僕は築く、邪神系女子によるハーレムを‼︎ 作:グリムリッパー02
「んー…」
ある日の放課後、購買前のショーウィンドウにひっつく一人の少年が居た。
彼の名は隈ヶ谷夕斗。外道、卑屈、捻くれと負の三拍子を揃えた我らが人類史上最低な主人公である。
そんな彼は先程と変わらずショーウィンドウにかじりつき唸っては首をひねっていた。
「どう?いいカードはあった?」
そんな彼に声をかける少女、彼女は早乙女レイ。先日夕斗とデュエルして彼のただ一人の人間の友人となった少女である。
明るいボクっ娘でありアカデミアでは密かにファンクラブまでも作られている彼女であるが、最近は何かと夕斗のそばにいるため周りの人間は近寄れずにいるという裏話があるがそれはいつか話そう。
「ん?あぁレイちゃんか。それがね、あまりいい成果とも言えないんだ。凡庸性の高いカードは幾つかゲットしたんだけどね」
そう言う彼の手にはラブァルバル・チェインやTGハイパー・ライブラリアンなどどのデッキにも合うカードが握られている。
レイとのデュエルから数日、夕斗はこの時代に存在しない筈であるシンクロモンスター、エクシーズモンスターについて調べていた。
どうやらこの世界では既にシンクロ召喚とエクシーズ召喚は確立されたものらしい。しかし、その召喚方法は過去のデュエルモンスターズを完全に覆す物である。急に世に排出すればパニックや経済的な大事件が起こるのは目に見えている。
そこでこの隔離島の出番というわけだ。この場所は外とは完全に遮断されている。そしてそこには未来を担うプロデュエリストの卵達がいる。
I2社とKCは『新たな召喚方法のテストプレイ』という名目でアカデミアにこれらを導入したのだ。
夕斗にとってこれは嬉しい誤算であった。シンクロやエクシーズがあれば戦術の幅は広がる。更にこの世界、決闘龍等の原作のキーカードまであるときた。それこそ数は限られている上にショップで買えばかなり高価なようだがあの能力は是非とも手に入れたい。
だが、No.の存在だけは確認できなかった。この世界でもNo.は特別なカードなのか、それとも存在しない物なのか…アバター達にも聞いてみた夕斗だったが、知らないとのことだった。
購買にもそれらしいカードは存在しなかった。
決闘龍も置いてなくそのレアリティの高さが窺い知れる。
なんにせよ、どちらも今はまだ手に入らないのだ。
「とりあえず、今あるカードだけでも買ってくるよ」
落胆半分、妥協半分でレジへと向かい会計を済ませ購買を出る。横にはレイも一緒だ。
あの後から夕斗とレイはそれこそ寮にいる時間等を抜けばほぼ一緒にいる。講義の時間では教室の端に座る夕斗の横にいるし、昼休みでは夕斗と共に昼食を食べる。帰りだって寮への分かれ道に入るまでは一緒だ。
レイはこれを友達なら当然!と言っているがやはり度が過ぎている。しかし友達が出来たことのない夕斗にしてみれば、異国の文化を教えられているような物でそういうものなのかと受け止めることしか出来なかった。
そうして寮への道を帰る。その間も何気ない会話が弾む。やれあの教師は頭が硬いとか、やれ彼処のケーキは美味しかったと言ったごく普通の会話を。
「そうそう、彼処で見た服が可愛かったんだー!アカデミアは殆ど制服だし…偶にはオシャレしたいよね〜」
『やはりレイさんもそういった物に興味がおありなのですね。ルートにも見習ってほしい物です』
『いいんだよ!俺は!動きやすい方がいいだろ!』
『とかいって、実はフリフリのスカートとか集めて着てないだけじゃ無いですか。本当はそういった服着たいのに、何をムキになる事があるのやら』
『お姉さまぁ!?何言ってくれてるんですかッ!?』
……会話に邪神が参加していなければだか。
レイにはアバター達が見えている。というより見えるようにしてある。
理由はレイ自身がアバターやルートとの会話を望んだ為であり、アバター達も快く了承した。邪神相手にも積極的に関わろうとする彼女のフレンドリーさに夕斗は感心していた。
