突然ですが、こんな事ってありません?
二、三話後のお話の内容は思い浮かんでいるのに、なぜか次話の内容が纏まらない――。
西海です!!
「へぇ~。美雪ちゃんって料理得意なんだぁ。なんか意外じゃない?」
「普段はインスタントものしか口にしない癖に、私がお邪魔している時はとても豪勢なものを振る舞ってくれるぞ。風呂掃除はさせられるがな」
「一人で飯作ッて一人で食ッて、それの何が楽しいンだッて話だろ」
あれから俺達四人は、UTX学院の一三階――普段、A-RISEが使用している休憩室で、しばらく談笑していた。
俺が通された客室と同じくらいの面積。
四方の壁にマーブル模様が走っていて、四角いテーブルと四つの丸いソファしか置かれていない、落ち着いた部屋だ。
「そ、それって……」
「ン?」
今まで黙っていた金髪メイドのメイがふいに口を開き、俺の隣の席で声をかけてくる。
「夜伽ノさんは、その……家で一人でいるのが、寂しいってこと、ですか……?」
「…………はァ?」
何を頓珍漢なことを。
ただ、一人分の飯を用意するのに――それも自分だけのものを用意するのに、金をかけて食材を捌くのも無駄な話だろ、というだけな訳だが。
「ほぉ、なるほどな。美雪の性格だけを見ていたので、そこは盲点だったな」
「なら、今度から英玲奈と一緒に私もお邪魔しちゃおうかしらぁ? 正直、もう学院から用意されるディナーにも飽きちゃったし」
「来なくていい。つか、UTXの豪華ディナーに飽きがきたとか舐めてンのか。世の中には満足に腹を満たすことができない人達も大勢いるンだぞ」
「お前、普段はそんなこと言うキャラじゃないだろう……」
独りが寂しいとは思ったことはない。
強がりではなく、誓ってそうだ。
かと言って孤独を好んだ訳でもない俺だから、英玲奈や竜三といった友人がいる。
音ノ木坂でだって、スクールアイドルのマネージャーを始めてから、新たに九人もの友達ができた。
……そう考えると、柊蒼太郎は別に友人関係では、ないか。
あと、あいつ……何という名前だったか……や、ゆ……ゆ――夕霧。
そう、夕霧靜霞だ。
彼女とは――いや、違うだろう。
「わ、私も、夜伽ノさんの手料理、というものには……えと、興味が、あります……」
相変わらず恥ずかしそうに、やや俯いて発言するメイに、俺はなぜ、さっきまで自分を殺そうとした相手に手料理を言い寄られているのかと、奇妙な気分になる。
「なら、機会があれば美雪の家に招待しよう。親父さんが遠征の時がいいか?」
「家主の許可も聞かずに何勝手に話を進めちゃッてくれてるンですかねェ英玲奈さン」
そこで。
優木あんじゅは指をパチンと鳴らしたと思ったら、両脚を組み、ソファに座りながら考える風なポーズを取る。
「そういえば……、もう少しで、神田の方では夏祭りね」
夏祭り。
その単語に、英玲奈とメイが反応を見せる。
「ふむ……そういえばそうだな」
「去年、行きましたよね。日本のお祭り、とても楽しかったです」
……そういや当然、メイは外国人だよな。
ブロンドの髪を見れば、西洋のどっかだとは思うが。
「まぁ最も、美雪は夏祭りなどに興味は示さないか」
分かりきった解答をつまらなさそうに言う英玲奈。
それに、俺は表情を変えず、彼女の予想を切る。
「いや、行くぞ」
「……は?」
この反応。
やはり俺は昔から、祭りなどの行事などには関心がなかったのだろう。
「あら、デート?」
「勘違いするな、遊びに行く訳じゃねェよ」
夏祭りに出向いて遊ばないとは何ともおかしな話だが、なら出店の手伝いでもするのかと言われれば、その可能性もない。
「なら、夏祭りに何をしに行くんだ?」
「あァ~、……まァ、一種に監督役みたいな、仕事をな」
俺の答えに、三人は真意を掴めない様子で首を傾げる。
俺が夏祭りという行事に出向かなければならなくなったのは、前から決まっていた話だ。
そもそもこれは、俺自らが志願したものであり、また協力者だっている。
「つッても、俺の仕事は祭りの方じゃなく、最後の花火の場面がメインで――」
そう話していた時。
休憩室の扉が開かれた。
「あら、お揃いね」
綺羅ツバサ。
真っ白い制服姿の彼女と再び、俺は顔を合わせた。
「ツバサ、どこに行っていた」
「あら、聞いてない? 少し前まで、夜伽ノさんとお話をしていたのよ。少し依頼もされたしね」
「……依頼?」
優木あんじゅが疑問に思っている。
綺羅ツバサの奴、他のメンバーに連絡の一つも入れていなかったのか。
「はっ……す、すみませんツバサさん。すぐにどきま――」
