インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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初の前後編話。
頑張ります!



#15 白騎士と黒兎・前編

「だっはぁ!負けた負けた!」

 

一年生の専用機組が集まる観客席にどかりと鈴音が腰を降ろす。

その隣に疲れた様子の箒がタオルで顔を拭いながら座った。

 

「お疲れさま、鈴さん」

 

「すごかったよ~」

 

「ありがと、只で負ける気なんてさらさら無いわ」

 

布仏からスポーツドリンクを受け取りながら八重歯を見せて鈴音は笑った。その表情からは悔しさは感じられず、楽しかったという感情が読み取れる。

 

準々決勝を終え、十二時近く。準決勝の対戦カードにアリーナの熱気が高まっていた。

 

「さっきよりも人が増えてるね・・・」

 

「男性操縦者同士、初の公式戦での試合だからな、こうもなるだろう」

 

シャルロットが回りを見渡しながらそう言うと、箒がそれに答えた。

そう、準決勝は睦月ペア対一夏ペアという、注目すべきカードなのだ。

この試合で勝った方が、シード権を獲得し一気に決勝戦まで駒を進めたシャルロットペアと戦う事となる。

 

「にしてもシャルル達はシード権で試合数少ないわよね」

 

「予選で二試合戦っただけだからな。データの収集にはいささか不十分だ」

 

「決勝戦ではそうは言ってられないわよ」

 

布仏から貰ったポップコーンを食べるラウラに苦笑いしつつ鈴音はそう言った。

片や恐らく一年生ではトップクラスの実力を誇る睦月ペア。

片や遠近特化機体を操る、爆発力の高い一夏ペア。

どちらにしても余裕を持った試合など出来ないだろう。油断すれば一瞬で負ける相手である。

 

「だとしても、勝ってみせるさ」

 

「お、ヤル気満々ね」

 

「シャルと私は無敵だからな!」

 

腕を組んでフフンと笑うラウラ。それを見てその場に居た全員がこう思った。

 

((((か、かわいい・・・))))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、睦月」

 

「やあ、一夏」

 

試合開始二分前、アリーナの中央で僕たちは相対した。

・・・相手は遠距離特化のブルー・ティアーズと近接特化の白式。下手をすればあっさり負けるだろう。

 

「さっきの試合、凄かったじゃねぇか」

 

「ありがとう。でも準々決勝であれだけやったんだ。この準決勝はもっと凄くしないとね」

 

「だな。・・・あっさり落ちるなよ?」

 

「そっちこそ」

 

言い合ってお互いに武器を構える。一夏は雪片弐型、僕はマシンガンを。

 

「セシリア、勝つぞ」

 

「当たり前ですわ!」

 

「簪、派手に行こう」

 

「うん。絶対に勝つ」

 

呼び掛けあって士気を高める。さあ、戦いの前準備は終わった。

あとは、全力でぶつかるのみ!!

 

【battle start】

 

「おおっ!!」

 

「そう来ると思ったよ!!」

 

試合開始の合図が鳴った瞬間、一夏が僕へと急加速する。

相変わらず馬鹿げた加速力だなぁ。

そう思いながら左手の改良型シールドブースターを構え、拡散粒子砲を発射。

しかし、

 

「んなもん、効かねぇ!」

 

「うそぉ!?」

 

あろうことか一夏は当たりそうな弾だけ零落白夜を『瞬間的に発動』して無効化しながら突き進んできた。

驚きながらも右手のマシンガンで牽制弾を撃ちながら後退しつつ、左手に実弾型のライフルを展開。

そのまま一夏の影に隠れたオルコットさんへとトリガーを引く。

 

「くっ、そう簡単には行きませんか!」

 

「当然!」

 

「私を忘れない方が良い」

 

「ちっ、更識か!」

 

追い縋ってきた一夏を止めるように空中から簪が

荷電粒子砲〔春雷〕を放ちながら夢現を構えて突撃する。

シールドブースターを起動、白式を簪に任せ、オルコットさんへと突撃を仕掛ける。

 

