艦隊これくしょん 艦これ~蒼き鋼の航海記~   作:トッシー・マツナガ

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蒼き鋼の航海記~帰還~




西暦2091年8月1日




蒼き鋼に上陰龍次郎という男から依頼を受託。




その依頼は新型魚雷『振動弾頭』の輸送任務。




内容は横須賀で『振動弾頭』を受け取りアメリカまで届ける。




依頼を受けた蒼き鋼は横須賀へ急行




しかし、その進路上に霧の重巡洋艦『タカオ』が妨害




これの排除に成功し、横須賀に進路を向けた。




記録終了


二話「霧の艦隊」

佐賀県鹿島市『宇宙センター』沖

 

 

 

 

ここでは、大陸間連絡用『SSTO』の打ち上げが開始されようとしていた。

 

 

 

 

「第一防衛ライン突破。深海凄艦第二防衛ライン突入。」

 

 

「なぜ一隻も沈めることが出来ないんだ。」

 

 

「的が小さすぎるんです。」

 

 

 

 

管制室には怒号が飛び交い、冷静さを失っていた。

 

 

 

 

「第二防衛ライン突破。深海凄艦第三防衛ラインに突入。」

 

 

 

 

第三防衛ラインを突破されればロケットはもう目の前である。管制室の誰もが諦めかけたその時だった。

 

 

 

 

「レーダーに小型船を確認。」

 

 

「モニターに出せ。」

 

 

 

正面のモニターに映し出されていたのは、民間の漁船だった。

 

 

 

「なぜ民間の漁船がこんなところにいるんだ。早く避難させろ。」

 

「待ってください。漁船のとなりに人間が・・・少女が海の上を走っています。」

 

「艦娘だ。」

 

 

 

 

指揮をとっていた管制長は、その映像を見てある組織を思い出した。

 

 

 

 

「漁船に艦娘・・・間違いない。白き鋼だ。」

 

 

 

 

『白き鋼』とは、海原群像率いる小規模の組織で深海凄艦との戦闘や輸送任務など防壁の外での活動がメインである。彼等の乗っている漁船は主砲や対空ミサイル、魚雷発射菅を装備した『武装漁船』である。その組織のメンバーは群像や吹雪だけではなかった。

 

 

 

 

「空母ヲ級1、駆逐艦2ですか。小規模の編成にしてはなかなかやりますね。」

 

 

 

 

服司令官『織村僧』。

 

 

 

 

「最終防衛ライン突破されそうだぞ。」

 

 

 

 

火器・管制担当の『加藤杏兵』。

 

 

 

 

「急がないとね。最終防衛ライン突破されたら完全にアウトだし。」

 

 

 

 

操舵担当の『君塚いおり』

 

 

 

 

「深海凄艦。最終防衛ライン突破。」

 

 

 

 

この二年で新たに仲間に加わったソナー担当の『天宮静』。

 

 

 

 

「どうしますか司令官。」

 

 

 

 

そして武装漁船艦長ならびに司令官担当。

 

 

 

 

「このまま全速前進。深海凄艦を叩く。」

 

 

 

 

『海原群像』と。

 

 

 

 

「ついてこい吹雪。」

 

 

「はい。司令官。」

 

 

 

 

特型駆逐艦『吹雪』。これが白き鋼のメンバーである。

 

 

 

 

「駆逐艦二隻はこっちで撃沈する。吹雪は空母を頼む。」

 

 

「はい。」

 

 

 

 

群像たちが仕掛けようとした時、空母ヲ級から艦載機が発進された。

 

 

 

 

「対空ミサイル発射後、酸素魚雷一番から三番装填。」

 

 

「了解。」

 

 

 

 

対空ミサイルが発射され、10秒後に空母ヲ級が放った艦載機に命中し撃破した。杏兵は直ぐに酸素魚雷を装填した。

 

 

 

「駆逐艦二隻こちらに接近。」

 

 

「酸素魚雷一番から三番。撃て。」

 

 

 

 

