インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~ 作:フォールティア
今回はタイトルの彼女が出ます
「ふぁ・・・あふぅ」
「扶桑、どうした?寝不足か?」
「うみゅ・・・ちょっと夜中に電話がきてね・・・」
週明けの一年一組、自分の座席に座るなり大あくびをする僕に箒さんが声をかけてくれた。
日曜日の真夜中、いや日を跨いで今日の二時くらいに束さんから電話が来たのだ。
そこから色々話して気付けば朝の四時。普段起きるのが五時なので、ほぼ寝てないのと同義である。
その事を周囲に聞こえないよう小さく言うと、箒さんは額を押さえて溜息を吐いた。
「馬鹿姉が迷惑をかけるな・・・」
「もう慣れっこだよ・・・」
あの人に常識が通じないのは出会って三日で理解した事だし。
世間に伝わっている僕の境遇は、一夏と似たようなものだ。まあ、束さんが身元保証人というのが一夏とは違うところか。
束さんの関係者というのもあってか、先週、箒さんから話し掛けてきてくれたので、そのまま束さんに近況報告が出来るのは嬉しい誤算だ。
「おはようさん、箒、睦月。なに話してるんだ?」
「おはよう、一夏。睦月が寝不足らしくてな」
「メ○シャキを所望する~・・・うぐぅ」
自分の机に鞄を置いた一夏が僕の席に来るけど、当の僕は机に腕を伸ばして突っ伏してしまう。
仕方ないじゃない、眠いんだもの。
「おいおい、大丈夫か?」
「授業中に寝たら織斑先生が怖いぞ?」
うん、分かってる。分かってるんだけど・・・
「ごめん、もう無理・・・」
「寝てしまったな」
「仕方ねえ、時間になったら起こしてやるか・・・」
箒さんと一夏のそんな言葉を最後に、僕の意識は落ちた。
「で?どうしてこうなった?」
「それは俺が聞きてぇよ・・・」
現在三時限目のIS実習の時間です。えー只今一夏と僕は何故かISを展開したオルコットさんと山田先生に追いかけられています。
オルコットさんは正に修羅の形相で山田先生は苦笑いを浮かべながらこちらに照準を合わせてくる。
当然ながら白式とヘイズルを展開した僕らはそれから上手く逃げてるんだけど・・・
「ねえ一夏」
「なんだ睦月!今あんまり余裕がねぇ!」
「これ、僕が追われる理由ってある?」
僕としては山田先生だけ相手にしたいんだけど。射撃特化二人を相手取るとか鬼畜かと。しかも山田先生に至っては元国家代表候補だし。
授業内容は機動訓練だったはずだし。
「・・・いや、あれだ、同性のよしみでここは一つ」
「もぅ・・・後で食堂の白玉あんみつ奢ってね?」
「任せろ!」
仕方なくクイックターンを使って後ろを向くと、うん。何だろう、鬼神がいた。その背後から見える山田先生が天使に見える。銃口こっち向けてるけど。
「扶桑さん、そこを退いてくださいまし!一夏さんに質問出来ませんわ!」
「いや、今の貴女を見てただ質問するようには思えないんですけど!?」
容赦なく飛んでくるスターライトの閃光をシールドで受け流しながらツッコミを入れる。
山田先生は一夏の方に行っちゃったけど・・・まあ何とかなるでしょ。
「あの二組の転入生との関係について尋問(きく)だけですわ!」
「明らかに文字が違うよね、それ!?」
ああ、もう寝不足とこれまでの授業で織斑先生の注意(チョーク投擲、かなりの威力)を受けた頭が痛い。
あれだ、もうサックリ終わらせよう。
「オルコットさん」
「何ですの?」
名前を呼びながら右腕のシールドブースターを起動。脚部ブースターを逆噴射。
「この言葉を送ります。ーーーーしつこい女は嫌われるよ!」
そう叫びながらシールドブースターを殴り付けるように『発射』した。
「え、えぇ!?」
超高速で迫る鉄塊がブルーティアーズの非固定武装にめり込み、その機能を停止させる。
非固定武装は基本、バランサーの機能も持っている。その機能が高機動中に突然失われたらどうなるか。
「嘘おぉぉ!?」
あらぬ方向に飛んでいくオルコットさんを捕まえ、抱え込む。はい確保ー。
「全くもう、気になるのは良いけど、そう強気に出たら一夏だって答えにくいでしょ?」
「うぅ、私としたことが、冷静さを欠いていましたわ・・・」
どうやら少しは落ち着いたようだ。よかったよかった。
と思った次の瞬間、また修羅に戻ってしまった。
「あ、あの・・・織斑君?手が・・・」
「へ?あ・・・すいません!」
一夏が俗に言うラッキースケベを発動してしまったのだ。
何をどうすればそうなるのか、山田先生と変に絡みながら地面に倒れる一夏が先生の胸を触っていた。
「扶桑さん・・・離して頂けますか?」
「一応聞こうか。理由は?」
「粛正ですわ」
「・・・却下」
ヘイズルのマニピュレーター(指先)に隠された、スタンガンを起動して即座にオルコットさんを気絶させる。いやぁ、あってよかった対IS用スタンガン。
粛正ですわとか言ってるけど殺気凄まじかったし。あのまま離してたら確実に一夏が死ぬ。
「はあ・・・昼休みにでも聞いてみようか」
溜息を吐きつつ僕はオルコットさんを抱えて降下を始めた。
「ええと、つまり。鳳さんとの関係について知りたくてああなってた、と。箒さん含め」
「だからセカンド幼馴染みだって言ったんだがなぁ・・・」
昼休みの食堂にて、僕は一夏、箒さん、オルコットさんと共に昼食を食べていた。勿論、僕は白玉あんみつを一夏の奢りで貰っている。
どうやらオルコットさんの暴走の原因は今日二組に転入してきた、鳳 鈴音(ふぁん りんいん)さんと一夏が妙に親しげに会話していた事が始まりらしい。朝礼が始まる前だったから、丁度僕が寝落ちしてしまった後の事だ。
んーというか、そんなに激しく一夏の女性関係に反応するということは・・・
「二人は一夏の事がす・・・むぐっ!?」
「「余計な事を言うな(ないで下さいまし)!」」
「あ、こんなとこに居たんだ一夏」
二人係りで取り押さえられたところで、小柄なツインテールの少女が一夏に話しかけた。いやツインテールでもウル○ラマンの方じゃないからね。
「よう、鈴。お前も今から飯か?」
「私は食べ終わったところよ」
成る程、彼女が鳳 鈴音さんか。身長は・・・よし、僕の方が少し勝ってる。
「ん?もしかしてアンタが二人目?」
「もが・・・そう、ですけど?」
「ふぅん・・・」
そう言うと鈴音さんは二人の拘束から逃れた僕をまじまじとみ始めた。う、なんか恥ずかしいな、これ。
「何か兎みたいね、アンタ」
「う、兎・・・ですか?」
唐突に何を言い出すのだろうか、この人は。
「ちっちゃいし、何か雰囲気がね」
「ああ、それは俺も思った」
「え゛、一夏も?」
確かに僕は兎が好きだけど、まさか自分が兎に例えられるとは思ってなかった。
「まあ良いわ。私は鳳鈴音、よろしくね」
「扶桑睦月です。よろしく」
お互い自己紹介をしながらも、僕は鳳さんをなんだが猫みたいな人だなと思った。
シールドブースターは投げるもの(確信