インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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簪のキャラが壊れている・・・


#04 テイク・オフ

「ーーつまり、空き部屋が今無いから臨時で別クラスである私の部屋に入ることになる、と・・・?」

 

『そうなるな。早めに何とかするから、それまでは辛抱してくれ』

 

寮の部屋に備え付けられた電話から寮長である織斑先生の申し訳なさそうな声を最後に受話器を置いて、私、更識簪は溜息を吐いてしまう。溜息は幸せを逃がすと言うけど、今の私は幸せ処か不幸すら逃げ出していること請け合いだ。

 

「あー・・・、織斑先生は何て?」

 

「・・・暫くは、この部屋で過ごせ、と」

 

未だに部屋の入口で立つ、扶桑睦月君の問いにそう返すと、彼は苦笑いをしながら参ったねこれはと言った。

 

「・・・とりあえず、部屋入れば」

 

「いいの?」

 

「・・・寧ろ外とかで寝られると、私が織斑先生に怒られる」

 

「あー・・・」

 

納得顔になった扶桑君が、部屋に入って私の隣のベッドに荷物を置いた。

彼はまだあって少ししかしないけど、不思議な男性だ。身長は私と同じ位で、栗色の髪は項辺りまで伸ばしてあって、顔立ちも相まって男性と言うより女の子と言われた方が納得出来る容姿だ。

 

「?僕の顔に何か付いてます?」

 

「・・・なんでも、ない」

 

そして何より彼の纏う雰囲気が不思議なのだ。

幼い頃から人付き合いが苦手な私がこんなつらつらと話せる、話せてしまう柔らかい雰囲気を扶桑君は持っている。

先程、放課後の整備室で会った時からそうだ。男ということで警戒していたのに、気付けば門限ギリギリまで話し込んでしまっていたのだ。

 

「ふう・・・更識さん」

 

「何?」

 

「とりあえず、これから宜しくね」

 

「・・・・・・」

 

「あれ?無視?」

 

ニコニコした笑顔から一転、不安げな表情になった扶桑君を見てやはり私は思う。

 

「・・・変な人だなって、思っただけ」

 

「え゛っ」

 

「・・・宜しく」

 

「うんっ」

 

また笑顔に戻った扶桑君、やっぱり不思議な人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・・・・ね、眠れない)

 

クラスの違う、更識さんの部屋に暫く相部屋となって最初の夜、僕は全く寝付けなかった。

時刻は既に深夜二時、色々部屋での取り決めを決めてから消灯したのが十時だったのでかれこれ四時間ずっとこうしているワケだ。

と、言うか。この状況下で直ぐに眠れるわけがない。

孤島に居たときはちゃんと束さんやクロエとは別部屋だったから良かった。けど今は仕切り一枚隔てた先に居るのだ。

 

(羊を数えるのも無駄に終わったし・・・ああ、どうしよう)

 

もういっそのこと朝まで起きてようか。いや、それだと確実に授業中寝る。そんな事したら確実に織斑先生の鉄拳が飛んで来る。別の意味で寝ることになりそうだ。

 

(というか更識さんすぐ寝ちゃったけど警戒心とかないのだろうか)

 

お休みと言い合って消灯してからはや数秒で眠りについた更識さんは緊張だとか無いのだろうか?

出会った最初の時の警戒心剥き出しな雰囲気は何処に消えた。

 

(あ、武装チェックしてないなそう言えば)

 

ついつい話し込み過ぎてしまって時間を忘れちゃってたんだよなぁ。

 

他愛の無い考え事をしていると不意に瞼が重くなる。

あぁ、漸く眠れる。

 

明日からどうしようかと考えつつ僕は眠りの世界へ沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、ふそっちは私のしんゆ~の部屋で一晩過ごしてどうだった~?」

 

「はい・・・?」

 

入学して二日目の休み時間、クラスメイトの布仏本音(のほとけ ほんね)さんに唐突に話しかけられた。

というか『ふそっち』って僕のアダ名か。

 

「ん?親友?」

 

「そそ、かんちゃん・・・簪ちゃんは私のだいしんゆーなのだー」

 

そう言ってえへんと胸を張る布仏さん。たぼついた改造制服の袖がゆらゆら揺れる。

にしても更識さんと布仏さんが親友、か。

性格的に真反対だと思うけど、だからこそ波長が合うのかも。

 

「大親友ですか」

 

「うん。だからふそっちと相部屋って聞いて心配だったんだ~」

 

「僕は何もしませんよ。出来るような胆力なんて無いですし」

 

代表候補生に手を出すとかそんな勇気があるわけ無い。僕はこれでも小心者なんだ。

 

「そかそか~、その言葉を信じよ~」

 

「ありがとうございます・・・」

 

「クラス代表決定戦、ガンバってね~」

 

言うだけ言って布仏さんは自分の席に戻っていった。何というか、マイペースな人だ。

 

「っと、更識さんに呼ばれてるんだった」

 

多分、ISのプログラミングについてだろうけど。まあ、更識さんと話すのは楽しいから良いんだけどね。

 

「ん?睦月、どこ行くんだ?」

 

「ちょっと用事を済ませてくるよ~」

 

一夏に手を振りながらそう返して教室を出る。

さて、今日はどんな事話そうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・それで?二人揃って結局事ここに至るまで一度も練習すらしていないと?」

 

「「ええと、はい」」

 

アリーナのピットでISスーツに着替えた僕と一夏に、織斑先生が盛大に溜息を吐いた。

入学式から丁度一週間、放課後の第三アリーナにて一年一組のクラス代表決定戦が始まろうとしていた。

これまで僕と言えば、

 

「更識さんと一緒にISのプログラミングばかりしてました、はい」

 

「織斑は?」

 

「俺は箒とずっと剣道してました」

 

「ド阿呆が」

 

「「すいません!」」

 

辛辣な織斑先生の言葉に二人揃って頭を下げる。

ええ、完璧に今日の事すっぽ抜けてました。

 

「はあ・・・仕方ない、織斑の機体はまだフォーマットとフィッティングが終わっていない。ぶっつけ本番だが、扶桑、やれるな」

 

「了解です」

 

織斑先生に頷き返して僕は待機形態のヘイズルを見る。

束さん曰く、新世代のテスト機体だそうな。

軽くスペック見たけど、これ、オーバースペックでしょ。

 

「睦月、頑張れよ」

 

「うん。僕の勇姿を特とご覧あれってね」

 

専用機の調整の為に別のピットに向かう一夏と織斑先生を見送ってから、僕はヘイズルを『起こす』。

身に纏うのは以前と変わらない黒と濃紺の全身装甲(フルスキン)。両手には少し大きめのハンドガンの様に見えるビームライフルを。

 

〔システム戦闘モード起動。 展開可能武装ロック解除。全駆動系オールグリーン。シールドエネルギー展開・・・戦闘状況開始可能〕

 

「よし、それじゃ行こうか」

 

システムチェックを終え、発進準備に入る。

ーーさあ、跳ぼうか。

 

 

 

 

 

「RX-121-1 ヘイズル[改]、行きます!」

 

 

オルコットさんが待つアリーナに向けて、僕とヘイズルは高く飛翔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





という訳で新機体(?)のヘイズル改です。
次回は対セシリア戦です。

次回もお楽しみに‼
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