艦隊これくしょん 艦これ~蒼き鋼の航海記~ 作:トッシー・マツナガ
イオナ
「『白き鋼』の行動が予測不可能になってきた。監視する必要がある。」
キリシマ
「何をしている401。」
ハルナ
「コンゴウが気にしていた。401が妙なことをしていると。」
イオナ
「キリシマ、ハルナ。平行線世界の群像たちを見ていた。」
キリシマ
「平行線世界の千早群像だと?」
ハルナ
「我々も同席しても構わないか?」
イオナ
「それならちょうどいい。今榛名と霧島が蒔絵と一緒に刑部邸を脱出するところ。」
キリシマ
「いいだろ。向こう側の世界の我々がどれだけ優れているか拝見させてもらおう。」
神奈川県横須賀市 刑部邸地下
刑部蒔絵と言う幼い少女は、横須賀から少し離れた豪邸に住んでいる。そして彼女の正体は、今群像たち『白き鋼』が請け負っている『振動弾頭』の開発者である。そのお世話をしているのが執事長のローレンスなのだ。
『まさか私に蒔絵の相談をしてくるとは思いもよらなかった。案外お優しいんですね。少しあなたの見る目を変える必要がありそうだ。』
ローレンスと映像通信で会話をしている青年は、『刑部眞』。安全保障によって東京、長崎、北海道を三つに分けた内の一つ北管区の首相である。彼は今、北海道札幌に首相官邸を置いている。
「政府は『振動弾頭』を開発し終えた今・・・あの子を用済みと考えている。」
『それはそうでしょう。私だってそうだ。世が変われば私も蒔絵と同じ扱いになる。我々『デザインチャイルド』は日本を生かすための道具ですからね。』
『デザインチャイルド』とは、クローン人間開発技術の一つで、簡単に説明すると、人間より優れた能力を持った人工人間のことである。眞もその技術で作られたクローン体なのだ。
『我々は日本のために従い、日本のために処分されてきた。それが『デザインチャイルド』の宿命でもある。そう・・・あなた方人間は私達を消耗品ような扱いしかしてこなかった。』
「眞・・・私は。」
『勘違いしないで下さい。私は別にあなたを責めているわけじゃない。』
彼の一言で気持ちを落ち着かせたローレンスは再び話の続きを聞いた。
『あなたは、いずれ不要の落胤を押され打ち捨てられる「我が子」のために偽りの家計を作り上げその記憶を・・・感情を実装した個体へ精神安定のために与えた。』
「確かにそうだ。私は人形に感情移入をしてしまった。科学者として恥じるべきなのかもしれないな。」
『なら・・・それで良いじゃないですか。家族ごっこもリアルを極めれば本当の家族になれるかもしれませんよ。様々な分野からしても興味深い実験かもしれない。そう思いませんか。『刑部博士』』
北管区の首相と執事のローレンス。二人の関係とその正体が蒔絵を今後の戦いの渦巻き込む事になるだろう。
神奈川県横須賀市 『横須賀海軍基地』
現在『白き鋼』は『振動弾頭』の調整待ちで横須賀海軍基地に待機していた。群像と杏兵は、横須賀駅まで出掛けていて、僧と静は海軍基地内で新型潜水艦を見学しているなど各自それぞれの時間を過ごしていた。吹雪は、海軍基地の堤防で潮風にあたりながら、防護壁のある海を眺めていた。
「海は好きかねお嬢さん。」
「いおりさん!」
吹雪のところにいおりが訪ねてきた。彼女の隣に立って一緒に海を眺めた。
「吹雪はやっぱり海が好きなんだね!」
「司令官に会うまでずっと海に出たいって思ってましたから。」
「そっか!群像のところに吹雪を送り込んだ人が誰だか知らないけど、吹雪にとっての恩人さんだね。」
「それでわかりましたか?あの指令書を送ってきた人が誰なのか?」
「松永さんも軍上層部や当時『第三次防衛戦』に参加していた軍人さんたち当たったんだけど手懸かりはなし、上陰さんは『第三次防衛戦』終戦と同時に『艦娘制度』が廃止されたから、辞令が来ることはないって言い張るし、結局誰が吹雪に命令したのかわからなくなったってこと。」
