インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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駆け足ぎみですが、入れたかった話です。


#06 銀の少女

「到着、っと」

 

「黒の森(シュヴァルツ・ヴァルド)、ですか」

 

薄暗い明け方の森の前、僕と束さんは鬱蒼と茂る木々を見ながら互いに呟く。

吐いた息が朝もやど同化して大気に消える。

 

「そ。ここの地下にキナ臭いのがあってね。場合によっては『消す』よ」

 

「・・・」

 

普段の茶化した態度ではなく、触れれば切れる程の空気を纏った束さんに思わず声が出なくなる。

これほどまでに束さんを怒らせる要因が、この森に存在するのだろう。

 

 

一夏くんの救助から丁度一週間、僕達は再びドイツの地を訪れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事の発端は一夏くんの奪還作戦の完了後に遡る。

太平洋を横断して帰還する途中、束さんが気になるモノをドイツにて感知したらしく、詳細を調べあげ、一週間の休息の後、再びこの極寒の地に足を着けた。

ここに来る前に軽く詳細を聞いたけど、かなり反吐が出る内容だった。

人体実験。擬似的なISのハイパーセンサーを体に埋め込み、戦闘力を上げるという実験。被験体は試験管ベイビー、要は人造人間だ。

その被験体の内の一人がこの黒の森の地下にいるのを束さんが掴んだのだ。

 

「今回の目的は施設の破壊。私が施設のネットワークにハッキングして外部への通信を欺瞞する」

 

「その間に僕が内部に侵入、施設機能を停止させ研究員らを閉じ込め、鎮圧するですね」

 

「うん。それでなんだけど・・・一つ、頼んでも良いかな?」

 

 

「可能な事であれば」

 

「被験体の子を出来れば助けたいんだ。・・・私が生み出した原因、みたいだからね」

 

神妙な様子で語る束さんを見て僕は思う。この人も色々背負っているんだと。それも僕には想像もつかない重いものを。

僕の答えを待っているのか、束さんがじっと此方を見ている。

そんな様子の束さんに笑みを浮かべて応える。初めから回答は決まってる。

 

「勿論、助けますよ」

 

こんな僕でもその重い荷物の端っこ位は支えてあげたいから。

 

「うん・・・ありがと」

 

「よし、それじゃ行きましょうか」

 

何故か顔の赤い束さんに疑問を持ちながらも僕達は森の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「騒がしい、ですね・・・」

 

強化ガラスに覆われた檻の中、一人の少女が小さく呟く。延びきった銀糸の如き髪を引き摺りながら横になっていた体を起こす。

彼女の耳が、普通の人間には捉えることが出来ない音を拾う。

 

「ハッキング、それもかなりの速さで・・・いったい何が」

 

あまり開きたくはない両の目を開き、『瞳』を起動する。その眼球は黒く、瞳は金に染まっていた。

『越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)』、ISのハイパーセンサーを模したものを文字通り目に移植したモノ。

その適合が成功しなかった故に彼女の瞳は黒金になっているのである。

 

(外部ネットワークの遮断、それに研究員達が部屋に閉じ込められてる・・・?)

 

ハイパーセンサーから送られる情報を処理しながら、少女は内心で疑問を浮かべる。

 

(侵入者・・・だとしたら一体誰が?)

 

正直、ここには『失敗作』でしかない自分と、自衛の手段を何一つ持たない研究員しか居ない。襲った所で得られるのは徒労感だけだろう。

侵入者の心情をはかり損ねる少女がハイパーセンサーからの反応を感じた瞬間、檻の外にある出入口のドアが桃色の光とともに『熔断』された。

 

「え・・・?」

 

「目的の部屋はここですか?」

 

「うん、当たり。よかったぁ、ここ以外だったら手遅れの危険もあったからねぇ」

 

抉じ開けられたドアの向こうから、漆黒のISと一人の女性が現れた。ISの手にはドアを切り裂くのに使われたであろう桃色の光を放つレーザーソードが握られていた。

一人と一機は少女の姿を確認すると、檻の前まで進んだ。

 

「やあ、ごきげんよう!私は自称他称『天災』科学者、篠ノ之束だよ!」

 

「僕は扶桑睦月、よろしくね」

 

「え、あはい・・・」

 

余りに急な自己紹介に思わずたじろぐ。というか今この女性はなんて名乗った?

 

篠ノ之束、ISの生みの親。

 

「な、なんでこんな処に貴女のような人が・・・!?」

 

何て事ない様に名乗った束に驚愕の声を上げる。自分のような存在にも知れるような有名人が何故、ここに居るのだろうか。

少女の心は疑問と驚愕で一杯になった。

銀の少女の問いに束はあっさりと答える。

 

「君を助けに来たんだよ」

 

まるで買い物にでも行くような気軽さで言われた返事に、少女は目を丸くする。

 

「何を、言って・・・」

 

自分を助けて何になるというのか。何もない、失敗作の自分なんて足手まとい処か邪魔でしかない筈だ。

 

「自己満足だよ。私は君が『必要』なんだ」

 

必要、その言葉を聞いた瞬間、少女は無意識の内に涙を流す。

度重なる実験で消えかかっていた『外』に出たいという希望が目の前にあるのだ。

意図せず伸ばした手を鉄の手が優しく握る。

視線をずらすと、いつの間にか開いていた檻の入口から漆黒のISが腕を伸ばしていた。

 

「改めて、自己紹介。僕は扶桑睦月。君は?」

 

「私は・・・クロエ、クロエ・クロニクルです・・・。私を、連れていってくれますか?」

 

「勿論、君に『外』を見せて上げるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、研究所は『匿名の一般市民』の通報によって発見され、国によって歴史の闇に葬られる事となる。

行方不明者の銀の少女を残して。





次の話で原作前は終了です

次回もお楽しみに‼
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