静が駆逐艦二隻の接近を確認したあと、漁船から酸素魚雷が放たれた。30秒後、駆逐艦二隻と空母ヲ級に直撃、駆逐艦二隻とも撃沈、空母ヲ級は中破していた。

 

 

 

 

「これで艦載機は飛ばせない。頼むぞ吹雪。」

 

 

「はい。」

 

 

 

吹雪は接近し、酸素魚雷を一斉に発射し、空母ヲ級を撃沈した。

 

 

 

「やりました。司令官。」

 

 

「作戦終了。これより帰投する。」

 

 

 

 

作戦終了と共に『白き鋼』は宇宙センター沖から撤退し、水平線の彼方に消えていった。

 

 

 

 

「いいな。即席で改造した漁船に駆逐艦型の艦娘。だがそれだけで作り上げてきたテロ組織。なかなかの出来映えだ。」

 

 

 

そこには、彼等の運命を変える男の姿もあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鹿児島県阿久根市沖

 

 

 

 

群像たちは現在鹿児島県の沖合いで、武装漁船『ハヤテ』と言うなで燃料の補給を行っていた。一部の地域では漁師たちや町の人は、『白き鋼』の活躍に期待を寄せていたため、燃料や食料を分けてくれたりする。僧たちは、その補給の確認や買い出しに出たりしていた。群像と吹雪は、港で留守番をしていた。

 

 

 

 

「司令官。そのコーラって飲み物美味しいですか。」

 

 

「美味しいよ。そうか、コーラが出てきたのは大戦後だから、吹雪が知らないのも無理ないか。」

 

 

 

 

つかの間の安らぎの中で、群像は吹雪に二年前の事を聞いた。

 

 

 

 

「吹雪・・・あの時の俺はどんな顔をしていた。」

 

 

 

 

群像の質問に驚いた吹雪は、言い出しずらかったが、彼女は正直に答えた。

 

 

 

 

「凄くつらそうでした。まるで司令官が檻に閉じ込められていて、それを私に開けさせて欲しいような・・・そんな顔でした。」

 

 

「だろうな。あの時の俺は、この封鎖された世界から無性に出たいともがいていた。世界に風穴を開けてやろう。そう思っていた。けどお前と出会って、『蒼き鋼の航海記』という夢を見て、その決意はより強くなった。」

 

 

「風穴は開けられましたか。」

 

 

「いや。」

 

 

「そうですよね。あの時から司令官の顔、今でも苦しそうですから。」

 

 

「やっぱりそうなんだな。」

 

 

「でも、本当に苦しかったら私を頼ってください。私、司令官のお役にたちたいんです。」

 

 

「ありがとう。吹雪。」

 

 

 

 

二人はお互い見つめ合ってるようにも見えた。その時、客人が現れた。

 

 

 

 

「海原群像君だね。」

 

 

「あなたは。」

 

 

「鹿島市宇宙センター沖に奇襲を仕掛けてきた深海凄艦の撃沈を依頼した『上陰龍次郎』という。」

 

 

 

彼は群像に名刺を渡した。彼の正体は、統制軍軍省務次官補『上陰龍次郎』という男で、今回の依頼者だ。彼が群像に近づいたのは他にも理由があるらしい。

 

 

 

 

「先立っては通信回線で失礼した。急を要する事態だったのでね。」

 

 

「ご用件は。」

 

 

「君たち『白き鋼』にまた仕事を頼みたい。」

 

 

「仕事。」

 

 

「人類の希望・・・最後の希望を運んでほしい。」

 

 

「人類の最後の希望・・・なんですかそれは。」

 

 

「君たち『白き鋼』が二年活動を続けている間に、我々軍は深海凄艦に対向できる新兵器の開発を行い完成させた。」

 

 

「輸送任務ですか。場所は。」

 

 

「アメリカだよ。ただ物はここにはない。横須賀へ行き、完成した兵器を受け取ってほしい。」

 

 

「ところで。その人類最後の希望となる兵器とはなんなんですか。」

 

 

「『振動弾頭』その完成品と設計データをアメリカに届けてほしい。」

 

 

「わかりました。」

 

 

