インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~ 作:フォールティア
まさか三千字越えるとは思わなんだ・・・
「・・・よし、今日はここまでにしようか」
「時間も丁度良い感じ」
「二人ともおちかれー」
夕陽が照らす第二アリーナでISを解除した僕と簪に布仏さんが合流する。
打鉄弐式の初の実戦テストを終えたその翌日。
早速僕達は来週末の学年別タッグトーナメントに向けて特訓をしていた。
と言っても、ドローンを相手に連携の練習をするだけなんだけどね。明日辺りにでも一夏達の特訓にお邪魔してみようかな。
「にしても二人とも息ぴったりだね~」
「まあ、お互い機体の万能性高いから連携も組みやすいんだよね」
布仏さんから渡されたスポーツドリンクを一口飲んで答える。
と言っても今日やったのは基本的なセオリー通りの連携だ。僕ら独自の連携も考えてはいるけど、トーナメントに間に合うか。
「おりむー達も頑張ってるみたいだよ~」
「そういえば、一夏って誰と組んだの?」
昨日今日と何かと休み時間忙しかったから話していないから、ちょっと気になる。
一夏の機体と相性が良いとなると、オルコットさんになると思うけど。
「盛大なジャンケン大会の末、せっしー(セシリア)がペアになったよ~。しののん(箒)は二組のリンちゃん(鈴音)と組んだみたいだよ~」
盛大なジャンケン大会って、何してるんだ・・・。
オルコットさんのブルーティアーズに一夏の白式、中々強力なペアだな・・・。
にしても鈴音さんと箒さんペアか。機体の特徴的に防御力高いだろうなぁ。
それにシャルルとボーデヴィッヒさんの転入生ペア、ここが一番注意かな。手の内が見えないし。
「波乱の予感・・・」
「二人とも応援してるからね~」
「やるからには、優勝目指さないとね!」
トーナメントへの決意新たに、僕達は閉館時間も近かったので着替えてアリーナを去った。
その日の夜。
寝間着に着替えた僕と簪は寮の部屋で二人揃ってアニメを見ていた。
『レイ、V-MAXだ!』
『ready』
「やっぱりいつ見てもレイズナーはカッコいい」
「V-MAXはホントにロマンあるよねぇ」
ただの突進で敵が破壊されるっていうのはなかなかに良いよねぇ。使った後の代償があるのもまた良い。
テレビを見つつ語り合っていると、携帯の着信音が鳴り響いた。
この音は僕の携帯か。
「ごめん、電話みたい」
「一時停止してるから問題ない」
「ありがと」
ベッドに置いてある携帯をとって画面を見ると、『織斑 一夏』の名前が。
・・・一夏から電話なんて珍しいな。何かあったのかな。
「もしもし、いち・・・」
『むむむむ睦月、大変だ!男が女で女が男で!シャルルが!』
「オーケー、よく分からない」
推測するにシャルルの事なんだろうけど・・・
電話越しに慌ただしくがさごそする音を出しながら一夏の焦った声が聞こえる。
『今、寮に居るよな?俺達の部屋に来てくれないか!頼む!』
「何かヤバそうなのは分かったよ・・・了解、今から向かうよ」
『ああ、わかった』
通話を切って溜め息を吐く。入学直後といい、クラス代表対抗戦といい、一夏は何かとトラブルに巻き込まれるなぁ。そういう星の下に生まれてしまったとしか思えないよ。
「どうかしたの?」
「一夏から部屋に来てくれってさ」
「そう・・・長くなりそう?」
「多分ね。晩御飯、先に食べてて。後で向かうから」
「わかった、待ってる」
布仏さんからプレゼントされたと言うちょっとだぼついたパジャマの袖を小さく掴んで頷く簪に一瞬ドキリとするけど、何とか表情に出さずに部屋を出る。
「・・・さっきのは反則でしょうよ」
部屋のドアを閉めて呟く。・・・なるほど、あれが『萌え』か。
っと、一夏が待ってるんだった。急がないと。
フロアが違うからちょっと遠いんだよね。
で、一夏の部屋に着いて入ったのは良いんだけど。
「一夏、シャルルは何時の間に性転換したの?」
「俺が見た限りついさっきだ」
「「現代医療って凄いな・・・」」
