「ふぅ……これで、このデッキは完成かな?」
1人の少年が父親の誕生日プレゼントであるカードを基にデッキを組んでいる。
彼の名前は
彼が父からプレゼントされたカードは最近導入されたばかりの特別な召喚方法のカードであるが、父がこの世界においてトップクラスの大企業レオコーポレーションの技術部の幹部の1人であり、シンクロ召喚を導入する際に大きく貢献したことから特別に報酬としてもらうことができたカードだ。
「しっかし、シンクロか~……使ったら、本当に面白そうだね」
彼が手にしたカードは白い枠で囲まれたモンスターカード、シンクロモンスターのカードである。この世界ではデュエルモンスターズにおいて三つの特別な召喚方法である融合、シンクロ、エクシーズは最近導入されたばかりさらにはその使用方法を知っているのはその召喚方法をもたらした企業レオコーポレーションが運営しているデュエル塾、LSDのカリキュラムの専売特許とも言えるものだ。
「だけど……
このデッキは遊矢たちとのデュエルではあまり使えないよね……
それに僕みたいな奴がこれを使うなんて……ちょっと……」
しかし、少年はせっかく手にしたシンクロ召喚と言うデュエリストにとっては強力なアドバンテージを手にしながらも使うことを躊躇っている。
その理由には大きな理由が二つある。永慈にとってはデュエルとはデュエル塾の友人との大切な繋がりであり、友人たちが持っていない特別な召喚方法であるシンクロ召喚を自分だけが使うのは卑怯な気がしてならないのだ。そして、もう一つの理由は彼がシンクロモンスターを手に入れたのが正規の方法であるLDSのカリキュラムを終えて手に入れたのではなく、会社に勤めている父親がシンクロ導入時による功績をあげた謝礼によるもの、つまりは親の七光りやコネとほぼ同じものでありそれが大きく彼自身の気を咎めさせるのだ。
実際、彼にとってはこのことが原因で前者の理由が生まれている。それならば友人たちにもシンクロの方法を教えればいいじゃないかと思うが、技術部の父親から一からシンクロ召喚のノウハウを叩きこまれたとは言え、LSDで完全にシンクロ召喚のカリキュラムを修めた訳ではなくしっかりとシンクロ召喚を教えられる自信がないのだ。つまり、実力はあるのだがその目安となるものがないのが原因なのだ。
もちろん、彼としては尊敬する父親が誕生日にプレゼントしてくれたカードたちを使いたいと言う気持ちが強いが、踏ん切りがつかないのだ。
「くそ、遊矢にいつも偉そうに言ってるのに……情けないな……」
彼は自分の友人である榊 遊矢に一緒にお節介、悪く言えば「上から目線の言葉」を言っていることと自分の今の様子を省みて重ねたことで自虐的になった。もっとも、彼が遊矢にお節介をやいているのは純粋な友情から来るものではあるが。
彼と遊矢たちは三年前、父親の転勤でこの舞綱市に引っ越して来た時からの付き合いになる。当時、いや、今でも遊矢はとある事件が原因で周囲からの重圧に苦しめられている。
それは遊矢の父親である榊 遊勝の失踪が原因だ。遊矢の父親は三年前、この世界において最高のエンターテイメントであるアクションデュエルにおけるチャンピオンであった最強のデュエリストであった。だが、三年前の王座防衛戦において突然謎の失踪を遂げてしまい、そのまま彼は行方を眩ました。そして、彼は世間では「卑怯者」、「臆病者」と呼ばれる様になりそのシワ寄せは息子である遊矢に向かい、遊矢は苦しい目に遭っていた。
そんな時に永慈はこの舞綱市に引っ越してきた。そして、偶然にも遊矢と同じ小学校に転校し、さらなる偶然として彼は遊矢と同じクラスになったのだ。
引っ越してきたばかりの永慈は遊矢を取り巻く環境に影響を受けていなかったこともあり、当時、卑屈になっていた遊矢に話しかけることができたのだ。そして、周りが榊親子を馬鹿にしてもそれを意に返さなかったのだ。