「それともうひとつ、『第4施設跡地』には慰霊塔が立てられたよ。一度くらい訪ねてみたまえ。」

 

 

 

そう言って上陰次官補は、彼等から立ち去った。だが群像と吹雪、それと『白き鋼』のクルーはこうなることを予言していた。それは群像の見る夢にあった。

 

 

「やっぱり、上陰さんは『振動弾頭』の輸送を依頼してきましたね。『蒼き鋼の航海記』通り。」

 

 

「ここからは霧の艦娘とも戦わなきゃいけなくなる。それでも君は俺についてくるか」

 

 

「はい司令官。」

 

 

 

 

この二年で彼等は霧の艦隊の動向を調べていた。その正体は、12年前行方不明になっていた旧連合艦隊の艦娘たちだった。同胞と戦うかもしれない状況になったにも関わらず、吹雪は彼女たちと戦う決意を強めた。

 

 

群像たちから去った上陰次官補は、彼等の行動に違和感を覚えていた。

 

 

 

 

「生意気な子どもだ。『振動弾頭』の詳細も、なぜ『SSTO』でアメリカに輸送しないのか、それを聞いてこなかった。まるで全てわかっていたかのようだ。いいだろう。その心理眼がどこまで通用するのか見させてもらうよ。」

 

 

 

 

彼は鹿児島の地を去った。

 

 

そして群像たちは、武装漁船『ハヤテ』に集合し今回の依頼について、話し合っていた。

 

 

 

 

「横須賀行きまでには賛成です。前回の報酬で食料などは手に入りましたが、補給事項は常に我々の懸念事項でした。特に弾薬関係が不安です。手に入る物も横流しの粗悪品ばかりでしたし、我々の母港に帰るいい機会かもしれない、松永中将に頼るよりかは、横須賀で『振動弾頭』を受け渡しと弾薬の補充を依頼するのが良い判断かと。」

 

 

「僧くんに賛成。佐世保に行っても本格的な検査やメンテは無理だし、吹雪の補給も必要だしね。」

 

 

「オレはなんでもいいぜ。」

 

 

 

 

 

僧といおりと杏兵は賛成のようだが、吹雪は静に気を使っていた。

 

 

 

 

「静さんはどうします。地元じゃありませんし。」

 

 

「それは吹雪も同じでしょ。私も良いですよ。司令官たちの故郷も見てみたいし。」

 

 

 

 

全員が横須賀に行くことに賛成しているが、ここである問題が浮上した。

 

 

 

 

「司令官が夢で見る『蒼き鋼の航海記』によると、名古屋沖に早期警戒艦として配備されている重巡洋艦『高雄』。これが待ち構えています。」

 

 

「重巡クラスとなると、軽巡みたいにはいかねぇな。」

 

 

「それだけじゃない。『高雄』以外の艦娘も配備されているはずだ。」

 

 

 

 

 

艦娘は、通常二隻から六隻で艦隊を組んで行動する。しかし、群像が夢で見た『蒼き鋼の航海記』では『タカオ』の存在しか情報が得られなかった。だが艦娘が一隻で行動するのは考えにくい。つまり群像は『高雄』を含めた艦娘で艦隊を編成すると考えていた。そしてそれは次の問題にも繋がる。

 

 

 

 

 

「杏兵。魚雷はあとどれくらい残っている。」

 

 

「『冷却魚雷』五発、『発煙魚雷』一発、『閃光魚雷』一発、『低周波魚雷』二発に、オレお手製の『マル秘魚雷』が一発、肝心の『酸素魚雷』はゼロ。」

 

 

「吹雪はどうだ。」

 

 

「さっきの宇宙センターの戦闘で『酸素魚雷』二発、主砲の弾薬も残りわずかです。」

 

 

「戦闘は避けたいな。」

 

 

「『蒼き鋼の航海記』では、ここで台風を利用して移動するとありましたが、残念ですが本日は晴天です。」

 

 

「仕方ない。残り少ない弾薬で『高雄』艦隊を突破しよう。」

 

 

「上手く引っ掛かってくれるといいけどな。」

 

 

「なるようになるさ。出航だ。」

 

