インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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ギレンの野望の次回作でTRシリーズ全部が出れば良いのに(無茶ぶり)




#21 雨を晴らす者

『ーーチカラヲ』

 

『マケルコトノナイ、チカラヲ』

 

『サイキョウノ、チカラ』

 

『モトメルハ、ツヨサ』

 

声が聞こえる。

 

起きているのか眠っているのか解らない、曖昧とした意識の中、ラウラの頭に男とも、女ともとれる声が幾度も響く。

 

『ノゾメ、ツヨサヲ』

 

『スベテニ、ウチカツ』

 

『ツルギヲ』

 

『銃ヲ』

 

『爪を』

 

『牙ヲ』

 

『翼を』

 

『欲すルがイイ』

 

『望むガいい』

 

(やめろ・・・)

 

泥のような闇の中、まるで呪いのように聞こえ続ける声に、ラウラは表情を歪め、耳を塞いで蹲る。

それすら意に介さないのか、塞いだ耳から滑り込むように声は続いた。

 

『求めテいるのだろウ?』

 

『最強タる力を』

 

「違う・・・違う!私はそんなモノ望んでなどいない!私の強さは私だけのモノなんだ!お前たちに借り受ける強さなんてゴメンだ!!」

 

目が痛くなるほどにきつく閉じて叫ぶラウラに声は嘲笑した。

まるで弱者をいたぶるような。

 

『ならば何故、私を直グに消さない?』

 

「何を・・・言って」

 

『お前ノ意思一つで消えルと言うのに何故消さない?』

 

「私、は・・・」

 

恐怖心と不安感、そして虚脱感がラウラの身体を苛み、蝕む。

歯は小刻みに震えカチカチと音を鳴らし、耳を塞いでいる手はいつの間にか血が滲むほどに握りしめられていた。

 

『そうだ、お前は心の奥底で望んでいたんだ。・・・力を』

 

「う、あ・・・」

 

『さあ・・・望め、欲せ、求めろ!あらゆるモノを飲み込むチカラを!!』

 

「あ、ああぁ・・・」

 

ラウラの心が崩れかけ、システムに飲み込まれそうになった、その時。

 

 

 

 

 

「ーー『ラウラ』!」

 

 

 

ラウラの視界に一筋の光が見えた。

 

 

 

 

 

 

「ちぃ!!」

 

「ーーーー!」

 

凡そ刃と刃がぶつかり合うような音ではない轟音を打ち鳴らしながら暮桜モドキと剣を交える。

システムの起動によってリミッターが外れているのか、有り得ないくらいの馬鹿力のせいでヘイズルの損傷は増すばかりだ。

 

「疾ッーー!」

 

「ーー!?」

 

葵を相手の刀ごと振り上げて隙を作り、ブレッドスライサーで斬りつけるも、そのゲル状の装甲を深く斬ることは無かった。

逆に返しの一手を貰ってしまい、右肩の装甲が弾けとんでしまった。

だからと言って動きを止める気は無い。

弾かれた勢いをそのまま使って回転しながら再度葵を振るう。

 

「ーー!」

 

「ちっ・・・!」

 

プログラムと言えどモンドグロッソ優勝者、簡単には行かないかーー!

 

剣圧によって地面を抉り飛ばしながら何度も打ち合う。

 

相手の隙を探せ、癖を見抜け、チャンスを見出だせ・・・!!

 

【残りシールドエネルギー 72】

 

ガンッ!

 

まるで鈍器がぶつかり合うような音を立てて鍔迫り合いに持ち込む。

暮桜モドキの何も映さない、形だけの目と目が合う。

 

「待ってて・・・今、助けるよ!」

 

覚悟を決めろ、躊躇するな!

 

心にそう言い聞かせて刃を弾く。そして大きく葵を振りかぶり左薙ぎを放つ・・・!

 

「ーーーー!」

 

だがそんな大振りな攻撃は当然のように避けられ、致命的な隙を生み出す。

そんな隙を見逃す筈もなく、暮桜モドキがトドメと言わんばかりの大上段からの降り下ろしを放つ。

 

「ーーーーッ!!」

 

タイミングは・・・ここだ!!

