インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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一夏くんはきっとイノベイター。




#11 乱入者

ギィンッーー!

 

鋭い音を鳴らしながら、白式の刀と甲龍の持つ青龍刀が激しく火花を散らす。

やはり、純粋な近接戦闘に関しては代表候補生に匹敵するレベルまで一夏は至っているみたいだ。

 

「オルコットさんはどうみる?」

 

「距離を離さない、これが肝になるでしょう。鳳さんはまだ余力を残していますでしょうし」

 

白式の弱点は遠距離に対応する武装が無い、ということだ。無いというよりも装備が出来ない。

それは白式の持つ単一仕様能力、〔零落白夜〕による。

零落白夜の能力はエネルギーシールドを無視して敵IS本体に攻撃を加える破格の能力だ。

当然ながらデメリットもあり、発動中は常時シールドゲージを消費するということと、もう一つ。

能力の演算処理に拡張領域の殆どを使ってしまうという事。

これが原因で、白式には今持っている刀、雪片弐型しか装備出来ないのだ。

 

「あとは、どれだけ早く決められるかだね」

 

「燃費が最悪だからな、白式は・・・」

 

故に一夏の基本的な戦いかたは超短期決戦。白式の速度と一夏の技術を持ってして相手を倒す他ないのだ。

幾度かの打ち合いの後、鳳さんが距離を取り始める。

当然、一夏は距離を詰めようとするが・・・

 

「何だ、アレは!?」

 

「見えない砲撃・・・第三世代兵器かな」

 

「第三世代型 空間圧作用兵器・・・衝撃砲ですわね」

 

甲龍の非固定武装から放たれる不可視の砲弾にやむなく白式が距離を離して回避運動を取る。

接近しながらアレを避けるのは至難の技だろう。

 

「回避方法は・・・空間圧で生じる音かな」

 

「そうですわね。視覚に頼っていたら確実に直撃しますわ」

 

何とも厄介な武装だ。目で相手の動きを観察しつつ耳で衝撃砲の音を捉え回避しなければならない。

一夏のポテンシャルでどこまで行けるか・・・

そう思ったところで変化が起こった。

というか一夏がやってのけた。

 

「「「・・・は?」」」

 

「避けにくいのであれば切り払えばいい、か。なかなかどうして、やるものだな」

 

連射された五発の衝撃弾を一夏はあろうことか切り払ったのだ。それも連続で。

鳳さんが驚きながらも更に衝撃砲を放つが、そのことごとくを雪片弐型で切り裂いた。

 

「ねえ、箒さん」

 

「・・・なんだ、睦月」

 

「一夏って、ホントに織斑先生の弟なんだね・・・」

 

「ああ、そうだな。弟だな・・・」

 

いやぁ、やることが人外じみてきてるよ一夏。

勝負をかけるのか白式の動きが変わる。何と、衝撃砲の雨の中を突っ切るように直進し始めたのだ。

しかも自分に当たりそうな弾は全部切り払って。

 

「これは、どうなるかな」

 

「零落白夜を回避されないスピードで当てるしか無いだろうな。相手は代表候補生だ、当然アレには触れたくないだろう」

 

「まあ、スピードに関しては切り札がありますから、心配はないでしょう」

 

「切り札?」

 

オルコットさんの言葉に疑問を持った僕の目の前で、白式が爆発的な加速で甲龍との距離を詰めた。

あれは、まさか・・・

 

「瞬時加速(イグニッションブースト)!?」

 

機体のブースターの向きを一方向に集中させて加速する瞬時加速はそれなり以上の技量が必要となる技だ。ブースターの点火のタイミング、停止の際のエネルギーコントロール等、とてもじゃないけど、ISに触れて数週間の人間が出来る芸当ではない。

 

「あれこそが切り札ですわ。燃費に問題があるのであまり多用は出来ないのが難点ですが」

 

「確かに、切り札だね」

 

鳳さんもまさか使えるとは思っていなかったのだろう、零落白夜を展開した雪片を辛うじて二振りの青龍刀で何とか防いでいる状態だ。

 

「これは、勝負ありかな?」

 

青龍刀を弾き、がら空きになった胴に零落白夜が振られる。

その時だった。

 

「上空より熱源!?」

 

「何!?」

 

山田先生の悲鳴にも似た叫びが聞こえるのと同時に、ガラスが割れるような音がした。

直後、爆発音が響き、アリーナ内を土煙が覆った。

 

「山田先生!」

 

「っ、システムハッキングを受けてます!シェルターロック、レベル4!此方からのアクセスを一切受け付けません!」

 