「そうですか・・・。」
吹雪は少し落ち込んでいた。彼女はその人にお礼がしたかったからである。群像と出会い、大好きな海に出させてくれたのが嬉しくて仕方なかった。しかし、誰が何の目的で吹雪と群像を出会わせたのかは謎である。落ち込んでいる吹雪を見て、いおりは吹雪にイタズラするように頬擦りをした。
「もう!落ち込んだ吹雪も可愛いぞこのヤロー!!」
「えっ!ちょっと!いおりさん・・・くすぐったい!!」
しかし、じゃれついている二人の前に、不振な物体を見た。
「あれ?何でしょう?」
最初に気づいたのは吹雪だった。いおりに教えるように謎の物体の方に指を指した。
「人・・・でしょうか?」
「こんな海の上に人なんて・・・まさか!」
いおりは慌てて携帯用の双眼鏡を取り出して謎の物体の方を見てみた。
「やっぱり『霧の艦隊』の艦娘!!どうやって防護壁の中に!!」
いおりが確認した艦娘は、第一艦隊重巡洋艦旗艦『摩耶』軽空母『祥鳳』軽巡洋艦『夕張』『由良』駆逐艦『涼風』『五月雨』。第二艦隊重巡洋艦旗艦『那智』重巡洋艦『妙高』『足柄』『羽黒』駆逐艦『白露』『村雨』。第三艦隊軽巡洋艦旗艦『神通』軽巡洋艦『川内』『那珂』駆逐艦『陽炎』『不知火』『黒潮』である。
「急いで群像たちや基地に連絡しなきゃ!」
「私!海軍の護衛艦が出撃できるまでの時間を稼ぎます!!」
「ちょっと吹雪!!」
吹雪は急いで基地に戻ってしまった。その後いおりは、僧と静に連絡した。
「副司令!いおりさんから緊急通信!『霧の艦隊』が出現したそうです!!しかも防護壁の中から!」
「戦艦『榛名』『霧島』ですか!?」
「いおりさんの報告だと、重巡洋艦しか確認出来ていないそうです。ですが『摩耶』の存在は確認出来たそうです!!」
「肝心の戦艦は現れずですか。」
すると僧と静は吹雪の声を聞いた。振り向くと吹雪が艤装を着けて出撃しようとしていた。
「吹雪!行きます!!」
二人が気づいた時には、吹雪は出た後で止めることが出来なかった。
「吹雪!待って!!」
「一人じゃ無理だ!戻るんだ吹雪!!」
吹雪はあっと言う間に横須賀基地から離れ、『霧の艦娘』たちに近づこうとしていた。そして彼女たちも、吹雪の存在に気づいた。先に気づいたのは『祥鳳』と『摩耶』と『夕張』だった。
「前方に艦影1!『白き鋼の艦娘』です!!」
「例の特型駆逐艦か!」
「一隻だけみたいだけど漁船は?」
三人が話していると、吹雪は彼女たちの手前で止まった。
「『白き鋼』です!『霧の艦隊』に告げます!!今すぐ武装を解除して、速やかに横須賀防護壁から出ていって下さい!!」
しかし、吹雪の忠告を無視して彼女たちは吹雪に近づいた。吹雪は主砲を構えながら少し逃げ腰になっていた。
「特型駆逐艦『吹雪』と言ったな。」
最初に話し掛けてきたのは、重巡洋艦『那智』だった。
「そうですけど・・・。」
「我々がここに来たと言うことは、目的はわかっているな。」
「『振動弾頭』のサンプルとその設計データですか。」
「それだけではありません。」
今度は『神通』それに『川内』『那珂』までもが彼女に話し掛けた。
「『白き鋼』の司令官『海原群像』さんと吹雪さん。あなた方二人を連行するよう命を受けています。」
「それか特型駆逐艦だけでもいいよ!そしたら提督の息子さんもすんなりついてくるだろうし!」
「それに『霧の艦隊』に入ればアイドル活動のイロハを全部教えちゃうよ!!」
「そう言うことだ!」
さらに後から『摩耶』の艦隊が合流した。『霧の艦隊』は何とか吹雪を説得しようと試みた。
「お前だってあたしらと戦いたくねぇだろ?なら諦めて捕まってくれよ!」