元々、永慈は遊矢の父親、遊勝の大ファンでもあるのだ。もちろん、幼かった彼にとっては遊勝が失踪を遂げたことにはショックを受けたが、それでも遊勝の実力と彼のアクションデュエルを知り尽くし、遊勝のデュエルの腕を知っていることから彼が逃げたなど思っていなかったのだ。しかし、彼が遊勝のファンでなくても彼と遊矢の友情は変わらないだろう。何よりも彼は遊矢と同じように自分の父親を心の底から尊敬している人間だったのが大きい。だからこそ、周囲が遊矢の父親を馬鹿にすることに反感を覚えることもできたからこそ、遊矢と友人になることができたのだ。
その後、父親に最高峰のデュエル塾であるLDSに入ることを勧められるが、遊矢との友情のために彼が所属するデュエル塾、遊勝塾に入塾した。その後に遊矢の友人である幼馴染である遊勝塾の塾長の娘である柊 柚子や権現坂道場の跡取りとなる権現坂 昇とも友人になることができたのだ。
もちろん、彼もデュエリストの端くれゆえにシンクロ召喚なしでも限られたカードを使うことで戦うこともできるし、遊勝塾で学んだデュエルのノウハウやエンタメデュエルの心、技術者であると同時にLDSの特別講師もたまに務める父から教わったデュエリストに信念をしっかりと心に刻んでいる。
「とりあえず、このデッキは封印しておこう。」
だが、やはりある意味ズルして手に入れたとも言えるシンクロ召喚を使うことに関して、どうしても彼は踏ん切りがつかないのだ。
「これじゃ、約束守れないじゃないか……」
永慈は自分の優柔不断さと遊矢の普段の行動にさらに自虐的になってしまった。
彼と遊矢は3年前にとある約束をした。
「よし、行くか」
永慈は今日、自らが所属するデュエル塾の体験入塾における手伝いをすることになっている。遊勝塾はデュエル塾の中でも弱小塾のために講師が塾長の柊 修造しかおらず、LDSで特別講師をする父を持つ永慈はたまに講師を代理で行うこともしているのだ。
そして、永慈は仲間が待っている塾に向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「俺の熱血指導がああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
塾の外にも響く落胆が込められた叫びが発せられた。
「ちょっと、先生、落ち着いて下さい!焦っていても、問題は解決しませんよ。」
頭を抱えている自分の師である修造に永慈は自身も焦りを感じて頭を抱えたくなっているがとりあえず、修造を落ち着かせようとした。
そもそも、なぜこの様に修造が叫びをあげたかと言うと
「それはわかっているぞ、永慈……けれどな、ソリッドビジョンシステムは壊れるわ……せっかく、来てくれた入塾希望者を逃がすわ……これじゃあ、我が遊勝塾の経営がああああああああああああああああああああああ!!」
そう、あまりにも今日行われた体験入塾においてのトラブルが立て続けに起きたのが原因だ。
後者のトラブルはいづれ挽回できるにしても、前者のトラブルはこのアクションデュエルが人気を博する世界、特にあの伝説のエンタメデュエリスト榊 遊勝が創設し、塾生の誰もが目標としている遊勝塾においてエンタメデュエルの実践トレーニングができなくなると言う致命的な損失を受けたのだ。これはあまりにもデュエル塾としては致命的すぎた。
いざとなれば、永慈がシンクロを教えると言う手を使って塾生を集めることもできるが永慈は決してそれは絶対にしないことを心に決めている。理由としてはもちろん、先程説明した永慈の後ろめたさもあるが、何よりも遊勝塾はあくまでも皆を楽しませるエンタメデュエルを信条としており、永慈が仮にシンクロ召喚を教えたとしてもそれで集まるのはエンタメデュエルを目的とした人間ではなく、シンクロ召喚と言う強い力を求めようとする人間しか集まらなくなってしまうのだ。それでは本末転倒であり、塾の信念が失われてしまうことを永慈は危惧しているのだ。
「なあ、土屋。お前のお父さんのコネで安くできないのか?」
そして、その原因を作った人間の1人、榊 遊矢が永慈に訊ねる。
「無理に決まってんだろう!?あれはかなり高いんだぞ!?それに僕の父さんが勤めているのは召喚方法の技術部門だ!」
