アギトが蹴る!   作:AGITΩ(仮)

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お久しぶりでございます!

アカメが斬る!最新刊の14巻がウチの近所のツタヤでは今日が入荷日でした。田舎って本当不便でござる…


第55話 新たな生活

「君が“ヒカリ”くんか。あいつから話は聞いてると思うけど、私はオスカー。今日からよろしく」

 

目の前の青年の表情は暗いままだが、私を少し疑った表情で頷いた。

 

「…ヒカリ、です。よろしくお願いします」

 

彼のぎこちない挨拶で気まずくなるが、まあ仕方ない。いずれこの気まずさに慣れるのが先か、それとも良い意味で私に慣れるのかは分からない。

それじゃあ行こうか、と彼の肩を軽く叩く。私だって不安はある。しかし私も覚悟を決めている。

 

 

これから私は、この『記憶を失った』青年と二人で暮らしていくことになるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

私の弟、もとい小さな病院の医者は、今から一ヶ月ほど前にこの青年と出会った。搬送された時は、意識は無くそれはもう酷い怪我を負っていたらしい。

意識が回復したのは搬送されてから約二週間ほどで、その時にはもうほとんどの怪我が治っていて驚いたらしく、リハビリも数日で済んだとのこと。

ただ、問題は記憶が無かったということだ。

自分の名前、出身地、なぜあんな酷い怪我をしていたのか、所謂『今までの思い出』を忘れていた。しかし、意識を取り戻して数日は言葉さえ忘れていて、本人はパニック状態に陥っていたらしい。それから言葉を思い出し、日常生活が送れるまでは回復したから幸いなのか。

 

弟曰く、記憶全般を忘れる記憶喪失と部分的に忘れる記憶喪失は種類が別らしい。つまり、ヒカリくんは最初は前者の記憶喪失だったが、今は後者の記憶喪失の症状になっているということだ。

彼が記憶喪失になった原因は、最初は怪我の酷さから何か強い衝撃だと思った。しかし、怪我が回復しても何かに怯える様子が変わらないことから、原因はショック又はトラウマなのかもしれないと話している。

 

本来なら記憶が戻るまで入院させるつもりだったらしいが、最近できた新しい特殊部隊の理不尽な取り調べのせいで、怪我で入院してくる人が急激に増えてベッドの空きが足りないとのこと。そこで困った医者は、自分の兄である私に頼んで、この青年を引き取らせた。記憶が戻り社会に復帰できるまでの期間限定で。本心を言えば嫌だったが、事情が事情なため仕方なく引き受けた。

 

まあ、記憶を失って自分が誰かも分からないんだ。怖いのも無理はない。あいつも優しく接してくれと言っていたことだ。

 

 

 

一言二言の会話を交わし、相変わらずの気まずさに悩んでいると、家に着いた。

 

「さて、今日からここが君の家だ。自分の家と思って遠慮しないでいいよ」

 

あの病院とは1kmちょっと離れた、帝都の中でもあまり人通りが少ないところに私の家はある。汚い通りというわけではないが、皇帝陛下の城からはかなり遠く、城下町に観光客や人が集まるのは言わずもがな。

 

「…はぁ。店、ですか?」

 

「ああ、実は私は弁当屋を営んでいてね。店が一階で家が二階だ。店こそ小さいがまあまあ人気でね、君にも仕事を手伝って貰うかもしれない」

 

まあ、弁当を買って行ってくれる人は、近所の人や昔からの知り合いが多いんだがね。

 

わかりました、とヒカリくんが頷く。

 

「じゃあ部屋に案内するよ。私は一人暮らしでね、部屋は結構広いから喜んでくれていいよ」

 

「…お世話になります」

 

ダメか。

部屋が広いのは嬉しくないのか?病院の部屋は相部屋で一人になれる空間ではなかったから、てっきり喜ぶものだと…。

まあ、こんなこと気にしてはいられないな。

 

彼を部屋に案内した後は、部屋に荷物を置いて、他の部屋と店の中を案内し1日を終えた。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

夜中、ふと目が覚めた。隣の部屋、ヒカリくんの部屋から声が聞こえて来たからだ。何だろうとベッドから起き、ヒカリくんの部屋のドアをノックする。…返事はない。が、私を起こした声は聞こえてくる。

 

「入るよ」

 

夜中に起こされて若干機嫌が悪いため、ちょっと強めにドアを開けてみると、彼は顔にすごい汗を浮かべてうなされていた。

 

「…これは、起こした方がいいのか?」

 

とりあえず一度部屋から出て、水を注いだコップとタオルを用意して戻った。

タオルで彼の汗を拭いていると、ゆっくりと瞼が開き、目があった。

 

「ひどくうなされていたよ。何か怖い夢でも見たのかい?」

 

「…すいません」

 

「はい、水」

 

「すいません、ありがとうございます」

 

