インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~ 作:フォールティア
ドーモ、ドクシャ=サン。フォールティアです。
最近暑くなってきましたね。皆さんも熱中症には気を付けましょう。
『こちら作戦司令室!いきなりISの反応が増えたぞ、どうなっている!?』
「現在その所属不明ISと交戦中!馬鹿げた火力ですわ!!」
通信に対して叫ぶオルコットさんの声を危機ながらも福音へとビームライフルを放つ。
突然、まるで何もない空間から出てきたかのように現れた機体と福音によって戦いは一気に乱戦になってしまった。
「Sガンダム・・・どうしてこの世界に・・・!?」
S(スペリオル)ガンダム。豊富な内蔵火器と高い機動性を持った、『最優』の名を冠する機体。
その性能はUC.0080年代でもトップクラスを誇る。
でもあの機体は本来、ヘイズルやファイバーと同じ、ガンダムという作品自体が無いこの世界では本来その姿を知る人は居ない筈。しかもMSVというマイナーなジャンルの機体だ。そんなものを偶然で造れるはずもない。
だとすれば、あの機体を造ったのは・・・
「僕と同じ転移者か、あるいは転生者か」
血のような赤を基調としたその機体を睨むと、『目が合った』。
「ーーーーっ!?」
背筋が凍る感覚。
何だ・・・今のは。まるで頭から氷水を掛けられたかのような冷えた感覚が身体中を伝った。
あの機体は・・・・・・僕を知っている?
「睦月っ!」
「っ!くぅ・・・!!」
簪の声に引き戻され、何とか飛来したエネルギー弾を防ぐ。
しまった、今は戦闘中だ。考え事をしている余裕は無いだろう!!
「大丈夫!?」
「何とか。ごめん・・・集中、しないとね」
物思いに耽るのは後だ、今はこの二機をどうにかしないと。
『一夏とオルコットさん、それとフライルーは福音を攻撃!所属不明機は僕と簪で対応する!』
『了解(ヤー)!』
作戦を指示して機体を加速させる。兎にも角にも二機の内どちらかを戦闘不能にしないと。白式のシールドエネルギー残量のこともある。焦らず、でも迅速に動かなければ。
白式を狙うSガンダムに照準を絞り、ビームライフルを乱射する。
しかし、まるで僕が撃ってくるのが解っていたかのように回避されてしまう。
その動きはまるで、血に飢えた獸のようだった。
Sガンダムのツインアイが此方を捉え、右手に持った長大な銃『ビームスマートガン』を構えた。
「っ!!」
スラスターを吹かして横に避けた直後、蒼白の閃光がシールドブースターを焦がした。
完全に避けたはずなのに・・・僕の動きに合わせて照準を動かしたのか・・・!
「油断ならないな!」
「援護に回る!」
簪が腰の両サイドに装備したガトリングを発射するのに合わせ、左手でビームライフルを撃ちながら右手にロングブレードユニットを展開、ライフルに装着、即座にトリガー。
しかしこれも避けられてしまう。
「何?あの加速力・・・ヘイズルと同等か、それ以上じゃない?」
「束さんに匹敵する開発者か・・・想像したくないね」
簪と言い合いながらも動きは止めず、弾幕を張りながらSガンダムを囲むように機体を動かす。
これだけ撃っているというのに一つも掠らないなんて、機体性能もさることながら搭乗者の技術も凄まじい。
絶えることなく降り注ぐ弾幕に痺れを切らしたのかSガンダムが動き出す。
ビームスマートガンを格納したと思ったら次の瞬間には簪の目の前まで迫っていた。
「くっ!?」
「簪!!」
抜刀されたビームサーベルを咄嗟に展開した近接ブレード『葵』で防ぐ簪。
しかし無理な体勢で構えたからか、すぐに弾かれてしまう。
「させない!」
追撃をさせないために簪とSガンダムの間へとロングブレードライフルを撃ち放ち、Sガンダムの勢いを削ぐ。