とあまりの事態に永慈も動転していたことや今回の騒動の張本人の1人である遊矢の体験入塾における特別講義のふざけた態度に苛立ちを感じていたこともあり、吠えてしまった。いや、永慈は元々、日々の遊矢の態度に苛立ちを感じていたのだが。
「あ~、はいはい……柚子が壊さなかったらもっと笑わせてやれたのに。」
「遊矢がふざけるからでしょう。て、ちゃんと人の目を見て話せ!」
と柚子が遊矢といつもの様に夫婦漫才をし始め、その様子を見て永慈は内心呆れていた。そして、遊矢がいつもの柚子との絡みから来る経験から柚子の拳から避けたところ。
―ドゴ―
「いってぇ……」
すると、遊矢のゴーグルをつけた顔面は目の前の巨漢の身体にぶつかり、遊矢の顔面、特にゴーグルをつけた目の周辺に痛みと衝撃が走った。
「まだ、いたのかよ。権現坂……」
その巨漢は遊矢の親友であり、遊勝塾とは違うデュエル塾である権現坂道場の跡取り息子である権現坂であった。実は今日の体験入塾ではテストデュエルにおいてはいつもの様に永慈と遊矢がデュエルを行うのではなく、他のデュエル塾の人間との交流試合を行うことで色々な経験ができると言う点を魅力にしていこうと考えたのだ。そして、永慈は子供にも解かり易いレジュメを作成してデュエルの説明を行う役割をしていたのだ。
永慈は技術者であり研究者の父親の『いいか、永慈?どんな素晴らしい研究をしてもな、それを他人に解かり易く説明できない限りは完全に理解したとは言えないんだ。それじゃ、ただの独り善がりになる。』と言う言葉の影響でどんなことでも学んだことは常日頃から他人に説明できるまで自分で理解しようと最善の努力をしているのだ。
遊矢が少し、悪態をつくと
「あの少年は笑ってなどいなかった……!」
といつも、いや、いつも以上に憤りを込めて遊矢にそう言った。
それを聞くと遊矢は
「え?いやいや、結構笑っていたって……」
軽く笑いながら受け流そうとしたが
「笑わせるのと笑われるのでは天と地ほども違う!!!」
一種の迫力を込めた言葉で遊矢を叱咤した。
「お前の父親、榊 遊勝はデュエルでみんなを笑顔にしていた。
あの心からの笑顔を忘れたのか!!」
「権現坂の言う通りだよ、遊矢。あれじゃ、サーカスで言う魔術師じゃなくてピエロだよ。」
と権現坂に続けて遊勝の最高のエンタメデュエルの素晴らしさを遊矢に思い出させようと力説した。永慈もまた、遊矢のあのデュエル姿勢、いや、正確には普段からの遊矢の態度も非難した。
永慈は柚子と権現坂と違って、遊勝が失踪する前の遊矢を知らない。しかし、それでも遊矢が笑顔なのにどこか常に後ろ向きで消極的なところを察しているのだ。それに何よりも彼は榊 遊勝の大ファンであり彼のデュエルを知っており、録画しておいた遊勝のデュエル記録をしっかりと保存していることもあって遊矢のデュエルと遊勝のデュエルの違いが理解できるのだ。そして、多くの人間を楽しませるデュエル以外のエンターテイメントの代名詞と言えるサーカスを引き合いに出して、遊矢が魔術師ではなくピエロと例えたのは、遊勝が魔術師のように常に人々に感動と驚きをもたらしていたのに対して、遊矢がピエロのようにおどけていることを暗に永慈が常日頃から感じたからだ。
だからこそ、永慈は遊矢が常に『父のようなみんなを笑顔にするデュエルをしたい』と言う夢を知っていることもあり、遊矢の自暴自棄ぷりをなんとかしたいと思っているのだ。そして、もう一つは三年前に交わしたとある「約束」も関係している。
「ま、うちの親父も最後はみんなに笑われたけどね。」
「「「遊矢!!!」」」
当の遊勝の息子である遊矢は父親の失踪を茶化しながら軽くあしらおうとした。それに柚子、権現坂、永慈は抗議の声をあげた。この中で永慈だけは遊勝本人のことを知らないが、それでも三年前に遊矢が父のことをどれだけ周りに非難されようが尊敬していたのを知っていることから、今の遊矢の言葉だけは彼の本意じゃないことを理解し痛々しく感じ、遊矢にこれ以上自棄になって欲しくないと思ったのだ。
「えへへ……」
そんな友人たちの行動に遊矢はやはり無理をしているのか、笑ってごまかそうとていると
「おやおや~?何やらお困りのご様子。」
