東方妖狐伝   作:白醤油

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前回の更新から半年経ってるっていうね、もうね。


天才一家、現る

 さて、やっとこさ洞窟の中に入れてもらったわけだが、勿論こいつらには“言葉”が無い。いや、あるにはあるが、言語というより合図といった感じのものしかない。名詞も、動詞もありはしない。「アッー!」とか「ウホッ」とかで意思疎通を図っている状態だ。

 

 無論、俺が何を言っても理解されない。誰一人とも話が通じないというのは少々辛いものがある。だから言葉を教えようと集めても、皆聞く耳を持たず、自由気ままに散っていく。教えようがないのだ。とりあえず、俺が日常的に発する言葉を覚えてくれるのを待つしか出来そうにない。

 

 俺の母上(二人目)は、俺の心を読み取るとかいう術に長けていたようで、「嘘だと言ってよ!」という俺の思考を呼んで「嘘。」と言っていたりした。その後も、俺の言葉や思考からどんどん学んでいき、ほんの数時間で、全く支障がないレベルでの会話が可能になっていたのだが。しかし、それは高度な知能をもっている母上だからだ。こいつらは、一応学習するものの、意味も分からず真似しているだけ。日本人が意味を知らない外国語を言ってみたといった感じで、発音もめちゃくちゃだ。「空」が「しょるぁ」。「洞窟」は「どーぐどぅ」。意味がわからん。

 

 しかし、その中に例外がいた。やけに目立つ銀髪の一家だ。そいつらだけは、言葉を理解しているように感じる。言葉を覚えたての赤ん坊のように単語を連呼しているだけなのだが、発音もちゃんとしている。石を持って「いし、いしー」と言っている。単なる偶然か、こいつらが天才なのか……

 

 言語を教えるには、聞き、喋り、読み、書きと続いていくのが良い。と、思う。

俺の言葉を聞かせ続ける事から始めるしかないと思うんだが、この銀髪の一家はどの程度で覚えてくれるかな?

 

 

――数ヵ月後――

 

 

 今、俺は銀髪の一家を集めて講義をしている。なんと、こいつらは「集まれ」を理解しているのだ。げに恐ろしや、銀髪の一家。

 

「今日は天気がいい」

「「「「きょーはてんきがいい」」」」

 

 実際、今日は雲一つない晴天だ。洞窟の入口からも、さんさんと日の光が降り注いでくる。

 今度は、木の枝を持ち上げて、銀髪の一家の長男(らしき少年)に問いかける。

 

「これは、何だ?」

「きのえだ」

 

 この通り、何が何であるかを解っている。他の奴らは、まだ微妙だというのに。これはもう偶然なんかじゃない。銀髪の一家だけが言葉を理解しているなんて、必然としか言い様がない。やはり天才か、この一家は。

 

 

――更に数ヵ月後――

 

 

 この銀髪の一家、知的好奇心もかなり高い。時折、何か物を持ってきては「これ、何?」と聞いてきたり、何かを指差して「あれ、何?」と聞いてくる。

 既に“こそあど言葉”を理解している。これは、普通に会話できる日も近いかもしれんな。

 

 

――更に飛んで数ヵ月後――

 

 

 あの銀髪の一家は、とうとう俺と普通の会話ができるようになっていた。一年程度でだ。一年と聞けば短く感じられるかんもしれんが、他の奴らはまだ単語を普通に言えるようになっている段階だ。

 それに合わせて、平仮名を教え始めた。例の銀髪の一家とちょっと好奇心の強い奴しか集まらないが。

 木の枝を持ち、地面に書くという極めて原始的なものだ。いや、ここが原始なのだが。

 あいうえおを書きながら、同じ字を書くように促す。

 

「あ、い、う、え、お」

「あ、い、う、え、お」

 

 この程度なら、全員パーフェクトだ。平仮名はは全部書ける。銀髪の一家以外の奴らも、発音が結構しっかりとしてきた。

 

 ところで、この前見たのだが、この銀髪の一家が石器を作り、それを他の者達に教えているところを見かけた。

 一応、教えられている奴も作り方を理解しているようだ。こいつらの知能レベルの高さは、この銀髪の一家によるものだったらしい。恐らく、松明を作ったのも銀髪の一家だろう。

 まあ、それを抜いてもこいつらは頭がいい。理解する力はかなり高いと言っていいだろう。

 

 さて、そんな銀髪の一家に驚かされつつも、少々変わった日常を過ごしていた。木を切り、家族が丸々過ごせる程度の木造建築の家を作ると、周りから歓声が上がったりしたこともあった。割と気持ちがいい。

 その次の日には、なんと洞窟の奴ら全員が俺の建てた家を真似して小屋を建て始めていたのには驚いた。銀髪の一家以外も、それなりに知能が高いのか?

 

 そんなある日である。能力の練習として風を吹かせていると、例の銀髪の一家の長女(らしき少女)が俺に近づいてきて、こんなことを聞いてきたのだ。

 

「私は、何?」

 

 ……まさか、自分が何かと求めてくるとは。

 しかし、どうしたものか。「人間だよ」と答えればいいのか、即席で名前でも考えてあげればいいのか。とりあえずは、人間であると教えてみようか。

 

「お前はな、“人間”だ。ほかの動物より、頭がいいんだ」

「にんげん?」

「そう、人間だ」

「じゃあ、あの子は?」

「あの子も人間だ」

 

 そう言ったとき、この少女はなにか考えるような仕草をした。そして……

 

「……ちがう。あの子と、わたし。おなじじゃ、ない。だから、ちがう」

 

 ……まさか、ここまでとは。自分がなんという生き物であるか?ではなく、私の名前は何か?を求めているというのか。

 

「そうか、そうだな。なら、お前たちに“名前”を付けなくてはならんな。」

「なまえ?」

 

「そう、名前だ。みんな違う“名前”。誰とも同じじゃない、お前だけの“名前”だ」

 

「……なまえ。なまえ!わたし、にんげん?」

「いや、人間は名前じゃない。生物としての、種族的名称だ」

「……?」

「あー、解らんか。まあいい。お前の名前は……そうだな、白華(びゃっか)なんてどうだ?」

「びゃっか。……びゃっか!わたしの、なまえ!」

 

 白いから、そして可愛いからという、ひどく安直な名づけ方だが、なんとか気に入ってもらえたみたいでよかった。

 まだ、俺の壊滅的ネーミングセンスを酷く思わないところが幸いだが。

 

「じゃあ、あの子は?」

「あの子は……青蓮(しょうれん)がいいかな。髪の毛青いし」

「じゃあ、おとーさんは!?」

「ああ……(けん)とかいいんじゃないか?一番頭良いし」

 

 適当も適当、超適当である。心はまだまだ少年のまま、14歳の頃に患った痛々しい心の病の残滓が垣間見える。

 この心の病はいつ頃になったら完治するのだろうか。その先はまだまだ長いと俺は思う。

 

 その後も俺は、白華にいろんな人々の“名前”を求められ、その度に後から思い出すと恥ずかしくなるような名前を付けていった……




半年位の更新の滞りの末投稿したとき、誰か一人にでも「待ってました!」と言ってもらえるような小説を書く事。
それが私の目標であり、夢なのです。
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