「いや、俺がどくよ。用件さえ済めばすぐに出て行くつもりだッたしなァ」
慌ててソファから立ち上がるメイを制止させ、変わって俺が腰を浮かす。
「夜伽ノさん、はいこれ」
「サンキュ」
綺羅ツバサから手渡されたのは、ケースに入れられた一枚のマイクロチップ。
「頼まれたものは、オリジナルに一つのファイルを作って入れておいたわ」
「助かる。……つかよ、いいのか?」
「あら、なにがかしら?」
「はッきり言ッて今のお前は、敵に塩を送ッているようなもンだぞ。わざわざ初対面の俺に――」
「別におかしなことはないわ。テスト前に、お互いの知識を共有しながら学生は勉強会というものを開くでしょ? それと同じよ」
「……まァ、確かに理屈じゃな」
俺達のやり取りを、英玲奈と優木あんじゅがポカンとした表情で見ていた。
まぁ、詳しい事情は後日でもいいか。
「そういえばメイ、平気だったかしら? いきなり夜伽ノさんに斬りかかろうとはしなかった?」
「うっ……」
「……あぁ、したのね」
苦笑するツバサに、俺は悟る。
やはり、メイというのはどこか危険だ。
今日のような出来事を、きっと事あるごとに引き起こしているに違いない。
それで、英玲奈からお小言をもらっているのだろう。
「世話になッたな。今日はこれで帰るわァ」
「もう少しゆっくりしていってもいいのよ?」
「いや、この後も少し用事があるンだ」
あ、それと。
俺は思い出す。
「あのケーキ、食えずに済まなかッたな。俺はあまり、甘いものは好きじゃない」
「いえ、いいわよ別に。代わりに私が美味しく頂いたから……はっ!?」
急に。
綺羅ツバサの顔色が変わった。
また同時に。
いつの間にか、顔を般若にした英玲奈と、悪寒すら感じさせる笑顔の優木あんじゅが、綺羅ツバサの背後に回っている。
「ほぉ、ツバサ。今の話、詳しく聞かせてもらおうか?」
「ツバサちゃんったら、まさか糖分摂取を超制限されている私達に黙って、お客様のデザートを平らげていた、なんてことはないわよねぇ?」
「あ、いや……あははは……」
……女ってやっぱり分からん。
ケーキ如きでどこまで必死になれるのか。
「はァ……おい、今日は世話になッた」
少し別れの声をかけたが、三人とも気づかない様子だったので、もういいやと、俺は休憩室を出ることにした。
「あ、あの夜伽ノさん! も、もし、良ければ、その……私が、出口までご案内しま――」
「いや、結構だ」
殺されそうだから。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「お帰りですか、夜伽ノ美雪さん」
「あァ、悪かッたな騒がせて」
俺の命の恩人――色黒坊主頭のボディーガードに軽く挨拶を交わした後、俺はUTXの校舎を出た。
時間は午後の三時を少し回っている。
まだ太陽はかんかんに輝いていて、さっきまでの休憩室の涼しい環境が早くも懐かしい。
「さッてと……海未の家にでも行くかねェ」
目的地をまず定める。
園田海未の自宅に訪問することが、俺の今日の最後の用事だ。
以前に、俺が海未に託したある依頼。
合宿から帰ってきた時に訊いてみれば、どうやら話は順調に進んでいるらしい。
「はァ……あッつ」
パーカーのファスナーを全開にすると、胸元が大きく開けられた半袖のシャツが前から見られる。
胸元が開いていようと特に羞恥心はないので、構うことはない。
ひとまず駅まで歩こうと、強い紫外線に止められた足を再び動かそうとした、その時だった――。
「美雪ちゃん!!」
聞き覚えのある声が耳に飛び込んでくる。
しかしいつものうるさい程の元気な声ではなく、余裕のなさそうな、切羽詰まった大声だった。
「や、やっと見つけた!」
「うおッ――ど、どうした穂乃果」
現れたのは、制服姿の穂乃果。
汗だくで、綺麗な髪をバサバサに乱しながら、俺のパーカーの襟元を軽く摘んで、確かに捕まえてくる。
息を切らし、熱い息を吐きながら、片手で震える膝を支えてる。
どうやら相当、疲労しているらしい。
「どうした、制服姿でランニングですかァ? 熱心なのは構わねェが――」
そう言いかけた時だ。
「っ……、な、今まで何してたのさ!!」
叱るような、大声。
何かを訴えかける瞳。
思わず、息を詰まらせる。
高坂穂乃果のこんな顔を、初めて見たから――。
「美雪ちゃん、自宅謹慎中でしょ! こんな所を先生に見られでもしたら、μ'sの活動に影響するだけじゃなくて、美雪ちゃん自身の進路にも関わってくるんだよ!?」
……何だ?
