インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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私の文才では・・・これが限界です・・・(吐血



#13 デュノア

「圧倒的だね、ボーデヴィッヒさん」

 

「一対一の近接戦じゃかなり強いよねアレ」

 

一回戦、第三試合。ジャージに着替えた僕と簪は観客席に座ってジュース片手に観戦していた。選手であるシャルとボーデヴィッヒさんのペアは開始から一分足らずで相手ペアを圧倒していた。

 

「ラウラの機体はドイツに居たときも凄かったからな。近接戦じゃ負けなしだ」

 

第二試合を終え、僕達と合流した一夏がスポーツドリンクを飲んでそう言う。

一夏ペアの結果は言わずもがな、勝利だ。それも一分弱というハイスピードで。

 

「A.I.C.か・・・厄介だね」

 

「ともすれば近接戦は封印しなければならないですわね」

 

オルコットさんの言葉に頷きつつ、ジュースを飲んで息を吐く。

 

A.I.C.・・・アクティブ・イナーシャル・キャンセラーの略称で、対象とした存在の動きを止めてしまうという反則じみた効果を持っている。

ボーデヴィッヒさんの駆る第三世代IS、シュヴァルツェア・レーゲンにはそれの試作品が搭載されている。

見た感じ、掌から放射状に一メートル位に展開できるみたいだ。

 

オルコットさんの言う通り、接近戦は下手に仕掛けられないな・・・、良く見ると、実弾による攻撃も止められてるし。

 

「デュノアさんの操縦技術も侮れない」

 

「だな・・・付かず離れず、相手にとってやりにくい距離で削っていってる」

 

シャルの機体、第二世代ISラファール・リヴァイヴ カスタムⅡ。

スペックを見た限り、中距離高機動戦を得意とするラファール・リヴァイヴの性能をアップグレードしたもののようだ。

以前、シャル本人に教えて貰ったけど、元々量産機であるラファールの初期武装を全て外す事で、拡張領域の容量を増やしているらしい。

 

「厳しい戦いになるね・・・」

 

手数が多いシャル、近接殺しのボーデヴィッヒさん。真っ向から戦いたくないペアだなぁ・・・。

そう思いつつジュースを飲み干すと、試合終了のサイレンが鳴った。

 

【勝者 デュノア・ボーデヴィッヒ ペア】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園でトーナメントが行われていたその頃、フランス、とっくに就業時間を過ぎたデュノア社の社長室とオフィスは普段では考えられない程慌ただしかった。

 

「社長、先程の件の裏付けが取れました」

 

「そうか、わかった。後でデータを纏めておいてくれ」

 

「わかりました」

 

急ぎ足で社長室から出ていった部下を見送って、デュノア社社長、アレックス・デュノアはデスクに両肘をついて息を吐いた。

 

「・・・社長から話を聞いたときは半信半疑でしたが、ここまで来ると信じざるおえませんね」

 

「私とて半信半疑だったさ。だが、こうもリークされた情報の尽くに裏付けが取れてしまうとな・・・」

 

秘書から渡されたコーヒーを一口飲み込んで、アレックスは苦笑いを浮かべた。

ここ最近の疲労感からか、白髪が増えてきた頭を撫で付ける。

 

社長婦人、フィーネ・デュノアの裏情報がアレックスへと伝えられたのは、ほんの二日前、防音壁に囲まれた自室での出来事だった。

社内の人間でも限られた人間しか知らない秘匿内線を使って、娘であるシャルロットの友人を名乗る者は、合成音声によって加工された声でこう言った。

 

『貴方の奥様、どうにもきな臭いですよ?』

 

そして伝えられる裏情報に次ぐ裏情報。ISの開発費横領、それを使っての豪遊、浮気、女性権利団体への金銭寄付・・・アレックスですら把握していなかった情報を『友人』はつらつらと話していった。

 

『君は・・・何が望みだ』

 

『シャルロットさんの平穏ですよ。下らない人間の下らない目的に利用されることが無く学園生活を送れること。それが望みです』

 

即答だった。

アレックスのいくつもの意味を持つ問いに、『友人』は一切の迷い無くそう答えた。

 

『・・・・・・』

 

成程、とアレックスは沈黙の中そう思った。

『友人』が教えた情報、それを使ってフィーネを業界から消せと、言外にそう言ったのだろう。

もしそうしなければ『友人』自らが動くのだろう。衰退しかかっているとは言え、大企業の秘匿回線に割り込み、アレックスですら知らない婦人の情報を持った存在だ。

ともすれば、デュノア社を消し去ることも可能なのかもしれない。

 

『ああ、そうだ。一つ質問が』

 

『・・・何かね?』

 

この後に及んで何を問うと言うのか。

恐怖と苛立ち混じりに返した言葉に、『友人』は先程までの軽い口調を止めて、声を発した。

 

『・・・貴方は、シャルロットを愛していますか?』

 

『っーー!当たり前だ!!』

 

その懐疑の篭った声に激昂し、紅茶の入ったカップが割れるのも構わず高級木で出来たテーブルに叩きつける。

 

『愛しているさ、愛しているとも!私の最愛の女性が産んでくれた子なんだぞ!』

 

『最愛の女性・・・ですか』

 

『ああそうとも。私はあの女とは結婚などしたく無かった・・・家柄に縛られ、欲に溺れたあんな女に情愛など捧げるものか・・・』

 

前社長からの命令による、政略結婚。

拒否もした、反抗もした。だがそれらは空しく押さえられ、最愛の女性と切り離されてしまった。

それでも隠れながらに逢瀬を続け、生活の支援もした。

 

『前社長が死に、暫く経って離婚も考えた・・・だが無理だったんだ』

 

『女性権利団体、ですね』

 

『ああ、そうだ。あの女は裏で手を回してたんだ。何かあれば連中が動く。今の世の中だ、どうなるかなんて分かりきっていただろう・・・』

 

いざとなれば、女性権利団体を動かして、デュノア社の全てを奪う魂胆だったのだろう。それ故に離婚は出来なかった。

 

『今でもそうだ。私が今いる部屋以外は常に監視の目がある。連中さえ、居なければ・・・!』

 

『わかりました』

 

『・・・何?』

 

怒りに拳を震わせるアレックスの耳に、『友人』の声が届いた。

 

『ようは、その邪魔な連中が居なければ貴方は好きなように動けると。そう言った解釈で宜しいですね?』

 

『ああそうだ。女性権利団体さえ動かなければあの女を降ろすことが出来る。だがそんな事は・・・』

 

『では、こちらで女性権利団体の動きを暫く止めましょう』

 

『・・・は?』

 

『そうですね・・・期間にして四日ほどなら止められます。その間に貴方はやるべきことを成せばいい』

 

事も無げに、あっさりと。まるで明日の予定を決めるかのような気軽さで『友人』はそう言ってのけた。

その声音は不思議と、アレックスを納得させた。この『友人』ならば、出来てしまうのだろうと。

 

『君は・・・何者なんだ』

 

始まりと同じ問いをアレックスは投げ掛ける。

その問いに『友人』は合成音声ではない、素の声でこう答えた。

 

『ーーただの、学生ですよ』

 

 

 

 

 

 

 





というわけでデュノア社の諸事情回です。

次回はVS篠ノ之ペアです

次回もお楽しみに‼
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