インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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戦闘にすらならなかったよ・・・


#05 救助

〔敵戦力確認 総数12 ライフル所持六人 ハンドガン所持四人 マシンガン所持二人〕

 

〔敵性体能力 危険度F 〕

 

〔要救助者の救助成功率 99%〕

 

 

『返して・・・貰うぞ』

 

工場内に侵入した僕は直ぐ様ISのスラスターを吹かせて一夏くんを回収する。

直後に四方八方から弾丸が飛んでくるが細かくブースターを動かして回避を行う。

第一目標である一夏くんの回収は完了、あとはこの連中をどうにかするだけだ。

 

「くそが、なんでISがここに居るんだよ!?」

 

『・・・・・・』

 

 

突入前に外の警備に当たっていた奴等は腹パンで黙らせたし、このまま逃げるのも手だろう。

ISが展開するシールドエネルギーはアサルトライフルやマシンガン程度で削れるほど強力じゃないし、仮にシールドエネルギーを破ったとしてもヘイズルは全身装甲(フルスキン)。油断はしないが負ける気もしない。

 

「束さん」

 

『むっくん、出来るの?』

 

コア・ネットワークを使い束さんにコール。

出来るの?とは恐らく戦闘が、だろう。そんな事は決まっている。

ヘイズルを貰ってから束さんから格闘術を習い、ISの試験運用で無茶苦茶な機動をしてきたんだ。

はっきり言おう。

 

「余裕です」

 

一夏くんを抱えたまま脚部スラスターを使い一気に加速して、直近にいた誘拐の主犯格の男を殴り飛ばす。

派手に吹き飛んだ男は三人巻き込んで沈黙した。

 

残り八人。

 

敵が動揺した隙をついて跳躍、急降下して床を踏み叩く。その衝撃と飛び散る破片に四人が倒れた。

 

残り四人。

 

続けて加速を行いながらゴム弾を装填したサブマシンガンを拡張領域(バススロット)から展開。乱射した事で三人沈んだ。

 

残り一人。

 

壁に背を預け立つタンクトップの男に銃口を向ける。

 

『お前が、最後だ』

 

「ば、化け物っ・・・!」

 

『さよなら』

 

銃口が、火を吹いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

睦月が誘拐犯達を文字通り蹂躙し終えた頃、ドイツ軍のIS部隊が工場へと到着した。

 

「何が起きてる・・・」

 

愛機である漆黒のISを展開した部隊員であるクラリッサ・ハルフォーフは驚愕に目を開く。

工場外に気絶した数人の男達が山のように積まれ、その横にはまるで飴細工のように曲げられたライフルが放り投げられていた。

何者かが先に突入したのは解る。だが目の前にある惨状はどう見ても只の人間には出来ない。

だとすれば、今工場内に居るのは・・・

 

「ISだとでも言うのか?」

 

その呟きと同時、真正面にある工場のゲートが軋みを上げながら開いた。

警戒の為に歩兵隊が銃を構えるなか、悠然とソレはクラリッサ達が連れ戻そうとした少年を抱えて現れた。

 

「黒い、IS・・・」

 

『・・・・・・』

 

沈黙を保つISは見た目からして第一世代型だと判別する。光を吸い込むような漆黒の全身装甲(フルスキン)、頭部はさながら兜のような装甲で包まれ

、その指先はマニキュアでも塗ったかのように赤い。何より目を惹くのが、左肩に付けられた、機体の黒とは正反対の白い兎のエンブレムだ。

緑のカメラアイがクラリッサを捉える。

 

『貴女が指揮官か?』

 

ボイスチェンジャーを使用しているのか、男か女か判別しにくい声で黒いISがクラリッサに問う。

 

「・・・ああ、そうだ。ドイツ軍IS部隊所属のクラリッサ・ハルフォーフだ」

 

『訳あって、名は明かせない。すまない』

 

「い、いや、気にするな?」

 

名前を明かせない事を頭を下げて謝る黒いISに思わず疑問系で返してしまう。さっきまでの威圧感はどこに消えた。

 

『織斑一夏はこの通り無事だ』

 

妙な空気感になったドイツ軍など露知らずといった声で黒いISがクラリッサに一夏を渡す。

クラリッサがISのハイパーセンサーを使って簡易的ではあるがメンタルチェックを行ったが、確かに傷一つ無い。

チェックを終えた所でクラリッサに担がれた一夏が身じろぎをした。

 

「っ・・・う」

 

『意識が戻るようだな。・・・あとは任せるよ。ああ、手柄は貴女達が立てた事にしてくれて構わない』

 

「あ、おい!」

 

一夏の様子を確認したISは言うだけ言って、正に風のような速さで上昇し、彼方へと飛び去った。

 

「・・・追いますか?」

 

「いや・・・下手に追うべきじゃない。あれは恐らく」

 

部下の言葉に冷や汗を流しながら返答する。去り際に感じたあの重圧感、追えば確実に『此方が』潰されていただろう。

雪の降り始めた空を暫く睨んで、クラリッサは指示を下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『結果は上々、モンドグロッソも後日決勝戦をやるみたい。ちーちゃんもいっくんもむっくんも無事でよかったぁ』

 

「ホント、上手く行ってよかった」

 

太平洋を南下しながら束さんと通信すると、ほっとした声が聞こえた。

現在僕はステルスと試作品のシールドブースター三基を使い、音速で家があるあの孤島へと帰還しているる最中である。

シールドブースターをコンセプトがハッキリしてるから楽に作れるってだけで、たった一週間で三基フルセットで用意する束さんの技術についてはもはや何も言うまい。

何はともあれ無事に終わってよかった。

これで暫くはのんびり出来そうだ。

 

『あ、そうだむっくん』

 

「何です?」

 

『ちょっと気になるモノ見付けたから、もしかしたらまた近い内にドイツに行くかもしんない』

 

「・・・・・・」

 

おい、数秒前の僕、なにフラグ立ててるんだ・・・。

 

 

 

どうやら後少しの間は僕に安穏の二文字は訪れないらしい。

深く吐いた溜息が、虚しく太平洋の海に消えた。





睦月に平穏はない(戒め)

残り数話を挟んで原作の時間軸へと入る予定です。

次回もお楽しみに‼
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