魔法少女リリカルなのは!?「時空管理局セクハラ相談部隊」 作:ヘルカイザー
遅くて申し訳ないです。
ではよろしくお願いします。
「ぐっ!? あ゛あ゛っ!? ……アがぁぁぁぁアアアアアア!? くっソ……頼ム……収まレ……収マッテくれぇぇぇエエエエエエエエエえええええええ!? 」
「何なんや……これ……私の所為なんか? 私がやり過ぎた所為で…………」
私、リインフォースは今……あの時と同じ光景を見ている。ナマエさんがナマエさんがではなくなったように変わり、まるで自分の中の何かを抑え込むように訓練所の中央で左手を右手で抑えている。息は激しく切れ、今にも倒れそうな程ナマエさんは衰弱しているように見えた。はやてちゃんは目の前の光景に声も出せずにただ立ち尽くしている。しかしそれは私達も同じだ。訓練所の中にはいるが、巻き込まれないように距離を取っている。一体誰がこの状況で驚かずに動けるのか。今、訓練所は黒い炎で焼き尽くされている。しかもこの炎は消える事がない。いつまでも対象が燃えてなくなるまで残り続けているのだ。
事の始まりはエスカレートした2人の喧嘩が本格的に始まった事が原因だ。訓練所へと移動し、2人は模擬戦と呼ぶにはあまりにも激しい戦闘を始めてしまった。確かに最初ははやてちゃんも少しの魔法を放つだけで済ませていたのだがあの雰囲気でそれがエスカレートしないわけがない。砲撃に広域魔法とはやてちゃんはナマエさんに怪我をさせてもおかしくないレベルの魔法を放ち始め、流石に私達も止めに入ろうとしたが、ナマエさんの暴れっぷりを見ていたら全員の動きが止まった。ナマエさんの動きはもう人間のそれではないのだ。リミッターがかかっているとはいえ、はやてちゃんの砲撃を左手だけで弾き、そのまま黒い炎に変えてはやてちゃんへとぶん投げる。はやてちゃんも防御魔法を展開するが、それを黒い炎は当たった端から燃やし尽くしていく。正直なところ、防御をこんなにも容易く燃やし尽くす魔法を私はおろか、他のみんなも見た事がないようだった。しかも時間が経てば経つほど、ナマエさんが戦えば戦かうほど、ナマエさんの動きはキレを増し、その身を包み込む邪悪なオーラが大きくなっていく。同時にナマエさんがナマエさんではなくなるように見えた。体力的にもナマエさんの方が辛そうである。
「ハァ……はぁ……はァ……我……命を奪ウ者」
「来よ、白銀の風、天よりそそぐ矢羽となれ」
「インフェルノ・ゲヘナ!!! 」
「フレースヴェルグ!!! 」
ナマエさんが大きな炎の塊を放とうとするのに対してはやてちゃんは数で攻める気のようだ。だが本来、はやてちゃんのあの魔法は味方に向けて放っていいような代物ではない。だから私はどうしても分からなかった。はやてちゃんがどうしてもあそこまでするのかが。しかしそれは私だけの思いではない筈だ。他のみんなも同じ気持ちだろう。はやてちゃんは嫌いと言うだけでここまでの事はしない。そんな小さな人間ではない。
「ハァ……ハァ……はぁ……ぐっウ!? 」
「はぁ……はぁ……はぁ……つ、辛そうやな? カッコつけた割には情けない男やな? 」
「ふ、フふ……オマエの減ラズ口は……イツマデ続クンダ? うっ!? (おかしい……なんだ……今日はあの日じゃない筈だぞ。なのに何故こんなに俺の中の馬鹿ドラゴンが暴れる……たぎってるんだ……マズイ。このままじゃ…………)性格ガ悪いプラス暴力的トキタモンダ。本当、救イようがナイナ? 」
「……あんたの所為やないの…………」
「ナ二? 」
「あんたが私の気持ちを踏み躙ったんやないか!? 私かてこんな事したい訳ないやろ!? 好きやった……あんたの事……本気で好きになってたんや!? なのに……なのになんでリインにあんな事言ったや……どうして急に変わったんや……どうしてなんや!? どうして……」
「え!? はやてちゃん!? それはダメです!? 」
突然はやてちゃんは詠唱を始めた。だがその魔法は今のナマエさんに当てるには少し大き過ぎる魔法だ。広域魔法……それも空間殲滅型の魔法。今はやてちゃんは正気じゃない。よく見ればはやてちゃんの顔は涙でぐちゃぐちゃになっている。どうしてそんな顔をしているのか。一体今、はやてちゃんの中で何がそうさせているのか。
「遠き地にて、闇に沈め……デアボリック・エミッション!!! あ゛あ゛ぁぁぁぁぁあああああああああああ!!! 」
「あれはマズイ!? っ!? シグナム!? どうして止めるの!? 」
「落ち着けテスタロッサ! 見ろ」
「え? ……っ!? 」
