本当は昨日更新する筈だったんですよ……。
爆発が起こった。
それはもう凄まじい威力の爆発で、原作知識を有する俺は、それがルビカンテの自爆だと一目で気づいた。
原作ではその爆発で死ぬ人はいない。姐さんだって、原作とは違い、左腕も健在だ。だから恐らく、原作よりも軽いダメージで済ませたのだろう。
安心…とまではいかないが、それでも信じて俺は走り出した。
コウタロウside out
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ボルスside
わたしは、あの爆発から落ちのびて来た。いくら焼却部隊で火耐性を上げる儀式を受けていても、流石に無傷とは言えなかった。
「…また…皆で……一緒にご飯食べたいな……」
クロメちゃんやウェイブくんといったイェーガーズの皆。皆、こんなわたしに優しくしてくれて、とても嬉しかった。隊長もそうだ。なんだかんだで部下のことを思いやり、私に勇気をくれた。
イェーガーズは、わたしにとって、第二の家族だ。その家族達と、またテーブルを囲んで、わたしが作った料理を食べる。
今となっては、もう叶わない。
「……グスッ」
帝具も失った今、ただぼんやりと歩いていると、小さな女の子の泣き声が聴こえた。
「ややっ!これは大変!どうしたのきみ!」
小さい子と話すため、さっきまでの雰囲気を無理矢理に明るくする。
「うわあああああお化けぇぇえ‼︎」
ははっ、こりゃ参ったな。
まあ、このマスクをつけているから仕方ないか。
「って、ケガしてるじゃないか。ちょっと大人しくしててね」
女の子の膝が擦り剥けていたから、軽く消毒して包帯を取り出し巻きつける。
「…ありがとうっ!おじさん‼︎」
よかった。もう最初みたいに怯えられず、いつのまにか泣き止んでいた。
(……元気にしてるかな)
わたしの宝物の家族。
美しく優しい妻と、目に入れても痛くない愛娘。この任務から帰ったら、精一杯可愛がってあげよう。
「…でも、おじさんが燃やしたところはね……」
女の子は、わたしの首に手を回す。
「もう治らないんだ」
「……え?」
殺気が一本の針に集中し、私の中のなにかが切れる。
「今のはね、貴方が燃やした村の子供よ。革命軍に加担した疑いってことでね。まとめて燃やしてるから、一人一人のことなんて覚えていないんだろうけどさ…」
そう言うと、女の子は見たこともない女性へと変化し、森に向かって走り去って行った。
分かってた…。
いつか…報いを受ける日が来るって……。
でも…それでも……。
「かえ…らなくちゃ……」
呂律が回らなくなってる。
「ふた…りとも……まっ…てるから」
走馬灯かな。
わたしの妻と娘が、わたしの帰りを待っている。
涙が溢れる。
もう、遅いんだ。
ごめん、二人とも。
「貴方は、死なせませんよ」
ボルスside out
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コウタロウside
「起きてくださいボルスさん」
返答はない。まだ眠っている。
俺はボルスを助けた。
これが革命軍やボスに知られると、処分は想像もできないくらいに重いだろうが、そんなことは気にしない。
この人は良い人だ。善人ではないにしろ、良い人だ。
いくらこの人が俺個人を襲っても、俺はこの人を赦す。
これは俺の都合だ。
ウェイブや、今こうして眠っているボルスは、そんなのお構いなしに襲ってくる。
それでも、俺は自分の都合を押し付ける。
だって、それが最善だと信じているから。
俺が望むのは、大切な人達が死なないこと。それと、ハッピーエンドだ。これだけは譲れない。原作を読んで、アニメを見て、悲しい思いをした。そして今、その未来を変える力がある。