「今回こそ、その装甲を撃ち抜いて見せますわ!」

 

「出来るものなら・・・」

 

スターライトmkⅢの照準が此方をロックオンするよりも速くサイドブースターを吹かし、射線から離れながらライフルの銃身に取り付けられたグレネードを発射する。

 

「やってみて!!」

 

「つっ!?」

 

着弾、爆発音。

確実に直撃はしたけど、これで終わるとは思わない。現に、

 

「・・・まさか、短期間でここまで正確な操作になるなんて」

 

「人もISも、常に進化し続けるものですわ」

 

『ビットによって撃ち抜かれた』マシンガンを誘爆する前に投げ捨てる。

グレネードが着弾した瞬間、ビットを一基だけ動かして、被弾しているにも拘わらず武器を撃ち抜くなんて・・・

 

「ニュータイプみたいだな、全く」

 

「次は機体に当ててみせますわ!」

 

薄くなった煙から残りのビットが全基射出され、僕を取り囲もうと動き出す。

当然、直撃する気は無い。

 

【全シールドブースター、瞬時加速スタンバイ】

 

今まで見せなかったこの技、ここで使うとしようか。

・・・束さんの研究所で訓練の時は常に使ってたなぁ・・・・・・あ、やばい思い出したら泣けてきた。

 

【右腕 ロングブレードライフル 展開。カートリッジ内、全エネルギーチャージ】

 

確かな重量感とともに顕現したロングブレードライフルを、さながら突撃槍のように腰だめに構える。

ビットの攻撃を幾つか掠りながも避け続け機を待つ。

 

「ちょこまかと・・・!」

 

「行くよ、オルコットさん」

 

【スタンバイオーケー。ロングブレードライフル、チャージ完了】

 

視界にメッセージが表れたと同時、僕は叫んだ。

 

 

 

「ーーファランクス!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・織斑先生、今の見えました?」

 

「・・・ギリギリな」

 

アリーナにあるオペレーションルームで試合を観ていた山田真耶と織斑千冬は目の前で起こった事を処理しきれないでいた。

ヘイズルが一瞬ブレたと思ったら、ブルーティアーズの装甲にロングブレードライフルを突き刺してそのまま零距離射撃をやってのけていたのだ。

 

「瞬時加速だろうな・・・」

 

「ですが、あのスピードは」

 

「ああ。普通じゃない」

 

何せヘイズルがブルーティアーズに銃身を突き立てて漸く遅れて瞬時加速発動時特有の音が鳴ったのだ。その音ですら通常よりも大きかったが。

つまりはあの一瞬、ヘイズルは『音』を超えていたのだ。

 

ロングブレードライフルが引き抜かれ、非固定武装を破壊されたブルーティアーズが、高度を落とし始める。

搭乗者であるセシリアは驚愕の表情を浮かべていた。

 

「あれで『第三世代扱い』だと?笑わせる、どう取り繕ってもその域ではないだろうが」

 

一部の教師だけに教えられたヘイズルのカタログスペック。千冬はそれを知る一人である。

 

『試作第四世代型IS』、ヘイズル〔改〕。

その性能は競技用に付けられたリミッターが有っても十分オーバースペックだった。

出力系統は軒並み現行機を遥かに上回り、特有の武装の数々は、リミッターを解除すれば第二世代機までは一撃で戦闘不能に出来ると言う。

 

この情報を見たとき、千冬ですら「バカじゃないか?」と思わず溢した程だ。

それに加えて製作者は『親友』の篠ノ之束だと知り最早溜め息も出なかった。

 

「オルコットさん、大丈夫でしょうか?」

 

「何、アイツだって成長している。只ではやられんだろうさ。・・・動くぞ」

 

ふらつきながらもバランスを整えたブルーティアーズ、セシリアの目をモニター越しに見て千冬はニヤリと笑った。

 

「この試合、中々に面白くなるな・・・」

 

 





超高速戦を捉えられる千冬先生はイノベイター。

次回は、後編となります。

次回もお楽しみに‼
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