に投げ出したい。

 

「……しかし、このUTX学院」

 

 前から芸能学科の生徒は素晴らしい功績を残し、著名な卒業生も多くいると聞いている。

 また今活躍しているA-RISEは、歴代の中でもずば抜けて輝かしい存在となっていることで有名だ。

 

 ――仮に。

 将来、アイドルを目指している人間がいるのなら、UTX学院の芸能学科への入学権は、喉から手が出る程欲しいものだろう。

 

 それならば――。

 

「矢澤にこ……、あいつはどうして、音ノ木坂を選んだンだろうな」

 

 頭脳明晰な奴らが集う普通科とは違い、芸能学科は学力ではなく、才能と意欲を中心に見ているはずだ。

 

 矢澤にこからすれば格好の目標。

 だと言うのに――。

 

 

「ごめんなさい、待たせてしまったわね」

 

 

 俺の思考が脱線しかけたその時、その声はあった。

 

 慌ててソファに座る体勢を直すが、同時に違和感を感じた。

 

 この声。

 

 聞き慣れた統堂英玲奈ではない。

 甘ったるい優木あんじゅでもない。

 

 なら、誰だ――?

 そこに通されたのがA-RISEのメンバーであるのなら、残りの一人は必然的に――。

 

「あ……、」

 

 真っ白な制服に身を包む。

 額を出した髪型が可愛らしいチャームポイントで。

 翡翠の瞳がとても濃厚で美しい――。

 

 

 

「初めまして、夜伽ノ美雪さん。A-RISEのリーダーを務めている、綺羅ツバサです。よろしくね」

 

 

 

 あぁ、クソッたれ。

 これはさすがに、予想外だったな。

 

 

 







 ようやく。
 本編69話目にしてようやく、綺羅ツバサの出番がきました!

 これで、ラブライブに登場してくる主要のスクールアイドルメンバーは一通り揃ったことになるのでしょうか?

 次話もよろしくお願いします!


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