「さすがは原作キャラってことかな?コミュ力持て余しすぎだよ…」
「?、なんの話?」
「ううん、こっちの話だよ。ほらルートもそんなに怒らない。君が夏物のワンピースを着て鏡の前でニマニマしてるのは僕も知ってるから」
『〜〜〜〜ッ!?!? レ、レイちゃぁぁぁあん!夕斗さん達がいじめてきますぅ〜‼︎』
「よしよし。いい子いい子」
『「なにこれシュール」』
そういうわけで4人(?)で談笑しながら帰っている。と、レイが思い出したかの様に鞄を探り始めた。そして中から一枚のチラシを出し夕斗に近づける。
「そういえば、ほらこれ見て!」
「ん?何これ」
『アカデミア祭?なんですかこれ』
『う、ぅぅう…お、お祭ですか?』
三人の食いつきがいい事にレイはニヤリと口の端を緩める。
「夕斗は転入生だから知らないだろうけど、アカデミアでは毎年この時期に開かれるんだ。三日間行われて屋台とかも出て楽しんだよ!」
つまりは学園祭みたいな物か。と夕斗は納得する。
「でもデュエルアカデミアだし唯のお祭りじゃないんでしょ?」
「流石夕斗!勿論唯のお祭りじゃないよ。ほらココ!」
レイが指差す場所にはデュエリストキングダム・アカデミア杯と書かれている。名前からして夕斗にはいい気がしない。
「なんと今年からあのペガサスが開催するんだよ!今まではちょっと大きな大会みたいな物だったのに…夕斗は運がいいね」
「……ハハ、ソウデスネー」
『(あの男、絶対マスターいるからって遊んでますね)』
『(職権乱用だぜ…)』
夕斗達にはI2社でニヤニヤと黒い笑みを浮かべているペガサスが簡単に想像できる。
「豪華商品もあるらしいよ!夕斗も出るでしょ?」
「ん、ん〜どうかな?」
ペガサスの仕向けた大会が胡散臭過ぎてやる気に慣れない。というのが夕斗達の正直な所だ。
どうかなと答えて置きながらも内心、出ない事を決意した。
確かに夕斗もデュエルや豪華賞品は気になる。しかし、それらとペガサスの手の上で踊る事を天秤にかけた場合、どうしても後者に傾くのだ。
「最近、新しいデッキも作ってみようかなと思ってるし、何より余り人が多いところは好きじゃ無いから、遠慮させてもらおうかな?」
「うっ、そ、そっか……」
当たり障りの無い嘘の無い言葉で暈すとレイは目に見えてしょんぼりと肩を落とす。
不覚にも可愛いと思ってしまう夕斗であるが、友達が傷ついてしまったのは頂けない。
「で、でも最初の屋台とかは回ってみたいかな。お祭りとか久しぶりだから。見て回りたいな」
「ほ、本当!絶対!絶対だよ‼︎」
「う、うん」
一言も一緒に行くといった覚えは無いのだが、それでもレイの機嫌が直ったならば良いか。と夕斗は深くは考えなかった。
そうこうしている内にブルー寮とレッド寮への分かれ道へとやって来た。ここでレイとはお別れである。
「それじゃまた明日!ちゃんとお起こしに行くからね」
「レイちゃんが来るから僕は理性と嫉妬の視線でSAN値マッハだよ」
「SAN値?…まぁいいや!それじゃあねー!」
そう言って手を振って駆け出すレイを見えなくなるまで見送った夕斗。一度直ぐに帰ってしまったら涙目になって「なんで?!嫌いになった!?」とコンマ1秒で戻ってきたことがあった為、こうしている。もはやレイの方が余程友情に飢えているのではと思う程だった。あの時のレイの目は夕斗のトラウマリストに載っている。
そうして見えなくなったところで夕斗は静かに歩き出す。レッド寮まではそこそこの距離だが、夕斗はこういった時間は嫌いでは無い。夏の暑さは苦手だが時折吹く涼しげな風が気持ちいい。
「まぁそれもこんな状況じゃ無かったらだけどね」
一人ぼそりと呟き景色を見る要領で後ろを確認する。ぼっちのモンスター効果『私は貴方を見てませんよ。後ろの景色を見ているんです』を発動した。
そこには常人ならば気づか無いだろうが確かに人がいる。茂みと影を利用していて視線は夕斗を捉えている。
(アバター、レイちゃんの方に付けさせたルートから報告は?)
