インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~ 作:フォールティア
一夏対セシリア戦です!
「よっ、お疲れさん。完全勝利だったな」
「頑張りましたっ!」
試合を終え、ピットに帰還した僕を待っていたのは一夏だった。
返事をしながらISを解除した僕は、投げられたスポーツドリンクをキャッチする。
「ありがとう、一夏」
「スゲェ動きだったな、みんな驚いてたぞ」
「じゃあ一夏は更にみんなを驚かせないとね?」
「ハードル上げないでくれ・・・」
備え付けの椅子に座って暫く他愛ない話を楽しむ。
いやぁ、疲れた・・・。
十分位たった頃になって放送が入り、一夏の名が呼ばれた。
「っと、そろそろか。じゃあ俺は戻るな」
「うん、頑張ってね」
「おうよ!やるからには全力だ」
そう言って一夏は立ち上がり、ピットの出口に向かい、不意に立ち止まった。どうしたんだろうか?
「・・・なあ、睦月」
「何?」
「お前、二年前のモンドグロッソの時・・・ヘイズルに乗ってなかったか?」
「ーーーー」
不意討ち気味に放たれた言葉に一瞬、身体が硬直するけど、即座に苦笑いを張り付けて返事をする。
「まさか、無いよ。その時点でヘイズルに乗ってたら僕が『一人目』になっちゃうよ?」
「だよなぁ。ワリィ、変なこと聞いた」
「ううん、気にしないで」
謝罪の言葉を残して一夏はピットを去った。足音が遠ざかったのを確認してから僕は大きく息を吐いた。
あぁ、緊張したぁ・・・まさか助けた時に姿を見られちゃってたかな。
束さん曰く、今はまだ一夏が『一人目』であるべきだと言っていた。だからこそ、ああ返したんだけど・・・
「少し、警戒した方がいいかなぁ」
嘆息混じりの言葉は、疲労感と共に宙に消えた。
「よう、待たせたな」
「・・・もう油断はしませんわよ」
隙の無い構えをするセシリアに一夏はこうもハードルを上げてくれた睦月に内心苦笑いを浮かべた。
ただ、一夏は負けるつもりも無かった。己の身に纏う専用IS『白式』はフォーマットとフィッティングを終え、その名の通りの純白の装甲を見せていた。
その手に握るはかつて世界を二度に渡り制覇した実体刀、『雪片弐型』。
試合開始のカウントダウンが始まると、一夏は気持ちを切り換える。只の学生から、戦える者へと。
油断も慢心も無く、眼前の敵を倒すために。
【battle start】
「落ちなさい!」
「断る!」
開始の合図と同時に撃たれるスターライトの閃光を半身を逸らすことで回避し、セシリアへと突撃する。
当然、そう易々と近づけさせるセシリアではない。
四基のビット『ブルーティアーズ』を展開し、一夏の動きを阻む。
「ちっ・・・」
寸でのところでビットの攻撃を避けるが、距離を離されてしまう。一夏の持つ切り札の特性上、短期決戦が望ましいが、ビットによる多重攻撃を掻い潜るのは難しい。
多角的に襲いくるレーザーを危なげなく避けながら一夏は思案する。
(何か、何か手は・・・!)
そこで一夏はあることに気づく。それは先程の睦月の試合を見ていた時にも感じていた違和感だ。
ビットによって一夏の動きを制限しているのに何故かブルーティアーズ本体、セシリアからの追撃が無いのだ。このタイミングでスターライトによる精密射撃が放たれれば間違いなく白式は墜ちると言うのに、だ。
(ビット制御に集中しているのか、或いはビット使用中は射撃が使えないのか・・・なら、狙い目はそこだな)
「っつ、避けますわね・・・」
「望んで当たりたくは無いんだよ」
白式の持つ機動力の高さをもって、少し被弾しながらも致命的なモノは回避していく。
アリーナ内を大きく旋回しながらどうにか攻撃を避け続けていると、不意にビットの動きが止まる。
恐らくはビットの内蔵エネルギーが少なくなったのだろう。ビットがブルーティアーズの元に戻りだす。
(狙うなら・・・ここだっ!)
