インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

41 / 86

Gジェネ新作まだかなぁ(遠い目



#20 騙るモノ

「逃ゲ・・・ロ・・・!」

 

突如動きを止め、呻き声のようにそう言ったボーデヴィッヒさんを見て、身体中に悪寒が走る。

 

マズイ・・・あれはマズイ!!

 

「シャル、簪!防御態勢!!」

 

「「っ!!」」

 

そう叫んでロングブレードライフルを投げ捨てシャルを抱き寄せる。簪もロングブレードライフルを盾代わりに構えた。

そして、

 

「ーーア、アアァaァァァァaァァァァ!!!!」

 

強大な閃光と衝撃が、僕たちを襲った。

予想以上の強さに、機体が押し流されそうになるが、シールドブースターを壁代わりに地面に突き立てて耐える。

 

「睦月!?」

 

「ぐ、うぅ・・・!」

 

【残りシールドエネルギー 247】

 

耐えろ耐えろ耐えろ・・・!

 

この衝撃だ、直近にいた簪が危ない。絶対防御があるとしても、不安は拭えない。

シャルの身体を強く引き寄せ、衝撃が収まるのを待つ。

 

それから数秒だろうか、数分だろうか。閃光が収まり、どうなったのか確認する。

その爆心地に居たのは。

 

「ーーーーーー」

 

「な・・・」

 

真っ黒な、『ISのようなもの』だった。

黒いと言っても、ヘイズルやレーゲンのような黒さではなく、まるでスライムか何かのように妙な水っぽさを感じる。

それにあの形・・・何かに似ている。

 

鎧のような外装に刀・・・打鉄に似ているけど、意匠が少し違う。・・・まさか。

 

「簪ぃ!!」

 

その正体に思い至った瞬間、ブースターを使って弾けるように加速、簪の前に回り込んでビームサーベルを引き抜いた。

 

バチィッ!!

 

降り下ろされた刃とビームサーベルがぶつかり、火花を散らす。

 

「簪、無事?」

 

「う・・・うん」

 

「ならよし、だ!」

 

強く押し込んで『ISモドキ』を弾き飛ばす。その隙に簪も抱えて後退する。

流石にあのままだと危険すぎる。何でか知らないけど、追ってこないのが幸いだ。

二人を下ろして、ISモドキの動きを見る。

衝撃の爆心地から、あのスライムじみた装甲の中にボーデヴィッヒさんが居る、というより取り込まれているのだろう。

 

「睦月、ありがとう」

 

「どういたしまして・・・と言いたいけど、その言葉はこれが終わった後に聞きたいかな」

 

シャルの言葉に軽口で返すけど、さっきから冷や汗が止まらない。

 

黒いスライムのようなゲル状の外装・・・手持ちの刀・・・そしてさっきの斬り筋・・・

 

「まさか、ね」

 

だとしたら大層ふざけた真似をしてくれる。『あんなもの』をレーゲンに積むなんて・・・!

 

「ボーデヴィッヒさん、一体どうなって・・・」

 

「VTシステム」

 

「え?」

 

「聞いたことはあるでしょ?」

 

そう聞いた途端、二人は驚愕に目を見開いて、眉根を吊り上げた。

 

VTシステム・・・正式名称 Valkyrie Trace System 。過去のモンドグロッソ優勝者の戦闘データを搭載機体及び搭乗者に投影させ、優勝者と同様の動きを取らせるという代物だ。

これだけ言えば単なる優秀なシステムにも思えるだろう。モンドグロッソ優勝者の動きをそのまま再現できるのだ。ともすれば公式試合の殆どで勝ちを飾る事が出来るだろう。

だが、これにはデメリットが存在する。

モンドグロッソ優勝者・・・つまりブリュンヒルデ、或いはヴァルキリーとなったその人の動きを『完全』に再現する。それは、当人の身体に多大な負荷を掛ける事になる。

 

・・・当然だ。他人の動きを真似るのではなく、武器も機体の制御の仕方も何もかも再現するのだから。

つまりは脳を含めた身体、そして機体が追い付かなくなってしまうのだ。それが最強の称号であるブリュンヒルデ、ヴァルキリーなら尚のこと。

ともすればシステムによって脳を焼かれ、身体はボロボロに成り果て・・・最後は。

 

「何てもの積んだんだドイツは・・・!」

 

