インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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壊れかけのMSは美しい・・・そうは思わんかね?



#04 天災君臨

「ーーーーっ!?」

 

まるで何かに引っ張られるように、意識が覚醒する。

心臓が早鐘を打ち、呼吸は乱れていた。

 

「何、が・・・」

 

頭が痛い。

何か夢を見ていた気がするけど、肝心の内容が思い出せない。

でもこれだけ乱れるような夢だったんだ。多分、碌なモノじゃなかったんだろう。

何度か深呼吸して落ち着きを取り戻すと、何か柔らかいものに包まれている感触がした。

 

「・・・?」

 

それに暖かいような気がする。人肌のような。

目の前が真っ暗なのでまわりの確認が出来ない。

 

「・・・・・・」

 

「んっ・・・えへへぇ~」

 

不意に頭上から声が聞こえたかと思うと、ぐいと引っ張られると共に柔らかな感触が増した。

今この部屋には僕と山田先生しか居ない・・・つまり。

 

山田先生に、抱き枕にされてる・・・!?

 

い、いやいやまさかまさか。布団の距離だってそれなりに離したし・・・だめだ、理由としては弱すぎる。

どうにか離れようと身動ぎして、何とか顔を上げる。

 

「・・・近っ」

 

目の前に山田先生の顔があった。ここから導き出される答えは・・・!

 

山田先生の胸に顔を挟まれてる。そして腕で完全ロックされた状態。

 

・・・・・・この状況、だれかに見つかった場合確実に死ぬ。

特に織斑先生はダメだ。魂すら消え失せる、確実に。

脳内に『天』の一文字を背負った織斑先生が映る。・・・ヤバいどうしよう。

覚醒した頭をフル回転させ、この状況を脱する方法を考えろ・・・考えるんだ睦月!08小隊の隊長だって色々考えて窮地を脱出したじゃないか!

 

そして、僕が取った行動は。

 

「山田先生~、起きてくださ~い・・・」

 

普通に起こすことだった。いやラノベ宜しくここでジタバタする程僕は無謀じゃないですよ?そんな事出来るのは一夏くらいなもんですよ。というか動けないし。

 

「山田先生~、朝ですよ~」

 

「んっ・・・んふ・・・」

 

ダメだ起きない。部屋に差し込む朝日が段々と強さを増している。

もうすぐ教師陣は起床時間だろう。このまま起きないで様子を見に来たのが織斑先生だったら辞世の句すら残せず天に召されるだろう。

生憎僕はまだ父ジオンの下には行きたくないので、必死で山田先生に呼び掛ける。

 

「やーまーだーせーんーせー」

 

「なまえでぇ・・・呼んでくだふぁい・・・」

 

寝言か?寝言なのか?今のは。・・・寝言だろうな。なんとも幸せそうな寝顔がそう思わせる。

・・・名前で呼べば起きるだろうか。いやいや、寝ているとは言え相手は教師。そんな事は・・・

 

「ぎゅ~・・・」

 

「わぷっ」

 

思いきり抱き寄せられ、更に身体が密着する。

・・・・・・僕の理性のためだ、仕方ないと割り切ろう。

意を決し、頭を動かして山田先生に顔を近付けーー

 

「真耶さん、起きてください」

 

言ってしまった。

 

「ふぇ・・・え?あれ?扶桑、君?」

 

寝ぼけ眼の山田先生が僕を視認して目を見開く。

良かった、起きてくれた。

 

「おはようございます、山田先生」

 

「お、おはようございます」

 

「「・・・・・・・・・」」

 

お互い見つめ合うこと数秒。顔を真っ赤にした山田先生がバッと一瞬で壁まで後退する。

 

「ええと、あのごごごごごめんない!?」

 

「そこまで下がらなくても・・・後、浴衣崩れてるんで早く直してください」

 

「え?はわぁ!」

 

目線を逸らして明後日の方を向きながら忠告すると、驚きの声と共に衣擦れの音が鳴る。

ええ、何も見てないですよ?決して見てないですよ?・・・ごめんなさいはっきり見えてました。何がとは言わないけど。

 

 

 

そんな朝からハプニングがあったけれど、臨海学校二日目、スタートだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは、ISを使った実習に入る。・・・・・山田先生、熱でもあるのか」

 

「ひゃわい!?だ、大丈夫れす!!」

 

「どうみても大丈夫には見えないんだが・・・」

 

朝食と準備を終え、僕達専用機組は岩に囲まれた海岸に集まっていた。

専用機持ちじゃない、普通の生徒は昨日の砂浜で実習を行うようだ。

 

いざ実習を始めるというとき、山田先生の顔は真っ赤だった。朝からずっとこんな調子である。

そんなにチラチラと僕を見られると何かあったとまわりに知らしめるようなものですよ・・・

 

「扶桑、何かあったのか?」

 

「ああいえあの・・・」

 

織斑先生の眼光に思わずたじろぐ。僕の顔を見て何か悟ったのか、ため息を吐いて織斑先生は話を切り上げた。

 

「まぁいい。詮索は時間の無駄だ、さっさと始めるぞ。各自、ISを展開しろ・・・それと扶桑は後で私の所に来い」

 

はい死んだー。今確実に死が決定したよ僕ー!

先の未来に絶望しつつも指示に従い、ヘイズルを展開する。シールドブースターも何も装備していない、素面の状態だ。

他の皆も展開し終えたところで、遠くから聞こえる異音をハイパーセンサーが拾った。

 

「・・・なんだろ、この音」

 

「どうかしたか?扶桑」

 

「いえ、妙な音を拾いまして」

 

ジェット音のような音を再度ヘイズルが拾う。

まわりを見れば皆もこの妙な音に気付いたようだ。

というか段々近づいてきてない?この音・・・

 

「あ、あれは何ですの!?」

 

音の正体を捉えたのか、オルコットさんが驚きの声を上げる。

彼女が見る方向に目を向け、ズームするとそこには。

 

「ィィィィイイイイヤッホオオオオォォォォォォ!!」

 

MA形態のファイバーの上に仁王立ちする束さんが映っていた。

 

「織斑先生」

 

「何だ」

 

「撃墜していいですか?」

 

「・・・一応私の友人でもある、止めてくれ」

 

なんて織斑先生と言い合っているうちにファイバーから輸送ポッドらしき物と束さん引っ掴んだISが放たれた。

ファイバーはTR-5フライルーを元としたISをISによって高速で運搬、自機も交えて作戦を展開する事を主目的として開発された機体だ。しかももととなったMSと違い、ファイバーユニットを拡張領域へと格納することが出来るため、作戦の幅を大きく広げている。

そしてもう一機。あのシルエットは間違いない。可愛らしい見た目からは想像もつかないが、TRシリーズでもトップクラスの性能を誇る『将軍(モンスターマシン)』。

 

「TR-6 ウーンドウォート・・・!」

 

純白のそれは重力を感じさせない柔らかな着地を見せ、岩肌へと降り立った。

 

「篠ノ之束、只今推参!」

 

そして、ポーズを取って『天災』が君臨した。

・・・束さん、ペガサス流星拳のポーズは今時の人はわからないよ。

 

 

何ともシュールな登場にまわりが唖然とするなか、僕は溜め息を吐いた。

 





やっと本編にまともに登場したよ束さん!

因みにウーンドウォートの将軍という呼び方は名前の元となった『ウォーターシップダウンのうさぎたち』から取っています。

次回もお楽しみに‼
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