インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~ 作:フォールティア
今回でフランス編は終了、次回から日本に戻ります。
ところでデルタ・カイのシールドって拡張性高いよね?
つまりパイルバンカーも・・・
「しかし、良いんですか?僕達まで同席して」
「構わんさ。元々、見せるつもりだったのでね。先行試写と言ったところさ」
デュノア社敷地内にある試験用大型アリーナ。そのピットにて、シャルが搭乗したデルタ・カイを前に僕はアレックス社長に疑問を口にするが、社長は何てこと無いように返した。
ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡからコアデータを移植したデルタ・カイの瞳に光が灯る。
これから行われるのはデルタ・カイの試験運用。
機密中の機密と呼んで良いそれに、僕達は特別に同席している。
強化ガラスの向こうで機動準備が終わったのか、機体背面に存在するブースターに火が灯る。
ピットの発進口(ゲート)が開き、薄暗いピット内に光を射す。
『デルタ・カイ、スタンバイ完了。起動シーケンス、オールクリア』
何処かで機体データを観測しているのだろう。女性のアナウンスが壁にあるスピーカーから響き渡る。
『全機体コントロール権利、パイロットへ委譲。発進タイミングは任意に』
その言葉の後に、デルタ・カイの装甲を光の線が駆け抜ける。
これで名実ともに、デルタ・カイはシャルのISとなった。
・・・見せて貰おうか、デュノア社の新型の性能とやらを。
何処ぞの赤いロリコンもとい彗星の名言を脳内で垂れ流していると、シャルが気合いの入った声を上げた。
「シャルロット・デュノア、デルタ・カイ。行きます!」
青いブースターの残光を残し、デルタ・カイは空へと飛翔した。
「シャル、機体の調子はどうだ?」
『至って良好、リヴァイヴよりも動かしやすいよ』
「よし。それでは機体の試験運用を開始する」
『了解!』
暫く自由に飛び回ったシャルは、社長の声に答えて静止し武装を展開する。
やはりと言うか、両手に顕現した武装は『原典』と同じだった。
右手にはヘイズルのロングブレードライフル程では無いが、十分に長大なロングメガバスターを握り、左手にはシールドとは名ばかりのウエポンラッチを携える。
シールドの表側にはハイメガキャノンが装備されていた。
「あの形状・・・まさかレーザー兵器ですか!?」
ラウラの驚く声に社長が頷く。
デュノア社の機体、この場合ラファール・リヴァイヴと言えば実弾兵器の使用比率が高く、レーザー兵器にも対応こそ出来るものの、その処理能力、使用効率は高く無かった。
言ってしまえばミリタリータイプな機体運用を主目的とした機体の開発に傾倒していたのだ。
そのデュノア社がレーザー兵器を開発、実際に運用出来るレベルまで完成させたとなれば驚くのも無理は無い。
原典の機体を知らなかったら僕もラウラと同じ声を上げただろう。
「レーザー、というよりもビームと言った方が正しいかな。公式戦でのフソウ君のヘイズルを見て、ウチの開発班が血眼で造り上げた武装達だよ」
同じ光学兵器だが、レーザーは貫通力に優れ、ビームはその熱量によって対象を粉砕する。
ただ、ISで運用する場合、レーザーの方がエネルギー効率が高かった為、エネルギー兵器といえばレーザーの方が主力となる。
まあ、ヘイズルみたいなEパック式にすればビーム兵器もかなり使いやすいんだけれどね。
「基本武装はビーム兵器だが、リヴァイヴの持つ実弾兵器等も使用できるようにしてある。・・・さて、それではシャル。今からランダムにダミードローンを出現させる。手持ちの武器で全機撃墜してくれ」
『了解』
ピットの壁に嵌められた大型モニターの向こうでデルタ・カイが動き出す。
ダミードローンが次々と射出されるが、それらを難なくロングメガバスターとハイメガキャノンで一掃していく。やはりロングメガバスターは連射出来ないか。
社長もその事は理解しているのか顎に手を当て、思案顔だ。
「やはり、ロングメガバスターの連射性能の低さがネックか」
「その分火力が高いですし、シャルの技術もあれば幾らか緩和出来てますね」
射線軸を上手く合わせてロングメガバスターで五枚抜きをやってのけるシャルを見ているとホントにそう思える。
デルタ・カイの基本的な動きは持ち前の機動力で相手のペースを崩し、高火力の武装で一掃する、といった感じだろうか。
『背中の武装』が使えるのかが少し気にはなるけど。
試験を眺めながらそんな考察をしていると、ラウラが社長へと質問した。
「そういえば、何故デルタ・カイもプラスも全身装甲なのですか?」
「あ、僕も気になってました。何故なんです?」
いま空を飛び回っているデルタ・カイも、先程見たデルタ・プラスも現在の主流である部分装甲では無く全身装甲・・・それもヘイズルと同じ完全外装タイプなのだ。
ISは僕や一夏という例外こそ存在するが、女性が操るものだ。それ故に、外部パフォーマンスや、ISの無骨さを軽減したりするために部分装甲を取り入れ、第二世代以降の機体は専ら部分装甲となっている。
だからこそ疑問なのだ。何故今時代の『流行り』に反した全身装甲を取り入れたのかが。
束さんの趣味で全身装甲のヘイズルならいざ知らず、外面も考えれば普通は部分装甲の筈なのに。
「ふむ、良い質問だ。・・・δ計画はただの新機体建造計画ではない。宇宙を目指しているのだよ」
「「宇宙!?」」
ISによる宇宙探索、開発。それはISが発表された当初、束さんが提唱したものだ。
しかし当時、いや今に於いてもISは兵器運用としてしか使用されていない。
それに世にISが普及しはじめて締結されたアラスカ条約によってISを使っての宇宙開発等は禁止されて閉まっている筈・・・
僕の視線に気付いた社長が小さな声で呟いた。
「何、やりようは幾らでもあるさ・・・」
黒い、笑顔が黒いよ社長!?
