インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~ 作:フォールティア
長い上にヤマ無しオチなし・・・いかん、このままでは。
「大抵の施設は他の学校と変わり無いんで、学園特有の施設から案内しますね」
「ええ、それで構わないわ」
「あのー、僕は何時までこの状態なんでしょうか?」
夏休みで殆んどの生徒が居ない、閑散とした中庭に面した渡り廊下を歩く僕、一夏、ナターシャさん。
未だに僕はナターシャさんにぬいぐるみのように抱き着かれたままだった。
・・・うん、頭に当たってる柔らかい感触については無心を心掛けよう。
そんな心構えで大丈夫か?
大丈夫だ、問題ない。
「何時までって・・・私が満足するまでかしら」
「それまでこの状態ですか・・・」
「貴方なんだかとても抱き心地が良くって。家に持ち帰りたい位よ」
「それは勘弁してください、いやホントに」
持ち帰られてテディベアと同じ扱いとかごめん被りたい。
ていうか暑い。
そう思っていると先導していた一夏が足を止めた。
「さて、そうこうしてる内に着きましたよ」
「ここは?」
「整備棟って場所です。実際、俺は全然入んないんですけどね。睦月の方が長いんじゃないか?」
「まあ入学から結構使ってるからねぇ」
そういえば、簪と初めて会ったのもここだっけ。
まだ入学してちょっとしか経ってない筈なのに、改めて思い出すと懐かしく感じる。
「名前の通り、ISの整備をおこなう場所です。IS以外にも備品の修理とかするのに使われますね」
「かなり大きいのね」
「まあISの整備用機材はどれも巨大ですから・・・三階は資材置き場で、二階はプログラミングルーム兼シミュレータルーム。ここ一階と地下一階がIS専用ドックとなってます。因みに屋上にはテラスがありますよ」
一夏に代わりここの説明をする。休日とか空いた日は専らここで簪や布仏さんと過ごしてるから色々と知っている。
屋上のテラスなんかは晴れた日には休憩場所としてうってつけだ。
「どれも最新設備なのね・・・流石IS学園と言った処かしら」
「各国から最新鋭の専用機やテスト機が来ますから、設備は都度新しい物に変えていってるんです。各階の廊下突き当たりに大きい扉があるのは、それらの搬入用ですね」
因みにこの扉、一見ただの鉄製の扉に見えるが実際はアリーナの緊急時シャッターと同様の材質で出来ているので早々壊れることはない。
IS用のグレネードでも最低10発は撃ち込まないと破壊できないという優れものだ。
「本当ならハンガールームも見せたいんですが、今日はどこも使用中なので、御見せすることは出来ません」
「構わないわ、秋になったら改めて見に来るわ」
「是非ともそうしてください。さて、整備棟は大体こんなところですね」
一通り全体を回って入り口に戻ってきた所で説明を終える。
次はどこに行くのだろう?そう思って一夏を見る。
当の本人は僕の視線に気付き、次の場所を提案する。
「次はアリーナに行きましょう。学園じゃ、一番目立つ所ですし」
「良いわね、本場のアリーナがどんなものか、興味あったのよ!」
「それは良いんですけど。ナターシャさん、そろそろ離れてもらっていいですか?」
「うん、無理」
「にべもない!?」
結局、相変わらずナターシャさんに抱き着かれたままアリーナまでの道を歩く事になった・・・
誰にも見つかりませんように。
そう思っていた時期が僕にもありました。
「一夏、それに睦月じゃない。って何で睦月は美人に抱きつかれてんの?」
「どういう状況ですの?」
まんまと見つかりましたよコンチクショウ!
第三アリーナの入り口についたと同時に中から鈴さんとオルコットさんにばったり会ってしまった。
あれか?さっきの台詞がフラグだったのか!?
