アギトが蹴る!   作:AGITΩ(仮)

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ギリギリセーフ‼︎


第49話 再入隊

エスデスが俺達の前に現れてから数十分後、辺りには、メズとシュテンだった肉塊とどす黒い血が散らばっていた。どこからどう見ても地獄だ。あんな惨い殺し方をしておきながら、本人は息ひとつ切れていない。エスデスは、地面に転がっている肉塊をヒールで踏みつけながらと、ゆっくりと俺の方へ向かって来る。

 

「コウタロウ……」

 

エスデスがゆっくりと俺を抱き締める。全身が悲鳴を上げてるってのに、この人は全力で抱き締めてくるから嬉しくない。

俺が苦しそうな顔をすると、我に帰ったようで、力を緩める。

 

「……助けていただいて、ありがとうございました」

 

「久しぶりだな…。聞きたいことは多々あるが、話は後だ。急いでランに治療させる」

 

そう言うと、俺をお姫様抱っこして歩き出す。俺を医務室へ運ぶ時の顔は、いつもの凛々しさなんて微塵もなくて、荒い息を吐きながら頬を赤らめていた。

 

 

 

♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 

「改めて、久しぶりだなコウタロウ。……フェイクマウンテンではよくも逃げてくれたなぁ」

 

ランの治療が終わり、今エスデスは、俺が横たわるベッドに腰掛けている。

ランはエスデスに抱かれた俺を見て唖然としていたが、その後の雑談はなかなか楽しくて、緊迫した雰囲気の中でのオアシスとなった。

というか、今はそれどころじゃない。

 

「もう二度と離さないぞ。このバカめ…」

 

てっきり恨み言と共にお仕置きが飛んでくると思っていたが、それどころか、さっきよりもきつく抱き締めてきた。

 

「く、苦しいです」

 

「私はまだ許していないのだからな?罰として、しばらくはこのままだ…」

 

苦しいし、呼吸もあまり楽じゃないけれど、いい匂いだ……。なぜこうも女の人って、いい匂いがするんだろう。というか、あの残忍な姿を見ていても、このエスデスは、言いたくないがもの凄く可愛い。氷使いのくせに、人肌は温もりを感じる。

不思議だ…。体は苦しいのに、なぜか心地よく感じてしまっている自分がいる。俺は嬉しいのだろうか?この女は敵だと言うのに……。

 

 

「…ふぅ。やはりコウタロウを抱くと落ち着く」

 

「面と向かって言わないでくださいよ…」

 

「ふふ……。照れたコウタロウも大好きだ」

 

やっと離れたかと思うと、俺をからかい出す。ドSの化身なだけはある。

 

「良かったんですか?あの人達を殺しちゃっても」

 

これ以上俺をからかわせないためにも、話題を変える必要があったため、羅刹四鬼の話題を持ち出す。所属は違えども、同じ護衛任務にあたっている仲間だ。そんな仲間を二人も殺しては流石にまずいはずだが…。

 

「ああ、心配するな。向こうから仕掛けて来たんだ。『私たち』イェーガーズにな」

 

「……は?」

 

やたら『私たち』にアクセントを置いてきたんだけど…。というか、そんな理由で本当に大丈夫なのか?

 

「忘れたとは言わせんぞ。最初に会った時、お前をイェーガーズの補欠メンバーに任命すると言った筈だ」

 

「…ええ、もちろん覚えます」

 

「まあ、一番はお前が傷つけられたからに決まってるが」

 

「……」

 

だからそんなくさい台詞吐かないで欲しい。反応に困って、何て言えばいいのか分からない。なんなんだ?この人は俺を全力で堕としにかかってるのか?

それに加え、もの凄いドヤ顔で伏せている俺の顔を覗き込んでくる。ち、畜生…‼︎

 

「こんな時だが、ボルスがイェーガーズを脱退した」

 

さっきまでの雰囲気とは打って変わり、急に真剣な表情でエスデスは話し出した。

 

「…本当ですか?」

 

ま、させたのは俺だが、そんなことを暴露する訳もない。初耳の演技をする。

 

「ああ。それにクロメの定具の骸人形も全滅した。つまり、イェーガーズは戦力を大幅に失ってしまったというわけだ」

 

犯人は全部俺です、なんて改めてだけど言えるわけもない。

 

「それは大変ですね」

 

「このキョロクでは、ボリックという男の護衛任務に就いていてな。当然お前は、私と同じ範囲内だ。……そんな訳で、これからはずっと一緒だ」

 

顔を真っ赤に染めたエスデスが、俺の顎を上げて、唇を近づけようとした瞬間、ドアが勢いよく開かれた。

 

「コウタロウが見つかったって本当ですか⁉︎」

 

セリュー、ウェイブ、ランの順に医務室へと入って来る。皆、驚きの顔や嬉しそうな顔、果ては恨めしい顔で、さまざまだ。

 

「コウタロウ‼︎よくもあん時は逃げてくれたな⁉︎お前のせいで隊長の…」

 

ウェイブが最後まで言うのを待たず、エスデスがその顔を蹴り飛ばす。

凄まじい音を立てて周りの器具を巻き込んで壁に激突するウェイブ。

 

「……がはっ…。な、何するんですか隊長⁉︎」

 

「黙れ‼︎あと少しで完璧だったのに……。ウェイブ、この任務が終わったら覚えておけよ?」

 

「ヒィッ⁉︎何で俺だけ⁉︎」

 

やはりイェーガーズもイェーガーズだ。エスデスはいい人…なんてことは言えないが、ウェイブも、ランも皆俺を仲間として心配してくれている。多少の罪悪感はあれど、あくまで俺はナイトレイド。そこを忘れちゃいけない。

それにしても、どうやらエスデスと共に護衛任務か。標的を守らなきゃいけないだなんて、とんだ皮肉だ。それでもチャンスはあると思っていたが、どうやら側にはエスデスがいて、離れられないらしい。

 

まいったな…。

 

 

 

 

 

 

 






というわけで、イェーガーズへと再入隊したコウタロウ。
これ逃げられんのかな……


アンケートの締め切りは今月末までとします。皆様、ご協力よろしくお願いします‼︎
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