インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~ 作:フォールティア
エクシアってカッコカワイイよね!
「すごぉい・・・ホントにこのISたった三人で作り上げたの!?」
「少人数で、これほどの機体・・・とんでもない技術力だな」
整備棟にあるISのハンガールームで打鉄弐式を見て驚くシャルルとボーデヴィッヒさんを眺めつつ、僕は簪に来る途中で買ってきたジュースを手渡す。布仏さんは来てないみたいだ。
「はい、簪。お詫びのジュース」
「ん、ありがと・・・まさか、ドイツとフランスの代表候補生が来るとは思ってなかった」
缶のプルタブを開けてちびちびとジュースを飲む簪と会話しながら、カフェオレを一口飲む。ブラックは苦手だ。
「後は運用テストだけかな?」
「そうなる・・・それをクリアすれば、完成・・・こんな早くここまで来れたのは、睦月のおかげ」
「布仏さんも忘れちゃダメだよ?」
「・・・わ、ワスレテナイヨ?」
ほんの少し見つめあって、二人揃ってクスクス笑ってしまう。
「・・・ありがとう、睦月」
「どういたしまして、簪」
二人して笑い合いながら握手。
勢いでやっちゃったけど、少し恥ずかしいかな?
「睦月、お邪魔なようなら僕ら出ようか?」
「「へ?」」
間近で聞こえた声に振り向くと、シャルルが気まずそうに笑っていた。
・・・お邪魔?って、
「「・・・へぅあ!?」」
慌ててばっとお互いに手を離す。
いやいや、確かに若干ちょっと僅かばかりドキドキしたよ?
でもお邪魔かな?って言われるような事ではないようなあるような・・・
「わ、わわ私と睦月はそんな関係じゃない!・・・まだ」
簪が必死に弁明するも、シャルルの笑みは深まるばかりだ。最後の方はなんて呟いたのかよく聞こえなかったけど。
というより、早くこの空気を払拭しないと。簪が茹で蛸みたいに真っ赤になっちゃってるし。
どうしようかと悩んでいると、今まで黙っていたボーデヴィッヒさんが一言。
「なるほど、これが噂に聞く『らぶこめ』、というヤツだな!」
特大級のICBMを爆発させた。
簪は気絶しちゃうし、シャルルは慌てるし、ボーデヴィッヒさんは何だかよく分かってなさそうにしてるしで、何ともカオスな空間が出来上がってしまった。
数分後に布仏さんが来てくれなかったらどうなってた事やら・・・。
「明日からはアリーナを借りて最終テストだね~」
「専用機としての申請書とか諸々は倉持技研に丸投げ・・・」
打鉄弐式の調整を終えて、六時頃。布仏を加えた僕らは寮に帰る為に廊下を歩いていた。
ちなみに倉持技研とは、元々打鉄弐式の開発をしていたIS関連企業の一つで、一夏の白式、その素体を開発していた企業でもある。
現在は白式のデータ集めに必死で、その為に打鉄弐式の開発が中断されたのである。
簪の丸投げ云々はちょっとした憂さ晴らしなのだろう。
作り上げたぞコラァみたいな。
「何て言うか、睦月って凄いね」
「え?」
簪と布仏さんを見て歩いていると、隣を歩くシャルルがそんな事を言った。
はて、僕は凄いと言われるような事はしてないと思うんだけど。
「それは私も思っていた。元国家代表候補に匹敵する実力を持っていながら、ISのプログラミング等が出来るヤツなど、そうは居ない」
「やっぱり、篠ノ之束博士と一緒に居たからって感じなのかな?」
「んー、まあそうだね」
日夜問わずほぼ毎日無人ISと模擬戦をし、束さんの突拍子の無い開発を手伝いやら何やらしてたからねぇ・・・ダンディライアン、バイザック、フライルーにバイアラン同時に相手してパーフェクト勝利とか、メガバズーカランチャーの出力調整とか素人にやらせるモノじゃないよね・・・。
「睦月、大丈夫?何か急に目から光が消えたけど・・・」
「ああ、うん。ちょっと昔を思い出してね・・・」
また帰った時には色々手伝わされるんだろうなぁ・・・。
少し先の未来を予想して若干憂鬱になっていると、布仏さんが思い出したように人指し指を立てた。
「そういえば~、来週の学年別トーナメントって、タッグマッチになるみたいなんだよ~」
「タッグマッチ?」
ペアを組んでやるのか・・・多分、この前の襲撃事件も関係してるんだろうな・・・ん?何か地響きが聞こえる。
「何この音・・・」
「足音だな。数は・・・二十人程か。こちらに来ているな」
「「「二十人!?」」」
ボーデヴィッヒさんの言葉に驚愕する。あの布仏さんですら目を見開いている。
そんな人数がどうしてこっちに・・・シャルルと目が合った。
もしかして・・・
まさかの可能性に考えが至った時、廊下の突き当たりから雪崩のように女子生徒達が集まり、揃っ
て声を上げた。
「「「扶桑(デュノア)君!!私とペアを組んで下さい!おねがいします!!」」」
異口同音に発せられたその言葉に思わず息を飲むも、流石にあまり知らない処か名も知らない人と組むのはちょっと怖い。今でも若干鬼気迫った感じするし。
「えー、と・・・」
ちらと周囲を見ると、簪と目線が合う。
簪が小さく笑って頷いてくれた。天使か。
「せっかく誘いに来てくれたのに申し訳ないのですが、僕は簪とペアを組むので・・・すいません」
「そっかぁ・・・デュノア君は?」
「僕は、ボーデヴィッヒさんと組むことになったので・・・お誘いはとてもうれしいのですが」
僕らがそう答えると、誘いに来た女子生徒達は一様に肩を落としながら帰っていった。
去り際に、
『かわいい扶桑君がぁ・・・』
『デュノⅩ扶桑では無い・・・だと』
『今年の夏は、ネタに困らないね!』
とか色々聞こえたような気がしたけど、聞き間違えだろう。そうに違いない。絶対に聞き間違えだ。
「睦月」
「簪、なんだか勢いで言っちゃったけど・・・」
「大丈夫、さっき本音がペアの話をしたときに言おうって思ってたから」
どうやら元から誘ってくれるつもりだったらしい。僕としても気心の知れた人と組んだ方がやり易い。
「そっか・・・ありがとう。トーナメントのペア、宜しくね?」
「こちらこそ、宜しく」
お互いに握手。
トーナメントまで一週間、頑張らないとね。
「なんだまた『らぶこめ』か」
「「っ!?」」
さっきの焼き増しのようにばっと離れる。
「ちょっと皆なんでニヤニヤしてるの!いや恥ずかしいから!」
何だかのっけから大変な気がしてきたよ・・・
あれ?何で私はこんなに殺意が湧いているのだろうか←
次回は打鉄弐式が漸く動きます。
次回もお楽しみに‼