インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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ゼロ距離射撃ってなんであんなに格好いいのだろうか(デンドロビウム感



#12 ヒーロー

「僕の背中を押すため・・・?」

 

「そう、私はその為にここに来たんだよ」

 

僕の問い返しに雪穂はポニーテールにまとめた自分の髪を弄りながらそう答えた。

一体、どういう事だろうか?この謎空間・・・夢に来てからと言うもの疑問が絶えず生まれてくる。

 

「現実での睦月が今どういう状況かわかるかい?」

 

「確か・・・Sガンダムに撃ち抜かれて、そのまま」

 

「撃墜されたね。まあ、ヘイズルが頑張って睦月を守ったから、命に別状はないよ。今は布団の上でぐっすりさ」

 

土手っ腹に思いきりビーム貫通したと思うんだけど。IS・・・いやヘイズルの防御力に脱帽するべきなんだろうか。

布団の上、ということは旅館まで運んで貰ったんだろう。

 

「と、ここまでが君の現状だ。次は君以外の現状を・・・」

 

「私が説明させていただきます」

 

雪穂の言葉を遮ってドレスの少女が手を挙げると、テーブルの真ん中に映像が映し出される。

これは・・・もしかして。

 

「御察しの通り、福音及びSガンダムと主と織斑様以外の全専用機持ちとの戦闘、現在の映像です。コアネットワークを通し、フライルーの視点からの映像となりますが」

 

映像の中では、激しい戦闘が繰り広げられていた。見たところフライルーが遊撃に回り、簪、シャル、ラウラがSガンダムの足止め。紅椿を装着した箒さん、鈴さん、オルコットさんが福音へと攻撃を仕掛けている。

一見押しているように見えるけど、多分Sガンダムが本格的に動けば戦況は容易く覆ってしまうだろう。

『彼』はそういう人間だ。

 

「急いで戻らないと・・・!」

 

微々たる力かも知れないけど加勢しなければ。いつ僕と同様に撃墜される人が現れるかわからない。簪達をバカにするわけじゃない。『彼』が桁違いなんだ・・・。

椅子から立ち上がろうとする僕をしかし手が止める。

雪穂の手が僕の腕を掴んでいた。

 

「ストップだよ、睦月」

 

「雪穂・・・」

 

「まあ座りたまえよ。言ったろう?君の背中を押すってさ」

 

気軽そうにウィンクした雪穂の言葉に、どうにか逸る気持ちを押さえて椅子に座り直す。

腕から手を離し咳払いを一つして、雪穂は話始めた。

 

「今の君では、福音はまだしもSガンダムとは戦えないだろう。それは君自身がよく理解している筈だ」

 

「っ・・・」

 

図星だった。

そう、僕はSガンダム・・・いや、『彼』とマトモにやりあえない。

ここに来て思い出した記憶が恐怖心を掻き立てて、彼の前に立つと思うと足が震える。

 

「ねえ、睦月」

 

「・・・何?」

 

不意に、雪穂が僕の顔を見てこう訊ねてきた。

 

「君にとってガンダムってなんだい?」

 

僕にとってのガンダム・・・その突拍子もなく掛けられた問いに、僕は考える。

身も心もボロボロだったあの頃、出会ったガンダム。それを見て、僕は・・・。

 

「僕にとって、ガンダムは・・・」

 

「・・・・・・」

 

「ヒーロー、かな」

 

そう、英雄(ヒーロー)だ。たとえそれらの全てが他の誰からも否定されたとしても、僕にとっては紛れもないヒーローだったんだ。

壊されても、揶揄されても、それでも戦う。

ああ、深いテーマなんてものはどうでもいい。

憧れたんだ。ガンダムの戦いに、そのパイロットの生きざまに。

斯くありたいと思った。たとえ弱くとも足掻き続ける。そんな強さに憧れた。

 

上手く言葉に出来ない感情を突っかかりながらも吐き出し終えると、雪穂は満足げに頷いた。

 

