インフィニット・ストラトス ~黒兎の見る世界~   作:フォールティア

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今回の概要:キェアアアアシャベッタアアアアア!!





#06 機械の兎

『こちらHQ~、きっこえるかなぁ?』

 

〔束様(マスター)、ふざけないで下さい〕

 

雪がさながら嵐のように降り注ぐ空の中、黒く染め上げられた一機のISが航行していた。

否、その背後にはもう一つ機影が存在した。上から見ればまるで涙の滴を表したマークの様にも見える。

 

『あっはは、ごめんごめん。そろそろ着く頃かなと思ってね』

 

〔通常航行でしたので多少はズレましたが、誤差範囲です。問題なく作戦を決行できます〕

 

『ん、よしよし。感情表現プログラムもちゃんと機能してるみたいだし、それじゃ派手にやっちゃって!』

 

〔了解(ヤー)〕

 

束との通信が切れると、即座にそのISは『変形』した。

機動戦士Zガンダムに登場するギャプランに酷似するその機体はしかし、両肩の大きすぎる四本の棒状のブースター兼IS懸架アーム内蔵ユニットにより余りにも元の機体からかけ離れたシルエットとなっていた。

 

〔ギャプランTR-5 ファイバー。作戦行動を開始します。ロゼ姉様、貴女も降りますよ〕

 

青く光る独眼(モノアイ)を動かし、至って冷静な女性の声で後ろで静止する機体に話しかけると、ロゼと呼ばれた機体から気だるそうな声が返された。

 

〔えー、私も行くの?フランだけでも十分っしょ〕

 

〔はあ・・・やはり、貴女ではなく、ザック姉様を連れてくるべきでした〕

 

機体下部の大型クローをプラプラと揺らしてぐずるロゼにファイバーは肩を竦めた。連動して巨大なブースターが駆動音を鳴らす。

 

〔いやいや、ザック姉連れてきたら確実に何も残んないから〕

 

〔ですから『私達』の中で比較的まともな火力を持つ貴女を連れてきたんですよ。大体ロゼ姉様は何時もーー〕

 

〔あー、わかった、わかったから。行くよ、行きます〕

 

説教が始まる予感を感じて堪らずロゼもその躯体を変形させる。

機体上部が展開し、人型の上半身を露にし、大型クローがその向きを変え、脚部へと変容する。

マラサイと呼ばれる機体に酷似し、しかしそのシルエットは『異形』と呼ぶに相応しいものである。

 

〔TR-4 ダンディライアン、作戦行動を開始しまーす〕

 

ファイバーと同じ独眼を赤く光らせ、ダンディライアンが機体を降下させる。

 

〔全く・・・なぜ私の姉たちはこうもクセがありすぎるのでしょうか〕

 

溜め息でも吐くかのような仕草の後、ファイバーも機体を降下させ始める。

眼下に広がるは一面の雪景色。

北を見れば広大な北極海の一端が見えるような辺境の地。

その海と陸の境界線に建つ、小さな基地へと目標を定め二機のISは加速する。

その最中、ファイバーはダンディライアンへと話しかける。

 

〔一応言っておきますが、くれぐれも人は殺さないで下さい〕

 

〔分かってるって。ビームライフルの威力も精々大火傷する程度にはなってるし。あ、ISは潰しちゃって良いんだよね?〕

 

〔構いませんが・・・やり過ぎないで下さいね。後で泣きを見るのは姉様自身なんですから〕

 

〔はいはーい。そんじゃ始めよっか!〕

 

威勢の良い声と共に、ダンディライアンが右手に持つ黒く塗り潰されたロングブレードライフルの引き金を引く。

桜色の閃光が一直線に地上へと加速し、基地に待機していた軍用ヘリの一機を撃ち抜く。

光が弾け、爆発を起こす。

異常に気付いたのか、基地内にサイレンが喧しく鳴り渡る。

未だ爆発による炎が残る最中にダンディライアンは降り立つ。

 

〔それじゃフラン、援護よろしくぅ〕

 

〔了解。他のヘリ等、『足』の方はお任せを〕

 

〔お願いねぇ。・・・さてと〕

 

基地の各所から表れた『凡そ軍人とは思えない格好』の歩兵と数機の量産型ISを眺めてダンディライアンは顔にある排熱ダクトから白煙を吹き出す。

ロングブレードライフルの刀身が熱を帯び、赤く染まる。冷めた空気が蒸発し、煙を上げる。

燃え盛る炎が機体の表面を舐めている事を意に介さず、ダンディライアンは嗤う。

 

〔亡国企業だか何だか知らないけど。取り敢えず潰れて貰おうか〕

 

スカートアーマーに内蔵された数多のブースターが点火し機体を浮かばせる。

それを見た歩兵が恐怖を顔に浮かばせる。

ISの搭乗者すら、その異様に武器を持つ手が強張る。

 