「お断りします!私も司令官も『霧の艦隊』に行くつもりはありません。それに私には・・・私達には任務があります!任務の妨害をするなら・・・私は戦います!!」
吹雪と『霧の艦隊』は戦闘に入った。吹雪にとって艦娘同士で戦いたくない思いより、群像たちのこれまでしたこと、そして群像の夢を守りたかっただけなのだ。吹雪はたった一隻で『霧の艦隊』に挑んだ。
神奈川県横須賀市 『横須賀駅コインロッカー』
海軍基地に『霧の艦隊』が出現する数分前、群像と杏兵は昨晩、上陰次官補から渡されたコインロッカーのカギを持って横須賀駅に来ていた。しかもかつて群像たちが通っていた『海洋技術総合学院』の制服を着ていた。
「これか?」
杏兵はロッカーに入っていた大きな封筒のようなものを取り出し、中身を確認した。
「群像の言う通り『振動弾頭』の設計データと資料だったな!」
「ここからは、周囲を警戒しながら基地に戻ろう。何があるかわからないからな。」
杏兵は急いで『振動弾頭』の設計データを鞄の中にしまい、二人はその場を離れ、歩いて基地まで戻った。しばらくすると群像たちは懐かしい道に出てきた。
「お!久しぶりだなこの道歩いたの!」
彼等がいるところは『海洋技術総合学院』の近くだった。そして、二人が歩いている道は登下校でよく通っていた。
「この坂道、帰りは落だけど登校が辛かったんだよな!」
「そうだな。よくこの道をみんなで通った。杏兵に僧にいおり。それに・・・桜とも。」
「そうだったな。」
二年ぶりに訪れた思い出の場所は、当時となにも変わらず昔を思い出しながら歩いていた。
二人の後ろに弓道部なのか、弓を入れた袋を担いでいる女子生徒が二人群像たちの後ろを歩いていた。
さらにその前の十字路の交差点には群像たちから見て左側の歩道がある信号で女子生徒が携帯をいじりながら信号待ちをしていた。
何もかもが懐かしいはずなのに群像と杏兵は、変な違和感を感じていた。というよりこの空気に気を使っていた。
実はこの時期になると『海洋技術総合学院』は、受験者が試験を受けるため、学校事態が休み期間に入るはずなのだ。だがら授業や部活動もないので、群像たち以外にこんなところに生徒がいるのは不自然なのだ。
そなとき交差点の曲がり角から二人の女子生徒がいきなり現れ、群像に声を掛けてきた。
「海原先輩!」
群像に声を掛けてきたツインテールの女の子と白髪のロングヘアーの女の子は群像と杏兵の道を塞ぐように接近してきた。もちろん彼女たちの正体も知っていた。
「先輩!私達と付き合わない!」
「そこの喫茶店でお茶でもしながらお話ししません。」
二人の発言にさすがの群像と杏兵も我慢ができなくなり、彼女たちの正体を群像たちから明かした。
「なあ群像。お前女子に逆ナンされたことあったっけ?」
「いや一度もないな。それに、俺に近づいてくる女性はわけありだけだ。」
「ちょっと!私たちに付き合うの!付き合わないの!」
「いい加減下手な芝居はやめて本性を現したらどうだ!五航戦『翔鶴』『瑞鶴』!」
その名前を言われて彼女たちの表情が一変した。
「お前らもいつまで信号待ちの振りなんかしてんだ!とっくに青だぞ!二航戦『蒼龍』『飛龍』!!」
杏兵がその名前を出すと、信号待ちしていた彼女たちは慌てて交差点を渡り合流した。
「それで・・・いつまで俺達の後ろで様子を伺っているつもりだ!一航戦『赤城』『加賀』!!」
群像が振り向くと群像たちの後ろにいた二人は諦めて彼等に近づいた。
「まさか正規空母に尾行に待ち伏せにナンパまでされるとは思っても見なかった。」
「俺もだよ。しかも今彼女たちに包囲されている。」
前方に五航戦『翔鶴』『瑞鶴』、左に二航戦『蒼龍』『飛龍』、そして後方に一航戦『赤城』『加賀』と、『振動弾頭』の設計データを入手した群像たちの後を付け、待ち伏せしていた。