 

 

 

群像たちは、名古屋沖の海域まで船を進めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京都六本木『東京義会場』

 

 

 

 

ここ東京義会場は、各党の政治家や各県の市長や軍上層部などが出席していた。その中に『白き鋼』に『振動弾頭』を依頼した上陰次官補の姿があった。

 

 

 

 

「上陰次官補。」

 

 

 

 

 

彼に声を掛けたのは彼の秘書官らしき人物であった。書類の入った封筒を抱え彼に近づき、その封筒を渡した。中身を見てみると、衛星から写し出された名古屋沖あたりの海域で、そこには複数の物体が確認出来た。

 

 

 

 

「このデータはいつの物だ。」

 

 

「今から20分前の出来事です。」

 

 

「ん・・・この手の状況は判断しかねるな。」

 

 

 

 

 

会場の入口で、上陰は見覚えのある人物を見掛け声を掛けた。

 

 

 

 

「松永中将。」

 

 

 

 

上陰次官補が話し掛けたのは、50代過ぎくらいの男性だった。彼は『松永敏満』。海軍横須賀基地第二艦隊所属の司令官で、『白き鋼』の協力者でもある。12年前まで艦娘たちを率いて提督に就任していた経歴もあるが『第三次防衛戦』の作戦でその任を解かれ、海原翔像に託されたのだ。しかも、翔像と松永は同期からの戦友でもあった。

 

 

 

 

「上陰か。お前も来ていたとはな。」

 

 

「よろしければ・・・これを見てご意見を頂戴したい。」

 

 

 

 

上陰はなんの説明もなく彼にさっきの書類を渡した。

 

 

 

 

「なんだこれは。」

 

 

「例の件で使おうと考えている『白き鋼』の戦闘データです。」

 

 

「なるほどな。名古屋沖にいるのは霧の艦娘で、四国付近の海域を北に向けて進んでるのは『白き鋼』か。面白くなってきたな。」

 

 

「注目して欲しいのはここです。」

 

 

 

 

上陰は小笠原付近の海域の艦隊と鴨川付近の海域の艦隊を指した。

 

 

 

 

 

「別の艦隊か。見たところ小笠原諸島と千葉の銚子から出航しているな。目的地は・・・名古屋沖。『霧の艦隊』と『白き鋼』の戦闘予定ポイントじゃないか。」

 

 

「まさかこうも早く『霧の艦隊』に情報が漏れるとは思っても見ませんでした。」

 

 

「しかも戦艦クラスを旗艦にした艦隊か。容赦ないな。」

 

 

「この状況は私では判断尽きかねますので。」

 

 

「普通に考えたらまず勝てないな。重巡クラス一名に戦艦クラス二名を旗艦にした艦娘じゃほぼ秒殺だろ。」

 

 

「やはりあなたでもそうお考えですか。」

 

 

「いや。戦闘は無理でも戦線離脱なら戦略次第で無傷で回避できる。ようは逃げるが勝ちだ。」

 

 

「では『白き鋼』ならこの状況を回避できるということですね。」

 

 

「あの翔像の息子が乗ってる船だ。なんとかなるだろ。」

 

 

 

 

だが会話の中で、松永は気になっていたことがある。

 

 

 

 

「そういや『霧の艦隊』に情報が漏れたとか言ってたな。どういうことなんだ。」

 

 

 

 

上陰は4時間前に『白き鋼』に『振動弾頭』の輸送を依頼したこと、そして彼等が今横須賀に向かっている事を松永に全て話した。彼は上陰の話を聞いて頭が痛くなったかのように頭を抱え込んでいた。

 

 

 

 

「お前・・・なんでそんな大事な話を外でするかな。」

 

 

「どうやら私は『霧の艦隊』を甘く見ていたようです。」

 

 

「しかしお前も無茶なおつかいをさせるものだ。引き受けるあいつもあいつだが。」

 

 

「『振動弾頭』をアメリカに引き渡せば戦況は大きく変わります。あそこは言わば深海凄艦の本拠地のようなところですから。」

 

 