降り下ろされるタイミングに合わせ、振り切った葵を地面に突き立てる。それを支柱に身体を回転させ降り下ろしを回避。行き場の無くなった刃は地面に勢い良く抉り込む。

そして再び暮桜モドキの正面に戻った瞬間、

 

「潰れろ!!」

 

地面に半ば埋もれた暮桜モドキの刀を思い切り左足で踏みつける。

引き抜こうと暮桜モドキが力を込めるが、もう遅い。

 

「これでぇ!!」

 

強く右足を踏み込み、右手に持ち替えたブレッドスライサーを振り上げるーー!

 

 

腹部から頭頂部まで一直線に入った切れ目に迷わず空いた左手を突っ込む。

掴まえた、人の感触!

 

「ーー『ラウラ』!」

 

名を呼びながら彼女を引っ張り出し、しっかりと抱き止める。

良かった・・・目立った外傷は無いみたいだ。

宿主を失った暮桜モドキが、ドロドロと溶けだし、形を失っていく。

 

「・・・・・・ふ、そう?」

 

「うん、そうだよ」

 

少し意識が目覚めたのか、ボーデヴィッヒさんの目が僕を見る。

眼帯が付けられていた左目は、金色で、まるで宝石のようだった。

 

「あり・・・がとう」

 

そう言ってボーデヴィッヒさんは再び瞼を閉じた。

その表情は柔らかく、穏やかだった。

 

良かった・・・ちゃんと、助けられた。

 

暫くしてISを展開した教師の人々に連れられ、僕たちは保健室に担ぎ込まれる事になる。

 

 

 

こうして、大波乱の決勝戦は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ここは」

 

「目が覚めたようだな、ボーデヴィッヒ」

 

夕日によってオレンジに染まった保健室のベッドの上で、ラウラは目を覚ました。

聞こえた声の方向に首を向けると、壁に背を預けた千冬が立っていた。

 

「教官・・・?」

 

「今は先生と・・・まあ、良いか」

 

言い直そうとして止めた千冬が腕を組み直す。

ドイツに居たとき一度しか見ていない、穏やかな表情で微笑む千冬を見て、ラウラは顔が熱くなるのを感じた。

 

「お前が無事と聞いて、安心したよ。・・・全く、扶桑の奴も無茶をする」

 

「彼は・・・私を助けてくれたのですね」

 

「ああ。累積したダメージによって倒れたと言うのに、目が覚めた途端さっさと保健室(ここ)を出ていったよ」

 

「そう、ですか」

 

「後で礼を言っておけ、アイツが困るほどにな」

 

「それはどうなんですか・・・?」

 

「冗談だ」

 

いたずらっ子のような千冬の笑みに、思わずラウラも笑ってしまう。

一頻り笑った後、笑顔のままでラウラは染み一つ天井を見た。

 

「・・・名前を」

 

「ん?」

 

「名前を、呼ばれたんです。システムに飲まれて、暗闇に沈んだ私の名を」

 

「扶桑がか?」

 

「はい・・・。彼があの時呼んでくれなかったら、私は」

 

「そうか・・・」

 

ラウラの言葉に一言呟いて返すと、千冬は壁から離れ、ラウラに背を向けた。

 

「だったら、恩返しでもするんだな」

 

「え・・・?」

 

「そうだな、命を救われたんだ。相応の恩を返してやらないとな?」

 

「え、それって・・・?」

 

「さあな、お前の想像に任せよう。では、私は仕事に戻る。ちゃんと休めよ、小娘」

 

言うだけ言って千冬は保健室を出ていく。

その顔は普段からは想像もつかないニヤケた笑みを浮かべていた。

 

そして、一人取り残されたラウラはというと。

 

「命を救われた恩返し・・・一体何を返せば良いのだ?シュヴァルツェアシリーズの一機?いや扶桑にはヘイズルがある・・・武器?そもそもISがある時点で意味がないだろう!あー、もうわからん!!」

 

ベッドの上で悶々と自問自答していた・・・病人なのに元気である。

 





睦月くんじゃ一撃必殺は無理だったよ・・・

というワケで決勝戦が終了しました!
次回からは暫く日常話が続くと思います。

それでは次回もお楽しみに‼
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