しかも、正体を知られないよう『海洋技術総合学院』の女子制服を着ていた。
そして二人は完全に囲まれていた。
「よく私達が霧の艦娘だとわかりましたね。」
「やはり五航戦の子たちに任せたのが間違い。」
「いやお前らの変装が問題だろ!」
『赤城』と『加賀』が群像たちに訪ねると、二人は彼女たちにネタバレするかのように彼女たちに説明した。
「君達のことは、すでにこちらで調べていたから一目ですぐにわかったよ。」
「あと『海洋技術総合学院』はこの時期は受験者が入学試験や学校見学で授業や部活動が休みになる。そしてそれが今日この日。だから俺達以外の者がこの学校の制服を着て逆ナンしてくるのはあり得ないってことだ!」
「あなた方も制服を着用してますが?」
「だからお前らがバレたんだよ!」
説明を終えたところで、群像は彼女たちに自分達に近づいた目的を訊ねた。
「君達の目的はわかっている!『振動弾頭』の設計データとその資料だな!!」
「いいえ。それだけではありません。」
名古屋沖の『長門』と同じ、群像と吹雪が狙いだと見ていた。しかし、『赤城』が指定してきたのは吹雪だげだった。
「吹雪さんを我々に渡して下さい。」
「俺と吹雪じゃなくてか?」
「あなたは不要です。」
なぜか『赤城』の場合は違っていたのか、群像はその理由を彼女に聞いた。
「どういうことだ?君達『霧』は『振動弾頭』と俺と吹雪が目的じゃなかったのか?」
「提督と総旗艦はあなたをお連れしろと申していましたが、私はあなたを艦隊に連れていくのは反対なのです。」
「そうか・・・だが吹雪も『振動弾頭』も渡さない!いくら艦娘でも陸じゃ地の利はこちらにある!諦めて基地に帰投しろ!」
「それは出来ません。吹雪さんだけでも、あなたの基から離さなければなりません。」
「なぜ俺と吹雪をそこまで引き離す!!理由を教えてくれ!!」
「言葉でなければ伝わりませんか?なら率直に申し上げます!」
二人の会話が徐々に荒くなって来ている。群像と吹雪を引き離そうとする『赤城』とその理由を聞こうと必死になる群像。さらに『赤城』の一言で群像は今まで封じ込めていたある悩みを呼び起こしてしまった。
「あなたに吹雪さんを・・・艦娘を持つ資格はありません!」
彼女の言葉に群像は黙ってしまった。それは彼自信、そう言われることをしていたからだ。けど『赤城』は容赦なく群像に説教を続けた。
「私達正規空母は一年と半年もの間あなた方『白き鋼』の行動を監視していました。ですがあなた方は吹雪さんに無茶な戦闘を押し付けている。いくらあなたの戦術があるとはいえあれでは吹雪さんはいずれ轟沈します。」
「確かに『白き鋼』の戦力不足は改善されてるとは言えないが、現代の兵器を取り入れて少しでも彼女の負担を減らそうと!」
「なぜ私達『霧の艦隊』の艦娘に頼ることを考えなかったのですか?そうしようと思えばあなたのお父様に相談できたはずです。なのにあなたはそれをしようとしなかった。いいえ。したくなかったというのが正しいですね。」
『白き鋼』の戦力不足は、以前から取り上げられていた問題で、いまだに改善されてる状態とは言えなかった。
『赤城』の言う通り、『霧の艦隊』と協力関係を結べば『白き鋼』の戦力不足は解消されるのだが、群像はそれをしたくなかったのだ。
『赤城』はさらに群像を追い詰める。
「お父様にお会いしたくない。それがあなたの本心ですね?」
群像は言い返す言葉も出なかった。正直、彼自信も父親に会うのが気まずかった。
『第三次防衛戦』後、翔像を憎んでいた時期もあったが、時が経つにつれて次第に薄れていき、いつしか彼の記憶から忘れ去られていた。
しかし『白き鋼』を結成して間もない頃、『霧の艦隊』の本拠地を見つけた事があり、僧や杏兵から『霧の艦隊』と同盟または『霧の艦娘』を何隻か戦力を分けて貰おうという案が出ていたが、群像が強くその案を拒否したのだ。