「そのアメリカまで漁船で行けってか。」

 

 

「おや。私の情報網も甘く見ないで貰いたい。あなたは『白き鋼』の依頼で潜水艦の建造費用や資財を彼等に融資しているそうですね。しかもそれだけのために専用の建造ドッグまで建設させたとか。」

 

 

「なんだそこまで調べてたのか。それを狙ってお前は『振動弾頭』の輸送を依頼したわけだな。」

 

 

 

 

松永は群像の依頼で潜水艦の建造に必要な資金や資財、施設を提供していた。『白き鋼』がなぜ潜水艦を建造しているのかは後の開戦で必要になってくるからである。

 

 

「ん・・・あれは。」

 

 

 

 

松永は、見覚えのある人物を見掛けた。

 

 

 

 

「北良寛か。次の首相候補のナンバー1だったな。確かお前のプロジェクトには反対だったか。」

 

 

「はい。」

 

 

「まあ・・・お互い政治家に睨まれるとつらい立場だな。せいぜい上手く立ち回ろうや。」

 

 

 

 

松永は北良寛首相候補から逃げるように上陰から立ち去った。

 

 

 

 

「『振動弾頭』の梱包を急がせろ。保管場所を与党幹事長に気取られぬように。それと刑部博士に連絡を。」

 

 

「はっ。」

 

 

 

政治家である、北良寛の目に留まれば『振動弾頭』の所有権を奪われる危険を感じた上陰は、『振動弾頭』の輸送準備を速めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名古屋沖

 

 

 

群像たちは、間もなく『蒼き鋼の航海記』に記されていた『高雄』の艦隊との戦闘ポイントに入ろうとしていた。

 

 

 

 

「杏兵。敵艦の姿は。」

 

 

「目視じゃまだ確認できない。」

 

 

「静。ソナーの反応は。」

 

 

「微かに複数のエンジン音が聞こえます。敵艦は既にこちらを発見したかと。」

 

 

 

 

群像たちの方は相手を視認していないが、『高雄』たちはすでに『白き鋼』を確認し、砲撃戦の準備を始めていた。

 

 

 

 

「来たみたいね。」

 

 

「向こうはこっちに気づいていないみたいだけど。」

 

 

「さっさと終わらせようぜ。」

 

 

「天龍ちゃん焦らないの。」

 

 

「緊張するね如月ちゃん。」

 

 

「あの人たちに目にもの見せてあげましょう。」

 

 

 

 

『高雄艦隊』が動き出したその時、静は新たな反応をキャッチした。

 

 

 

 

「高雄艦隊以外に別の反応をキャッチ。艦娘です。」

 

 

「なんだと。」

 

 

「後方四時の方角に新たな敵艦見ゆ。」

 

 

「挟み撃ちか。」

 

 

 

 

さらに杏兵も船の後方から新たな敵艦を確認した。彼女たちは『白き鋼』の半径50メートルを包囲した。しかし、直ぐに砲戦を仕掛けてくる気配はなかった。群像たちは敵艦隊の艦娘を確認した。

 

 

 

 

「前方に重巡洋艦『高雄』『愛宕』軽巡洋艦『天龍』『龍田』駆逐艦『睦月』『如月』。続いて第二艦隊。戦艦『金剛』『比叡』駆逐艦『暁』『雷』『電』『響』以上です。」

 

 

「ありがとう静。」

 

 

「松永中将から頂いた『第三次防衛戦作戦 参加名簿』にあった艦娘ですね。」

 

 

「ところで群像。後方の艦隊ってまさか・・・。」

 

 

 

 

いおりと杏兵が、後方の艦隊を指した。そこには昔群像が初めて出会った艦娘の姿もあった。

 

 

 

 

「間違いない。戦艦『長門』『陸奥』重雷装巡洋艦『大井』『北上』駆逐艦『夕立』『時雨』だ。」

 

 

「連合艦隊総旗艦殿が自らお出ましかよ。」

 

 

 

 

すると武装漁船『ハヤテ』に音声通信が入った。相手は戦艦『長門』だった。

 

 

 

 

