インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~ 作:フォールティア
事後処理回です。
「やっほ~、一夏~」
「おぉ、睦月か」
クラス代表対抗戦での謎のISの乱入があったその日の夕方、僕は保健室で休む一夏のもとを訪れた。
馴れない連戦に疲労が限界だったのだろう、僕が最後のISを倒したのを見て直ぐに気を失っちゃったらしい。
「身体の方は大丈夫?」
「ああ、ただの疲労だからな。取り敢えず今日はここで寝ることになりそうだ」
「そかそか、箒さんやオルコットさんが心配してたから、良かったよ」
僕がそう言うと、一夏はばつが悪そうに頭を掻いた。
「やっぱ、心配かけちまったか・・・」
「でも格好よかったよ一夏。戦闘記録見たけれど、かなり動いてたじゃない」
一通りの処理が終わった後、オペレーションルームにある記録映像を見たけど、ホントにIS初心者なのかと疑いたくなるほどの高機動だった。
今後の成長によってはそれこそ、織斑先生に匹敵する強さになると思えた。
「いや、でも後から来た三機を相手に出来なかったしな・・・」
「相手に出来たら最早一夏人間やめてるよね・・・」
あんなギリギリの状態で三機相手にして生還するとかどこのスペシャルで二千回な模擬戦さんなのかと。
「あ、そういえばさ聞きたいことがあったんだ」
「ん?何をだ?」
「うちのクラスの弓槻さんが言ってたけど、凰さんと喧嘩してるって」
先週からある噂話らしいけど、ちょっと気になって聞いてみた。
何か告白がどうとか言ってたような気がする。
僕の問いに一夏はああ、と一拍置いて答えてくれた。
「喧嘩ってか、俺も原因良くわかってないんだよなぁ。昔の約束でさ、大きくなったら毎日酢豚を奢ってくれるって話があってな」
「・・・それって」
もしかしなくても奢るじゃなくて作るって話じゃないだろうか。
毎日酢豚を作る・・・日本らしく例えれば、毎日味噌汁を作る、という感じに捉えれば。
明らかに告白ですね、本当にありがとうございました。
「一夏、それ多分盛大に勘違いしてる・・・」
「えっ、そうなのか?」
いやまあ昔の話らしいからうろ覚えなのは仕方ないだろうけど。
盛大な勘違いについて唸る一夏にさてどうフォローしたものかと考える。
これ、僕が答え言っちゃマズイしなぁ・・・。
「あー、一夏」
「睦月、俺はいったい何を勘違いしてるんだ?」
「えぇとだね、その凰さんの言葉を日本風に捉えたらどうかな?」
「日本風に?・・・うぅむ」
悩み始めた一夏に思わず苦笑いしてしまう。これは時間かかるかなぁ?
IS学園地下。
ごく限られた者しか入ることが許されない場所に、山田真耶と織斑千冬は居た。
「ーーそれで、何か分かったか?『真耶』」
「オルコットさんが撃ち落とした機体がコアが無事でしたので、解析さえ済めば・・・」
強化ガラス越しに横たわる異様に腕の長いISを見詰めながらの千冬の問いに、真耶はキーボードを叩く指を休めずに答える。
まともに調査に使えるのはセシリアが撃墜したこの一機のみで、残りの三機は零落白夜による一撃と、ロング・ブレード・ライフルの過剰火力によってコアが破損してしまっていたのだ。
「結果が出ました・・・嘘、何ですかこれ」
「どうした?」
真耶が上げた驚愕と、恐怖が混ざった声に千冬が訊ねる。
仮にも国家代表候補にまで登り詰めた彼女が恐怖を抱く程のISなのかと、疑問に思った千冬だが、モニターに映し出された結果を見て目を見開く。
「ーー何だこれは」
「織斑先生・・・」
「何なんだ、この『マガイモノ』は!!」
白くなるほど手を握り締めたまま、千冬は冷酷に結果を示すモニターを睨み付ける。
そこには、元来あり得てはならない文字が羅列していた。
【調査結果報告
IS名 登録無し
所属 不明
コアナンバー error
人体反応 頭部に脳のみを感知、肉体の存在を確認できず。
コアに異常あり。通常ISコアより逸脱。自己進化機能、及び拡張領域が存在しません。】
「馬鹿げている・・・ISの紛い物、それに人間の脳のみだと・・・?ふざけているのか・・・!」
壁だろうと何だろうと殴り付けたくなる衝動を僅かな理性で押さえつける。
真耶が不安げな顔で見てくるが、その真耶でさえあまりの事実に顔色が悪くなっている。
「・・・至急、この事を学園長に知らせよう。これは、あまりにも大きすぎる問題だ」
「了解しました・・・」
幾分か冷静になった千冬からの指示に真耶もどうにか落ち着きを取り戻しキーボードを慌ただしく叩き始める。
物言わぬ躯(むくろ)のISを見つめ、千冬はこれから先起こるであろう難事を想像して嘆息した。
(ともすれば、また世界が変わるか・・・それも悪い方に)
「結果は上々だな。満足頂けたかい?『お偉いさん』にはよ」
『一機鹵獲されたけれど、上はそれなり以上の性能はあると認めたわ』
「そうかい、それは良かった」
薄暗い闇の中、ヴラドはくつくつと喉を鳴らす。自分の造り上げた『Imitation Stratos』、その力が確かなものと認められたのだ。
画面の向こうにいるスコールが歪んだ男の笑みを見て溜め息を吐く。
『私達はこれから別の任務に行くわ。貴方はどうする?』
「そうだな・・・素材を集めるいい機会だ。同行しよう」
『分かったわ。詳細は追って伝える、それじゃ』
「ああ、またな」
通信が切れ、静かになった部屋から出ようと、ヴラドは歩き出す。
「さぁて、久々に身体を動かすとするか・・・」
重くのし掛かるような殺意を纏いながらも、軽快な、これから散歩にでも向かうような気軽さで部屋のドアを開ける。
「カカッ、面白くなってきたな・・・」
獰猛な笑みを張り付け、歪んだ男は進み出す。
ーー時代を変える音は、着実に近付いて来ている。
というわけで細かいところで原作から逸脱しています。
機体紹介を挟んで、次回からは原作二巻目に入ります
次回もお楽しみに‼