いつからか、群像は薄情な父親に頼りたくない、自分は父とは違うというプライドが芽生えていたのだ。それが次第に父親を恐れるようになっていたのだった。
それを『赤城』は全て言い当ててしまった。
「あなたはお父様を恐れている。ですがそれが吹雪さんを苦しめている。あなたはこの事実を理解していますか?」
群像は黙ったままだった。彼女の言う通り、自分の心情で吹雪に負担を掛けていることを群像は理解していた。何より彼女に申し訳無い事をしているのは、吹雪は自分達より同じ艦娘たちと共に戦うはずなのにそれをさせてあげられないことをずっと引きずっている。
その時だった。
「いつまで黙っているのですか?答えなさい!!海原群像!!」
群像がなにも言わずに考えていた偽所で『赤城』が痺れを切らせ、群像に怒鳴った。
「テメー!!黙って聞いてれば言いたい放題言いやがって!!」
杏兵も我慢出来なくなり『赤城』に意見した。
「変態ゴーグルは黙っててください。」
「誰が変態ゴーグルだ!!」
しかし、『加賀』に止められてしまった。すると他の正規空母も騒ぎ始めた。
「てかゴーグルは口出さないでくれる!」
「赤城さんが提督の息子と話してるんだから邪魔しないで!!」
「内の司令官が侮辱されて黙って見てるわけがねーだろ!!」
「てかあんた関係ないから帰っていいわよ!」
「黙れ甲板胸。」
「翔鶴姉こいつ爆撃してもいい?」
「やめなさい瑞鶴。」
杏兵を必死に止める空母たち。彼女たちも『赤城』同様一年半、群像たち『白き鋼』の監視を続けていて『赤城』と同じ答えだったのだ。
その時、群像の携帯が鳴り始め、彼は『赤城』に「すまない」と一言掛け、電話に出た。相手はいおりだが様子がおかしかった。
『群像!横須賀基地に『霧の艦隊』が出現!!吹雪が一人で応戦してる!!』
「一人でか!!」
『それだけではありません。』
今度はいおりに代わって僧が出てきた。
『先程海軍司令部から入電があり、現在横須賀東海域の防護壁にて『深海凄艦』の襲撃を受けています。防護壁を攻撃中のことだそうです。』
「艦の識別は確認しているか。」
『海軍基地で確認が取れているのは、駆逐艦六隻、重巡洋艦六隻、経空母三隻、戦艦三隻の三艦隊です。』
「了解した!すぐ基地に戻る!」
群像は携帯を切り、すぐに杏兵や『赤城』たちに伝えた。
「『霧の艦隊』に『深海凄艦』だって!?」
「今『霧の艦隊』は防護壁内で吹雪と戦闘中、『深海凄艦』は防護壁の外で壁を破壊しているらしい。」
「中も外も敵だらけじゃねーか!おまけに俺らは正規空母に囲まれて説教を受けてる最中だし!万事休すか?」
「いや・・・そうでも無いさ!」
群像は『赤城』の方に振り向き、彼女にあるお願いをした。
「休戦・・・ですか。」
「そうだ。さっき話した通り現在横須賀防護壁は『深海凄艦』の攻撃を受けている。俺達『白き鋼』は、これを迎撃したいが、君の言う通り戦艦クラスを倒せる戦力が今の俺達にはない。」
「それで・・・私達にどうしろと?」
「俺達に力を貸してくれないか!」
群像の一言は正規空母の艦娘たちや杏兵を驚かせた。普段お淑やかな『赤城』も、群像に睨みつけるくらい恐い顔をしていた。彼女は群像が自分の話を聞いていなかったと思ってしまったのだ。
「あなたは・・・私の話を聞いていましたか!!」
「聞いていた。だからこそお願いしている!」
群像は自分の本心を『赤城』に打ち明けた。
「『赤城』君の言う通り俺達は『深海凄艦』との戦いで何度も無茶な戦闘を強いられ、吹雪を大破させてしまったこともあった。それは己れの未熟さと居場所を知りながら親父を避けていた結果が招いたことだ。俺は指揮官として犯してはならない失態をしていたことも熟知している。だからこそ君がさっき言ったことを実行する時だと思う!『白き鋼』と『霧の艦隊』が協力すればこの事態を解決することが出来る!頼む正規空母のみんな!俺達に力を貸してくれ!」
