インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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少々急ぎ足な展開になっております、ご了承ください


#04 連れ去りと突入

開会式からお昼を跨いで午後の二時、ここに至るまでは特に何も起こらず、恙無く競技が行われていた。

 

「動きはない、か・・・」

 

周辺にこれと言った動きはなく、ヘイズルのハイパーセンサーにも異常は見当たらない。

定期的に来る束さんからのアリーナ内部の情報にも特に問題は無かった。

売り子の人から買ったジュースを一口飲んで、喉の乾きを癒す。

 

「動くとしたら決勝戦、かな?」

 

『かもねぇ、決勝戦は準備にも時間掛かるし狙うならそこになるかな』

 

僕の呟きに通信越しに束さんが答える。

今僕の目の前で行われているのは準決勝第二試合。

イタリアのフィル・ユティータ選手の駆る『テンペスタ』と中国、劉練選手の『大虎』が空中で激突していた。

どちらも第二世代型の機体で、テンペスタは流線形の機体外装が特徴的な、機動力に重きを置いた高速戦機体。

対して大虎は無骨な左右三つの爪のような非固定武装が目を引く。

テンペスタが機動力で撹乱しつつも手堅く近接ブレードでダメージを与えていく。

・・・勝負あり。

試合終了のブザーが鳴る。勝者はイタリア。

まあさっきの第一試合よりは長かったかな。日本の国家代表、織斑千冬さん。女性にこういうのはいけないんだろうけど、敢えて言おう。化け物だ。ドイツの国家代表を文字通り一瞬で倒したのだから。試合時間三秒ってなんだそれと言いたい。

 

「次が、決勝戦か」

 

『・・・ん?これは・・・』

 

「どうしました?」

 

試合終了後のフィールドの簡単な整地が始まった時、束さんが声を上げた。

 

『今、会場外に妙なのが・・・まさか!?むっくん気をつけて!』

 

「つっ・・・!?」

 

束さんの叫びが聞こえるのタイミング同じくして、会場の外から巨大な爆発音が響いた。

・・・まるで、ビルか何かを爆破したような。

観客席に座っていた人々が何事かと慌ただしく動き出す。

特別席に座っていた国賓、そしてそのSPたちも一瞬とは言え『そちらに興味を持ってしまった』。

 

「くそっ・・・!」

 

目の前で起きたまるでマジックのような出来事に悪態をつきながらアリーナ外へと向かって駆け出す。

幾らなんでもその手はないだろう・・・!

 

『むっくん!?』

 

「束さんごめん!」

 

 

 

 

 

 

 

ーーー 一夏くんが拐われた・・・・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらヴェス、対象の回収に成功した」

 

『こちらスコール、了解した。では、手筈通りに』

 

「了解」

 

高速道路を走る黒いワゴン車の中、簡単な通信を終えて自らをヴェスと呼んだ男は薄汚れたシートに深く沈む。

隣では無愛想な男がハンドルを握り、後ろにはこの寒い時期だというのにタンクトップ一枚という笑みを張り付けた男。そして、

 

「オリムラ イチカ、か・・・」

 

先ほど第二回モンドグロッソの会場から連れ去った織斑一夏が気を失ったまま座席に縛りつけられていた。

タイミングは準決勝が終わり、決勝戦の準備が始まった頃。アリーナ付近の廃ビルを丸々一つ爆破し、その音にアリーナの人間の注意を引き付け、その隙に目標を速やかに、気付かれずに気を失なわせ回収するという荒業も良いところの作戦である。

 

「カリス、会場付近の様子は?」

 

「ビルの爆破を聞き付けた消防と警察、それと軍が動いてる。アリーナはてんやわんやだな。ドイツ(ここ)の連中と『コレ』の姉貴はかなり慌ててるぜ」

 

後部座席に座るタンクトップのカリスが端末を弄りながらニヤニヤと笑みを浮かべてヴェスの問いに応える。

今回、彼らに課せられた任務は織斑一夏をモンドグロッソ会場から誘拐し、先の通信相手であるスコールに引き渡すということ。

このまま行けばすぐにでもこの任務は終わるだろう。

何せあとはこの高速道路を降りた先にある町で引き渡しを終えれば良いのだから。

 

「最初はめんどくせぇと思ったが中々楽勝じゃねえか?」

 

カリスが窓の外を見ながら肩を竦める。普段から人拐いや暗殺など、闇の仕事に携わっている彼らだ。今回の事ですら少々面倒くさいというだけだったのだ。それくらいの自信と余裕があるのだ、彼らには。

 

ーーーそれ故に。彼らは気付かなかった。自らの背後に暗く黒い悪魔が迫っていることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目標距離、残り三千。束さん、連中の行き先は?」

 

『高速道路を降りたから、その先にある町だろうね』

 

「了解、連中が一夏くんを降ろすのと同時に仕掛ける」

 

一夏くんが連れ拐われた直後、僕は直ぐ様動き、ヘイズルをステルスモードで展開して上空から一夏くんを乗せた黒いワゴン車を追っている。

今すぐにでも助けたいが走っている車から人一人を無傷で助け出すなんてことは僕には無理だ。

なので、連中が一夏くんを車から降ろしたタイミングで救助する。

 

『進行方向から考えて、そこから数キロ先の工場に向かってるね』

 

「そこが勝負の決め所か・・・」

 

『ドイツ軍のIS部隊が向かってるから、ある程度時間さえ稼げばこっちの勝ちだよ』

 

「ヘイズルの存在バレますよ?」

 

『そんな事はいっくんとむっくんの無事の為なら何て事ないよ。それにバレたってどうせ再現できるのは外装くらいだからね』

 

この人はこうやって良いタイミングで格好良い科白をいうんだから全く・・・。

 

「それじゃ、無理しない程度に頑張ります」

 

『うん。何度も言うけど、気を付けて』

 

 

通信が切れるのと同じくして、黒いワゴン車が工場へと入っていくのをハイパーセンサーが捉えた。

さて、今になって身体が震えるけど、なんとかやってみようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、降ろせ」

 

「あいよっと」

 

目的の場所である工場についたヴェス達は直ぐ様車を降り、一夏を担いで工場内へと向かった。予定よりも幾ばくか早く着いたが中には既に数人の黒い服を着た者達がそれぞれの手にライフルをもって待っていた。

 

「スコールは?」

 

「今席を外している。どうやら連絡が入ったみたいでな」

 

一夏を無造作に床に置いてカリスが訊ねると一人の男が振り向きもせずにそう答えた。

 

「出来ればさっさと帰りたいんだがねぇ」

 

カリスがそう呟いて上を仰いだその瞬間ーーー

 

 

 

 

 

漆黒の鎧が天井を突き破り、工場の機械を踏み潰しながら降り立った。

 

 

 

 

「な・・・・・・」

 

その存在にその場に居た全ての人間が絶句した。ありえない、馬鹿げている。

そう内心彼らが思っても『ソレ』は現実として存在していた。

 

 

「「「ISだと・・・っ!?」」」

 

緑の双桙が彼らを睨む。

 

 

 

 

 

『カエシテ・・・モラウゾ』

 

 

そう言った黒き死神の言葉を皮切りに工場内は銃声に包まれた。





遂に原作(開始前)介入。
次回は睦月、初の戦闘です。

次回もお楽しみに‼
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