「δシリーズは全身装甲だが、出撃前であれば部分装甲に切り替えられるようにシステムを組み込んである。基本はそっちになるだろうな」
「成程」
何事もなかったように話をすり替える社長にまんまと引っかかるラウラ。
純粋過ぎるでしょ・・・。
その後もシャルの駆るデルタ・カイは次々とダミードローンを撃墜していき、順調に試験を進めていった。
「おつかれさま、シャル。はい、タオルとスポーツドリンク」
「睦月、ありがとう」
一通りのテストを終えてピットへと戻ってきたシャルにタオルとスポーツドリンクを手渡す。
待機形態となったデルタ・カイは色こそ白と紫に変わっているけれど以前のリヴァイヴと同じ形でペンダントトップになっている。
「デルタ・カイはどう?」
「良い感じかな。ロングメガバスターとかは、取り回しに慣れがいると思うけど、機体の追従性はかなり上がってる」
「最終的に七枚抜きまでやっておいて慣れてないと申すか」
「いやいや、睦月やラウラも出来るって」
「「ムリムリ」」
「息ピッタリだね!?」
幾らなんでもあんな滑らかにランダム機動するドローンを誘導して撃ち抜くなんて芸当は簡単に出来ない。
オルコットさんならやりかねないけど・・・前なんかダミーバルーンを見ないで撃ち落としてたし。
「シャルは機体の動かしかたが柔らかいからああいった事が出来るんだ。私だったら纏めて吹き飛ばす。ドーラで」
「一区画丸ごと焼け野原になるからやめなさい」
というか何故あの列車砲を知っている。
「前に軍の開発班がそれについて話していてな。何でも『ろまん』?とか言うのがあるとか」
「オーケー、開発班の人とはジックリお話しした方がよさそうだね」
ラウラに何て事を教えてるんだ、全く・・・。
アニメやら少女漫画ネタを吹き込む副官に男のロマンを語る開発班・・・ドイツは魔窟か!
ドイツ軍の内部に不安をひしひしと感じていると、アレックス社長がにこやかな笑顔を浮かべながら観測室から出てきた。
「お疲れさま、シャル。さて、データも十全に取れたことだ。そろそろ昼食としよう」
「ご一緒して宜しいんですか?」
「構わんさ。愛娘の友人とあれば、誘わない訳がないだろう?」
笑みを崩さずそういう社長にシャルも頷く。
そういうことなら、ご相伴に預かろうかな。
ラウラに視線を向けると一つ頷いて答えてくれた。
「わかりました、ご一緒させていただきます」
「よし、では少し休憩したら向かうとしようか。シャル、汗を流しておきなさい」
「わかった。睦月、覗いちゃダメだよ?」
「覗かないよ!?」
そんな事したら社長に殺されるのは確実・・・
「ははは、まさか。フソウ君がそのような事をするとは思えんがねははは」
笑ってない、目が笑ってないですよアレックス社長ぉ!?
目に殺の一文字が見える社長に見られながらも苦笑いで誤魔化す。
してやったり顔なシャルがピットから出ていくのを眺めつつ、僕は小さく溜め息を吐いた・・・。
アレックス社長は親バカ(確信
これにてシャルの機体がデルタ・カイとなりました。詳細設定はまた後程。
次回は簪とイチャコラさせる予定です
次回もお楽しみに‼