俺、高坂穂乃果に説教されてんのか?
「……いや、待てよ。俺はμ'sのマネージャーとして少し仕事を――」
「それなら私達に頼みなよ! どうして一人で行動するのさ!」
「いや、だから……俺はマネージャーで――」
「マネージャーだから一人で行動しなきゃいけない理由なんてない!!」
俺の言葉をことごとく切り、話も聞かずに怒鳴りつけてくる彼女。
それが、正論に聞こえるから俺としても、どうしようもない。
「頼ってよ……」
パーカーから手を離し、悲しそうに眉を寄せる穂乃果。
その表情で、先程のメイのことを少し、思い出した。
「何かする前に、せめて、私達に一言は言っておいてよ……」
一歩。
穂乃果が俺に近づく。
その頭を、俺の胸元にポスンと落とした。
「信頼、されてないみたいで……悔しいし、寂しいじゃん……」
ボソリと呟かれる言葉。
実に、高坂穂乃果らしくない、萎んだ声。
信頼されていない?
寂しくさせた?
俺としては、そんな意識はどこにもないはずだ。
だが、どうやら俺の行動で、メンバーに不安と物寂しさを抱かせた。
周囲は人だかりでうるさくざわめいているはずなのに、なぜか俺と穂乃果の周りだけ、寂寞としている気がした。
「……悪かッた」
納得した訳ではない。
ただ、確かに非はあるようなので、そう言っておく。
俺の胸元で、穂乃果の頭が小さく頷くのが分かった。
「撫でて……」
「は?」
「……頭、撫でて」
拗ねるような声。
顔をパーカーの布地に埋めながら、彼女が言う。
「お前、そんな甘えん坊のキャラだッたかァ?」
「いいから! 疲れたから撫でてほしいの!」
思わず溜息を漏らす。
人の頭を撫でた経験なんて、はっきり言って皆無だろう。
「ッ……」
慣れていないせいだ。
不用心に、穂乃果の綺麗な髪に、右手を置いてしまいそうになる。
「…………」
しばらく、固まっていた。
時間差に不満を感じたのか、穂乃果が俺の胸に、頭をグリグリと押し付けてくる。
早く撫でろ。
そう言いたいのだろうか。
右手を下ろし、俺は穂乃果の殺伐と乱れてしまったオレンジがかった髪を直すように、左手で撫でてやる。
経験のない動作に、手の動きがぎこちないかもしれない。
優しく、丁寧にを心掛けた。
「これでいいか?」
「……うん。ありがと」
ようやく、穂乃果は俺の胸元から頭を離した。
額の部分だけに前髪が張り付いていて、少しおかしく思う。
「穂乃果! 美雪!」
また覚えのある声に、秋葉原駅の方向に視線を上げると、鞄を持った制服姿の海未が、走ってやって来ている。
それを見て、俺は思う。
やっぱり、頼れていない訳じゃない。
「なァ、穂乃果」
「?」
「やッぱりよ、俺はお前らを頼りにしているよ」
頼ることは罪ではない。
やはり俺は、孤独を好んでいる人間ではないのだ。
「少なくとも今年の夏祭りでの企画は、計画こそは俺が立てたが、それでも一人じゃ成し得ないものだッたからなァ」
俺はもう、ずっと前に。
この時の為に、園田海未を頼っていた。
ラブライブssを読み漁って心がぴょんぴょんしています西海です。
夜伽ノ美雪にならってブラックコーヒーを飲み始めて約二ヶ月。
もう慣れましたし、全然いけますね(^^
缶コーヒーおいちい(小並感)
さて、美雪が海未ちゃんを頼っていたというお話――。
覚えがないなと思う方は、本編37話をチェックお願いします!