〔上手く避けなよ?でないと・・・〕

 

ブースターの火が更に強まる。

一人の兵士がダンディライアンの肩にあるエンブレムを見付けた。

フライパンに乗った、黒い『兎』のエンブレム。

 

《ウォーターシップダウン》

 

この瞬間、兵士達の末路は確定した。

 

〔ブギーマンに食べられちゃうからさぁ!!〕

 

蹂躙が、始まった。

 

 

 

 

 

〔やり過ぎるなと言ったのに、全然聞いてないですねあの姉は〕

 

眼下にて起こっている一方的な破壊劇を独眼を動かしてチラと見て、ファイバーは呆れた声を出す。

その間も手に持ったロングブレードライフルと肩の拡散ビーム砲は容赦なく基地に存在する施設、車輌、ヘリを爆砕していく。

たまらず施設内に居た兵士達が外に出て手に持った銃を撃つが、相手は遥か空の上。ファイバーの装甲に触れることすらなかった。

 

〔さて・・・束様を余り待たせるのもいけませんし、早々に捜し物を見つけて帰らないと〕

 

一通り逃走手段となり得るものを破壊したファイバーはその大型ユニットを展開解除し、拡張領域へと戻す。

機体を異形足らしめていたユニットが無くなると、コアユニットであるフライルーがその姿を現す。

残留する光の粒子を纏いながらゆっくりと降りて行くその姿は兵士達にとって、死神が死の宣告を告げに来たように見えた。

 

〔抵抗しなければ、悪いようにはしませんが・・・〕

 

途中まで言い掛けたところで兵士達が銃を再度撃ち始める。

 

〔成程・・・それが回答ですか。では〕

 

フライルーの独眼が鋭く光り、兵士達を睨む。

基地の照明に、シールドバインダーに描かれたエンブレムが照らされる。

天を突くかのような槍を持つ、白い兎のエンブレム。

 

〔殉じてください、己の答えに〕

 

銃口が、咆哮を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔ふむ。こんな所でしょうか〕

 

およそ五分後、迎撃に現れた全ての敵を倒した二機のISは、基地内部にあるデータバンクを漁っていた。

メインコンピューターに繋げていたコードを袖口に収納するとフライルーは屈んでいた体を起こし、外にいるダンディライアンへと通信を繋げた。

 

〔ロゼ姉様、データの回収終了しました。そちらはどうですか?〕

 

〔こっちも終わったとこー。暖房効いた部屋に叩き込んだからそう死にはしないっしょ〕

 

〔了解しました。帰りはどうします?〕

 

〔乗っけてってー〕

 

〔・・・承知しました。では戻りましょう〕

 

プツッ、という小さな音を最後に通信を切り、廊下に出たフライルーは外で未だに燃え盛るヘリや車輌の残骸を見て小さく肩を竦めた。

 

〔これだけ破壊しても末端、その一部でしかないとは・・・亡国企業というのはつくづく巨大ですね〕

 

徐にシールドバインダーの銃口を窓に向けると躊躇なく光弾を発射し、壁ごと粉砕し雪の吹き荒ぶ外へとその機体を投げ出す。

 

〔まあ何であれ束様、クロエ様、何より睦月様の邪魔をすると言うのであれば、破壊するだけですが〕

 

空中でファイバーユニットを再展開し、変形を終えると、懸架アーム部に同じく変形したダンディライアンが滑り込むように収まる。

 

〔きゃっふー!あと宜しくぅ!〕

 

〔太平洋上で落として上げましょうか?〕

 

〔ごめんなさい、二度としません〕

 

〔はぁ・・・〕

 

溜息一つ、ファイバーはダンディライアンの収まる懸架アームの反対側にバランスを取るためのコンテナを展開するとブースターを最大出力で起動する。

 

〔束様、作戦行動終了しました。これより帰投します〕

 

『お疲れ様ー、それじゃ二人が帰ってきたらそのまま日本に行こっか!』

 

〔・・・本当に行くんですか?その・・・『アスワン』で〕

 

『もちろん!ステルス機能もバッチリだしね!』

 

通信先でえへん、と胸を張っているだろう束の声にファイバーはもはや言葉も出なかった。

諦めたともいえる。

 

〔了解しました。ではアスワンに帰還します〕

 

『はいはーい、待ってるよ!』

 

プツリと通信が切れる。

 

〔いやぁ、束様も凄いねぇ。マジで行くんだアレで〕

 

〔諦めましょう。もうそれしか無いです。・・・さあ、戻りますよ〕

 

高速で空を駆ける機体に更に火を灯し、漆黒の機体は彼方へと飛び去った。

 

 

 

ーーー次なる行き先は日本。IS学園。

 

 

 

 

 

 





書き終えて思う。
どうしてこうなった、と・・・

次回は学園に戻り、会長とのイベントになります。

それでは次回もお楽しみに!!
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