インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~ 作:フォールティア
さて、今回で戦闘は終了です。それではガンダムファイト、レディーーーゴォォォォォォォォ!
P.S.
一部文章を改訂、誤字を修正しました。
「何だあれは・・・」
「強い、強すぎる・・・」
圧倒的、まさにそう呼ぶに相応しいワンサイドゲームだった。
先程まで猛威を振るっていた赤黒いISが、良いように遊ばれている。否、蹂躙されている。
私たち三人で手も足も出なかった敵を、睦月は一方的に攻め続けている。
現に敵ISの装甲は大きくひしゃげ、所々融解、焦げ付いた跡が見えるのに対して、ヘイズルは全くの無傷だ。
にしても、あの変身とも言える武装切替・・・いや、パッケージだろうか。あれは、まさか・・・。
「単一仕様能力・・・?」
「簪?」
だとすればあの一瞬で姿が変わったのも頷ける。
そして、それがどれだけ『強すぎる』能力なのかも。
機体状況の問題から近くの孤島に降りた私たちは、ハイパーセンサーを用いて戦場を見ていた。オルコットさん達の援護に回りたいけど、はっきり言って今の私達じゃ足手まといも良いところだ。
というか織斑君が化け物じみた機動で福音相手に無双してるから行く必要を感じない。何あの機動、真ゲッターか何か?
見ることしか出来ない歯痒さはある。けれど、俯瞰することで様々な情報が見えてくる。
確かな事はただ一つ。
ーー今の睦月に『敗北はありえない』。
巨大な腕、その指先からビームを。両手にもったビームライフルと肩の小型ミサイルポッド、腰のサブアームユニットのビームライフル、背中のアーム付近から伸びた開口式ビームキャノン、持てる武装の全てを撃ち放つその姿は、見ている私たちですら震える程だった。
「く、そがあぁぁぁぁ!」
為す術なくエネルギーシールドごと装甲を削られるSガンダム(睦月からのデータリンクで名前を知った)、その搭乗者の激昂がハイパーセンサーを通じて私の耳に入ってくる。
「そろそろ、決着にしようか。秋人」
睦月が砲撃を止め、パッケージを量子化してビームサーベルを構える。
ヘイズルの姿は再び変わり、背中に二枚のシールドブースターを備えた姿となっていた。
対してSガンダムも機体の各所から小さく火花を散らしながら膝裏からビームサーベルを抜きはなった。
「認めねぇ・・・テメェは、大人しく這いつくばっていれば良いんだよォ!!」
「いいことを教えてあげる」
一息に距離をゼロにしたSガンダムに睦月は冷静にビームサーベルを振りかぶり。
「その手の台詞を吐くのは悪役の負けフラグなんだよ!」
Sガンダムの胴を薙いだ。
カウンターの一撃が見事に入り、Sガンダムの胴に真一文字の亀裂が走る。
装甲が赤熱し、切り裂かれた破片が宙を舞う。
ダメージを軽減するためか、Sガンダムがバックブーストで距離を空ける。
睦月は無理に追撃をせずビームサーベルを構えたままだ。
腰のビームガンや背中のビームカノンと幾つもの火器を積んだ機体だ、警戒するに越したことは無い。
「確かに」
「あぁ?」
「確かに君は天才なんだろう。その機体だっておそらくは君が造ったんでしょ・・・でもね、それだけだ」
「何だと・・・」
「その機体は君みたいなのが乗っていいものじゃないんだよ」
ビームサーベルを量子化し、ロングブレードライフルを展開しながら睦月が言う。銃口から桜色の粒子が漏れだし、空気を揺らがせる。
「這いつくばっていればいい。そう言ったよね。その台詞、そっくりそのまま返すよ・・・這いつくばるのは、君だ」
「あ゛ぁ゛!?やってみろよぉ!」
激昂の叫びと共にSガンダムが斬りかかる。
ボロボロの機体を引き摺った、無謀な突撃。それを冷静に見据えて睦月は構え・・・
「ーー終わりだ」
槍の如くその銃口を突き刺した。
砲音。
左腕が跡形もなく消え去ったSガンダムのブースターから光が消え、一瞬の停滞の後に落下を始める。
「認めねぇ・・・」
その最中、Sガンダムから発せられる声を、私は聞いた。
「認めねぇぞ、睦月・・・お前は、俺のーー」
バシャリ、と小さな水柱を上げてSガンダムは海中に没した。
睦月の因縁の相手との戦いは、そんな静かな終わりだった。
「・・・僕は、もうあの頃の僕じゃないんだよ、秋人」