『赤城』は群像の熱意に答えたのかもう一度彼にチャンスを与えようと考えていた。そして彼女はある条件を群像に提供した。
「わかりました。お引き受けしましょう。」
「ありがとう『赤城』。」
「ただし条件があります。もしこの出撃で『深海凄艦』を全て轟沈出来なかった場合、吹雪さんを渡してもらいます。それでよろしいのでしたら私達の力をお貸しします。」
「いや・・・艦娘を無傷で『深海凄艦』の全轟沈だ!それなら条件を呑もう!」
「完全勝利!?」
「出来るのかそんなこと!?」
群像の無謀とも思える発言に『瑞鶴』や杏兵が声を出してしまうくらい全員驚いていた。
「水雷戦隊だけなら難しいかも知れないが、ここには『赤城』たちを含めた正規空母がいる。その時点で俺達の勝利は確定した。」
「満身は・・・禁物ですよ?」
「段取りがうまく行けばな!だからこそ本気でやるぞ!」
群像には何か秘策があるようだが、誰も解らずそのまま横須賀基地に向かった。
神奈川県横須賀市 『海軍横須賀基地 堤防付近』
そのころ吹雪は『霧の艦隊』の水雷戦隊と交戦中。戦況はお互い損傷がなかった。それは吹雪が優勢だと言うことを意味していた。
「なんで一発も当たらないんだ!!」
「いっぱい撃ってるのに!!」
『涼風』と『五月雨』は主砲を撃ち続けたが吹雪には当たらなかった。
さらに海軍の護衛艦が彼女たちの戦闘海域に接近していた。吹雪が安心したその時だった。
「なに・・・。」
上空を見上げると、空母の艦娘が使用している数機の戦闘機が吹雪たちに向かってきた。さらに戦闘機から機銃が発射され、吹雪と『霧の艦隊』の水雷戦隊の間に一直線に描くように弾が飛んできた。まるで吹雪たちの戦いを止めるかのように飛来してきた。
正体は、さっきまで群像と接触していた『赤城』たち正規空母の艦隊が発艦した戦闘機だった。
「みなさん。直ちに戦闘を終了してください。」
彼女たちは吹雪たちと合流し、事情を話した。それを聞いた『摩耶』『那智』も驚いていた。
「『白き鋼』と協力して『深海凄艦』を叩けだ!?」
「そうです。我々『霧の艦隊』は『白き鋼』と協力し、敵『深海凄艦』を撃沈します。指揮は『白き鋼』の司令官『海原群像』さんです。」
「ちょっと待て!なぜそう言う話になったのだ!?」
「事情は後で説明します。今は彼等が待つ堤防へ行きましょう。『白き鋼』と合流します。吹雪さんもよろしいですね。」
「えっ!あっ・・・はい!!」
『赤城』たちに付いていくように彼女たちもすぐに堤防の方に向かった。
到着すると、堤防には武装漁船『ハヤテ』で待機していた僧たちと、堤防で吹雪たちを待っていた群像の姿があった。
「吹雪!後でお説教だ!今は『深海凄艦』をなんとかするぞ!!」
「はい!!」
全員揃ったことを確認した群像から、作戦が説明された。
「これより我々は『霧の艦隊』水雷戦隊並びに空母起動部隊と合同で敵『深海凄艦』を撃沈する!」
「現在敵艦隊は横須賀防護壁を襲撃中、軍が応戦していますが戦況は不利と判断しています。なおこちらには戦艦クラスの艦娘なしで戦闘を開始します。」
「そう言えば『榛名』『霧島』は横須賀に来てないの?私達の情報が正しかったらこっちに来ているはずだけど?」
「彼女たちなら今は陸での極秘任務中らしいですが、正確な場所や任務内容は我々には知らされていません。」
群像と僧が状況を確認している中、いおりは『榛名』『霧島』に応援を要請しようと提案していたが、現在二人は極秘任務のため連絡が取れない状態だった。『赤城』の話によると、二人は『白き鋼』よりも先に横須賀に到着していた。しかし、極秘だったため任務内容は他の艦娘には知らされておらず、無線機も封鎖していた。そのため『榛名』『霧島』の行方はわからないままなのだ。