「艦長。戦艦『長門』より直接回線で通信が入っています。」

 

 

「回線を繋いでくれ。」

 

 

 

 

回線を開くと、彼女の声は力強く、群像にとって懐かしいものを感じた。

 

 

 

 

『私は、霧の艦隊第一巡航艦隊旗艦戦艦『長門』だ。『白き鋼』に命ずる。速やかに武装を解除し、こちらに投降してもらおうか。』

 

 

 

 

彼女たちは『白き鋼』を拘束するのが目的だが、それは海原翔像の指示なのかは不明である。群像は、戦艦『長門』と対話をするため彼女に通信回線で呼び掛け、自分の事を思い出してもらおうとした。

 

 

 

 

「お久しぶりです長門さん。俺の事、覚えていますか。」

 

 

『聞き覚えがないな。何者だ。』

 

 

「では改めまして。武装漁船『ハヤテ』艦長兼『白き鋼』司令官、海原群像。海原翔像の息子です。」

 

 

 

 

通信回線で二人の会話を聞いていた艦娘たちは驚いていた。『長門』もその名を聞いて思い出した。

 

 

 

 

「お前・・・あの時の坊やか。」

 

 

『思い出してくれましたか。』

 

 

「当然だ。この私におお恥をかかせてくれたからな。」

 

 

『は。』

 

 

「『お姉ちゃんカッコいい。僕もお姉ちゃんみたいな大人になりたい。』と、目をきらきらさせていたぞ。」

 

 

 

 

『長門』の一言で緊張感に包まれていた空気が一気に拍子抜けし、爆笑だけが飛び交っていた。笑いのネタにされた群像は顔を赤くして目をつぶって黙ってしまった。

 

 

 

 

「群像・・・お前サイコー。」

 

 

「黙れ。」

 

 

「そりゃそんなこと言われて戦艦『長門』も恥ずかしかっただろうね。」

 

 

 

 

杏兵といおりは大爆笑していた。さらに『白き鋼』の前方を塞いでいた高雄艦隊や金剛艦隊も大笑いしていた。

 

 

 

 

「ギャハハハハハハ。」

 

 

 

 

『金剛』と『天龍』は大爆笑していた。群像は渋々無線機を向けて『長門』との対話を続けた。

 

 

 

 

「長門さん。これは俺への宣戦布告ですか。」

 

 

『バカを言うな。あのあと一週間くらい内の艦隊にネタにされたのだからな。お前が大人になったらからかってやろうと思っていた。』

 

 

「子供ですかあなたは。」

 

 

『そんな可愛かったお前が、なぜ父親と同じ道を歩き始めた。なぜわざわざ日本政府の敵になってまで反逆者になった。』

 

 

 

 

再び彼女の一言で辺りに緊張感が走る。群像は彼女の質問に答えるつもりはなかった。

 

 

 

 

「残念ですが、同じ日本政府を裏切ったあなた方に答えるつもりはありません。」

 

 

『そうか・・・ならもう一度言う『白き鋼』に命ずる。武装を解除し、投降せよ。』

 

 

「お断りします。そこを退いてください。」

 

 

『そうはいかん。お前たちを横須賀に行かせる訳にはいかないからな。』

 

 

「やはり、目的は『振動弾頭』か。」

 

 

 

 

彼女の横須賀という一言に確信した。霧の本当の目的は『振動弾頭』だと。そのために『白き鋼』を足止めし、自分たち自ら『振動弾頭』を強奪するのが目的だったのだ。

 

 

 

 

「『振動弾頭』は渡さない。力強くでも通してもらう。」

 

 

『やれるものならな。だが私達も容赦はしない。力強くでも連れて行く。』

 

 

 

 

 

お互いに宣戦布告し、無線を切った。後戻り出来ない戦いが始まる中、吹雪だけ少し怯えた様子だった。

 

 

 

 

「どうした。吹雪。」

 

 

「いいえなんでもありません。」

 

 

 

 

『なんでもない』と言っているが吹雪の様子がおかしい理由を群像はわかっていた。

 

 

 

 