唐突に虎模様と黄色いサングラス、ちょび髭を生やした妙に胡散臭い男性が入ってきた。
「え~と……どちら様で?」
と修造が入ってきた男性に訊ねると
「私、アクションデュエルの現役チャンピオン。ストロング石島のマネージャー兼プロモーターをしておりますニコ・スマイリーと申します。」
自らの素姓を明かした。
「……!ストロング石島……」
その名前にこの場にいる全員が反応し、その中で特に遊矢が一番強い反応を示した。
それもそのはず、ストロング石島とは現在アクションデュエルの世界における王者であるがそれ以前に遊矢の父親が本来なら、最後に戦う筈であったデュエリストであり、榊親子を知る者なら誰もが否応にも反応する名前だ。
「LDSのイメージキャラクターを務めるストロング石島のそのファン感謝デイにぜひ、遊矢君をお招きしたいのです。」
「そこで俺が……ストロング石島と」
「そう、戦えるのです!あの三年前の願いが現実のものに~……」
「ぐ……」
(よりによって、ストロング石島て……)
ニコの説明を聞いて、遊矢は三年前の事件を思い出して苦虫を噛んだ様な表情をしだした。永慈もまた、当時のテレビ中継を見ていたこともあり、そのことを思い出し唇を噛んだ。
「ほれ、この通り。既に準備は整っております。」
ニコはさらにポスターを机に置いた。そのポスターには遊矢の顔写真が貼られていた。
遊矢はそれを見て、固唾を呑んだ。
「ダメだ。」
しかし、そんなニコの誘いに対して修造は即座に断った。
「遊矢をそんな場所に出すわけにいかない。」
と毅然と遊矢を庇おうと修造は答えた。
「えっ!?なぜです?あの榊 遊勝の息子が登場するとなれば、お客様も大喜び―――」
とニコが説得を続けようとしたが
「遊矢を見世物にはできん!!
……この三年間、遊矢がどんな思いで……」
彼は遊矢の父親である遊勝とはプロでは先輩と後輩の仲であり、遊矢とは家族ぐるみの関係であり、遊勝が失踪した後も遊矢を見守ってきた人物でもある。だからこそ、遊矢がどれだけ辛い日々を送って来たのかを知っているのだ。
そして、永慈もその遊矢が辛い日々を送ってきたことを知っている。
(先生……!)
永慈は修造のその言葉に感動を覚えた。永慈は教え子として、素直に修造のことを尊敬しようとしたが
「いいから、帰ってくれ!!」
「う~ん、それは残念……
お礼としてレオコーポレーション製の最新型のリアルソリッドビジョンシステムをお納めさせて戴こうと思っておりましたのに……
もちろん、無料で!」
「マジっすか!!」
―バコン!―
―ドガっ!―
「たった今、見世物にできないと言ったばかりでしょう!」
「いや、だって~……」
「いたた……先生、台無しですよ……」
「大丈夫か、土屋?」
「うん、ありがとう。権現坂」
修造の手のひら返しに柚子のハリセンが炸裂し、先程まで修造の言葉に感動していた永慈は修造の現金なリアクションに思わずずっこけてしまい、テーブルに額をぶつけてしまった。権現坂はそんな、永慈を心配して声をかけた。
「塾も大事だけど……」
「大事なのは遊矢の気持ちだ」
「いたた……うん、そうだよね。どうするの遊―――あれ?」
と友人三人が遊矢の気持ちを優先しようとして、テーブルにぶつけた箇所をさすりながら永慈が遊矢の方を振り向いて訊ねようとするが
「いない……」
その場に本人である遊矢がいなかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「はあ~……まったく、遊矢の奴どうするんだろ?」
永慈はベッドに仰向けになりながら、天井を仰ぎながらタメ息を吐いた。
あの後、遊矢は遊勝塾に戻らず結局、ニコは結局スペシャルマッチの準備を始めるらしい。
「まあ、僕も人のこと言えないかな……」
しかし、永慈もまた、遊矢に対して偉そうなことを言える立場ではないのだ。
「あいつ、僕と同じで進むのが怖いんだよな……」
永慈は父親に誕生日にもらったばかりのカードを活かそうと思って作り上げたデッキを目にしながらそう言った。
