インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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#01 世界転移

「どうしてこうなった・・・」

 

ごちゃごちゃとした機械だらけの部屋のなか、僕は天井を仰いだ。

一日前まで僕は病院に居た筈なのに、気づけばありとあらゆる意味で世界から隔絶した孤島に連れ去らていた。

 

「君の願いを叶えるためだよ、扶桑くん」

 

「いや、まあそれはそうなんでしょうけど、まさかこんな事になるなんて予想付きませんよ普通」

 

「この束さんに常識は通用しない!!」

 

「篠ノ之さんが天災って呼ばれる理由が少しながら解りましたよ・・・」

 

部屋の隅で何やら色々弄っている束さんの言葉に思わず溜息が出る。

言葉の通り、常識が一切通じない。というか通じてたら僕は今ここに居らず、ベッドの上でぐーたらしていただろう。

取り敢えず、ここに至る迄の出来事を思い返してみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話はきっかり一日前まで遡る。僕と篠ノ之さんがお互いに自己紹介を終えたところである。

 

「よし、という訳で善は急げ。早速行こうか、君に色々聞きたいしね」

 

「行くって、何処に?」

 

「私の家」

 

「ぶっふぁ!?」

 

相変わらず笑みを浮かべてさらりと言った篠ノ之さんの言葉に飲みかけていた水を吹き出す。いきなり何言ってるんだこの人。

 

「吹き出すことはないんじゃないかなぁ。ああ、私の職業言ってなかったね。と言ってもほぼ趣味だけど、科学者をやってるんだよ私」

 

「科学者・・・?」

 

とてもそうは見えない。どう見たってイタイコスプレイヤーにしか見えないし。一人不思議の国のアリスとかどう思えばやろうと思えるんだ。

 

「ここじゃ、ダメなんですか?」

 

科学者だと言うなら、それこそ病院に許可なり何なり得るべきじゃないんだろうか。しかも僕は幾つものケーブルに繋がれたこの状態。移送するにも色々と面倒な気がする。

そんな、何かと不安要素が浮かび上がる僕の思考に止めを刺すように篠ノ之さんはあっけらかんとした様子で、

 

「まあ、私が世界中から追われてる身だから、あまり長居したくないのが主だった理由だね、うん」

 

そんな重要な事を言った。

 

「・・・・・・・・・は?」

 

「まあ、細かいことは後で私の家で話すとしてぇ。ちゃちゃっと行っちゃおうか!」

 

「いや、ちょ、待って、待って下さいお願いしますからぁ!?」

 

僕の焦りなんて気にもせず、篠ノ之さんは素早く僕に貼り付けられた電極などを剥がし、点滴の針を痛みも感じない手際の良さで引き抜いていく。

当然その間も僕は説得を試みるも思い空しく。病院服のまま、どういう原理なのか、いつの間にか窓の外に浮いていた巨大なオレンジ色の機械(後にこれが人参型のものだと知る)に入れられて、篠ノ之さんの、「出発進行ー!」という言葉を最後に、僕の意識は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして目が覚めたらこの状態である。篠ノ之さんから此処がどういった場所なのか聞き出して泣きそうになる。あらゆるレーダー、監視衛星から見つかる事が無いとか何処のスパイ映画だと言いたい。挙げ句島の周囲には特殊な電磁波を出す機械が海底にあり、船舶や飛行機ですら気付かぬ内にこの島を大きく迂回するという。なにこの要塞、ジャブローなんて目じゃないね。

 

「で、篠ノ之さんは何をしてるんです?」

 

着いて直ぐに射たれた点滴のおかげで幾分かマシになった身体をベッドの上で動かして篠ノ之さんへと向く。

 

「君の経歴を調べてるんだよ。ああ、義足ついては私の『助手』が今造ってるから問題ないよ。多分、あと二時間位じゃないかな」

 

助手なんて居たのかこの場所に。義足を貰ったらお礼を言わないと。それよりも、僕の経歴なんて調べてどうするんだろうか?

そんな僕の視線を感じたのか、篠ノ之さんが端末を操作しながら話はじめた。

 

「事故現場で君を見た時に違和感を感じてね。調べてみたら君が着ていた制服の高校は存在して無かったんだ。勿論、生徒手帳も確認して、君の家の連絡先にも電話を掛けてみたけど繋がる処か電話番号が存在していなかった」

 

「・・・え?」

 

ゆっくりと、僕が冷静であれるように語る篠ノ之さんの言葉に呆然とする。僕の居た高校が存在しない?家に電話をかけても番号が使用されていない?なんだ、その冗談みたいな事・・・

嫌な予感が頭を過る。ありえない、そんなオカルトじみた事。漫画やライトノベルの中の話じゃないか。

 