「大丈夫だ吹雪。俺だって彼女たちを傷つけるつもりはない。」

 

 

「司令官。」

 

 

「てか傷つけたくても出来ないだろ。現に通常弾頭持ってるのお前だけでこっちは酸素魚雷どころか対空ミサイルも空っぽなんだからな。」

 

 

「向こうはやる気みたいだけど、こっちは逃げる算段しか立てていないからね。」

 

 

「仕方ありません。ここで時間を潰す訳にもいきませんから。」

 

 

「私も、吹雪に同じ艦娘同士戦わせたくないし、させたくもありません。」

 

 

「と言うことだ。杏兵もいおりも僧も静も俺も、思いは一緒だ。」

 

 

「司令官・・・皆さん・・・はい。」

 

 

吹雪は、ようやく安心できたのかいつものコンディションに戻った。彼女自信艦娘同士と戦いたくない。それが彼女の素直な気持ちでもあり、群像たちの願いでもあった。だがそれは『吹雪』に限らず『長門』たちも同じ気持ちだった。

 

 

 

 

「よかったの。これで。」

 

 

 

 

『陸奥』が問いかけると『長門』はこう答えた。

 

 

 

 

「頑固なところは昔の提督そっくりだ。その息子がどれだけ成長したかお手並み拝見だな。」

 

 

 

 

彼女の知っている群像は、小さい頃に出会った子供ではなく、かつて艦隊を率いていた若い頃の海原翔像と面影が似ていた。彼がどこまで成長したかその目で確認してみたい気持ちが押さえられなかった。

 

 

 

 

 

「全艦に通達。これより我が艦隊は『白き鋼』の捕獲作戦に入る。目的は特型駆逐艦『吹雪』と、我等が提督の息子『海原群像』だ。それ以外は無視しろ。」

 

 

 

 

『長門』から作戦通達の確認の無線が入ると、艦娘たちは砲撃戦の準備に入った。

 

 

 

 

「決めましター。」

 

 

「何だいきなり。」

 

 

 

 

突然『金剛』が叫び出して『天龍』は思わず驚いていた。彼女はこんなことを考えていた。

 

 

 

 

「提督不在の今、彼に私達の提督になってもらいマース。そして彼のハートを私が掴み取りマース。」

 

 

「何だそれ・・・。」

 

 

 

 

呆れた『天龍』は何も言えなかった。そして『長門』から合図がでた。

 

 

 

 

「砲戦開始。」

 

 

 

 

『霧の艦隊』は『白き鋼』に接近していた。

 

 

 

 

「艦隊動き出しました。」

 

 

 

静も『長門』たちが動き出したことに気づき、『白き鋼』も作戦を開始した。

 

 

 

 

「総員、暗視ゴーグル着用。閃光弾、閃光魚雷一番と四番、装填用意。」

 

 

「閃光魚雷も発射させるのか。あれは海上だと効果はないぞ。」

 

 

「海面スレスレで爆発させればいい。」

 

 

 

 

杏兵以外、全員暗視ゴーグルを着けた。勿論吹雪も着用済みだ。

 

 

 

 

「吹雪。前方の艦隊に酸素魚雷全弾発射。ただし当てるなよ。」

 

 

「はい。」

 

 

「杏兵。吹雪の酸素魚雷発射後、続いて閃光魚雷発射。艦隊の三メートル手前で起爆。」

 

 

「了解。」

 

 

 

 

吹雪の酸素魚雷とハヤテの閃光魚雷計3本が『高雄』たちに接近していた。

 

 

 

 

「前方に魚雷接近。回避行動。」

 

 

 

 

吹雪が発射した魚雷2本を回避しようとしたが、2つの艦隊の間を素通りした。

 

 

 

 

「お姉様。第2波接近。」

 

 

「oh。あっちが本命でしたカ。」

 

 

 

 

『比叡』が『ハヤテ』から放たれた閃光魚雷を確認したが、数メートル手前で起爆し、『高雄』たちに目映いフラッシュが掛かった。

 

 

 

 

「しまった。」

 

 

「眩しい。」

 

 

「なんなのこれ。」

 