ナマエさんを助けようと動こうとしたフェイトさんをシグナムが止める。その行動に誰もが疑問を持った。しかしシグナムが指を指した方向、つまりナマエさんのいる方を見た瞬間、それは理解できた。ナマエさんの周りには黒い炎が集まり始めていたのだ。周りの飛び散って消えずに残っている炎が全てナマエさんの所へ集まり、その身体に纏うように収束し始める。そしてまるで身体全体が燃えているようになった時、はやてちゃんの魔法が炸裂した。
「……あ、ああ……そんな……し、死んでないやろうか……っ!? 」
「ハァ……ハァ……うぐっ!? 」
ナマエさんは凌いでいた。しかし様子がおかしい。左手抱え込み、その場で倒れこみながら悶えている。するとその瞬間、ナマエさんを中心に黒い炎が訓練所を包み込んだ。あまりにも激しいその炎の所為で誰もナマエさんに近づくことができない。
「ぐっ!? あ゛あ゛っ!?……アがぁぁぁぁアアアアアア!? くっソ……頼ム……収まレ……収マッテくれぇぇぇエエエエエエエエエえええええええ!? 」
「何なんや……これ……私の所為なんか? 私がやり過ぎた所為で…………」
そしてこうなってしまった。一体どうすればいいか私達は分からない。動けない。このままではナマエさんがどうにかなってしまう。私は胸が痛かった。ズキズキと、じわじわと私を痛みが蝕む。やはり私はまだ捨て切れていない。ナマエさんへの恋心を。一度は捨てたと思い込んでいた筈のナマエさんへの気持ち。するとその時だった。倒れこむナマエさんの前まで誰かが走り込んできた。最初は誰か分からなかったが、見覚えのある人だった。しかしよく見るとそれはよく知る人物どころかさっき通信で顔を見たばかりの人間、クロノ提督だった。服を構わず焦がし、ナマエさんの元へとたどり着く。
「ウッ……あ゛っ……ク、ロノ……逃げろ……いや、殺シテ……くれ…………」
「はぁ……はぁ……嫌な予感がして来てみれば……はぁ……はぁ……この有り様か? 」
「頼ム……クロノ……殺シテ……くれ……俺は……暴走シテ……誰かを……ナカマを傷ツケルのは……イヤだ。ダカラ……殺シテくれ…………」
「……そうだな。君の頼みなら……僕の手で終わらせてやる」
「ス……まん」
サーチャーを飛ばしてある訓練所では今のクロノ提督の声もナマエさんの声もハッキリと聞こえている。だからこそここにいる誰もが何故、どうして、その疑問を拭うことができない。そして慌ててクロノ提督を止めに行こうとする。何故殺す必要がある。何故死ななければならない。だが私達よりもはやてちゃんの方が動くのが速かった。少し火傷を負いながらもナマエさんのいる所へと走る。
「止めて!? 」
「はやて、そこを退くんだ」
「どうして殺す必要があるんや!? そないな事する必要ない!? 」
「はやて、気持ちは分かるが……何も知らないのなら口を出すな。時間がない」
「っ!? クロノ……君? 」
はやてちゃんがクロノ提督を止めている間に私達もその場に降り立つ。だがクロノ提督の雰囲気がいつもと違った。止めているはやてちゃんに対して本気で怒っているようだった。
「さぁ……はやて」
「嫌や! お願いや!? 人の命はそんなに軽いもんやない……」
「そんな事当たり前だ!!! 」
『っ!? 』
そこにいる全員がクロノ提督の怒鳴り声に驚く。普段クロノ提督がここまで怒鳴る事はない。だから全員が喋る事を止め、クロノ提督の話を聞く。確かに私達は何も知らないのだ。ナマエさんについて、クロノ提督との関係について。
「いいか? 僕の親友の命は絶対に軽くなどない。それこそ、彼は何人の命を自分を犠牲にして救ったか分からない。彼を救えど、殺す事などあって言い訳がない!!! だからそこを退け……退くんだ!!! 」
クロノ提督が固まったはやてちゃんを退かし、ナマエさんの側でしゃがむ。そして何やら魔法陣を展開した。しかしそれは見た事もない形をした魔法陣だ。ベルカでも、ミッドチルダ式でもない。星の形をし、その中央にはナマエさんの手の甲に刻まれた物と同じマークが現れている。
「ウッ……あ…………」
「君は相変わらず馬鹿だな。言った筈だぞ? 君は絶対に殺させないと。後でユーノに感謝しておけよ? この術式は、ユーノが見つけたんだからな? まぁ〜特殊な物だから一回きりだが」
「フ、ふフふ……相変わらずなのは……どっちだよ。ここで殺しておけば……面倒がない、だろうが」
「君の存在を面倒だと思った事は……なくはない、別の意味でだが。でも僕は失いたくない。君と言う友人を」
「ありがと……よ…………」
ナマエさんの顔色は段々と良くなり、元の状態へと戻った。そして気絶したのか目を瞑ったまま、動かない。クロノ提督はその場から立ち上がるとはやてちゃんの方を見た。