「今、日本政府のネットワークに介入して君の名前を探したんだけどヒット数ゼロ。どこにも見当たらない。つまり君は日本人の苗字と名前を持ってるのに日本に在籍していない事になる。そして何よりーーー」

 

篠ノ之さんは徐に立ち上がり、僕の生徒手帳と手鏡を持って僕に差し出した。

手鏡を顔の前に持ってくるとそこには・・・

 

「何、これ・・・・・・」

 

生徒手帳にある僕の顔写真から数歳若返った姿の僕が鏡に写っていた。おかしい、あの事故に遭うまで僕は確かに高校三年生で、進学先の大学も決まっていた。それは生徒手帳が証明しているし、確実だ。

一体どうして。

 

「なんで中学生くらいまで若返ってるんだ!?」

 

切ってあった筈の髪も項あたりまで伸びてるし、よく見ると腕もなんだか縮んでる。

 

「やっぱり、若返ってるんだ。私はオカルトの類いはあんまり信じないようにしてるんだけど、ここまで来るともう確実だね」

 

一人納得した顔で、混乱する僕の鼻先にピッと人差し指を指して篠ノ之さんは宣告する。

 

「君、この世界に転移して来たんだよ。幾つか若返ってね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神様とやらが本当に存在するなら僕は今を生きていることに感謝しつつ思い切り殴りたい。

僕がこの世界に転移して来てかれこれ一月が経つ。

束さん(名字は呼びづらいだろうということで、名前で呼ぶよう言われた)と僕とでお互いの知識の擦り合わせをした所、大まかな歴史は同じであるが、近年に於いて大きな違いがある。

 

「束さんが開発したインフィニット・ストラトスによる技術革新と世界情勢の変化・・・」

 

インフィニット・ストラトス、通称IS。元来宇宙用マルチフォームスーツとして開発されたそれは、ある事件によって軍用としての側面を見出だされ数年前から現在に至るまで本来の目的で開発されることは無かった。

このIS、既存の銃火器が一切効かず、尚且つ戦車であれ何であれ簡単に破壊することが出来るという馬鹿げたスペックを持っているが一つだけ欠点を抱えている。

 

「ISは基本、女性にしか起動できない」

 

つまりは銃のようにやり方さえ解れば誰でも使える物ではなく、限られた人にしか扱えないのだ。

これによって訪れたのは男女間のパワーバランスの変化だ。

女尊男卑の風潮が強くなり、『女は偉く、男はその奴隷』みたいな感じになってしまっているらしい。

僕が意識を覚まして知っている外界があの病室とこの孤島だけなのでそんな風潮があるのかぁ、としか思えないが。

 

「そんな風潮が蔓延してるのは嫌だなぁ」

 

束さんが用意してくれた義足を嵌めながらぼやく。

ただでさえ嘗ての世界でイジメにあっていたのにこっちでもそんな目に遭うなんで冗談じゃない。

義足がしっかり両足に嵌まったのを確認して立ち上がる。

この義足、見た目は銀色の脚甲だがかなりの高性能で、歩くのは当然として、走ったり、物を蹴ったり出来る。しかもこれは膝から曲げたりも出来る。鋼○錬金術師のオートメイルと言った方が分かりやすいだろうか。

 

「にしても急に呼び出しなんて、何があったんだろ?」

 

与えられた部屋を出て束さんが待つ研究室に足を向け歩き出す。

いつの間にか部屋に置いてあった昔なつかしの黒電話から束さんが「研究室に至急くるべし!」と言ってきたのがほんの数分前。火急の用、というより何か面白い事でもあったかのようなテンションだった。

 

「束さん、入りますよ?」

 

研究室の前に着き、一先ずノック。流石に何の躊躇も無しに女性が居る部屋のドアを開けようとは思わない。

 

「お、来たね。どうぞどうぞ~」

 

「失礼しまーーーは?」

 

何とも緩い声が部屋の中から聞こえ、了承の意を得たのでドアを開け、そして呆然とした。

いつも通りの薄暗い研究室。無造作に積まれた機械の中に『それ』は立っていた。

 

黒と濃紺に彩られ、所々に黄色が散りばめられた機械の鎧。

何より目を惹くのが両手指先に塗られた赤、そして頭部のV字型アンテナ。

 

『それ』は僕の好きなある作品の機体にあまりにも似ていた。いや、似ている処じゃない完全再現だ。

機体各所のデカールも、肩口に飾られたエンブレムも全て僕の知っているものだ。

その機体の名は・・・

 

 

「TR-1 ヘイズル・・・!」

 

 

薄闇の中、僕の言葉に応えるように緑のツインアイが強く光った。

 





原作まで至るのにあとどれ程かかるのか・・・

次回もお楽しみに‼
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