インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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あれ?束さんこんなキャラだっけ・・・?


#02 機械の黒兎

「うーん、なんかぱっとしないなぁ」

 

カタカタと自作のパソコンを操作しながら篠ノ之束は呟く。ディスプレイには『試作第三世代型IS』と名打たれた設計図が表示されていた。

世界の各企業が漸く第二世代型ISの開発に着手しはじめたこの頃に、この天才は事も無げに第三世代の開発に着手していた。

スペックのアップグレードや武装を格納する為の量子空間の拡張、その他諸々は既に完了している。

 

「なんかこう、試作機って感じのが浮かばないなぁ」

 

束が悩んでいるのは機体の外装、つまりは見た目である。今まで彼女が手掛けた機体はどれもヒロイックな外見をしており、それこそマンガの主人公が駆りそうなものだった。

しかし今回は束も初の第三世代型の開発。その試験機だ。

あまりヒロイックな外見にしてもどうにもしっくり来ない。

腕を組んでうんうん唸る。椅子の背もたれに体重を預けて上を向く。

 

「……あんまり考えすぎても仕方ないか」

 

唸ること二十分、束は溜息を吐きつつそう言って立ち上がり部屋を出た。

向かう先は束が拉致した睦月の部屋である。衝撃的すぎる出会いをしたあの日から一月経つ。

両足を失い、オカルトチックな世界転移を経験して暫く茫然自失していた睦月。今となっては束お手製の義足を使い、助手の『名前はまだない』と共に家事の殆どを行っている。

本人曰く、これくらいやれなきゃ社会人になったとき大変、らしい。

 

「むっくん、入るよー」

 

部屋の前にたどり着いた束はノックもせずにドアを開けた。因みにむっくんというのは束が考えた睦月のあだ名だ。

 

「おっ、と。寝ちゃってたか」

 

中に入ると窓から射す穏やかな日に当たりながら睦月が眠っていた。

ここに来た当初は慣れない環境もあって少し気を張っていた彼だが、最近になって本来の自分というのを見せてくれるようになっていた。

窓辺に近寄り、睦月の頬を撫でるとじゃれるようにその手を握って笑った。

 

「いやぁ、改めて見るとホント可愛い顔立ちしてるなぁ」

 

そんな様子の睦月を見て束は笑みを深くする。睦月は俗に言う、男の娘のような女性的な顔立ちをしている。首筋まで伸びた栗色の髪に、小動物を思わせる小柄な肢体。その筋の人が見れば直ぐ様にお持ち帰りするだろう。

 

「いっそ今度女装でもさせてみようかな?」

 

自身の親友が聞けば間違いなく拳が飛んで来るだろう危険な思考をしている束の視界にあるものが目に入った。

 

「なんだろ、これ。むっくんのかな?」

 

気になった束は窓際の隅にあったそれを取り上げる。

 

「何々、advance of Z?」

 

そう表紙にかかれた本は、どうやら資料集のようだ。表紙絵からして何かのメカか何かだろうか。

好奇心の赴くまま束はその資料集を広げた。

 

「……これは!?」

 

数ページ捲り、その内容に驚いた束は直ぐ様表情を変え資料集を熟読していく。

 

「良い、実に良い……私好みの機体達だ……そうだ、試験機の外装はこれにしよう。カッコよさもあるし」

 

 

睦月が眠る横で何とも邪悪な笑みを浮かべる束、という何ともシュールな光景は束が部屋を出ていくまで続いた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーということで試作第三世代型IS、TR-01 ヘイズルが完成したんだよ!」

 

「人の部屋に何勝手に入ってるんだとか、僕に女装させようとか危険な思考してるんじゃないとか色々言いたい事ありますけど、まず始めに言っておくべき事があります」

 

「何かな?」

 

「……グッジョブ!」

 

 

様々な文句を呑み込んで僕は束さんに渾身のサムズアッブをした。

今僕の目の前にはサイズダウンこそしている物の、ガンダムと言う作品群の中でも、僕が一番好きな作品の機体が立っている。

もう、感動が止まらないってこの事を言うんだな。

 

 

TR-01 ヘイズル

 

ティターンズテストチームに配備された武装試験機、その最初の一機だ。最初こそ性能は低かったものの、様々な武装、データを装備・経験して最後は馬鹿げたハイスペックへと進化した歴史に隠された機体。

 

「すごい、本物だ……本物のヘイズルだぁ……!」

 

ああ、この黒と濃紺の機体色に黄色の脚部スラスターはやっぱり格好良い・・・。

 

「むふふ~喜んでくれたみたいだね!作ったかいがあるってもんだよ!」

 

「ホントにありがとうございます!まさかここまでの大きさで見れるなんて思ってませんでした」

 

模型とは違う現実感の強さ、重厚感は僕の興奮を最高潮にするには充分過ぎた。

ISなので、自分で動かすというのは無理なのが残念だが、観ているだけでも満足なので問題ない。

たっぶりとヘイズルを眺めきった僕は冷静さを取り戻しつつふと気になった事を尋ねる。

 

「そう言えばさっき試作第三世代型って言いました?」

 

「うん、言ったね。何時もだったら試作型なんて作らないんだけど、第三世代には色々組み込む予定だから流石に何のテストも無しに動かすのは怖いからねぇ」

 

「世の中はまだ第二世代の開発をはじめたばっかりだっていうのに、もう第三世代開発しちゃったんですか……」

 

本当にこの人の頭脳は常軌を逸している。世界の最先端を全力で突っ走ってるみたいだ。

束さん自身は「私の頭が良いんじゃない、世界の頭が悪すぎるんだ」だそうで。

そんなこと言ったら頭の良い人間なんてこの世界に居ないんじゃ無かろうか。

 

「ちょっと考えてることがあってねぇ、私も本来ならこの時点で開発に着手する気は無かったんだよ」

 

「考えてること?」

 

いつも大体、即断即決で決める束さんにしては珍しい事をいう。

 

「まあ、その事は今は置いといて」

 

首を傾げる僕に、荷物を横に置くような動きをした束さんは次の瞬間、とんでもない事を言い出した。

 

 

「君にこのヘイズルをプレゼントしよう!」

 

「……はあぁぁ!?」

 

 

 

 

後に思う。これが全ての始まりだったのだと。

 





次回から少しずつ原作に介入して行きます

次回もお楽しみに‼
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