その間に簪は何とか体勢を整えたようだ。
戦いの中に出来た僅な間隙。僕はSガンダムへと問いを投げ掛けた。
「貴方は、何者ですか。何が目的でこんな事を・・・」
「・・・・・・ハハッ」
そんな僕の問いに小さく、ヤツは笑った。
やがて肩を揺らし天を仰ぎ笑い始めた。
「ハハハハハハハハハハッ!!」
一頻り笑ったSガンダムが、僕を捉える。
その機械の目を見た瞬間、ロングブレードライフルをヒートブレードモードで構えた。
「ぐぅ・・・!?」
直後、衝撃が走る。
Sガンダムが彼我の距離を一瞬で詰め、ビームサーベルを振るってきたのだ。
火花が散り、Z系列に似たフェイスが眼前に迫る。
押すことも引くことも出来ない膠着状態。
その状態で、まるで歓喜するかのような声が聞こえた。
「久し振りだなぁ・・・扶桑?」
「え・・・?」
その声を聞いた途端、視界にノイズが走った。
『ーーーー脆いーーせっかーー鍛えて』
『ーー汚ぇーーのゴミ』
「う・・・ぁ・・・」
僅かに聞こえる声と激しい頭痛が突然襲いかかってくる。
ーーダメだ、思い出すな。
ーー忘れたままでいろ。
ーー壊れてしまう。
頭の中にチラチラと映る見覚えのある光景に、本能が止めろと告げる。
でも。
「おいおい、まさか忘れた訳じゃあねぇよなぁ?ふ・そ・う君?」
夕暮れの校舎裏、吐き出す程の暴力、止まない罵詈雑言・・・目の前で壊された大事なモノ。
唐突に開かれたSガンダムのフェイス。隠されていたその顔を見た瞬間、全てを思い出した。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「睦月!?」
ヘイズルと似たような、赤黒い全身装甲のISと接触した途端、睦月が聞いたこともないような、悲痛な叫び声を上げた。
「おいおい、まさかマジで忘れてたってのか?悲しいねぇ・・・なぁ塵屑君!」
「がっ・・・あ・・・」
「っ貴様ぁ!!」
嘲笑と共に睦月を蹴り飛ばしたヤツに怒りを覚え、アサルトライフル『瞬乱』の引き金を引く。
しかし先程からみせる異常な機動力によって悉く避けられる。
だが、ヤツを睦月から剥がすことには成功した。
直ぐさまヘイズルの前まで弐式を動かし、睦月を守る位置に立つ。
「睦月、睦月!」
「・・・嫌だ・・・怖い・・・痛いよ・・・」
呼び掛けてもまるで何かに怯えるように睦月は震えていた。
ヤツと睦月が鍔迫り合ったあの一瞬、ヤツが何かしたのだろう。
普段からは想像もつかないほど、今の私は酷い顔をしているだろう。でも抑えようがないし、抑える気もない。
睨み付ける私を見て、ヤツは肩を竦めた。
「おぉ、おぉ、コワイじゃねぇか。なかなか良い顔だ・・・でもな」
そこまで言って、ヤツは言葉を切った。
「今の目当てはお前じゃねぇんだよ、雑魚」
直後、視界が激しく揺さぶられた。
「ぐっあ・・・!」
自分が蹴られたと認識したのはヤツが睦月に近付いた時だった。
【脚部スラスター異常発生 サブエネルギーライン起動 】
【残りシールドエネルギー 250】
たった一撃の蹴り。それだけでまだ600近くあった弐式のシールドエネルギーが ここまで消し飛んだ。
あまりの事に呆然としそうになるが、そんな感情は無理矢理に押し込める。
助けなきゃ。
そう思って睦月と本音が一緒に作ってくれた『運命の風』を展開する。
動け、動け・・・!
翼が開き、機体が加速する。
でも、遅かった。
「壊れたまま死ね」
ヘイズルの胴を、蒼白の閃光が貫いた。
墜ちる、大切な人が。
その現実を見た瞬間、私は絶叫した。
「睦月いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
堕ちたヘイズル、果たして睦月の運命や如何に!
次回もお楽しみに‼