インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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ヒーローは、遅れてくるもの!



#13 黒き神槍、白き絶刀

「っ・・・ぁ・・・」

 

意識が覚醒し、瞼を開く。

昨日の夜に見た木目の天井があった。

二、三度瞬きをして布団から身体を起こし、コキリと首を鳴らす。

窓の外を見れば、茜色に染まりかかった空が見えた。どうやら気を失ってから大分時間が経ってしまっていたらしい。

 

「ふぅ・・・」

 

「よう、目が覚めたか睦月」

 

「一夏・・・」

 

何時からそこに居たのか、ISスーツの上に浴衣を着た一夏が部屋の入り口に立っていた。

 

「一夏、身体は大丈夫なの?」

 

「ああ問題ない。寧ろ前よりスッキリしてる位だ。睦月は?」

 

「僕もかな。何か、色々突っかかりが取れた感じ」

 

「そいつはよかった」

 

話しながら一夏は部屋に入ってきて、未だに座っている僕に手を差し出して笑った。

もうそれだけで一夏が何を言いたいのか理解して、その手を掴んで立ち上がる。

確かに、のんびりなんてしてられないね。

 

「んじゃ、行くか」

 

「そうだね、派手に行こうか」

 

握った手を離してハイタッチ。

窓を勢いよく開けてベランダに出ると、部屋の扉が壊れんばかりの威力で開けられた。

織斑先生と山田先生だ。

普段ならおとなしく言うことを聞くだろうけど、今の僕たちは生憎と止まる気はない。

 

「貴様ら、何処へ行くつもりだ!」

 

「「ちょっと野暮用です」」

 

「バカか!?」

 

「千冬姉、俺はバカだ。ああ確かにバカだ。だからこそ、此処で寝てる訳にはいかねえんだ」

 

「そういう事です。織斑先生、山田先生、大丈夫です。ちゃんと帰ってきますから」

 

「待っーー」

 

「「行ってきます!」」

 

織斑先生の制止の声を無視して僕達はベランダから飛び降りた。

さあ、飛ぶよ!

 

「ヘイズル!」

 

「白式!」

 

直下にある林の木に当たる寸前にISを展開、飛翔する。

 

【システム戦闘モード起動】

 

「一夏!」

 

「応!」

 

一夏の腕を掴み、ヘイズルのスピードを上げる。

向かうは第二防衛ライン。・・・待っててね、

 

「皆・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ・・・流石に一発一発のダメージが大きい・・・!」

 

様々な色の閃光が彩る戦場の中、更識簪(わたし)は僅かな隙を活かして体勢を立て直す。

接敵からもう二時間以上経つ。最初の方こそ此方がどうにか押していたが体力の減少や機体に蓄積したダメージがここに来て響き始めた。

何より、

 

「福音の二次移行(セカンドシフト)が起こるなんて、流石に予想外・・・っ!」

 

呟きながらも襲ってくる長大なライフルの一撃を無理矢理回避する。

福音の二次移行・・・篠ノ之さんが一撃を与えた途端にそれは起こった。

マルチスラスターユニットが消え去り、そのかわりに巨大なエネルギー翼が生え、正に天使と呼べる姿になったのだ。

何より恐ろしいのが、その翼が専用武装である『銀の鐘』によって形成された攻防一体のトンデモ兵器であるということだ。

どうにかオルコットさんやフライルーが攪乱しているけど、あまり芳しくない。

直ぐにでも援護に行きたいところだけど・・・

 

「余所見してる余裕があるとは関心だなぁ、オイ!」

 

「っ・・・うるさい」

 

「簪さん!」

 

小馬鹿にしたような科白と共に放たれた腰のビームガンを『運命の翼』による推進力で回避するけど、二発の内の一発がシールドエネルギーを削る。

シャルロットの援護のおかげで追撃は免れたけど、機体にガタが来はじめている。

 

『シャルロット、ラウラ、機体状況はどう?こっちはもう色々と危ない』

 

『こちらシャルロット。僕も似たようなモノだよ・・・武器もそろそろ全部撃ちきりそう』

 

『こっちもだ。ブリッツも撃てて後五発、残るは近接戦のみだ・・・だがシールドエネルギーが心許ない』

 

どうやら二人も同じような状況らしい。防御用のパッケージに換装しているシャルロットはまだしも、完全に砲撃戦特化のパッケージであるラウラはやはりダメージの蓄積が著しい。

かく言う私も、使える武装は今手に持っている夢現とサブマシンガン『秋雨』しかない。腰のガトリングは早々に撃ち尽くしたのでパージした。

シールドエネルギーも残り少ない。

万事休す、だなんて諦めの言葉を使いたくないけど、色々と難しい状況なのは確かだ。

 

「おいおい、手の内はもう終いか?もっと楽しませろよ・・・それとも何か?三人揃っていたぶられるのがお好きなタイプか?」

 

「・・・・・・」

 

相も変わらずバカにしてくる奴の言葉に耳を貸さず、現状の打開策を探す。

・・・ダメだ、手が見つからない・・・!

 

「まあいい、そろそろ面倒だしな。終わらせるか」

 

「簪!避けて!」

 

「え・・・?」

 

瞬時加速を使ったのだろう、一瞬で奴に間を詰められた私の眼前に銃口が突き付けられる。

 

「テメェは睦月と親しそうだからなぁ・・・殺したら睦月の奴もさぞ悲しむだろうなぁ」

 

「この・・・外道が!」

 

「ありがとう、最高の誉め言葉だ・・・なんてなぁ!」

 

銃口のその向こうに居る奴を睨むが、何ともイラつく声音で笑ってくれた。

パルマは・・・ダメだ、出力が足りない。弾こうにもこの距離じゃすぐに撃たれる。

 

「出来れば睦月の奴の前で殺したかったが・・・ま、いいか。じゃあな雑魚」

 

逃げようにも逃げられず、死を受け入れかけたその時。

 

「どおぉぉぉけえぇぇぇぇぇぇ!!」

 

蒼と桜色の巨大な閃光が、私の視界を埋め尽くした。

 

「簪!大丈夫!?」

 

「う、うん・・・大丈夫」

 

余りの出来事に呆然としていると、シャルロットに肩を叩かれたので慌ててそう返す。

閃光が収まり、反対側に居る奴を見ると、右腕の装甲が半ば溶けかかっていた。

 

「一体、誰が・・・」

 

『簪、シャル!9時の方向を見ろ!』

 

慌てたラウラの声に言われた方角を見ると、私は目を見開いた。かつてないほどに。

 

漆黒の全身装甲。背中にはまるで飛行機の翼のようなウィングユニット。さらにその後ろには柱の如き巨大なブースター。腰には長大な銃剣を加えた二つのクロー。

両手にも槍と見間違う銃剣を二本構えたその機体の頭部には額から顔の上半分を覆うような白いパーツが付いていた。

 

純白の部分装甲。その背中には鉄(くろがね)で作られた白い翼、左手から肘までを包むガントレット。そのガントレットには『鞘』に収まった刀が懸架されていた。

 

知っている。姿こそ大きく変われど、私はあの機体を知っている。

あの機体はーー

 

「ヘイズル・・・!白式・・・!」

 

『こちら扶桑睦月』

 

『同じく織斑一夏』

 

 

 

 

『『これより戦線に復帰します!』』

 

 

黄昏の空に漆黒の槍と純白の剣が降り立った。

 

 

 

 

 





遂に戦線復帰した睦月と一夏。戦いの行方は如何に!

次回もお楽しみに‼
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