「いや元から女だから!そんなハイスピードに性転換出来ないから!!」
シャルルが女性だったという衝撃の事実が判明しました。
何よりの証左として胸がある。ちらっとしか見てないけど確かにある。
「シャワー室の替えのシャンプー渡そうとしたらばったり会ってな・・・本物だった」
「成程」
「ちょっとさらりと言わないでよ!?恥ずかしいから!?」
あー・・・ダメだ、僕自身ちょっとパニクってる・・・一度落ち着こう。
「取り敢えず、落ち着いて詳しい話を聞こう。まずはそれからだよ」
「・・・そうだな、お茶を淹れるからちょっと待っててくれ」
僕の提案に一夏が頷いて椅子から立ち上がる。
にしてもシャルルが女性だった、か・・・。どうにも一筋縄じゃ行かなそうな感じがするなぁ。
一夏が使っているベッドに腰掛け、シャルルと対面する。
一夏も大雑把な事しかまだ聞いてないみたいだし、まずは詳細を聞いてみないと始まらない。
「ーーーーこれが僕が男装してこの学園に来た理由だよ」
一通り話終えたシャルル・・・いや『シャルロット』が締観にも似た表情を浮かべて口を閉じた。
・・・要するに、会社からの命令らしい。
シャルロットは現デュノア社社長の、云わば愛人の娘であるということ。
母親が他界してから暫く経って連絡があり、IS適正検査を受けたところ、高い適正値を出した。
その時・・・今もだが、デュノア社は第三世代ISの開発に難航しており、このまま行けば欧州のIS業界から消えることになりかねなかった。
そこでシャルロットをIS学園に転入させ、第三世代ISの情報を集めさせる事で開発の糧にしようと考え、結果今に至る。
「待ってくれ、情報を集めるだけならそもそも男装なんてする必要なんて無いだろ。そもそもシャルロットじゃなきゃいけない理由もない」
「予想でしかないけど」
一夏の疑問にそう前置きして僕は自分の考えを言う。
「一夏と僕のIS、その情報が最優先に集めるべき事なのだとしたら。男装して入る事で僕らに容易に近づけるからじゃないかな。現にこうして親しくしてるワケだし。そして何よりシャルロットじゃなきゃいけない理由は簡単だよ。専用機があるってことさ。それだけでかなりのネームバリューを持つからね」
「凄いね睦月・・・正解だよ」
「そんな諦めきった顔で言われても嬉しくない」
シャルロットの褒めあげをそう断じてお茶を一口飲む。
今の彼女の目はどこも見ていない。恐らく僕も一夏もまわりの家具でさえも。
・・・全く、なんてトラブルだ。
「シャルロットはこれからどうなっちまうんだ・・・?」
「多分、本国送還と刑務所行きは確実だろうね・・・デュノア社は間違いなく世界から消え失せて、僕もきっと・・・」
「なっ・・・何だよそれ・・・!」
憤る一夏に対して僕は冷静にそうだろうな、と内心納得していた。
身元詐称、それも天下のIS学園でだ。ただ事で済む筈がない。喩えそれが自分の意思でなくてもだ。
理不尽。確かにそうだ。
でもそんな理不尽なんて世の中にはそれこそ腐るほどある。
まあでも、
「シャルロット。君はどうしたい」
「え・・・?」
そんな理不尽に苛まれている友達がいたら、手を差し伸べるべきだろう。
「睦月、お前・・・」
「はっきり言って物凄くめんどくさい問題だよこれ。学園の規則程度じゃ足りないくらいにね」
IS学園の特記事項の一つに、学生は在学中あらゆる国家による縛りを受けない、なんてものがあるがそんなんじゃ意味がない。
在学中ではなく根本からシャルロットを自由にしなければならない。
というか僕らだけで背負えるような軽い問題じゃない。
「取り敢えず、諸々の確認をしないとね」
お茶をぐいと飲み干し、何故か呆然とするシャルロットと一夏を見てニヤリと笑う。
僕らで背負えなければ背負えそうな人達に協力(巻き込まれて)もらえばいいんだ。
ポケットから携帯を取りだし、素早く電話番号をコールする。
・・・通話先は、世界最強。
さて、どうなるかな・・・
という訳でシャルロットの例の件です。
他所の作品様のように綺麗に纏められる自信がありません(白目)
次回もお楽しみに‼