彼が没した水面を見つめて僕は呟いた。そこは小さな波紋すら波に呑まれて消えていた。
宿怨を断つ。その終わりは思っていた以上にあっけのないものだった。
でも、これで良いのだと思う。彼と僕との鎖の絶ち方は。
一頻り水面を見てから、僕は一夏たちが戦っている空域に向いた。
「援護は・・・要らないみたいだね」
「睦月!」
疲労感からか、揺らぐ身体を慌てて来た簪に支えられながらハイパーセンサー越しに捉えた光景を見て、僕は笑みを浮かべる。
そこには天を舞う白き機神の姿があった。
『一夏、こっちは終わったよ・・・ちょっと援護には行けそうにない』
「気持ちだけで十分だ!」
睦月からの申し出に一夏は余裕を持って答える。
戦いは一夏の独壇場と化していた。福音の攻撃の悉くを切り払い、避けて一方的に攻撃を加える様は本当に数刻前と同一人物かと思わせる。
セシリア達は直接的な攻撃はせず、福音が離脱しないよう散発的な射撃に徹していた。
「aaaa!!」
「ッーーラァッ!」
福音の光翼から放たれる最早砲撃と称すべきエネルギー弾を納刀していた雪片を抜き放って弾く。
『白式・雪羅』。それが進化した白式の名だ。
かつての白式の面影を残しながらも、機体の各所に変化か現れている。
非固定武装である大型のスラスターは小型のスラスターを増設した、翼のような形状となった。
脚部にも開閉式の小型スラスターを増設し、機動力は大幅に強化された。
武装面においては雪片弐型のエネルギー効率の上昇、それによる刀身形成の最高速化。そして左手に付けられた新武装、『雪羅』と雪片専用の鞘『氷桜(ひおう)』。
雪羅は展開装甲の機能を備えたガントレット型の複合兵装であり、荷電粒子砲、零落白夜を纏ったエネルギークロー、同じく零落白夜の効果を持つエネルギーシールドと、万能性の高い武装となっている。
氷桜は、居合いを好んで使う一夏のために白式が開発した純白の鞘であり、零落白夜発動用の小型サブジェネレータを鯉口に搭載している。基本的には雪羅に懸架されているが、腰に掃くことも、手に持つこともできる。
これにより、零落白夜発動にかかる機体エネルギーの消耗を抑えることが出来、経戦能力が僅かながらも上昇した。
氷桜から零落白夜を発動させた雪片が鞘走り、福音のエネルギー弾を霧散させていく。
流石の福音も度重なる乱射によってエネルギーが減ってきたのか、動きが悪くなっている。
【残りシールドエネルギー 540】
(そろそろ決めないとマズイな・・・なら!)
エネルギー残量を見て、一夏は思い切り息を吸い込むと福音を睨んだ。
雪片が氷桜に納刀され、零落白夜のエネルギーが装填される。
全身にあるスラスターの全てを解放、蒼白い粒子が白式のまわりを舞い始める。
さながら天使の翼のような形となった非固定武装のスラスターがエネルギーを溜め込み始める。
危険を察知したのか、福音の攻撃が激しさを増すが、一夏はまるで未来でも見えているかのように弾幕を避け続ける。
そして、時は満ちた。
【零落白夜 エネルギー装填完了。 完全解放、限定解除(リミットオーバー)】
【二重加速 エネルギーチャージ完了】
「今、助けるぜ・・・福音!」
【二重加速 発動】
瞬間、白式は『音を置き去りにした』。
「a,aaaaaaaaaaaaaa!!」
白式が止まるのと同時、破裂音と共に福音の光翼が微塵に切り裂かれ空に消える。すれ違い様に一夏が放った『完全解放(オーバーバースト)』の一撃が福音の武装ごと、シールドエネルギーを限界まで削ったのだ。
そしてーー
「これで・・・」
白式が振り返り射撃形態となった雪羅を福音の背中に突き付け、
「終わりだ!!」
トリガーを引いた。
爆音を鳴らしながら砲口から光が溢れ、福音の残り僅なシールドエネルギーを削りきる。
「ーThank Youー」
呟くように言葉を残し福音はビクリと一度だけ大きく体を震わせ、その動きを停止した。
落下しかかったその身体を左手で抱き止め、一夏は高らかに雪片を掲げた。
「福音の機能停止、作戦・・・成功だ!」
太陽が水平線に沈み、星々が輝き始める中、戦いは終わりを迎えた。
一夏、魔改造しすぎかな・・・
福音戦、これにて終了でございます!
事後処理などの話を幾つか挟んで臨海学校編は終わりになります。
次回もお楽しみに‼