永慈は遊矢がどこか自分が傷つかない様に自分から道化を演じているのを理解しているのだ。だけど、それは仕方のないことだとも永慈は理解している。遊矢がこの三年間、どれだけ苦しくて悲しい日々を送ってきたのを永慈も遊矢と親しい人間と同じように知っているのだ。
そして、永慈もまた今なら遊矢の気持ちも多少は理解できるのだ。シンクロ召喚はやはり最近導入されたばかりの召喚方法であり、LDSの生徒しか扱えないこともあり使ったら嫌でも目立つものでもある。だからこそ、その重圧を知ることができるのだ。
もちろん、永慈の場合はシンクロ召喚については父親からシンクロ召喚の正式導入前に召喚方法の説明と練習をテストで受けていたこともあり、十分に扱える知識は培われているのだがそれでも決心がつかないのだ。
「はあ……」
永慈は今のデッキにする前から愛用しているカードを手に取って見た。それらは全て、幼い時に父にもらった頃から愛用し続けている四枚の罠カードであった。その四つの罠カードは変わった能力のカードばかりで他人からしてみれば、平凡なカードである。しかし、父のこれらのカードを渡す際の『まずはこの四枚のカードを完全に活かせるようになれ。そうすれば、デュエルの楽しみが理解できるようになって最高のデュエルができるようになれる。』と言う言葉の影響から子供の頃からデッキをどれだけ変えてもこの四つのカードを活かせる様に構築するようにしていた。
そして、父の言う通り、この四枚のカードのおかげで永慈はデュエルが楽しかった。ある意味では、お守りのようなカードでもあるのだ。
「本当は使いたいんだけど……」
永慈もまたデュエリストの端くれであることから新しいカードや召喚方法は使ってみたいと言う気持ちも強い。
そんな心の葛藤の中で永慈が悩んでいると
「まったく……何を悩んでいるんだか……」
「……え?」
突如、永慈しかいないはずの部屋に聞き慣れない声が聞こえてきた。
「幻聴……?疲れているのかな?」
部屋を見回して声の持ち主を探して見たが見つからず幻聴だと思ってそう呟いたところ
「幻聴じゃないわ、あなたの前にいるわよ。正確にはあなたの手に握られているけどね。」
「え?目の前って……」
とその声に誘われるがままに自分の手を見てみると
「デッキしかないんだけど……?」
彼が使いたくとも使えない大事にしておきながら使う決心がつかないデッキしか存在しかなかった。
「だから、それだって。」
「え?」
と再び、謎の声が再び聞こえて来たので言葉のままに目の前のデッキに目を向けると
「こんばんは~♪」
「て、うわ!?」
―ドガラシャーン!!―
突如、彼の持っているデッキの一番下、つまりは彼の目の前で表になっているカードから突然、栗色のショートヘアーをした下に黒いインナーとその上に各所に翡翠の様な石を付けた白いジャケット、ハーフパンツ、ブーツを身に纏い、その上に白いマントを羽織ったメイスの様な電極とコードが付いた杖を手にした半透明の少女が飛び出てきた。
それに驚いて、永慈はベッドの上から転げ落ちてしまった。
「あ、大丈夫?」
「いたた……え、ちょ、君、誰……?と言うか……身体が透けてる?」
突然の出来事に永慈は強打した背中をさすりながら、落ち着いてはいないがとりあえず目の前の少女の正体を訊ねようとした。
すると
「あ、ごめんごめん。私の名前はサイ・ガールよ!よろしくね、マスター!」
「は?」
彼女が名乗った名前を聞いた瞬間、永慈は思考が停止し自らのデッキと目の前の少女を見比べてしまった。それは当然である。なぜなら、目の前の少女の容姿と少女が名乗った名前は紛れもなく、自分が手にしているデッキの一番下のモンスターカードに記されたイラストと名前が一致したからだ。
唐突過ぎるこの出会いこそが彼と後に彼のデッキにおける縁の下の力持ちとなる精霊のカードとの出会いだった。
とりあえず、オリ主はこんな感じにさせて頂きました。あくまでも、アークファイブは遊矢が主人公なので、どうしてもオリ主が主役を食わないようにしないといけないので大変です。そう考えるとコナミ君てすごいと思えてしまいます。
次回はストロング石島戦を一気にやらせていただきます。