東方妖狐伝   作:白醤油

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にじファンの頃の面影なんざ一欠片もないね。


生まれ変わって狐さん

 突然だがここで問題だ。走って角を飛び出した時に横を振り向いたら、目の前にトラックが迫っているという状況で、どうやってあのトラックをかわすか?

 

 3択-一つだけ答えなさい

 答え①ハンサムの俺は突如回避のアイデアがひらめく

 答え②親切な人が身を挺して助けてくれる

 答え③かわせない。現実は非情である

 

 俺がマルをつけたいのは①だが、これはまず無理だろう。大体俺のルックスはそれほどよくない。

 ②だって、そんな聖人のような人が運良く近くにいて、運良く轢かれそうな俺を見つけ、運良く絶好のタイミングで俺を突き飛ばし、運良く俺が助かるなんて、銀河の向こう側から発射された弾が地球にいるミジンコに直撃する確率よりも低い。

 

 答え

 ――――③ 

 答え③ 

 

 答え③

 

 

 ガ オ ン !

 

 

 いや、自分でもあの一瞬の中でよく頭が回ったと思うよ、うん。

 今俺は死神さんの船に乗って三途の川を渡っている。

 両親は既に死んでいるので、賽の河原は見事にスルー出来た。……と言いたいが、賽の河原なんて最初からなかった。死神さんの話によると、賽の河原の話は民間信仰の俗信であり、別にそんなの無いんだとか。

 

「いやー、それにしてもアンタ、本当に運がないねぇ。」

「まあ、俺の自業自得なんですけどね。」

「っははは。ま、来世からは気をつけな。」

 

 いや、本当に運がなかった。

 友達が、俺の趣味になってるゲームを貸してくれるって言うんで、急いで全力疾走してたらあのザマだ。

 よく小説とかで見る、「トラックに轢かれそうになってる少女を助けた」とかそういうのじゃない。本当にただの自業自得だった。更に、そういう小説でよく見かける、「神様のいる白い空間」的なものももちろん無かった。現実は非情である。

 そんなこんなで、俺を船に乗せて運んでる死神と駄弁りながらしばらく三途の川のを進んでいた。

 船に揺られつつ待っていると、対岸に裁判所のような建物が見えてきた。

 

 

―裁判所 法定―

 

 

「はい、貴方は大焦熱地獄行きです。次の方、どうぞー」

「え、ちょ」

 

 かなり大きいおっさん(多分閻魔様)がサイバンチョの持ってるアレを振り下ろすと、カーンという音が鳴り響く。前の人の足元に穴が空き、その中に目の前の人が悲鳴を上げながら落ちてゆく。

 前の人がかなり深い地獄に落ちる程の悪人だったことにかなり驚いたが、後ろに人が待ってるのでそそくさと前に出る。

 

「えー、貴方は……蝿や蚊等をむやみに殺してますね。懺悔しないと、等活地獄に落ちますよ 」

「懺悔、ですか?」

「はい、今までいたずらに殺してすいませんでした、と虫たちに謝りなさい」

 

虫達……蝿、蚊、蟻、よくわからん羽虫……少々癪だが、謝ろう。俺の都合だけで殺してたわけだから、ひどいって言えばひどいしな。

 

「えー、虫さん、今まで自分の都合で殺してしまってすいませんでした。許して下さい」

「よろしい。……では、貴方にはこのまま転生してもらいます」

「転生?」

「はい、現世での記憶を全て消し、来世へ魂を移行させます」

 

 その説明が終わると同時に、意識が薄れてゆく。ああ、俺が俺でいられるのはこれで最後なんだな、と思った。不安はなかった。焦りもなかった。後悔は山ほどあったが、もう死んでいるのだからと割り切った。

 だんだん、手の先から感覚が消えていく。

 ああ、消えるのか、俺は。死ぬには早かったな。あのアニメ、続きが気になるな。もっと遊びたかったな、恋人もいなかったな。もっと人生を謳歌したかったな……

 様々な思いが駆け巡るが、全て無意味。それから直ぐに、俺の意識は闇へと落ちていった。

 

 

 

 コーン、コーン

 

 だんだんと意識が鮮明になってくる。体中が濡れていて気持ち悪い。ついでに大量の毛もひっついている。どうやら俺は何かの動物……先程から聞こえる鳴き声から察するに、狐に転生したらしい。

 ……うん?おかしいな、閻魔様の話によると現世の記憶は全て消えるという話だったが、俺は全部覚えている。親や兄弟達の顔と名前とかも鮮明に思い出せる。俺の名前は確か……あれ?なんだったけ?この部分だけぽっかり穴があいてるように思い出せない。ついでに、俺の家族の苗字も思い出せない。まさか、記憶の消去が成功したのって自分の名前関することだけ?不完全にも程があるな。

 

 コーン、コーン

 

 まあ、別にいいだろう。狐の寿命なんてたかが知れてるし、今度転生するときはきちんと記憶も消えるだろう。

巣立ちまでお世話になるであろう母上の顔を拝むべく、瞑っていた瞳を開けると見えたのは……

 

 

 九本の尻尾を持つ狐さんでした。

 え、九尾?九尾の狐?妖怪?え、妖怪?……嘘だと言ってよカーチャアアアアアアアアアン!

 

「嘘。」

「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」

 

 オレモシャベッタァアアァアァァアアァァァアァァ!!!




非常に短いですが、第一話はこれで終わりです。
次の話へどうぞ。
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