ヒカリくんは私から水を受け取ると、一気に飲み干し、深く息を吐いた。それでもまだ呼吸は少し荒く、どこか焦っているようにも見える。

 

「…とても冷たい水の底に閉じ込められた夢でした。周りは分厚い氷に囲まれてて、呼吸はできるんですけど、ゆっくりと死んでいく…そんな夢でした。」

 

いかにも冷たい彼の夢のわりに、現実ではとても暑そうだったのだが…

 

「なるほど、もしかするとその悪夢は君の過去と何か関係があるのかも知れないな」

 

「そうでしょうか。俺、今までのことほとんど忘れてるのに、なんでこんな怖い事だけ覚えているんでしょう?」

 

彼が毛布を握りしめ、不安そうに尋ねた。

私はヒカリくんのベッドに腰を下ろす。

 

「…いいかい、ヒカリくん。人には思い出したくない事、忘れてしまいたい記憶というものがある。でも、それは無理な話だ。忘れようとすればするほど、そういう記憶は何度も何度も蘇ってくる。こんな事を言う私だってそうさ。弁当屋を始めた今でも、昔の思い出したくないことをふとした瞬間に思い出してしまう」

 

これはどう足掻いても逃げる事ができない、人として生きていく上での仕方のない現象、そういうものだと私は思っている。

 

「じゃあ俺は、もう何も思い出したくないです。例えそれが嫌な思い出じゃなくても」

 

「…どうしてだい?」

 

「だって全てを思い出したら、さっきの悪夢のことも全部思い出しちゃうんですよね?それだったら、今のあやふやな、あくまでも夢の状態にしておきたいんです」

 

…なるほど、彼は今『逃げたい』んだ。

自分の名前さえも思い出せない中で唯一残ったのは、過去のトラウマだけ。それだけでは心が折れてしまうと本能的に思ったのだろう。そして彼の心の中では、そのトラウマがそれ以外の思い出に勝ってしまったのだ。

決して『逃げる』ことが悪いというわけではない。ただ、逃げるにしてもタイミングがある。今は逃げる時か進む時か。彼が、記憶が戻らなくても必死に毎日を生きる、それならいい。ただ、逃げて記憶喪失のまま抜け殻のように生きる、そうなったらおしまいだ。私はそんな人間を世話することはないし、この家もそういう場所ではない。

まあ、ヒカリくんがさっさと思い出せばそんな事を悩む必要なんかないのだが。

 

「ヒカリくん、過去を思い出すのが怖いという気持ちが分からなくはないが、君を想い、君を待ってる人がどこかにいるかもしれない。そう考えたことはないかね?」

 

「…俺を、待ってる人?」

 

「そうだ。人と人との繋がりは大切なものだ。君との繋がりを断ち切られて、悲しい思いをしてる人がいるかもしれない」

 

我ながら説教くさいとは思ったが、これでも弁当屋を始める前は、人の上に立つ職だったから自然とこうなった。それでも、これは大切な事だ。

 

「うるさい!」

 

不意に怒声が響き渡り、ヒカリくんが毛布を払いのけ立ち上がる。

 

「俺だって俺のことがわからないのに、あんたに何がわかるって言うんだよ!」

 

彼は、そう叫ぶと部屋のドアに手を掛ける。

 

「ちょっと!どこに行くんだい!」

 

不意を突かれ唖然としていた私だが、流石に現実に戻る。いくらこんな元気だからといって、弟から預かっている大切な患者だ。だから勝手にどこかに行かれても困るため慌てて止めに入る。

 

「知るか!ここじゃねえどっかだクソが!」

 

私も聖人ではないため、こうなれば力づくでも落ち着かせようと考える。

しかし、彼は急に頭を抱え出して悲鳴をあげた。そしてどさっと、まるで建物が崩れ落ちるかのように横に倒れた。

 

「気を失っているのか…」

 

急に倒れたため何事かと焦ったが、呼吸はしていることを確認して溜め息を吐く。

そして倒れた彼を抱きかかえ、部屋に運びまたベッドに横にさせる。

 

いやはや、まったく、やってしまったな。初日でキレさせてしまうとは思ってもみなかった。私もいい年した大人であるが、まだまだだ。

 

しかしまあ、その初日でヒカリくんという人間のことが少しわかった。

記憶があろうがなかろうが、人の本質というのは変わらないからだ。

 

 

 

まあ願わくば、彼が次目覚めた時、今さっきの出来事も忘れていてくれたらと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さあ、ということで今話からおっさんとの二人暮らし編スタート!

さてさて、最新刊読みましたよ!
以下ネタバレ注意












タカヒロてめえええええええええ!!!!
お前一番やっちゃいけないことしやがったなぁああああ!!
もう許さねえ!!怒ったからな!姐さんは例えR-18指定くらっても俺が幸せにすっからなあああああ!!!!

*あくまでも自分はタカヒロ氏をリスペクトしています。
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