アギトが蹴る!   作:AGITΩ(仮)

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明けましておめでとうございます!お待たせしました!

さあ、今回はちょっと激しいかもです…


第53話 終わり

「帝具人間に殿を務めさせておけばいいもの…人間であるお前が残るとはな。馬鹿なのか、或いは作戦のうちなのか知らんが、どっちにしろ生きて帰れるとは思うなよ?」

 

『タダで帰れるなんて思ってない。けど、帰らなきゃいけない』

 

俺の言葉をエスデスが鼻で笑ったのを最後に、辺りの空気は静寂に包まれる。しばらく向かい合った後、エスデスはレイピアを構え、その先端に氷のコーティングを施工した。それと同時に、先程の静寂がまるで嘘かのような殺気を放つ。覚悟はしていたが、改めて気を引き締めないと瞬殺されるのが分かった。

俺は右腰のスイッチを叩き、フレイムセイバーを取り出す。この大聖堂内を漂うひんやりとした空気が、俺の周囲だけ灼熱の熱気を伴う。エスデスと同じように、俺もフレイムセイバーに炎を纏わせる。

皆がこの大聖堂周辺から完全離脱するまでの時間稼ぎ。10分、いや5分でいい。そしたらトルネイダーで俺も逃げればいい。

 

幸いにも、彼女のレイピアでは俺の身体を斬ることができないのが唯一の救いだ。だから、俺がエスデスに勝つ可能性が最も高いのはとにかく攻める攻撃。

深呼吸。そして集中。

居合いの構えの一撃に、重く気張った緊張感がこびりつく。

 

エスデスは白い息を吐くのを止めると、一瞬にして俺の目の前へと距離を詰めた。そのままレイピアの先端を俺の顔へと押し付けるように動かす。それをギリギリで躱し、俺はエスデスの首めがけて一気に全力で剣を振り降ろす。

 

手応えは、無かった。

エスデスはまるで俺の剣の軌道が分かっているかのように、首元へと向かってきた剣を、身体を仰け反らすことで躱していたからだ。

 

「私の剣がお前に通らんことくらい、分かっていた決まっているだろう?」

 

全てを凍らせるような、冷たいを通り越した痛い声で、エスデスは俺の耳元で囁いた。

剣を握る振りきった右腕を掴まれ、捻り倒される。慌てて押しのけようとするが、捻りを巧く利用されて身動きひとつ取れない。鋭く尖ったヒールで背中を踏みつけられ、俺からは完全に優位性が消え失せた。

 

「剣が通らんほどの鎧ならどうするか…答えは、こうだ!」

 

エスデスがそう言った途端、右肩に激痛が駆け巡った。

 

『うわああああああああああああ!!!』

 

声が掠れるほど叫ぶ。

絶える寸前の息でその右肩を見ると、歪な形に折れ曲がっていた。恐らく関節の骨が粉砕している。それを見て、痛みと恐怖が心の奥底まで染みていくのを感じた。

 

『ハァ…ハァ…ッ!?』

 

今度は声すら出なかった。

右肩の痛みで動けないのをいいことに、エスデスの攻めは脚にも及んだ。人の頭の2倍はありそうな氷塊を創りだし、そのまま膝、足首といった関節部分を主に繰り返しぶつける。意識を失わないように、歯を血が滲むほど食い縛る。聞こえてくるのは、骨が割れる音と、エスデスが数える数字。

これがエスデスの本当の恐ろしさ。訓練の時とは比べ物にならないほどの強さ。残虐さ。

しかし、まだ諦めたわけではない。絶対にチャンスが来る、と心に言い聞かせて耐え抜いた。

 

「…これで50」

 

エスデスが一区切りつけた瞬間を狙い、マシントルネイダーをスライダーモードの状態で呼び出す。エスデスめがけて体当たりさせるためだ。

 

「まったく、今度は何だ。まだ半分もしてないのに」

 

当然エスデスは後方に大きく飛び、彼女にとっては未確認の物体からかなり距離を取る。

 

『くっ…うおおおおおおおお!!!』

 

本当に、最後の一滴までの力を振り絞って、迎えに来た愛車のシートへともたれかかる。この瞬間、搭載者を空気抵抗から守るオルタバリアフィールドが発生する。これでもう余程のことがない限り落ちることはない。

もう十分時間を稼いだはずだ。俺もこの大聖堂から脱出するため、トルネイダーを急発進させる。

 

離れたエスデスが何か叫ぶが、エンジン音で聞き取れない。もう、そんなものどうでも良かった。

ただ生きてる喜びすらも、エスデスへの恐怖感で押しつぶされそうになっていた。

最後の力を使いきった今では、痛覚すらなかった。目が涙で溢れる。

 

 

大聖堂を脱出して二十分は経った。

恐らく皆は帝都のある西へ脱出しただろうが、俺はとりあえず北へと向かっていた。同じ方向へ逃げると、追っ手が他のメンバーに標的を変える可能性があるからだ。この時代にバイクより速い乗り物なんて存在しない。だから、俺に標的をつけたまま全然関係のない方へ行き、皆がアジトに戻る頃に合わせて追っ手を撒いて俺も戻るつもりだ。

 

 

高度は高めを維持している。二十分も走り続けているのだから、追跡者なんているはずもない。今は、深い森を見下ろしながら渓谷へと向かっている。いや、滝でも湖でも水があって一息つけるならどこでもよかった。

 

エスデスにやられた痛みはもう感じることすらできない。ただ、動かないだけ。相変わらずシートにうつ伏せでもたれかかる体勢だが、まるでベッドの上のようだ。

 

『…あそこでいいかな』

 

岩陰で身も隠せそうなハクロウ河の上流を見つけた。ちょうどいい、あそこの下流は帝都にも続いているから帰る時は楽だ。でも、帰ると絶対皆に怒られるから、傷がある程度治ってからアジトに帰ろうかな。それまでは近くの村にでもお世話になろう。

 

 

 

 

 

「それで逃げたつもりか?」

 

背後からの声で、瞬間的に体から血の気が引いていくのが分かった。それと同時に、再度最高速度で発進させる。

何故エスデスがここに居る?マシントルネイダーに追いつける訳がないのに。最高速度で一気に、ただひたすらに走りだす。

 

「諦めろ。“生きて帰さん”と言ったはずだ」

 

エスデスは、特級危険種のドラゴンに着けた首輪を、鎖のリードで思いきり引く。主の命令で刺激されたドラゴンが必死に後を追う。速度はやや俺の方が速かったが、生きた心地がしなかった。

 

「ヴァイスシュナーベル」

 

それでもただ逃げることしかできない俺に、無数の氷剣が降り注いだ。激しい爆発。トルネイダーごと垂直に墜ちていく俺を、急流の河が大きく口を開けて待っていた。

あと少し…いや、最初から無理だったのかもしれない。けど、ここで死ぬことにあまり後悔はなかった。シェーレやアニキ、チェルシーや他の人達も助けれたし、その影響でこれから死ぬ筈のメンバーが助かる可能性もある。俺が転生してきた目標はだいたい達成できたはずだ。だけど、贅沢を言うのならば、もっと皆と一緒に過ごしたかった。ラバと馬鹿やったり、アカメとスーさんと一緒に料理したり、タツミとマインのイチャつきを冷やかしたり、シェーレとお話ししたり、ボスの駄洒落を聞いたり、姐さんとチェルシーをもっと見ていたかったり。

けど、それは叶わなかった。水面に叩きつけられた痛みで、俺は完全に意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイトレイド残り「9」人

 

 

 

 





サブタイが終わりってなるけど、物語はまだ終わらないよ!
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