『彼方の方にはそれらしき人物は居ない様子、狙われているのはマスターのようでございます』
(成る程、ということはペガサスの言っていたウロボロスとか言う連中かな?それとも学園の奴らか……敵が多くて分からないね)
ケラケラと心の中で笑うが警戒は解いていない。常に意識は尾行者に向いている。
尾行者の方は特に何かする様子も無く一定の距離を保ったまま付けている。
とは言え動く訳にもいかない。相手が尾行をしている以上、こちらが相手に気づいているという事実はまだ相手に知られていない。
こちらが下手なアクションをするよりバレていないという安心感を相手に与えるのも一つの手だ。手負いの獣ほど手がつけられないというがそれは人間も同じなのだから。
(気にしても仕方ないか。ルートを呼び戻して普通に帰ろう。相手がこちらに危害を加えない限りね)
『かしこまりました。それではその様に…』
そうして寮へと戻ると尾行者の気配も消えた。何が目的かは定かではないが寮まで用はない様だ。
夕斗は警戒を緩めず自室のドアを開く。と、パサリの何か軽い紙が落ちた様な音がした。
音の先には一通の封筒が。宛先も何も無く、ただ『隈ヶ谷 夕斗様』とだけ書かれている。
(なんだろ。脅迫状かな?それとも不幸の手紙か…)
『真っ先にラブレターとか言い出さ無い辺り夕斗さんらしいぜ…』
『どうしますかマスター。中をご確認なさいますか?なんでしたら私達は席を外しますが…?』
(アバターさんや、その辺りの勘違いは確実に身を滅ぼすよ。ま、中身は見てみようか。面白そうだしね)
そうして封を切る。開いた瞬間封筒は勢いよく爆発した。
なんて事は無く中には手紙が一枚と、どうやら写真が一枚あるだけの様だ。
先ず手紙を確認する。次に写真を見た時、三人の表情が変わった。
アバターは驚いた表情を、ルートは険しい。そして夕斗はニヤリと楽しそうに口元を吊り上げる。
『どうなさいますか?』
(やるしか無いね。とんでも無い事をしてくれたもんだよ。僕は嫌だって言ったのに)
『とりあえず顔と言葉は同じにしようぜ』
(おっと……さて、それじゃ今から出来ることはやっておこうか。とりあえず新しいデッキは作り終え無いとね。二人とも、手伝ってもらうよ)
『はい!』『おう!』
隈ヶ谷 夕斗様
『アカデミア祭、デュエリストキングダムに出場しろ』
簡素にその一文。そしてもう一つの写真の中には…
(イレイザー、か……)
夕斗達がアカデミアへ来た目的。邪神三姉妹の三女、邪神イレイザーが映し出されていた。
夕斗は人知れず手紙を握りしめていた。
(まったく、どこの誰かは知らないけど粋な真似をしてくれるね…)
夕斗は空を睨む。その目は怒りの炎、そして狂気の光が宿っていた。
口の端が更に吊り上がる。
(僕に喧嘩を売ったんだ。普通のままでは帰さないからね…)
後にはドアを閉める音だけが響いた。