「ちっ・・・通信は?」

 

「何とか生きてます!」

 

「なら外部と連絡、シェルターの解除を優先!」

 

「了解!」

 

織斑先生と山田先生の会話を聞きながら僕は椅子から立ち上がる。

土煙が晴れたその先にいる存在に目を奪われる。

黒い外装の全身装甲。ケーブルが露出した異様に長い腕、そして六つの複眼を持つ頭部。

 

「何・・・あれ・・・」

 

ISと呼ぶにはあまりにも歪なそれは、複眼を赤く光らせ、一夏達へとその腕を構えた。

 

 

 

 

 

 

「くそっ、一体なんだ!?」

 

突如、アリーナのバリアを破って現れた異形のISに一夏と鈴音は対峙していた。

所属と目的を聴いても沈黙で返したそのISはおもむろに両腕を一夏達へと向けた。

 

「散開っ!」

 

嫌な予感がした鈴音の言葉に弾けるように白式を動かした一瞬後、巨大なエネルギー弾が元居た場所を高熱を残して過ぎ去る。

 

「一夏、大丈夫!?」

 

「問題ない。・・・あれは喰らったらひとたまりも無いな」

 

「下手に直撃したら一発で絶対防御発動までいきそうね・・・」

 

苦虫を噛み潰したような顔で鈴音が敵ISを睨み付ける。

交渉の余地もなく攻撃してきたのだ。もはやつべこべ言ってはいられないだろう。

 

「一夏、アンタはピットに下がりなさい!」

 

「冗談言うなよ鈴」

 

鈴音にそう返して一夏は通常の刀に戻した雪片弐型を構える。

 

「お前を置いて逃げるほど、俺は落ちちゃいない。それにーー!」

 

再度飛来するエネルギー弾を回避して、鈴音を見る。

 

「逃げようにも、簡単にはいかねえだろ。だったら、二人で倒した方が早いだろ」

 

言うが早いか、一夏は敵ISへと向かい加速する。

応戦するように両腕を振り回しながら敵ISはエネルギー弾を乱射しはじめる。

 

「ああ、もう馬鹿!突っ込むなあ!」

 

『ーー二人とも、聞こえるか?』

 

鈴音が一夏の援護に回り始めた時、白式と甲龍が通信を拾った。

 

「千冬姉か!そっちは大丈夫なのか」

 

『何とかな・・・現在、アリーナのシェルターが何者かによって全てロックされ生徒が避難できない状態だ』

 

「なっ・・・!」

 

「全てロックされている・・・って事は」

 

『ああ、そちらに向かっている教師達もアリーナの外から入れない。・・・二、三年の精鋭達で今解除を試みている』

 

弾幕の嵐を避けながら千冬から伝えられる情報を整理する。

現状、このアリーナは陸の孤島と化している。

シェルターのロックも恐らくは目の前のISの仕業だろう。

 

「つまりは、足止めをしろって事だな千冬姉」

 

『・・・そうなる。出来るか?織斑、鳳』

 

「・・・だってよ、鈴」

 

一夏のニヤケた顔をハイパーセンサー越しに捉えた鈴音は呆れ混じりの溜め息を吐いて青龍刀を構える。

 

「こちら凰鈴音、了解しました!足止めでも何でもやりますよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑先生」

 

「・・・何だ扶桑、それにオルコット」

 

「私達も出撃させて下さい。ここからなら何とかピットを経由してアリーナ内に向かえます」

 

眉根を寄せて一夏達の戦いを見る織斑先生に僕とオルコットさんで出撃を進言する。

どうにも、嫌な予感が拭えないのだ。

 

「扶桑、理由を言ってみろ」

 

「勘です」

 

「勘だと・・・?」

 

即答した僕に厳しい眼差しのまま織斑先生がこちらを向く。

まあ確かにふざけた事を言ってるように思えるだろう。言った本人が一番そう感じてる。

でも無視できないのだ。こいうときの悪い予感というのは良く当たる。

 

「・・・・・・はぁ、良いだろう。この緊急時だ、戦力は多いに越したことはない」

 

「ありがとうございます、織斑先生」

 

しばしの沈黙の後、織斑先生の許可が降りたので感謝の意を述べてから僕はオルコットさんと一緒にオペレーションルームを出て駆け出した。

 

ーー行事の邪魔をしてくれたんだ、新武装のテストの被検体にでもなってもらおうか・・・

 

「扶桑さん、何か怖いですわ・・・」

 

「ソンナコトナイヨー、コワクナイヨー」

 

 





次回、原作一巻目あたりが終了するかもしれません

次回もお楽しみに‼
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