「ああ、この人はナターシャ・ファイルスさん。二人も見たことあるだろ?秋からここの教員になるってんで俺達が案内してるんだ」
「「へぇ~~・・・何ですって!?」」
臨海学校を思い出したのか二人揃って驚愕の声を上げた。
まあ驚くよね。僕も驚いた。
二人はサッと僕達に背を向けて何かこそこそと話している。
断片的に聞こえる「ライバル」とか「対策」だとか言うワードで一夏についての事だというのは理解した。苦労するなぁ、二人とも。
「二人ともどうしたんだ?」
「女性の秘密話の内容は、聞かないほうがいいよ一夏」
「?」
僕の言葉に首を傾げる一夏と未だに離れないナターシャさんを連れてアリーナの中へと入る。
鈴さんとオルコットさんは・・・暫くしたら元に戻るでしょ。
通路を少し歩いて観客席の出入り口からアリーナ全体を見渡せる位置で足を止めると、ナターシャさんは感心したように頷いた。
「フィールドもそうだけど、観客席も広いわね」
「結構な生徒数居ますし、来賓席もありますから、これだけ大きいんです」
「これだけのアリーナが複数同じ場所にあるなんて、本国(むこう)じゃ考えられないわね」
アリーナというのは建設するのに多額のお金当然だが、IS競技用となると更に莫大な金が必要になる。
アリーナ全体を守る不可視のシールドに、観客席を守るエネルギーシールド、ISの臨時メンテナンス用の各種機材、観測機器等、挙げれば切りがないほど機材が必要なのだ。
そしてそれらは常に最新のバージョンに変わっていなければいけない。故にこのアリーナ然り、IS関連施設の殆んどには天文学的数字のお金が動いている。
その為、他のどの国においてもアリーナというのはあっても国内に一つか二つなのだ。
「ここで試合をしたりするのよね?」
「ええ、秋には学年別のキャノンボール・ファストも予定されてますよ。ね、一夏」
「確か夏休み終わって直ぐだったな。クラスの皆が騒いでた」
「へぇ、それは楽しみね?」
キャノンボール・ファスト。有り体に言ってしまえばISによる障害物競争のようなものだ。
搭乗者の操縦技術が最も問われる競技と言われ、毎年学園では行われている。
・・・ギャプランブースター使っちゃいけないかなぁ。
「睦月、あれは流石にチートだ。やめとけ」
「だよねぇ・・・さて、アリーナはこんなところですね。流石に教員しか入れない制限区域は入れませんし」
「大丈夫よ、ありがとうね睦月ちゃん」
「ちゃん付けで呼ばないで下さい!」
「いいじゃない、減るものじゃ無いんだし」
「減りますよ!主に僕の精神が」
男なのにちゃん付けって僕を女だと思ってるんじゃなかろうか。
結構恥ずかしいんだけど。一夏にガン見されるし、さっきだって鈴さんたちにマジマジと見られてその実恥ずかしかった。
「とにかく、他の場所に行きますよ!一夏」
「はいはい、んじゃ付いてきて下さい」
「はーい♪」
結局このまま案内が終わるまで僕はナターシャさんにぬいぐるみにされたまま学園内を歩く事になった。
頭の中でガオガイガーの主題歌を流してテンションを保ってなかったら(恥ずかしさで)死んでいたと思う。
おおまかな学園案内を終え、僕達はスタート地点である職員室で山田先生にナターシャさんを明け渡した(誤字にあらず)。
いや、うん。精神磨り減ると色々どうでもよくなるね。
「織斑君に扶桑君、本当にありがとうございました」
「いえ、俺は大丈夫ですけど睦月が・・・」
「は、あはは、この程度、想定の範囲内だよ!」
「何があったんです!?」
山田先生が痛ましそうな目で見てくるけどどうしたんだろう?
もうすぐ時の流れが見えそうなんだ・・・そんな視線を向けないで欲しい。
「あー、何とかしときますんで気にしないで下さい。それじゃ、俺達はこれで」
「あ、ちょっと待って二人とも」
一夏に猫のようにつままれて職員室を出たところ、ナターシャさんに呼び止められる。
何事かと思い、振り替えると。
二人ともキスされました。頬に。
「な、ななななななななぁ!?」
「え、ちょ・・・はぁ!?」
「福音(あのこ)と私を助けてくれてありがとう。秋からよろしくね?」
言うだけ言って、ナターシャさんは扉を閉めてしまった。
あー・・・うん。すっごい顔熱い。
「一夏、顔赤いよ」
「その言葉、熨斗つけて返してやるよ」
「「・・・・・・・戻ろうか」」
顔の熱さを誤魔化すように揃って溜め息を吐いて、僕は一夏にぶら下げられたまま寮へと戻った。
「おぉ、睦月。丁度良いところに」
「ん?」
一夏と別れて自室へ向かう廊下を歩いているとラウラと遭遇した。
「どうかしたの?」
「ああ、シャルが睦月に話があるようでな。携帯に電話したが出ないから、歩いて探していたんだ」
「あー、ごめんちょっと先生からの頼み事してて反応できなかったんだ」
携帯を見ると確かに着信が入っていた。
丁度ナターシャさんを案内し始めた時間だ。
マナーモードのバイブレーションって、動いてると気付きにくいよね。
「そういえば呼び出されていたな。何だったんだ?」
「来客の学園案内だよ。ラウラも一度は見たことある人かな」
「むぅ?・・・まぁそれは後で聞こう。シャルが待っている。一緒に行くぞ」
「ん、わかったよ。それじゃ行こっか」
「あ、頭を撫でるなぁ!」
ラウラを伴ってシャルが居るであろう部屋へと向かう。
さて、話ってなんだろうか?
さて、これにてナターシャさんのお話は終了です。
次回は睦月がどっか行きます。海外かな?(すっとぼけ
あと、活動報告にてアンケートを取りたいと思いますので、どうか参加の程よろしくお願いいたします
次回もお楽しみに‼