「はやて、ハッキリ言っておこう。彼を好きになっていたなら尚更だ。リインも聞いておいてくれ」
「え? 」
「彼は……言い方は悪いが、死刑を保留になっている身だ」
「なんやて…………」
「死刑ってどういう……事ですか? 」
「勿論悪い事した訳じゃない。それどころか……僕の命。いや……下手をすればミッドの全ての人の命を救った男だ」
私達は意味が分からなかった。ミッドチルダの全ての人の命を救った……なら何故死刑などならなければならないのか。そもそも、それだけの功績を挙げたのなら何故記録がないのか。何故誰も名前一つ知らないのか。
「どうしてなんや? 管理局で死刑やなんてあり得へん。よっぽどの事がない限りそんな事…………」
「そのよっぽどの事があるんだよ。だが彼を死刑にしたいのは管理局じゃない。聖王教会だ」
「え……そ、そんな事ある訳ないやんか!? そ、それじゃカリムが彼を殺そうと考えてるんか!? 」
「いや、彼女は……まぁ、派閥ではあるだが「止めろ!? 」はぁ……タフだな君は……分かったここまでにしよう。だが今回の件、一体どういう事か説明してほしい」
「腹が立った。それじゃ不満か? 」
「はぁ……君はもう少し言葉を選べよ……まぁ〜いい。君にしては珍しい事もある。さぁ〜医務室に行くぞ? 」
クロノ提督はナマエさんの手を自分の肩に回し、医務室へと向かう。しかしみんな今起こった事による驚きとナマエさんの信じられない真実に動けないでいた。だから今恐ろしく雰囲気が悪い。落ち込み気味とと言うか、誰もが言葉を発しない。特にはやてちゃんだ。俯きながらその場に座り込みおそらくだが泣いている。私にしたってそうだ。無意識に涙が出ていた。自分ではどうする事もできない。止まらないのだ。
「クロノ、もういい。大丈夫だ」
「大丈夫って、フラフラだぞ? お、おい!? どこ行くんだ!? 」
「ちょっと……野暮用だ。この雰囲気は我慢ならん。フフ、レディに似合うのは泣き顔じゃない……笑顔だ。いや、今回に限っては…………」
「うっ、ひぐっ……どないしたんや? 早く医務室に行かな? 」
「泣くなよ、たかだか俺ごときの事で。お前にはこういう顔が一番似合うってもんだ! 」
「へ? ……っ!? な、なななな……い、いやぁぁぁああああああああああああああああああ!? 」
悲鳴……はやてちゃんは顔を真っ赤にして自分の身体を抱えるように隠す。いつ取ったのかはやてちゃんの服はナマエさんに全て剥ぎ取られていたのだ。つまりは裸。下着一つさえ残っていない。あまりの事にみんなもつい、顔を赤くする。勿論私もだ。
「な、何するんや!? 私は女やで!? と言うか服返して!? 」
「フ、それでいい」
「言い訳あるか!? どこの世界に落ち込んでる女をひん剥く男がおるんや!? 最低や!? 変態!? 女の敵!? ……うっ……うっ……ひぐっ……でも……やっぱり好きやぁ…………」
はやてちゃんは涙目になりながら顔をほんのりと赤くし、ナマエさんを見つめる。私は驚いた。私はこんなに女の子らしい顔をするはやてちゃんを見た事がない。勿論はやてちゃんは可愛いと思うし、しっかりと女の子だ。でもここまで誰かに恋をしていると分かる顔は初めて見るのだ。するとナマエさんは何かをやり遂げたような顔をし、その場を去ろうとする。
「さて、行くかな。あ! 言い忘れてた! 素敵な身体の相談者さん? 油断はいけないな?忘れるな? どんな状況であろうと勝負は勝負。俺は全力だ! フフフ、ではな? 」
「……何を言ってるの? なのはの服はまだ……嘘…………」
「え? 何フェイトちゃん? 私の事そんな顔で見て……一体どうし……へ!? きゃぁぁあああああああああああああ!? なんで私までぇぇぇ…………」
ナマエさんは私達に背を向けながら服をなのはさんの方へと放る。本当にいつの間に取ったのか、なのはさんもはやてちゃん同様に服を全て剥ぎ取られていた。そしてフェイトさんは「やられた」といい、うなだれている。意味が分からなかったが、ここで私はある事に気づいた。私は今変な感情を抱いている。ナマエさんがはやてちゃん達にセクハラをした事で物凄くムカムカするのだ。
今思えば私は一度もナマエさんにセクハラをされた記憶がない。それは単純にナマエさんが私に興味がないという事なのではないのだろうか。私はそう思い、少し悲しくなった。でもあの時私を拒絶したナマエさんのあの言葉が限りなく本心に近いのではないか、私が嫌いなのはそれが何よりの証明ではないか。そればかりが私の思考を埋め尽くす。その為、私は訓練所から出て行くナマエさんから目をそらす事が出来なかったのだった。
次回もよろしくお願いします。