「なんだ!俺らより先に横須賀に到着してたのか!」
「ですが『蒼き鋼の航海記』通り『榛名』『霧島』は横須賀に来ていたことになりますが。」
「到着が俺らより後の話だけどな!」
僧と杏兵がそんな話をしている中、群像は頭を抱えていた。彼には思い当たるところがあったからだ。
「すまん・・・昨日彼女たちに会ったかも知れない・・・。」
群像の一言で全員驚いていた。
「本当かそれ!!」
「それはまた後で話す。今は『深海凄艦』が先だ。」
群像は、さっきの話を後回しにし、作戦を伝えた。
「空母起動部隊を主力にした空襲作戦を行う。まず水雷戦隊三組は敵戦艦を牽制しつつ重巡、経母、駆逐艦を撃破。『夕張』と『祥鳳』は彼女たちの援護攻撃を頼む!」
「了解・・・」
「了解しました・・・」
二人は不服そうだったが、今は仕方なく群像の指揮に従うことにした。
「戦艦クラス以外の『深海凄艦』を撃破後、空母起動部隊を進行、爆撃機を発進させ空爆と魚雷攻撃で撃沈する。なお『白き鋼』は空母起動部隊の随伴を担当する。」
「なら外洋に出るしかないか。あそこは建物が密集してるからな。大惨事だ!」
「いや、防壁の中で戦闘を行う。」
「敵を中に招き入れるのか!?」
それを聞いて『摩耶』と『加賀』が反論に出た。
「バカかお前!!さっき変態ゴーグルが言ってたの聞いてなかったのかよ!!」
「先程そこの変態ゴーグルは横須賀の海岸近くは建物が密集していると言っていました。つまりそこには民間人も大勢いることになります。そんなところで戦闘するならこの作戦、辞退させていただきます。」
「誰が陸地の近くで戦うなんて言った!」
「お前だろ!!防壁の中で戦闘なんかしたら港町にも被害が出るくらいわかってるだろ!!」
「だがそれは、敵戦艦が陸地の射程内に入ったらの話だ。」
「は?」
「敵を防壁の壁に追い込む。それなら陸地に被害は出ないからな。」
群像は僧に海軍に防護壁の隔壁を開けるよう伝達した。それを受けた横須賀基地は、松永中将不在のまま許可も取らず、隔壁の開閉準備に入った。群像たちもすぐに指定ポイントに向かった。移動中『摩耶』が『榛名』たちのことを聞いてきた。
「おい提督の息子!作戦が終わったら榛名姐さんと霧島姐さんの居場所教えろよ!」
「わかった!約束する!」
群像は横須賀に来ていろんな出来事があった。『北良寛』に父を頼まれ、『赤城』に父のことで説教され、今、父の艦隊と共に戦おうとしている。彼の中で何かが変わろうとしていた。まるで今まで恐れていた『海原翔像』と真っ向から挑む勇気が湧いてくるかのように感じ始めていた。
そんなことを思いながら群像は『深海凄艦』との戦いに挑もうとしていた。そして辺りは既に夕陽の色に染まっていた。
キリシマ
「って!これでおしまいだと!!」
ハルナ
「何か問題があるのか?」
キリシマ
「いろいろ有りすぎだ!!401!貴様平行線世界の我々が出て来ていないではないか!!」
イオナ
「ちゃんと出てきてる。漢字だけど。」
キリシマ
「名前だけだろ!!」
コンゴウ
「何をしている貴様ら。」
キリシマ
「コンゴウ!?」
コンゴウ
「お前たちに401の行動を中止するよう指示を出したはずだが?」
ハルナ
「コンゴウ。401が夢中になるも無理はない。向こう側の千早群像が『霧の艦隊』と手を組始めた。」
コンゴウ
「なんだと?」
イオナ
「お願いコンゴウ。このまま監視を続けさせて。」
コンゴウ
「なるほど・・・お前たちがそこまで言うなら興味深い。私も同席させてもらう。」
イオナ
「ありがとうコンゴウ。」
キリシマ
「では諸君!向こう側の世界の活躍を期待してくれ!」
ハルナ
「誰としゃべっている?」