「なんだ、分かってるじゃないか睦月は。ねぇ、君もそう思うでしょ?」

 

「えぇ、答えは出ているようです」

 

「え?」

 

妙に納得顔で頷き合う二人に困惑していると、ズビシッ!っと効果音が付きそうな勢いで指を指してきた。

 

「君にとってガンダムがヒーローだと言うなら、君は今、ヒーローだと言うことだよ!」

 

「ごめんよくわからない」

 

「君はヘイズルのパイロットだ。そう、ガンダムを駆るパイロットだ。睦月の言う、ヒーローなんだよ」

 

ああ、成程そう言うことか。

雪穂の言いたいことを理解して、なんと言うか引っ掛かっていた物が取れた気がした。

そうだ、気付かない内に僕は、憧れていたヒーローになっていたんだ。

 

「確かに、あのSガンダムのパイロットは怖いかも知れない、強いかもしれない。でも」

 

「それでも、ヒーローって言うのは立ち向かっていく者だ。でしょ?」

 

「漸く納得いったかい?なら後は簡単だ。現実に戻ってあの調子乗ってる憎いあんにゃろーに一発お見舞いしてくればいいのさ」

 

拳を突き出して笑う彼女にちょっと呆れながらも笑ってしまう。

さっきまであった、『彼』への恐怖心はすっかりなりを潜めていた。

・・・これなら、やれる。

 

「さって、君の背中をしっかり押せたワケだし、後は君に力を渡すだけだね」

 

「力?」

 

「彼に立ち向かう為の力さ」

 

そういうと雪穂は拳を下げて、ニシシと笑った。

そんな彼女と入れ替わるように、ドレスの少女が立ち上がり、手を差し出す。

 

「手を私と同じようにしていただけますか?」

 

「こう?」

 

「はい、ありがとうございます」

 

そう言うと彼女の掌から柔らかな光が流れ出し、僕の差し出した右手へと収まった。

まるで、何かを継承するかのように。

 

「今はまだ、『進化の途中』。ですがそれだけでも主なら十二分に戦えるでしょう」

 

「・・・ありがとう」

 

仄かに輝きを残す右手を握り締め、ドレスの少女に礼を言う。

・・・さあ、夢の時間はそろそろ終わりだ。

後ろを振り向けば、真っ白な扉がその口を開けて待っていた。

 

「雪穂、また・・・会えるかな?」

 

「大丈夫、近い内にまた会えるさ」

 

顔を見なくてもわかる。きっと今の彼女は満面の笑みを浮かべていることだろう。

雪穂がそう言うんだ、信じよう。

 

「行ってきなよ、『ヒーロー』。目指すは大団円(ハッピーエンド)だ!」

 

「うん!」

 

トン、と背中を押され扉の中へと飛び込むと視界が真白に染まっていく。

意識が消えていく最中、僕は笑った。

 

「今度は現実で会おうね、『ヘイズル』」

 

ドレスの少女にそう言って、僕の意識は光に呑まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気付いていましたか・・・」

 

「睦月は変な所で勘がいいからねぇ」

 

睦月が扉の中に消え、見渡す限りの丘陵が段々と色を無くすなか、雪穂とヘイズルと呼ばれた少女は互いに肩を竦める。

 

「貴女は、これからどうするおつもりですか」

 

「睦月に近い内に会うって言っちゃったし、まあ色々準備する感じかな」

 

「そうですか。なら今度はマトモな方法で主に会ってください。ISの深層領域に浸入するなんて事はしないでください」

 

「あはは、善処するよ~。っと、それじゃお先に!」

 

何とも煮え切らない答えを残して雪穂の姿が消える。

完全に純白となった空間で、ヘイズルは天を仰ぐ。

 

「主・・・私は貴方と共にあります」

 

小さなその呟きは輝きの最中へ吸い込まれていった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





というわけで睦月の夢の話これでお仕舞いです。
次回は現実へと舞台を移します。

次回もお楽しみに‼

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