インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~ 作:フォールティア
今回で臨海学校編は終わりとなります。
「あー、やっぱり色々ガタが来てるね」
「昨日の戦闘が原因・・・ですかね」
「十中八九そうだろうねー、あんだけ無茶したなら当然だけど」
福音鎮圧の翌日、割り当てられた部屋で僕は束さんに義足のメンテナンスをしてもらっていた。さっきまで自分の身体に付いてた物がその中身(機械)をさらけ出しているというのは中々、妙な感じを覚える。
というわけで現在僕は布団の上でダラっとしている。両足ないしね。
目線をあげるとクロエがニコニコしていた。ぶっちゃけ膝枕である。
どうしてもしたいと言うのでやって貰ったんだけど、柔らかいやら恥ずかしいやらでどう反応すればいいか分からない。
「クロエ、楽しい?」
「はい、とても。お兄様のお顔を見ているだけで楽しいです」
「そ、そう・・・」
「まったく、くーちゃんばっかズルいよ。私だってむっくんとイチャコラしっぽりしたいのに」
「今不穏なセリフが聞こえた気がするんだけど!?」
束さんがドライバー片手に聞き捨てならないワードをしれっと言う。
しっぽりって何だ、しっぽりって。
そんな風に駄弁りながらメンテナンスが終わるのをまっていると、部屋のドアが開いた。山田先生だ。
因みに山田先生や織斑先生には義足の事は伝えてある。
「只今もどりました~」
「出たな妖怪スイカおっぱい」
「ふぇ!?」
「クロエ」
「了解(ヤー)」
「あだだだだだだだ!!メンテ、メンテしてるから!アイアンクローはやめてぇ!」
束さんが山田先生に対して失礼極まりない事を言ったのでクロエに頼んで『いつもの』をお願いした。
全く、山田先生に何の恨みがあるっていうのさ。
「いやだってあの胸元の凶器でむっくんを誘惑しているかと思うとさぁ・・・」
「ゆ、誘惑・・・」
アイアンクローから解放されて、米神を揉みながら言った束さんの一言に山田先生が顔を赤くする。
思い出されるのは昨日の朝の事。・・・いやいや、あれ誘惑じゃないから、ちょっとしたハプニングだから。
そんな沈黙をする僕と山田先生の様子を束さんが見逃す筈もなく。
「何かあったんだねむっくん!?さあ何をされたんだい!」
「何もないですよ!ていうかメンテナンスは!?」
「もう終わらせた!そして接続完了!」
「速っ!そして何時の間に!?」
「そんな事はどうでも良いんだ、重要な事じゃない。そこの巨大な双子山にナニをされたんだい!?『ユニヴァァァス!』か、それとも『トゥ!ヘアァー!』されたのかい!場合によっては私も混ぜて欲しかった!」
「ちょ、怖いですよ束さんって何でクロエは僕を固定してるの!?待って、ズボンに手を掛けないでどうするつもりですか!?」
「ナニって・・・ねぇ?」
ニヤリと笑う束さんを見て確信した。
ーーあ、これ(逃げるの)無理。
「いぃぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
昼間の旅館に、僕の悲鳴が響き渡った。
「睦月、生きてる?」
「な、何とか・・・織斑先生が駆けつけてくれなかったら死んでたよ。貞操が」
現在、午後2時。臨海学校を終え、学園へと戻るバスの中。私(簪)の隣の座席で睦月が真っ白に燃え尽きていた。グレン○ガンのカ○ナみたいだ。いや、この場合あしたの○ョー?