 

 

 

フラッシュの光りで『高雄』たちの動きが止まった。 『長門』たちも異変に気づき、一瞬だけ動きを止めた。群像はそのチャンスを逃さなかった。

 

 

 

 

「今だ杏兵。閃光弾発射。」

 

 

 

 

閃光弾が発射され、起爆し、『ハヤテ』周囲がフラッシュで覆われ、『長門』もフラッシュを浴びた。

 

 

 

「いおり。機関最大。全速力でこの戦闘海域を離脱する。」

 

 

「了解。吹雪。全速力で着いてきて。」

 

 

「わかりました。」

 

 

 

 

『白き鋼』は、全速力で『高雄』の艦隊を素通りし、一気に艦隊を突破した。彼女たちの視界が回復した頃には、既に『ハヤテ』は通り過ぎたあとだった。

 

 

 

 

「全艦酸素魚雷発射。バカめと言って差し上げますわ。」

 

 

 

 

『高雄』たちは急いで急旋回し、駆逐艦、軽巡洋艦、重巡洋艦一斉に酸素魚雷を発射した。

 

 

 

 

「杏兵。冷却魚雷全弾発射。」

 

 

「了解。」

 

 

 

 

群像の合図と共に冷却魚雷が発射され、海中で爆発した。すると巨大な氷の固まりを形成し、敵魚雷を防いだ。『白き鋼』は既に戦闘海域を離脱し、『高雄』たちの遥か先まで遠ざかっていた。それを見て『金剛』や『天龍』は悔しがっていた。

 

 

 

 

 

「Oh。No。」

 

 

「あいつら逃げやがった。」

 

 

 

 

 

『長門』たちも『白き鋼』が去るのを見ていた。

 

 

 

 

 

「フラれちゃったわね。」

 

 

「いいさ。あとは横須賀で待機している水雷戦隊の連中や『摩耶』たちに任せる。それにあそこは偵察で出ている正規空母や任務中の『榛名』と『霧島』がいる。彼女たちには私から任務の通達をしておく。」

 

 

 

 

 

『霧の艦隊』が『白き鋼』を見逃したのは、横須賀に数人の艦娘を配備しているからだ。しかし、それに気づいていない群像ではなかった。

 

 

 

 

「あれが本気じゃなかった。」

 

 

「そうだ。最初はどの艦隊の編成に空母が一人も配備されていなかった。何かの作戦かと思ったけどそれも違っていた。」

 

 

「それどういうこと。」

 

 

「長門さんなら必ず追撃するはずだった。あの人なら俺達を落とすも出来たはず。なのにそれをしなかった。」

 

 

「見逃してくれたということですか。」

 

 

「そういうことになる。それが長門さんの作戦だったなら。」

 

 

 

 

群像の一言で吹雪も『長門』の作戦に気づいた。

 

 

 

 

「もしかして、横須賀にも霧の艦娘が待機している。」

 

 

「そう言うことだ。」

 

 

「勘弁してくれよ。こっちは弾薬がほとんど残ってないんだぞ。」

 

 

「横須賀に到着出来たとしても、霧に襲われたらアウトですからね。」

 

 

「いや・・・おそらく振動弾頭を受け取った後に襲撃してくるはずだ。彼女たちの目的はあくまで振動弾頭だからな。」

 

 

「そうであってくれるといいですが。」

 

 

 

 

群像は急に席を立ち上がった。

 

 

 

 

「あとは頼んでもいいかな。少し寝てくる。」

 

 

「わかりました。ゆっくり休んでください。」

 

 

「司令官。お疲れさまでした。」

 

 

「吹雪もお疲れ。」

 

 

 

 

僧に仕事を託し、吹雪にあいさつしてから、彼は休憩室で横になった。そして『蒼き鋼の航海記』は彼に新たなページを開かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




群像たちは無事に『高雄』の艦隊を突破したようだ。



けど気になることがある。



戦艦『長門』『金剛』との接触はまだ先の話だ。



『蒼き鋼の航海記』に変化が生じている。



もう少し彼等の行く末を見てみよう。
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