インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~ 作:フォールティア
最近、スマホの調子がすこぶる悪いフォールティアです。
鉄血のオルフェン、楽しみですね!武器がメイスとはまた恐ろしい。
「あぁ・・・つっかれた~~」
「覚悟してたとはいえ、流石に効くぜ・・・」
旅館のロビーで浴衣姿の僕と一夏は揃って天井を仰いでいた。
無事に帰って来た僕達二人を待っていたのは労いの言葉と説教だった。比率的には2:8位。他の皆はとばっちりを受けたくなかったのか、そそくさと撤退してしまったからさあ大変。援護無しで織斑先生の説教を二時間に渡って聞くはめになってしまった。
で、説教が終わって今に至る。
「心配してくれてたのは解るんだけど、二時間って長すぎね?」
「まあ、命令違反したのは事実だし・・・勝利の代償ってところかな」
「キツイ代償もあったもんだ」
相も変わらず背もたれに頭を乗せながら会話する。
正直、戦闘よりも疲労感が強い。
・・・そういえば、お風呂入ってないな。
「ん?どうしたんだ睦月」
「汗流そうと思ってね。一夏はどうする?」
「あー・・・もうちょい休んでから行くわ。足がまだ痺れてら」
「了解、それじゃ行ってくるよ」
「おう、ごゆっくり」
そんな会話をしてから、僕は着替えを取りに部屋に戻ってから温泉へと向かった。
「あぁー、やっぱり貸し切りだと広く感じるなぁ・・・」
温泉に着いてしっかりと身体を洗ってから、お湯に浸かる。
じんわりとした熱のおかげか、疲れが滲み出るような感覚だ。
「はぁ~」
思わず気の抜けるような声を上げてしまう。年寄り臭い?構うもんか。
露天風呂だから、見上げれば満天の星空が広がり、心を落ち着かせてくれる。
「終わったのか・・・」
小さく呟いたその声は立ち上る湯気と一緒に夜空へと溶ける。
櫟 秋人。僕の人生に悪い意味で多大な影響を及ぼした『狂人(てんさい)』。
世界を跨いでまで続くとは思わなかった宿怨の相手。その彼を彼の機体、Sガンダムのシールドエネルギーごと左腕を消滅させ、水没させた。
でも、こうして改めて落ち着いて考えてみると、
「本当に終わったのかな・・・」
簡単に彼が死んだとは思えない。そんな確信めいた感覚が僕の中にはあった。
もしかしたら、また僕の眼前に現れるかもしれない。
いや確実に現れるだろう。あの狂ったような笑みを張り付けて。
かつての僕なら、その姿を思い浮かべるだけで震え上がっただろう。
でも今は震え上がるどころか酷く落ち着いている。
「あの頃から、成長・・・したしね」
左手を夜空に翳す。手首にさがった待機形態のヘイズルが、キラリと一つ輝いたような気がした。
ああ、大丈夫だ。僕は『ヘイズル(この子)』と一緒なら何も恐れることはない。
喩え秋人が再び害意を持って現れても、必ず退けてみせる。
その為にもまず今は身体を休めるとしよう。
「はぁ・・・にしても気持ちいい・・・」
両腕を上げながら身体を伸ばしてリラックスしていると、ガラガラと更衣室と温泉を仕切る戸が開く音がした。
一夏も入りに来たのだろう。
「遅かったね、いち・・・か?」
「・・・・・・睦月?」
振り替えって見ると、そこに一夏は居らず・・・裸体にタオルを巻いた姿の簪が立っていた。
・・・・・・どういうこと?
カコンッ、と小気味良い音を鹿威しが鳴らす。
夜空には星々が煌めき、その壮大さを惜し気もなく見せている。
そんな中、僕と簪は背中合わせでお湯に浸かっていた。
・・・OK、どうしてこうなった。どうしてこうなった!?
「「・・・」」
き、気まずい・・・何か話題はないだろうか。ああ普段ならスラスラと話したい事が出てくるのに何でこういう時に出てこないのさぁ!
悶々とした、何とも言えない状態になっていると、簪の方から話しかけてきてくれた。
「えと・・・この時間って混浴になるのって、知ってた?」
「・・・え、そうなの?」
なにそれ聞いてない。というか貸し切りで、尚且つ男が居るのに混浴の時間を設定するか普通。いや確認しなかった僕も僕だけどさ。
「その様子じゃ、パンフレットあんまり見てなかったのかな」
「見落としてたよ・・・」
「隅っこに小さく書いてあっただけだしね」
悪意すら感じるよ、それ・・・
「でもまぁ、来たのが簪でよかったよ」
「えっ?」
「他のクラスメイトだったら即行で逃げてた」
絶対に何かしら悪戯をしてくる可能性が高い。特に布仏さんとか。
簪も昨日の事で多少警戒したけど、こういう所ではやらないだろうし、何より、気心が知れてるしね。
その事を話すと、簪は小さく「気心の知れた仲・・・」と呟いた。
再び沈黙が訪れる。けれどさっきまでの気まずさは殆ど無くなっていて、逆に落ち着ける静かさだった。
「ねえ、睦月」
「ん?」
「・・・お疲れ様」
不意に掛けられたその言葉に思わず簪の方に顔だけ振り向くと、簪と目が合った。
お湯に濡れた肌が妙に艶かしく見えて、同年代とは思えない雰囲気が出ていた。
「それと、ありがとう」
「・・・・・・うん」
何かを言おうとして、上手く言葉が見つからなくて、小さく頷くことしか出来なかった。
簪が視線を戻して僕の背中に寄りかかる。対して僕は星空を眺めた。
「最初、睦月が墜ちた時・・・凄く怖かった。もう会えないかもって、思っちゃって」
「うん」
「本当は、倒れた睦月のそばを離れたくなかった。でも、それは違うって思って、戦ったんだ」
「簪・・・」
「だから・・・睦月が駆けつけて来てくれた時は嬉しかった。少し、どうして無茶をするんだとも思ったけれど。嬉しかったんだ」
独白のように呟く簪の声が耳に届く。その声音には暖かさがあった。
「私は・・・睦月の隣に立っていたい。だから」
「一緒に、強くなろうね」
「っ!」
簪の言葉を遮ってそう言うと、背中から温もりが消えて、水音が鳴った。
上を向いてるから分からないけど、多分驚いた顔をしてるんだろうな。
何も言わずそのままで居ると、濡れた髪の感触が背中に伝わった。
「・・・ズルい」
ーーそう言った彼女の声音は、少し嬉しそうだった。
次回で臨海学校編は終わりとなります。
臨海学校編で新登場した機体のプロフィールを挟んで、夏休み編突入です。
次回もお楽しみに‼