とにかく、疲労困憊していた。
「部屋に行ったら束博士とクロエちゃん、山田先生まで怒られてたから何事かと思った」
「途中で先生も参加しかけてたからねぇ・・・下着に手を伸ばしてきた時は終わったと思ったよ。いや、ホントに」
「睦月は襲われやすい体質」
「水着の僕に再三いたずらした人の言葉は信憑性が違うなぁ」
「ごめんなさい」
そこを突かれるとぐぅの音も出ない。というかやけに色気が強い睦月が悪い。
なので私は悪くない・・・流石に無理がある。
「冗談だよ。ちょっとからかいたくなっただけ」
「睦月のイジワル」
「簪はからかうと反応が可愛いから」
「・・・バカ」
「酷っ」
さらりと殺し文句を言ってくる睦月には、こうも言いたくなる。普段、織斑君に鈍感とかニブチンとか言ってるけど睦月も大概だと思う。
そんな事を思いつつ喋っていると、睦月が欠伸をした。
「眠いの?」
「まだ疲れが抜けてないみたい、少し寝ても良いかな?」
「少しと言わず、幾らでも」
「ごめんね・・・おやすみ」
「おやすみなさい」
二言三言交わして睦月は瞼を閉じて眠ってしまった。バスでも最前列に程近いので、後部座席の喧騒が小さく感じる。
暫く揺られていると、不意に肩に重みを感じたので見てみると、睦月が私の肩に頭を乗せていた。しかも袖を少し握って。
「・・・・・・ん」
「!?」
どうしよう、可愛い。写真に収めたい程に。しかし携帯は今睦月が頭を乗せている体の左側・・・下手に動かすべきではない。
仕方ない、目に焼き付けておこう。
そう思い睦月の寝顔を見るのも束の間、私も眠ってしまった。
何というか、もったいない。
でも、幸せだ。
ここは『地図に亡き場所(エアポケット)』。衛星軌道に無数に散らばる観測衛星の一切に映し出されず、只人が見つけられ得ぬ秘匿区域。
その中では薄暗い部屋に存在する円卓を囲んで声が幾度も響いていた。
「・・・それで、ヴラドの容態はどうだ?カリギュラ」
「はい、ネロ様。現在ヴラド様の容態はあまり芳しくはありません。左腕を消失。全身打撲に加え右足を複雑骨折。あばら骨も何本かは折れています。・・・正直、生きているのが不思議な程です」
「そうか。ハンニバルがもう少し遅れていたら、危なかったな」
「全く、冷や汗モノだった。イヴァン、貴様が要らない真似をするからだぞ」
ネロの独白に答えて、ハンニバルは自らの対面に座るイヴァンを睨んだ。しかし、当の本人は愉悦と言わんばかりに笑うだけだ。
「あら?でも中々楽しめたでしょう?『一番』と『二番』、どちらも新しい力を手に入れたのだし」
「性悪拷問魔が・・・」
「他人の眼球にしか恋が出来ない処女には言われたくないわね」
「貴様・・・」
「そこまでだ。これ以上やるというなら『外』でやれ」
ネロが諌めるように呟くと、ハンニバルとイヴァンは不満そうにだが口をつぐんだ。
「ヴラドの治療にはどれ程かかる」
「医療班曰く、『義体化』すれば一月ほどで復帰出来ると」
「そこは、本人の意思を尊重するよう、伝えておいてくれ」
「承りました」
カリギュラは一礼すると円卓から立ち去る。
一拍の沈黙を置いて、ネロが再び口を開いた。
「バートリーだが・・・無事に取り込めたようだ」
「へぇ、あの狂ったレズ女がねぇ」
「口を慎めよ、スパルタクス。あのお方を侮辱するのは私が赦さん」
「へぃへぃ、わかったよジル・ド・レェ(マゾ野郎)。それで、バートリーは何時から出るんだ?」
「夏期休暇が終わってからと言っていたからな、恐らく秋だろう」
「んじゃ、俺らもそれに合わせて動く感じか」
「そうなるな。何、あと少しだ・・・計画は、順調に進んでいる。では諸君、解散だ」
ネロの一声によって一瞬で円卓を囲んでいた気配が軒並み消える。
「さて・・・老人共はどう動くかな?」
ーー暗闇の中、ネロは一人ほくそ笑んだ。
いやぁ、臨海学校編、ついに何とか終わりましたー!
次回は機体紹介を挟んで夏休み編!ポロリもあるよ!
次回もお楽しみに‼