彼我の距離は凡そ六百メートル。白式の機動力をもってすれば無いに等しい距離だ。
瞬時に判断を下し、一夏は空を『蹴った』。
「なっ・・・!?」
何の予備動作も見せず、それこそ瞬間移動でもしたかのように接近した一夏にセシリアは混乱する。見る人が見れば理解するだろう、その歩法は『縮地』と呼ばれるものだ。
そして腰だめに構えられた雪片が真の力を顕す。
〔単一仕様能力 零落白夜〕
「ーーっ!」
銀の刀身が割れ、その間から蒼いエネルギーが刃を造り出す。
その能力は『あらゆるエネルギーを切り裂く』という、正に最強と呼べる力。
「刻め!」
我流で習得した抜刀術とISのアシストにより神速となった刃が振り抜かれる。
しかし、セシリアとて只で斬られるつもりはない。
「爆ぜなさい!」
ブルーティアーズのスカートアーマーが動き、その砲身を白式へと向ける。
「しまっーー!?」
まさに隠し技とも言うべくして放たれたブルーティアーズ唯一の実弾兵装、『ミサイルビット』が炸裂する。
轟音と爆煙が二人を包む。セシリアは油断無くスターライトmkⅢを構えながら後退しーー
「逃がすかよ!」
「此方の科白ですわ!」
左から現れた白式に向かってスターライトを撃つ。
同時に、零落白夜の刃が振り下ろされ・・・そして。
〔battle end〕
試合終了のブザーが鳴り響いた。
「と、言うわけで」
「「「「織斑君クラス代表決定おめでとー!!」」」」
「は、はは・・・どうしてこうなった」
時刻は夜の七時、無事クラス代表決定戦を終えた僕たちはこうして『織斑君クラス代表決定おめでとう会』というのを食堂を貸し切っておこなっている。一夏対オルコットさんの戦いはギリギリで一夏が勝利を掴んだ。試合の後、オルコットさんは何か熱っぽい目で一夏を見てたけどどうしたんだろう?今も一夏の隣に座ってニコニコしてるし。
「つーか、あんだけ模擬戦やったのに最後が俺と睦月のジャンケンってどうなんだよ?」
「仕方ないじゃない、アリーナの使用時間ギリギリだったんだし」
第二試合の後、アリーナの閉館時間が迫っているとの事で、僕と一夏が何故かアリーナのど真ん中でジャンケンをして、勝った方が代表ということで一夏が晴れてクラス代表になったのだ。
いやぁ、十回連続あいこ何て中々無い事が出来たよ。
クッキーをサクサク食べて疲れを癒していると皆から写真を撮られた。何故に。
「お、いたいたぁ」
暫く皆からお菓子を貰って食べていると、そんな声が僕の耳に届いた。
声の方向に向くと、一年一組ではない人がカメラ片手に立っていた。
「新聞部所属、二年の黛 薫子(まゆずみ かおるこ)です!早速だけどインタビューお願いしていい?」
「だってさ一夏」
「いやお前もだよ」
さっと逃げようとしたところを襟を掴まれて阻止される。おのれ一夏・・・。
「二人は仲良いね?」
「まあ、男子が俺と睦月だけだからなぁ・・・」
「寧ろ仲悪くてどうするんでしょう?」
ただでさえ居心地悪いのに更に悪くするとか下策でしかないと思う。
「ああ、そうだった。扶桑君、男なんだっけ」
「そうだったって、今まで僕を何だと思ってたんですか!?」
「「「「女」」」」
「クラス全員!?」
まさか食堂中から異口同音に返ってくるとは思わなかった・・・というか、僕はそこまで女っぽいだろうか?
「ねえ、一夏」
「何だ?」
「僕ってそんなに女っぽい?」
「あー・・・まあ、端から見たら、な」
「くそぅ、僕に味方は居ないのか!」
僕の慟哭をよそに、皆の楽しげな声は更に盛り上がっていった・・・あ、インタビューはちゃんとやったよ?
最後に必要なのは勇気だって言っておきました。
これにてクラス代表決定戦は終了、次回は休憩回です。
次回もお楽しみに‼