ヘイズルのフルフェイスの中、血が出るほどに唇を噛み締める。

そのあまりにもの危険性故に開発及び搭載が禁止されているモノをよりにもよって最新鋭機のレーゲンに積むなんて、正気じゃない。

 

「だとしたら、早く助けないと!」

 

シャルが立ち上がり、そう叫ぶ。

確かに早く助けないと、取り込まれてしまったボーデヴィッヒさんの命が危ない。

でもどうする・・・確かVTシステム起動中の機体は絶対防御が発動しない、いわば丸裸の状態だ。下手な攻撃は中にいるボーデヴィッヒさんを傷つけかねない。

 

「睦月ごめん、私は動けそうにない・・・」

 

【打鉄弐式 残りシールドエネルギー 3】

 

簪を見ると、最早ISを展開し続けることすら危うい状態だった。

あの衝撃の威力、シールドエネルギーが残っているだけ幸運だったレベルだ。

そんな簪がなけなしのエネルギーで打鉄本来の武装である近接刀〔葵〕を差し出した。

 

「薄皮一枚、睦月なら切れるでしょ?」

 

「やってやるさ」

 

微笑む簪から葵を受け取り軽く振り回してから構える。

狙うはあのISモドキ・・・いや、『暮桜』のニセモノ。

VTシステムが投影したのはモンドグロッソ二大会連続優勝の機体、暮桜。打鉄と似てると思ったけど、それもその筈、あの機体は打鉄のハイエンドタイプとも呼べる存在だ。

搭載武装を極限まで削り、単一仕様能力『零落白夜』とブースター系統にエネルギーを回した短期決戦機。

一夏の白式の祖でもある機体だ。

 

『睦月!聞こえるか!?』

 

『聞こえてるよ』

 

プライベートチャネルで届いた一夏の声に、暮桜モドキの動きを注視しながら返す。

連絡してくると思って回線開いておいて正解だったな。

 

『一夏達は大丈夫だった?』

 

『ああ、何とかな。・・・それより、そのISは』

 

『暮桜、でしょ。全くとんでもないのを再現してくれたよ』

 

『やっぱり、か・・・理屈はわかんねぇけど、あの中にラウラが居るのか』

 

『確実に。・・・急がないと命も危ない』

 

時間との勝負だけど、単なるプログラムと言えど相手はブリュンヒルデ。簡単にやれるかと言われればNOと答えるしかないだろう。

 

『なあ、睦月』

 

『・・・何?』

 

『アイツは・・・ラウラは、千冬姉の事ホントに尊敬してるんだ。今日の試合だって、千冬姉に自分の強さを見てもらうんだって、言ってたんだ』

 

『うん』

 

『だから・・・だから頼む、ラウラを助けてくれ・・・!』

 

一夏のその言葉に空いた左手を横に突き出し、親指を立てて答える。

 

『了解!』

 

親友から頼まれたんだ。絶対に助け出して見せる!

 

「シャル、シールドエネルギー残量は?」

 

「残り60と少し。だから、僕もこれを渡すよ」

 

そう言って左手に手渡されたのは一本のロングダガー。

ヘイズルの武装解析が視界に映し出される。

 

【近接ブレード〔ブレッドスライサー〕】

 

「シャル・・・ありがとう」

 

「お願い、ラウラを助けて。僕の大切な『パートナー』だから」

 

「当然」

 

受け取ったブレッドスライサーの感覚を掴むために何度か手繰ってから逆手に構え、暮桜モドキを睨み付ける。

 

「わざわざ準備が整うまで待ってくれてありがとう」

 

【シールドブースター及び全外部装備パージ】

 

フルアーマーユニットやサブアームユニットが炸薬によってパージされ、地面に重い音を立てて落ちる。

 

「ーーーーーー」

 

土煙と炸薬の上げる白煙によって視界が塞がれるがハイパーセンサーによってそれらを無視する。

 

「今、助けるよ」

 

【ブースター起動】

 

「ーーーーーー!」

 

さあ、行こう。

 

 

煙を葵の一閃で切り払って僕は『最強を騙るモノ』へと一直線に突っ込んでいった。

 





という訳でVTシステム戦です。
原作じゃ一夏がアストラルフィニッシュ(一撃必殺)でしたが、睦月の場合ははてさてどうなるでしょう?

次回もお楽しみに‼
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。