なら、答えは決まっている。
「ん……、コウタロウ…くん?」
「お久しぶりです。ボルスさん」
ボルスが目を覚ました。
「な、なんで君がここに居るの⁉︎というか、わたし、死んだはずじゃ…」
「俺が助けたんですよ。そして、貴方はちゃんと生きてます!」
混乱気味のボルス。
マスクで顔は分からなくても、それだけは分かった。
「ボルスさん」
俺は切り株に腰掛けたまま、ボルスに話しかける。
「……なに、かな?」
敵であるナイトレイドとの戦場で、俺と遭遇するのを不自然と感じたボルスは、少し低めのトーンで応えた。
「貴方が“死ぬ”、と感じた時、家族を思い出しましたよね」
「……」
「貴方はこれから、帝国を出て、東洋の国に亡命してください」
「…どうして?」
「貴方は死ぬべきではないからです」
「……」
「今、貴方が死んだら、一体誰が家族を守るんです?」
「っ⁉︎」
この言葉に、ボルスは動揺する。
ボルスが死ぬと、墓参りに来ていた妻と娘が、シュラ率いるワイルドハントに暴力の限りを尽くされ殺される。
確かに、俺が助けに行くことも可能だ。
しかし、本当に助けに行くべきなのは、ちゃんと守ってやるべきなのは、このボルスだ。
「貴方はイェーガーズを脱退、帝国から亡命。争いとは無縁の生活を送るんだ。拒否権はありません。二人の命が惜しかったら、俺が指定する港に向かってください」
「っ!!」
二人の命、と聞いてボルスは身構える。
「貴方の家族は、俺が昨日誘拐しました。今はミラル港で待機させています」
俺が昨日、姐さん達の水着を偲んで帝都に向かったのはこのためだ。
「…コウタロウくん」
「なんですか?」
「……ありがとう」
てっきり、罵詈雑言の嵐でもくらうと予想していた俺にとって、その一言は、首をかしげるものだった。
「コウタロウくんは、こうもしないと、わたしがイェーガーズを捨てきれないと思ったから、こんな事をしたんだよね?わたしには分かるよ」
「……」
俺は、何も言えない。
「ミラル港、だったよね?ほんとに……本当にありがとう‼︎」
「……どう、いたしまして」
素っ気なく応える。
俺の計画はどうやら、お見通しのようだった。
「もちろん、亡命させてもらうよ。イェーガーズは……心惜しいけど、脱退する。まぁ、逃げる形になるんだけどね。今度はさ、軍隊なんか入らず、三人でのんびり暮らすよ」
「えぇ。その方がいいと思います」
「……もし、革命が始まり、帝国が豊かに、皆が笑って暮らせるようになったら、また戻ってくるよ」
「本当ですか⁉︎」
「うん。ウチの娘が、君のことを大好きみたいだったからね……。この間も、仕事場に連れてって駄々こねてさ。君には、責任を取って貰わなくちゃ。」
「は、はは」
弱ったなぁ。
けど……これでよかったんだ。やっぱりボルスさんは良い人なんだ。この人を殺すなんて、惜し過ぎる。
「待ってます。俺が、必ず革命を成功させて、要注意リストから貴方を消して、貴方達を迎え入れます。それまでは……」
いつのまにか、俺の目からも涙が溢れる。
「どうか、お元気でっ‼︎」
「うん‼︎しつこいけど、助けてくれて…本当にありがとう‼︎」
ガッチリと握手を交わし、そして抱き合う。俺たちの友情。
もう、ボルスはイェーガーズではない。なら、このくらい良いだろう。
「では、お元気で‼︎あと、娘さんによろしくお伝えください」
「うん!コウタロウくんも元気でね‼︎」
別れを告げると、ボルスはミラル港へと駆け出して行った。
「……ふぅ。ん、あれはラバか」
少し遠くに、お馴染みの緑髪が見える。今の詳しい戦況を聞くため、俺はラバの元へと走り出した。
ボルスさん生存‼︎
そして、ワイルドハントから妻と娘を防衛成功‼︎
さて、次回はどうやらチェルシーが……