インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~ 作:フォールティア
グフ・フライトタイプって良くない?
トーナメントまであと三日を残した日の放課後。
僕、簪、一夏、オルコットさんは第三アリーナでそれぞれISを展開して模擬戦を行っていた。
簪は最初こそ渋っていたものの、いざ模擬戦が始まると容赦なく一夏を攻めに行った。
「ちょっ、更識!さっきから俺しか狙ってないよな!?」
「気のせい」
「ぬおぉぉぉぉぉ!?」
山嵐によるミサイルカーニバルに絶叫を上げながら一夏が回避していく。
白式の研究が無ければ打鉄弐式は倉持技研がちゃんと作っていたから、まあその鬱憤もあるんだろう。
・・・やり過ぎそうになったら止めよう。
「考え事している暇がありまして?」
「っと、危ない危ない」
放たれたスターライトの青い閃光を半身をずらして回避する。
狙いがかつての代表候補決定戦より格段に正確になってる・・・成長早いなぁ。
「あの時の私とは違うこと、トーナメントの前に少し教えてさしあげましょう」
「お手柔らかに、踊りは得意じゃないんだ」
「ご冗談をっ!」
言うが早いか展開されたビット四基が複雑な軌道を描きながらレーザーを撃ってくる。
それらを避けながら簪との位置をハイパーセンサーで確認。
簪も気づいたのか小さく頷いてくれた。
「虚実が入り交じってる・・・やりにくいね、これは」
「悉く避けているのに、言いますわね」
「いや、本当だよ。以前のように撃ち落とせそうにない」
会話しつつ左右のライフルで牽制弾を撃つ。
簪との距離を確認。よし、そろそろかな。
三、二、一!
「バトンタッチ!」
「お任せ」
「なっ!?」
流れるような動作で立ち位置を入れ換える。簪がオルコットさんに、僕が一夏へと向かって加速する。
苦手な相手はパートナーに任せられるのがタッグの良い点だよね。
簪が驚愕するオルコットさんに夢現で斬りかかるのを確認して、僕は一夏へとビームライフルのトリガーを引いた。
「って今度は睦月かよ」
「既にボロボロみたいだね・・・」
「ミサイルとあの荷電粒子砲だったか?アレの弾幕は流石に捌ききれねぇって・・・」
ビームを雪片で弾くような人がよく言う。
さっきから撃ち続けてるけど殆ど切り払われてるし。
「一夏の成長速度には驚かされるよ」
「目標は千冬姉だからな、チンタラしてられないの、さ!」
「っ!」
圧倒的なスピードで彼我の距離を零にされ、雪片が降り下ろされるが、咄嗟にシールドブースターで受け止める。
以前より増して一撃が重い・・・!
「相変わらずその縮地は恐ろしいね!」
「俺の十八番だからな!」
ビームライフルを腰にマウントしてビームサーベルを背中から引き抜く。
三歩の距離を一歩で詰めるという縮地。元は歩法だったのを一夏は空中で可能としてしまった。
そのスピードは瞬時加速ほどでは無いとしても、不意を突くには十分な加速力を持っている。
「そういう睦月も、あっさり切り返してくるじゃねぇかよ」
「伊達に束さん(あの人)の所には居なかったんでね!」
雪片とビームサーベルがぶつかり合い、火花を散らす。
やはり剣道経験者、接近戦の読み合いじゃこっちが不利か・・・機体ダメージが着実に増してる。でも、
「やられるだけっていうのは避けたいね」
「っ!?」
襟元の多目的グレネードを起動と同時に発射。至近距離でフラッシュグレネードが炸裂する。
強烈な光はISの防御機能によって搭乗者の安全なレベルまで一瞬で対応されるが、その一瞬があれば充分だ。
「つぅ・・・眩し過ぎるだろ今・・・の・・・」
「油断大敵、不意打ちには注意しないとね」
振り向いた一夏の目の前にロングブレードライフルの銃口を突き付けてニヤリと笑う。
「・・・参った。零距離でソイツは撃たれたくない」
ひきつった笑顔でそう言う一夏に、ライフルを降ろす事で答える。
まあコレの威力は代表対抗戦の時に見せてるから、零距離で撃たれたらどうなるか解ってるんだろう。
「まさか、流石にこの距離で撃つ気はないよ」
「どうだか。っと、向こうも終わったみたいだな」
身体を振り向かせ、後ろを見ると、
「しゃきーん」
何かドヤ顔してポージング簪と目が合った。その後ろでは機体の所々が損傷したオルコットさんが意気消沈気味に溜め息を吐いていた。
「・・・簪、何してるのさ」
「決めポーズ」
うん見事なサンライズバースだ。ちゃんと刃先に光が反射するような位置にいるし。
備え付けの時計を見ると、アリーナ閉館の時間が迫っていた。
「そろそろ良い時間だね。終わりにしようか」
「だな。セシリア、更識、今日はもう終わりだってよ~!」
「わかりましたわ」
「わかった」
片付けをして軽く身体を解した後、僕達は観戦していた他の専用機持ちの皆と連れだってアリーナを後にした。
その日の夜。寮の部屋にて。
「・・・睦月!」
「あ、おかえり~。ってどうしたの?」
ヘイズルの各種データを整理していると、飲み物を買いに行っていた簪が何やら慌てた様子で戻ってきた。
何か大事でも起こったのだろうか?
「妙な噂が流れてる」
「噂?」
神妙な顔つきの簪に首を傾げて返す。
ここは僕と一夏というイレギュラーが居るけど、女子校だ。噂話には事欠かないだろう。
でも簪が慌てる程の噂ってなんだろうか?
「明後日のトーナメントで優勝したら・・・」
「したら?」
「睦月と織斑君、どちらかと付き合えるって」
・・・・・・。(思考停止)
「ふぇ!?な、なな、何それぇ!?」
何がどうしてどうやってそんな噂が流れたの!?
というか僕らの知らない所で僕らが賞品扱いされてるし!?
「他の女子は皆本気になっちゃってるみたい」
「hahaha!Nice joke.」
思わず英語で喋っちゃったよ。
うわぁ、敗北は許されないなこれ・・・負けたらそこでおしまいだ。
頭を抑えて混乱を沈めようとしていると、部屋にノックの音が響いた。
簪がドアを開けると、そこには箒さんが立っていた。
「篠ノ之さん?」
「すまない、扶桑は居るか」
「どうしたの箒さん?」
呼ばれたようなのでベッドから立ち上がり、向かうと、
「扶桑、すまない!」
物凄い勢いで謝られた。うん、何故に。
今日は何かと混乱させらる日だなぁ・・・。
「今流れている噂があるだろう」
「あー、トーナメント優勝者は僕と一夏のどちらかと付き合えるってヤツかな」
僕が答えると、箒さんは気まずそうに頷いた。
そして今にも土下座してしまいそうなオーラを纏ってこう言った。
「その噂の原因は・・・私だ」
「「・・・はい?」」
どうやら明後日のトーナメント。ただ事ではすみそうに無いみたいです。
噂話によって優勝賞品になってしまった睦月、はたして彼の運命や如何に!
次回もお楽しみに‼